アメリカ人のコミュニケーション(補足)

 前回、「アメリカ人のコミュニケーション」について書かせていただきましたが、「北カリフォルニア」と地域を限定するのを忘れてしまったので、自分の経験は違ったというような声をいくつかいただきました。失礼いたしました。

 私が暮らしている北カリフォルニア、特にサンフランシスコを中心としたベイエリアは、アメリカの「良さ」が強く現れている地域だと思います。多様性を尊重する土地柄のため、ゲイのメッカでもあります。また、アメリカの中では最もスピリチュアルな場所のひとつだと言われています。
 
 こちらでは、カープール(相乗り)という制度があります。車に3人以上乗っていると、橋の通行料が無料になり、高速道路でカープール車線という優先車線を走ることができます。渋滞のときには本当に助かります。個人にとっても橋の通行料やガソリン代などが節約できるありがたい制度ですが、環境政策としても、相乗りを促進して車の数を減らす効果があります。もちろん、渋滞解消効果もあります。日本と違って駐車するスペースがたくさんありますので、家から車で出てきて、途中で他人の車かバスに乗り換えて通勤する人はたくさんいます。サンフランシスコ市内の駐車事情は悪いので、私も普段はバス停の近くに車を駐車して、バスでサンフランシスコに行きます。

 先日、サンフランシスコまで車で行かなければならなかったときに、ゴールデン・ゲート・ブリッジの通行料5ドル節約のため、男性を一人乗せました。話しているうちに、サンフランシスコ市役所で働く弁護士だということがわかったのですが、東海岸出身だという彼は、「ここに初めて来たときには驚いた。スーパーに入ったら、皆が私を助けようとしてくれるのだから。ニューヨークやワシントンDCでは、なぜあなたを助けなければならないのという雰囲気だった」と言っていました。そして、「マリン郡は確かにお金持ちの多い地域だけれども、ここではいくらお金持ちになっても相変わらずブルージーンズをはいて、全く偉ぶらないところも特徴」と言っていました。彼に言わせると、ベイエリア以外では、シアトルとオレゴンのポートランドが似たような雰囲気だそうです。

 日本から来た私と、東海岸から来た彼が、同じようなところに目をつけていることが大変おもしろかったです。
 そもそも、考えてみれば、こうして気軽に他人を車に乗せて、おしゃべりを楽しみながら道を行く、というのも、日本の都会では考えられないぜいたくな体験です。

 最後に、前回のメルマガを読んで、共感のメールを送ってくださった、北カリフォルニア在住のSabrina Hiroko Okadaさんのメールを一部ご紹介します(ご本人の了解を得て、日本の読者にわかりやすいように、文意を変えずに一部を変更してあります)。

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私はバスとバート(高速交通システム)に乗ってサンフランシスコまで行き、そこから成田に飛びます。この国にいる限りは、いろんな人が声をかけてくれて、スーツケースをもってくれたり、バスの運転手が声をかけてくれたりしますが、成田に着くと同時に、逆カルチャーショックをいつも受けます。私がどんなに重い荷物をもっていても、ぶつかっていくのになんの言葉もかけない人はたくさんいるどころか、長い長い階段を荷物を持って上がったりするのに、「手伝いましょうか」と声をかけられたことは一度もありません。

言いたいことは本人の前ではっきりと言い、あとくされはほとんどなし!という人付き合いの仕方も非常に心地よいです。
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 もちろんアメリカにも医療や人種問題など困った問題はたくさんありますし、「アメリカは良くて日本は悪い」と言うつもりは全くありません。でも、少なくともこのベイエリアの人々の暮らし方からは多くを学ぶことができると思っています。多様性を尊重することで、社会全体に寛容と活気が生まれること。また、それぞれが他人に微笑みかけ、援助の手を伸ばすことで、自分も気持ちよく暮らせるし、困ったときにも助けられること。スーパーのレジを待っている列の中でも会話が始まるので、退屈する時間が少ないこと。

また、私の住むマリン郡では、全面積の40%を自然のままに保存してあり、サンフランシスコから車で20分程度という便利な土地柄でありながら、自然に包まれて暮らせるというのも、住民運動の大きな成果です。