現代の世相とアティテューディナル・ヒーリング

アティテューディナル・ヒーリングのワークショップを日本で始めて7か月が経過しました。

この間、実に様々な立場の方がワークショップにご参加くださいました。

医師、看護師、臨床心理士、ソーシャルワーカーの方。
学校の先生、スクールカウンセラーの方。
保育士、児童養護施設で働く方。
様々なメディアで働く方。
お子さんの問題で悩んでおられる親御さん。
子どもの頃に受けた虐待の被害や、大人になってから受けたセクハラの被害などに今も苦しむ方。
普通に働きながら、より癒された人生を求める方。
その他、本当にいろいろな方がご参加くださり、実に豊かな空間を広げてきてくださいました。

毎月1回の入門者用ワークショップはとても多くのお申し込みをいただくので6月から月2回に増やしますが、ますます多くの方が申し込んでくださっています。

子ども向けのプログラムも近々始める計画でおります。

ファシリテーター・トレーニングもすでに2回終え、そこで学ばれた方がこの4月から北海道に拠点を作ってくださいました。7月には私も北海道にうかがってワークショップを行う予定ですので、北海道の方はぜひご参加ください。どなたでもご参加いただけます。末尾にご案内を掲載いたします。

北海道を皮切りに、全国各地にアティテューディナル・ヒーリングの拠点を作っていきたいと思っています。

私がせっせとアティテューディナル・ヒーリングの普及に努めているのは、今の世相とも深い関係があります。

ここのところ最低投票率の定めもない国民投票法が成立したり、大変きな臭い世の中になってきたと思っています。好景気などと惑わされている足元では、過労自殺が激増しています。いろいろな意味で世の中が快方に向かっていないのは明らかであるどころか、かなり深刻な懸念があります。

こういうときに、絶望するのは簡単です。
現に、「日本はもうだめだ」「日本人は思考停止に陥っている」などと絶望している人たちがたくさんいます。
その人たちの気持ちもよくわかります。

でも、「もうだめだ」と絶望すると、私たちは絶望という集合意識作りに加担することになります。
絶望は社会にマイナスのエネルギーを供給します。
また、絶望した人は周りの人との温かい関係を見失うことになり、結局のところ社会をますます「絶望的な」場所にしていきます。

歴史を振り返ったときに、最も危険なのは、ヒトラーのようにエキセントリックな人間ではなく、無意識に流されてしまう一般の人たちだと言われています。
無意識に流されるというと、ついつい「何の考えもなく小泉政権や安倍政権に流される有権者たち」という方に目が向きがちですが、世相が暗くなったときに「日本はもうだめだ」と絶望に流されるという側にも目を向ける必要があります。

私がアティテューディナル・ヒーリングを通してやろうとしているのは、無意識に流されない人を作ることです。
絶望するかどうかも自分で決められる人を作ろうとしているのです。

よく、絶望することの辛さから、問題そのものを見ないことを選ぶ人もいます。
ある時点まではせっせと政治活動や市民活動に取り組んでいるのですが、「もう無駄だ」と投げ出してしまうのです。
ここで言っている「絶望しない選択」というのはそういうことではありません。

現状の問題点を正確に認識し、解決が難しいことを知りながらも絶望しないという選択肢はあります。
社会の問題点から目を背けずに、少なくとも自分の周囲には平和を作り出す努力をしていくことはできるのです。
それができる人の数が増えれば、悪政の影響を最小限に抑えることができますし、政治そのものを変えることもできるでしょう。

私は「政治が変われば社会が変わる」というのは危険なスローガンだなと思うようになりました。
これが民主党を選挙で勝つことしか考えられない政党にしてしまったようにも思います。(そしてその皮肉な結果として、民主党は選挙で勝てない政党になっています)
私たちが変わらなければ政治は変わらないわけですから、政治だけが変わることはあり得ないのです。

政府が何かの仕組みを作ったときに、被害者意識にとらわれてそれに振り回されることが一番危険です。
戦争前後の日本の最悪の日々を研究してみても、「ふつうの人」同士が助け合わなくなったり疑心暗鬼に陥って攻撃しあったりしたことが、最も辛い体験の一つだったわけです。
そこまでの極限に達する前に、社会がどうなろうとも、少なくとも自分の周囲には平和を作り出す努力のできる人を増やしていきたいと思っています。

そして、これまでの7ヶ月間のワークショップの経験からは、私たちにその力があることを実感しています。アティテューディナル・ヒーリングのワークショップでは、何かの価値観を押しつけるようなことは一切しませんが、様々な立場の方が、同じ人間としてつながり合い、怖れを手放すことを選ぼうとしていく様子には、深く感動しますし、人間の持つ無限の可能性を感じさせます。

今まで、オクラホマの爆破事件やボスニアにもアティテューディナル・ヒーリングのチームが派遣されてきましたが、人が最も被害者意識に陥りやすい状況に「別の視点」を提供することの重要性が示されてきていると思います。

もちろん、いじめや差別など、社会正義のテーマにはアティテューディナル・ヒーリングは特効薬です。
ただ「毅然と」相手を怒鳴りつけて事態を悪化させることなら誰にでもできますが、本当の解決を目指すのであれば、やるべきことは違います。

これは実は、日本をおかしな方向へと導いている人たちを相手にする場合も同じことです。「人でなし」などと攻撃していたら、その人たちはますます悪い方向へと突っ走るだけでしょう。

「政治には戻らないんですか」と聞いてくださる方には「これが私の今の政治活動です」とお答えしていますが、できるだけ早く、一人でも多くの方にアティテューディナル・ヒーリングの考え方を知っていただきたいと思っています。

目下の悩みは、アティテューディナル・ヒーリングの良い日本語訳が見つからないことです。

★アティテューディナルヒーリング レベル1ワークショップ in 北海道★

日時: 2007年7月29日(日) 11:00~17:00

参加費用: 3000円(資料代等)

ファシリテーター: 水島広子

定員: 20名

場所: 恵庭市民会館 視聴覚室

   恵庭市新町10番地 JR千歳線 恵庭駅下車(快速停車) 徒歩15分程度

お申し込み・お問い合わせは

アティテューディナルヒーリング・北海道
代表 瀬川真弓
Eメール s-mayumi@snow.email.ne.jp
電話・FAX 0123-34-7472
携帯 08018897436

その他のワークショップについては

http://www.ah-japan.com/workshop.htm

をご覧ください。

「山本たかしさんを国会に残そう! 緊急集会」のお知らせ

参議院議員の山本孝史さんは、私が尊敬する先輩政治家です。
私が議員になる何年か前、薬害エイズが国会のテーマになっていたときに山本さんの厚生委員会での質問を見て、私は「共産党以外は馴れ合いのオール与党だ」という認識を改めたことを記憶しています。
交通遺児を支える活動から政界入りし、まじめな性格、優秀な頭脳、温かい人柄をもって活躍してこられました。
持続可能な年金改革のために超党派の枠組みでもリーダーとして頑張ってこられました。

進行がんと診断されてから、残された時間を計算しながらそれこそ壮絶な国会活動を続けてこられましたが、この7月で山本さんの任期が切れます。前回は選挙区(大阪)からの当選でしたが、今回はすでに選挙区立候補の道は絶たれ、ご本人は比例区からの立候補を模索されています。党の公認は未だに得られておらず、山本さんの活躍に期待する有志の方たちが、下記のような集会を開くことになったそうです。

ぜひご参加いただき、山本さんに触れてください。

山本孝史さんのホームページ  http://www.ytakashi.net/

=========(以下、集会のご案内文)

5.13「山本たかしさんを国会に残そう!緊急集会」のご案内

【趣  旨】
山本たかしさんは、「がん対策基本法」や「自殺対策基本法」の生みの親。昨年6月、自らががん患者であることを国会・代表質問の場で告白し、頓挫しかけていた両法案を成立に導いた参議院議員(民主)です。
その山本たかしさんが、実はいま逆境に立たされています。
病気ではありません。今国会で任期を終えるため、7月の参院選に全国比例での立候補を目指しているのですが、ただ民主党からの公認がいまだ出ておらず、また立候補できたとしても支持母体がないために、今回の選挙での当選は難しいだろうと言われているのです。
国民の「いのち」を守ろうと、ご自身の生命を懸けて闘っている山本たかしさんが国会を去り、ある組織や業界のために活動する政治家が当選していくだなんて。この国の政治はそんなことで良いのでしょうか。
こんな時代、こんな社会だからこそ、山本たかしさんのような「いのちの重み」「人の痛み」が分かる政治家が国会には必要ではないでしょうか。

がん患者会のメンバーや自殺対策に取り組む市民団体メンバー等が中心となって、下記の通り「緊急集会」を開きます。ひとりでも多くの方にご参加いただくことが、山本たかしさんを国会に残すための原動力となり、この国の「いのち」を支えていくことにもつながっていきます。心より、ご参加をお待ちしています!

【主  催】   山本さんを国会に残そう!有志の会
【日  時】   5月13日(日) 14時~16時
【会  場】   日本薬学会長井記念ホール(渋谷駅から徒歩8分)
http://www.pharm.or.jp/hall/index.html
【次  第】
13:30 開場
14:00 開会
あいさつ(緊急集会の趣旨説明)
        山本たかしさんの活動実績(DVD上映)
14:30 パネルディスカッション
「いま、なぜ日本に“山本たかし”が必要か」
15:30   山本たかしさん挨拶
16:00   閉会

【会場へのアクセス】
◆鉄道:
 JR山手線、東急東横線、東急田園都市線、京王井の頭線、東京メトロ銀座線・半蔵門線の渋谷駅下車
◆徒歩:
 JR渋谷駅東口より、高樹町方面へ高速道路3号線沿いに8分
◆都バス:
 JR渋谷駅東口、「学03日赤医療センター行き」1つ目「渋谷3丁目」下車すぐ

※お問い合わせは、有志の会事務局まで
 BXS00035@nifty.com(5.13まで有効) 以上

統一自治体選挙

久しぶりに東京都民に戻った都知事選では浅野史郎さんが残念ながら当選できませんでした。他人の落選というのはかなりこたえるもので、昨晩は相当落ち込んでおりましたが、だんだんと浅野さんが立候補されたことの意義を考えられるようになってきました。少なくとも私は、今まで「有能な政治家」というイメージだった浅野さんが、人間としてとても尊敬できる温かさと勇気をお持ちだということを知って、感動しています。浅野さんが大きな争点とされた福祉や情報公開の分野でも、浅野さんの気持ちが伝わって「ちゃんと気がついていてくれたんだ」と思った方が大勢いらっしゃったと思います。これからも浅野さんにはいろいろな方面でご活躍いただきたいと思っております。そして、こういう選挙結果を見て無力感にとらわれることほど政治を後退させることはない、と肝に銘じて、また自分にできることをやっていきたいと思っています。

私が選対委員長を務めさせていただいた栃木県議選の山田みやこさんは、定数12の第3位、当選した民主党候補3名の中では最上位の当選でした。これは嬉しい結果でした。ご支援いただいた皆さまには心から感謝申し上げます。私も最終盤の2日間は宇都宮に泊り込んで、ずっと選挙カーに乗り、何度も梯子を上り下りして街頭演説をし、自分の選挙くらいには頑張りました。久しぶりの選挙でしたが、懐かしい土地を回り、懐かしい方たちと再びつながることができて、嬉しかったです。山田みやこさんには、3期目もさらに活躍していただきたいです。

★4月16日(月)、北海道釧路で「いじめ社会を考える|現代日本の精神構造」というタイトルで講演をします。主催は北海道新聞釧根政経文化懇話会です。会員制の会ですが、今回は特別に会員以外も無料聴講できるそうです(整理券が必要)。詳しくは、事務局0154・31・2703までお願いいたします。

東京都知事選

久しぶりに東京都民に戻って臨む知事選に、浅野史郎さんが立候補を決意してくださって本当に嬉しく思っています。

以下の集会のご案内をいただいています。
浅野さんご本人も出席されますので、ご都合のつく方はぜひご参加ください。

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★緊急の呼びかけ あなたも参加しませんか★
「アサノと勝とう! 女性勝手連」

都民女性が中心になって、勝手連を立ちあげる準備を進めています。
【呼びかけ人】
若桑みどり/上野千鶴子/丹羽雅代 /赤石千衣子/安積遊歩/天野正子/青木道代/甘利てる代/阿部愛子/石坂啓/稲邑恭子/井上輝子/井上文/漆田-土井和代/大熊由紀子/岡田弥生/加納実紀代/北原みのり/木村民子/銀林美恵子/櫛渕万里/黒岩秩子/ごとう尚子/酒井和子/澤地久枝/東海林路得子/白石冬美/辛淑玉/瀬野喜代/千田有紀/高橋裕子/田中喜美子/田中美津/俵萌子/寺町みどり/中嶋里美/中野園子/中山千夏/信田さよ子/橋本ヒロ子/林佳恵/弘由美子/深澤純子/福沢恵子/福士敬子/船橋邦子/星野智恵子/松本路子/丸山美子/皆川満寿美/宮本なおみ/毛利敬子/望月すみ江/森まゆみ/山崎朋子/渡辺一枝

 ★「勝手連」発足集会を開催します。
  3月18日(日)午後6時30分から、
 全水道会館(JR、地下鉄「水道橋」東口徒歩2分)にて。
  浅野さんも参加の予定!どなたでも参加できます。 

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退院支援施設

この4月から施行予定の精神障害者「退院支援施設」構想をめぐって、当事者によるシンポジウム「精神障害退院支援施設を考えるシンポジウムの集い 『人間として誇りと希望を持って生きていきたい - 精神障害者退院支援施設は嫌です - 』が本日参議院会館で開かれました。私もシンポジストとしてお招きをいただいたので、出席いたしました。

よくご存じない方もいらっしゃると思いますので、簡単に説明いたします。

ことの発端は、「7万2千人の社会的入院患者」でした。

日本の精神科病床の異常な多さは、国際的にも群を抜いています。
諸外国が障害者を地域に返す取り組みに力を入れ精神病床数を激減させていた頃、日本は反対に精神病床を増やしていきました。そして、病床の多さに比べて人手は少ないので、「精神科特例」という仕組みまで作りました。精神科病床だけは他科に比べて人員配置が少なくても良い、という決まりです。

病床あたりの人員配置が少なければ、それだけ「医療密度」が下がります。結果として、良質の医療を提供して早く退院できるように努力することが難しくなります。そして、精神障害者は長期入院をするのが当たり前になってしまい、地域で普通に暮らす障害者が増えず、偏見も解消しない、という構造が放置されてきました。

医学的理由によって入院しているわけではない「社会的入院」患者が、7万2千人はいると言われ(この算定方法にもいろいろと問題があるようですが)、厚生労働省は、心神喪失者医療観察法案など乱暴な法案を通す引き換え条件として「社会的入院を10年間で解消する」と約束したのです。精神障害者をめぐる様々な「問題」の多くが、実は低いレベルの精神医療を放置していることによるものだという私たちの指摘に基づいてのことでした。

10年の期限が刻々と近づいているのに、その後も遅々として状況が進まないので、一体どうするつもりだろうと思っていたところ、今回の退院支援施設構想が出てきたわけです。

さすがに反対が強かったため昨年10月の施行は見送られましたが、この4月からは何とか施行しようとしているようです。

この「退院支援施設」では、病棟を改装して看板を架け替え、医師や看護師が生活支援員に変わり、患者は「退院」扱いになります。が、定員は20~60名で4人1部屋で良く、人員配置も高くなく、利用期限は「原則」2~3年とは言うものの結局は病棟が形を変えただけの「終の棲家」になるのではないか、ということが危惧されています。なぜかと言うと、精神障害者が地域に戻れない要因はもっと別のところにあるわけですし、そもそも本当に退院を支援して施設を利用する人がいなくなってしまったら経営が立ち行かなくなるからです。少し考えてみれば、この構想が大変おかしなものであることがわかります。

今日のシンポジストの中には、大阪のさわ病院の澤温院長もおられました。さわ病院のような質の良い精神科病院は、現在の制度の中でも、実に活発にノーマライゼーションに取り組んでおられます。他方、人権感覚に乏しく患者を囲い込むことで収益を上げている精神病院も残念ながらまだ多数存在しています。

今一番のテーマは、こうした病院間の格差をなくすためにも、精神障害者を地域に返すことが経営上もプラスになるような仕組みを作ることです。経営のことを考える経営者を責めることはできません。患者を囲い込んでいる限り安泰に暮らせて、努力すればするほど赤字になるような現在の制度がおかしいのです。

また、地域の受け皿ということで言えば、退院支援施設に余計なお金を投資するのではなく、小規模グループホームを作ったり、公営住宅の一定割合を精神障害者に割り当てる、というような対応が必要です。退院支援のためのハコモノは、努力するほど存在が危うくなる自己矛盾的な存在になってしまいますが、地域に根ざしたハコモノは投資する価値があるでしょう。

心のバリアフリーはなかなか進みませんが、偏見解消のためには、とにかく共に生きることが重要です。障害があろうとなかろうと人間は人間なのですから、共に生きる中で共有できることが多くなります。そのためには、少々思い切ったポジティブ・アクションが必要です。

すでにこうした取り組みが成功している先進例がいくつかあるわけですから、それを厚生労働省も学んで、有効な投資をすべきです。

また、「7万2千人を10年で」という数値目標だけが一人歩きしてしまった結果、こんなにおかしな構想に追い詰められてしまうのですから、なぜ社会的入院が問題とされたのかという原点に返るべきです。

シンポジウムで発言したのですが、行政を責め、「とんでもない」と怒っても、結局はおかしな制度が実現してしまうということが繰り返されています。
このあたりで、先進例から学びながら、行政も民間も力を合わせて前進できるような新しい気運を作る必要があると思います。
「怖れ」をテーマにしている私からみると、いろいろと考えさせられることの多い一件です。

なお、精神障害者のノーマライゼーションは、決して「一部の特別な人たちのかわいそうな話」ではありません。心のバリアフリーは、たとえば、現在社会的に大きな問題になっているいじめや格差とも深い関連があります。精神障害者が地域で生き生きと暮らせる社会が実現すれば、その地域で育つ子どもたちも他人とのつながりを大切にしながら生き生きと育つことでしょう。

政権与党とメディアと野党

本日、「愛川欽也のパックインジャーナル」に出演しました。

安倍内閣支持率低下を中心とした国内政治の話題、イラク増派をめぐるブッシュ対アメリカ世論、ゼネコンの談合問題、米朝会議、「納豆」データ捏造問題、と、それぞれが番組全部を費やしても良いようなテーマばかりでした。

今日はかねてから注目していたニューヨーク市立大学の霍見芳浩教授ともご一緒できて良かったです。ハーバード大学でブッシュ大統領を教えた経験のある霍見先生は、政権誕生当初からブッシュ政権を一貫して批判されています。学生時代のブッシュ氏が「人が貧しくなるのは、怠け者だからだ」と言っているのを聞いて、人間としての浅さに愕然としたそうです。

今日のテーマは多様でしたが、ほとんどのテーマを貫く一つの大きな論点が「メディアのあり方」だったと思います。

ここのところは事務所費等をめぐる「政治とカネ」問題が連日報道されて、またまた政治のイメージを下げているのですが、私は「おなじみの違和感」を覚えています。何についてかと言うと、閣僚など政府の中枢にいる人たちの疑惑と、野党である民主党の疑惑が、全く対等か、あるいは、民主党の方が問題であるかのように報道されているのです。民主党の方が問題であるという根拠は、「自分たちが襟を正さずに、政府与党を攻撃できるか」ということのようですが。

実はこの同じパターンで、過去には年金騒動で菅さんが代表辞任に追い込まれたこともありました。

政府与党には、二つの役割があります。
一つは、公権力を持つ政府としての役割です。この場合、対立する相手は、権力の行使を受ける国民ということになります。
もう一つは、与党という政党としての役割です。この場合、対立する相手は、取って代わり得る、野党という政党になります。

国民、そしてその木鐸たるメディアは、二つの目を持つ必要があります。
一つは、公権力を監視する目です。これは、自分たちに権力を行使する相手を見る際に、絶対に必要な目です。
もう一つは、政権を選択する目です。自民党が良いのか民主党が良いのか、二つの政党を比較する目です。

後者においては、自民党と民主党は対等ですから、「自民党もどうしようもないけれども、民主党もだらしがない」という議論は成立します。両者の政策や政党としての体質は、どんどん比較すべきです。

でも、前者については、あくまでも公権力対国民なのです。権力を監視する際には、野党もその一つの道具として監視に参加すべきなのです。

私はこちらの要素がすっかり忘れ去られているような気がしてなりません。

今朝の朝日新聞の朝刊の社説は、1つめが「いくら徳目を説いても」と、疑惑に対処できていない安倍首相を批判し、2つめが「今度は小沢氏に聞きたい」と、さらに疑惑が残っている民主党を批判しています。両者が対等に論じられているところに、違和感を覚えるのです。

「民主党が政権交代可能な政党として認識されている証拠」などとおだてられることは簡単ですが、政党対政党という軸しか認識していないということになります。

民主主義社会では、市民は公権力をきちんと監視する義務がある、ということが忘れ去られてしまうのは危険なことです。

こういう風潮づくりに貢献しているのは、メディアも大きいですが、当の民主党もそうだと言えます。よく、「対立路線か、対案路線か」が党の路線の争点になっていますが、この二つを対立する二つの概念のように捉えているところがそもそも間違っていると思います。前述したように、公権力の監視と、政党間の競争というのは、二つの異なる軸なのですから、それぞれにおいて役割を果たせばよいのです。もちろん、前者においては、国民と共に公権力を監視する「対立路線」をとればよいわけですし、後者においては政党として自民党と競争する「対案路線」をとればよいだけの話です。

「対案路線」だけが政権交代を可能にする、という思い込みは民主党がここのところかかっている一種の病気のようにも思います。

今日のパックインジャーナルでは、「メディアは与党に厳しく、野党にちょっと甘いくらいでちょうどバランスが良いのだ」と皆さんがおっしゃっていたので、安心しました。

メディアと言えば、年末年始滞在していたマレーシアの英字新聞では、フセインが処刑された日の記事で、「我々は、アメリカがイラクに侵略してからもたらされた悲惨な被害を忘れてはならない」と書いていました。毎日のように「アメリカがイラクに侵略」という表現を読んでいる人たちと、何となく小泉・安倍路線を支持している日本人とでは、この問題に関する認識が異なるのも当然だろうと思いました。

児童虐待防止法改正

 本日、民主党の「児童虐待防止法改正作業チーム」の会議に呼ばれて、議員会館に行ってきました。2004年の改正のときの民主党の責任者として、経緯の説明などを行うためです。

 今回の改正では、前回「附則」に書き込み積み残しとなっていること、つまり親権の柔軟で多様な制限のあり方をはじめ、どうやって司法を全体的な仕組みにかませるか、ということが課題となります。前回改正時には法務省側も全く準備ができていなかったので、附則に書き込む形で3年間の準備期間を与えたということになっています。まだまだ親権の調整係のような役割しか果たしていない家庭裁判所に、子どもの権利を守る番人としての本質的な機能を果たしてもらいたいというのが私のかねてからの希望です。

 児童虐待防止法は、もともと超党派の枠組みで、青少年問題特別委員会を舞台に作られ改正されてきたものです。この枠組みのおかげで、前回改正時も、司法の部分を除いては私たちの主張をほとんど組み入れることができました。司法の部分が実現しなかったのは、与党の反対によるものではなく、法務省の反対によるものでした。今回も、青少年問題特別委員会の委員長が民主党の小宮山洋子さんですから、ぜひ与野党が一丸となって司法の関与を勝ち取っていただきたいと思います。

 ただ、私が気になってならないのは、現場が全然改善されていないということです。2004年改正のときに、国や地方公共団体の責務を規定する形で、現場の人員配置を増やしたり、大規模施設を解消したりするために必要な条文はほとんど書いたはずです。それなのに、現実には法律で規定されたことが守られていないのです。

 今回の審議では、法改正そのものよりも、現行法すら守られていない行政の怠慢をしっかりと明るみに出してほしいと思っています。そうしなければ、法律を作ることの意味がなくなってしまいます。国会の役割は、立法と同時に、行政を監視することも含まれます。特に今回は後者が重要だと思っています。

 もう一つ、今日の会議で話したのは、警察権のことです。2004年の法改正のときから、これが一つの大きな焦点になっています。虐待されている可能性のある子どもを救うために、どれだけのフリーハンドを警察に与えるか、ということです。マスコミの論調などで、「警察がすぐに立ち入れないようではだめだ」というふうに(国会議員も含めて)多くの人が思い込まされています。

 もちろん、子どもの安全を一刻も早く確保することは重要です。そのための知恵を、私たちも2004年時にずいぶん考えて法務省に提案してきました。そのことの重要性を軽視するつもりは全くありません。

 ただ、だから警察にフリーハンドを与える、ということになると、それは全く別の問題だと思います。警察権を独立させないということは、民主主義国家の立法府に課せられた最も根本的な使命の一つだと私は思っています。戦前・戦中から学ぶべきことは、戦争の悲惨さとともに、警察権が独立した場合に何が起こるか、ということです。

 現行法でも、明らかな暴力が起こっている、あるいは、差し迫っている、という場合には、警察官職務執行法により警察は立ち入ることができます。そうでないケースで、子どもの安全確認が必要だというときには、司法の許可を得て立ち入るという民主主義的な仕組みを作ることが何よりも重要です。

本のご案内・原口一博さんの「平和 核開発の時代に問う」

原口一博衆院議員(民主党)が、ご著書「平和 核開発の時代に問う」を送ってきてくださいました。

いろいろな方との対談を軸に作られている本ですが、私もその一人だからです。
アティテューディナル・ヒーリングに大変関心を持たれて、話を聞きに来てくださいました。

原口さんは大学で心理学を専攻され、関心領域が私と近い方です。虐待や暴力の問題にも大変敏感で、私から見て好感度の高い国会議員の一人です。

私自身は今の自分の役割は政治の外にあると思っていますが、原口さんのような方にはぜひ引き続き政治の世界でがんばっていただきたいと思います。

以下が、本の概要です。対談相手の人選が、原口さんらしいユニークさであるのもポイントです。

「平和 核開発の時代に問う」 原口一博著

第1章 「平和」の原点

第2章 隠されたヒバクシャ 対談 高橋博子氏(広島市立大学広島平和研究所助手)

第3章 なぜ、北朝鮮に核開発を許してしまったのか 対談 佐藤優氏(起訴休職外務事務官)

第4章 領土交渉と外交の立て直し 対談 佐藤優氏(前出)

第5章 テロを生む土壌

第6章 怖れから生まれるものと愛から生まれるもの 対談 水島広子

第7章 日本の核保有がいかに無益で危険か 対談 石破茂氏(自民党衆院議員)

第8章 歴史に正対する力

第9章 危機管理と安全保障 対談 長島昭久氏(民主党衆院議員)

第10章 エネルギーをめぐる戦いと気候変動の危機 対談 中川修治氏(「太陽光・風力発電トラスト」運営委員)

第11章 真実にフタをしない政治 対談 河野太郎氏(自民党衆院議員)

第12章 人間の安全保障 対談 枝野幸男氏(民主党衆院議員)

第13章 「教育」こそが貧困と怖れをなくすもの

第14章 核廃絶への道 対談 梅林宏道氏(NPO法人ピースデポ代表・太平洋軍備撤廃運動コーディネーター)

ゴマブックスから1800円+税 です。

「どうする? 日本のお産」のご案内

全国的に広がる産科医院の閉鎖、産科医・助産師不足など、マスコミでも注目されている日本のお産の深刻な現状ですが、本当に産む場所が消えてしまわないようにと、いろいろな方たちが行動を開始しています。
以前このメルマガでもご紹介した「どうする? 日本のお産」ですが、全国8ヵ所でリレー企画を続けてこられ、いよいよファイナル・ディスカッションが東京で開かれます。
ご関心のある方はぜひご参加ください。

日時:2006年12月17日(日) 10:30-16:00

場所:港区男女平等参画センター(リーブラ)

参加費:1000円

参加申し込みなど詳しくは http://do-osan.socoda.net/ をご覧ください。
お子さま連れも可だそうです。

難民支援・今野東さん

11月22日(水)、元衆議院議員今野東(こんの・あずま)さんの難民支援チャリティー寄席に行ってきました。
私と同期当選だった今野さんですが、2003年の総選挙における選挙違反(宮城県)のけじめをつける形で議員辞職されました。
同期当選組の中では貴重な平和主義・リベラル議員でしたから引き続き親しくさせていただいております。

議員辞職後も、現職時代からの重点領域であった難民支援活動を続けておられ、難民支援基金・理事長を務めておられます。

====以下、今野東さんの「ご挨拶」より抜粋====

2005年度、難民認定を申請した人は384人、そのうち難民として認定された人は42人だけです。2004年度は426人の申請に対して15人の認定ですから、いくらかよくなったという評価もあるかもしれませんが、難民認定手続きが極めて不透明である事には変わりがありません。

難民認定は法務局の入国管理局が行いますが、そもそも入国管理局は、不法に入国する者がいないかどうかをチェックする役所ですから、難民は保護しなければならないという前提に立っての認定業務とは矛盾しがちです。よって難民申請する人々には冷たい対応になってしまうという問題があります。

自由を求めて日本に逃れてきた人々は、日本の硬直した難民行政のもとで希望を見出せない状況にあります。多くの方々は刑務所同然のところに収容されていますし、そこから仮放免される場合も保釈金のような性質を持った保証金を要求されます。上限30万円の保証金を要求するのは、命からがら迫害の祖国から逃れてきた方々にはあまりにも過酷です。難民の方々の暮らしを公的に支援する制度もない現状では、誰かが救いの手を差し伸べなければなりません。

=====以上、今野東さんの「ご挨拶」より抜粋====

今野さんはもともとアナウンサーですが、1997年に東北弁の話芸の確立を目的に東方落語を設立しました。以来、毎月の定期会はもちろん、全国で精力的に高座をつとめています。

22日のチャリティー寄席は、収益金を難民支援のために役立てる目的で開かれたもので、今野さんに支援されてきた難民の方たちもずいぶん見かけました。

以前から評判だった今野さんの東方落語を聞くのは初めてでしたが、チャリティーという目的を忘れても、落語として本当に楽しませてもらいました。

今野東さんは、来年の参院選に民主党公認・比例区候補として立候補される予定です。難民支援にご関心のある方は、ぜひ、今野さんの活動をご支援ください。