「正しく知る 心的外傷・PTSD ―正しい理解でつながりを取り戻す―」刊行しました

東日本大震災後に依頼を受けて書いた本です。
対人トラウマではなく、震災や事故などによるものを想定した内容です。
お役に立てば幸いです。

正しく知る 心的外傷・PTSD ―正しい理解でつながりを取り戻す―

技術評論社

定価 1554円(税込)

以下、「あとがき」からの抜粋です。

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 本書執筆のご依頼をいただいたのは、東日本大震災が起こって1ヵ月強が経過した、2011年4月下旬のことでした。震災は私自身にとっても大きな衝撃でしたし、私の子どもたちや、診療している患者さんたちにも大きな影響を与えていました。そして、ふだんから比較的多忙な仕事に加えて、震災ボランティアの方たちのトレーニングをしたり、被災地の方たちとやりとりしたり実際に出向いたり、というような状況で、かなりバタバタしているところでした。

 そんな折、技術評論社の方から本書執筆のご依頼がありました。直接の被災者はもちろんのこと、直接被災していない人たちも何らかの形で心に傷を負っている今、どのように対処したらよいかをわかりやすく書いてもらえないだろうか、ということでした。

(中略)

 本文にも「情報とのつき合い方」を書きましたが、衝撃的な出来事が起こった後には、様々な情報が行き交い、どれを信じたらよいのかがわからなくなりがちです。特に、心に傷を受けているときには、すべてのことを疑わしく思うような気持ちにもなったり、まだまだ重要なことが隠されているのではないか、自分はもっと努力して危険情報を調べなければならないのではないか、などという感じ方になったりしてしまいます。これは人間にとって大変なストレスですし、日常生活を妨げ、心的外傷からの回復も遅らせてしまいます。

 私自身、震災後の日本に暮らす一人の人間として、どの情報が正しいのかがわからない、という点では多くの面で立場を共有しています。しかし、自分自身の専門領域である心的外傷についてであれば、今まで得られてきた専門的知見や、自分自身の数多い臨床経験を踏まえて、できるだけ正確に、わかりやすく伝えることができるだろうと思いました。それは、必要とされている情報全体のごく一部に過ぎないのかもしれませんが、一部だけでも、確かなものがあればずいぶん違ってくるでしょう。

 また、何と言っても、私たち人間にとって、心のあり方はとても大切です。どのような心の姿勢で日々を生きるかということは、間違いなく、私たちの人生の質を決めるからです。震災の前後の違いはあっても、私たちが人生を歩み続けていることは変わらない事実であり、その質をどれだけ高められるか、というテーマはそのまま残っています。むしろ、非常時にこそ、心の姿勢に気を配り、身近な人たちとの関係性を大切にし、これ以上傷つかないように、態勢を立て直していきたいものです。

(中略)

 本書を執筆するに当たっては、正確な内容をできるだけわかりやすく書く、ということに留意しましたが、もう一つ重点を置いたのが、「様々な立場」です。「被災者」と一括りに言っても、実際に体験されたことやその感じ方は人それぞれです。直接被災してはいないけれども、被災地に親しい方がいる、という方もおられます。被災地に関係者がいなくても、ニュースやインターネット情報から「怖ろしいこと」を知ってしまった、という人もとても多数おられるでしょう。また、忘れられがちなのが、支援者側のメンタルヘルスです。社会的・道義的に逃げられない警察官や医療従事者など、職業として関わる人たち、また、ボランティアとして関わる人たちなど、支援者も心を持った人間として、傷を受けていきます。そして、その支援者にも家庭があったり親しい人がいたりして、支援者が受けた心の傷は、そのような人間関係にも影響を及ぼしていきます。本書では、そのあたりにもできるだけ踏み込んでみたつもりです。

(後略)
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