アメリカ報告23 ――ハワイ報告・イハラ議員(その1)

 昨日ハワイから帰ってきたところですが、今夜はコスタリカに向けて旅立ちます。7月11日にアメリカに戻ってくる予定です。

 ハワイのイハラ州議会上院議員との出会いは収穫がとても大きかったので、取り急ぎご報告させていただきます。
 イハラ議員ご本人の報告に入る前に、アメリカにおける州議会の位置づけを少々ご説明します。日本に比べて地方分権が格段に進んでいるアメリカでは、州の権限が大変大きくなっています。連邦法(国の法律)ももちろんありますが、生活に身近なことは多くが州法で決まっています。例えば、日本は、どこで運転しても国内であれば道路交通法は一緒ですが、アメリカでは、カリフォルニアでは信号が赤でも右折できる(これは大変便利な仕組みです)けれども、できない州もある、など、交通法規も州次第です。法律としては連邦法が上位ですから、連邦法に違反する州法は作れませんが、連邦法が規定してないものであれば、州法で自由に規定することができます。例えば、同性愛者の結婚については連邦法に規定がありませんので、マサチューセッツ州ではそれを認めています。

 国政レベルの重大事項である外交のひどさがあまりにも目につくので、どんなにひどい国かと思っていらっしゃる方も多いでしょうが、実際に暮らしてみると案外理屈の通る良い国だというのも、地方分権の良さなのかもしれません。また、個性的な大都市がいくつもあるので、都市生活しか選択肢のない人でも自分の職業や好みによって住むところを選べるというのも地方分権ゆえの魅力でしょう。
 
 さて、そのように大きな権限を持っている州ですから、州議会は日本の都道府県議会よりもはるかに大きな権限を持っています。州議会を訪ねたところ、上院議員のオフィスは日本の国会議員のオフィスよりも広いものでした。「日本では、県議はオフィスを共有している」と言ったところ、イハラ議員は「それでどうやって仕事ができるんだ」と驚いていました。

 大きな権限を持つ州議会ですが、ハワイ州の場合、上院議員は26名、下院議員は約50名ということです。議場に入ってみると、26名の議場は大変コンパクトでしたが、傍聴席はたくさんありました。各席にはマイクが備えつけられていて、議会中は自席から自由に発言できるそうです(日本の国会では憲法調査会など特殊なものだけがこの形態)。

 ちなみに、上院議員の名前を見ていて気づいたのですが、26名のうち、10名が明らかに日系人です。イハラ議員も日系3世です。ハワイは、カリフォルニア以上に多様性に富んだ土地柄ですが、多数派がいないということが大きな特徴です。選挙で選ばれるようになってからの歴代の知事を見ても、日系人、元祖ハワイ人、フィリピン系、そして現在はユダヤ人、と、多様です。

 このほかに市議会もあります。9名の市議会は、かつては政党制でしたが現在は政党制ではありません。やはり市議会のテーマはいわゆる政治色の薄いものが多いからだそうです。これは私も納得です。

 上院議員は、会期中(1月~5月)は6名、会期外は2名のスタッフを公金で雇うことができます。現在は会期が終わっていますから、イハラ議員のスタッフは2名です。でも、ハワイ州議会では9月に選挙があるため、イハラ議員も遅まきながら選挙準備に入るところで、2名のスタッフのうち1名を、3ヶ月の休暇をとらせて選挙事務所専従にさせるのだと言っていました。「日本では秘書は現職のまま当然のように選挙をやっている」と話すと、大変驚き、「秘書の給料は税金なのに」「それでは新人にとってハンディが大きすぎる」と言っていました。残された1名のスタッフは州議会の事務所に詰めており、地元からの陳情などに対応するのだそうです。そして、私的な時間を利用して選挙の応援をするのだそうです。大変わかりやすい政治倫理です。

 次回はいよいよイハラ議員についてご報告します。