パックインジャーナル

 本日は「愛川欽也のパックインジャーナル」に出演しました。自民党総裁選、消費者金融問題、タイのクーデター、東京都教育委員会に対する地裁判決、北朝鮮への経済「制裁」、ロシアの天然ガスプロジェクト「サハリン2」認可取り消し、と盛りだくさんでしたが、実にこれだけのことが短期間に起こっており、最近はニュースが多かったと言えます。

 それぞれ興味深い論点はあります。消費者金融問題は、このところすっかりグレーゾーン金利(利息制限法で上限金利は15~20%と定められているが、刑事罰を伴う出資法では29.2%が上限となっており、消費者金融はこの間のグレーゾーンで金利を設定してきた)問題一色になっていますがでは、そもそもの問題意識であったはずの消費者保護を考えれば、どこにも相談することができずに多重債務に陥り身動きがとれなくなっていく人たちの相談・救済窓口の整備こそが急務だと言えます。国民のこれだけ多くが借金漬けになっている現状は明らかに異常であり、長い目で見た取り組みが必要です。借金漬けの中には病的と言えるものもあり、法律相談だけでなく心理相談も必要だと私は考えていますが、同時に、低金利の融資を受けられない「経済弱者」も重要な問題です。経済強者は有利な融資を受けてさらに成長し、経済弱者は高利貸しから借金して自滅する、という現象が起きているわけです。格差が広がる社会の中で、この点はしっかりと押さえておくべきです。

 北朝鮮への経済「制裁」にしても、本日の番組で田岡さんが指摘されていたように、本当は経済制裁ではないという事実関係の問題もあります。国連の安保理決議は決して制裁決議ではなく、それに基づいて日本が行ったものも、いわゆる経済制裁ではないのです。それを国内向けに「経済制裁をした」と総裁選前日に宣伝するのですから、おかしな話です。また、たいした実効性はないけれども北朝鮮を刺激することを、どういう戦略の中で打ち出しているのか、大きな疑問です。

 今日の番組で、「こんなことをやっているうちに北朝鮮が核実験でもしたらどうなるか」という話がありました。愛川さんなどは「やっぱり悪い国だった。言ったとおりだった」と安倍さんのポイントになるだろう、という読みでした。田岡さんは「いや、こんなことをして刺激したから核実験までさせてしまった」とマイナスポイントになるべきだ、と言っていました。正論は田岡さんの言うとおりだけれども実際にはプラスポイントになってしまうところが、まさに日本の「平和ボケ」なのでしょう。

 一般社会の中では、明らかに暴力的な人を見れば、その人と揉め事を起こさないようにする、というのが普通の智恵だと思います。どんどん相手を煽って、ひどい暴力を振るわれて、「ほらやっぱり悪い人だった。言ったとおりだった」と拍手喝さいになる、などということはないでしょう。北朝鮮に関して慎重姿勢の韓国を日本も見習うべきだと思います。以前から言っていますが、今どきは平和主義者の方が現実主義者であって、武力行使主義者は現実を知らない「理想」主義者(要は平和ボケ)なのだと思います。自分の言い分だけを一方的に叫ぶのではなく、相手の状況や特徴を十分に観察して最も効果的な戦略を立てる必要があります。「言うべきことは言う」というだけの平和ボケの人が首相になってしまうのだから心配です。

 タイのクーデターですが、民主的な選挙を野党がボイコットし政局を混乱に陥れ、軍部の介入を招き、最後は国王に調停してもらう、というのは、民主主義を考えると何とも情けない話です。私はタイを頻繁に訪れて国民性を知っているのである程度納得はできるのですが、やはり民主主義を成熟させようと思えば、その中で自分が果たす役割に責任を持つ必要があると思います。

 ただ、これは単なる他国の話ではなく、日本でもこの頃、サイパンの韓国人慰霊塔を訪問したり、東京都教育委員会の日の丸・君が代強制に対して「強制でないことが望ましい」と発言したり、という天皇の言動を見て、政治家よりもはるかにバランスのとれた人間的な感覚にホッとしているのは私だけではないと思います。一般に、政治家にはタカ派的な言動を求め、天皇にはバランスのとれた「人格」を求める、という傾向があるように感じています。政治家こそバランスの取れた人格が必要だと思うのですが・・・。

 パックインジャーナルは、司会の愛川さんをはじめ、ほかのコメンテーターの方たちも安心して話を聞いていられる方たちが多いので、私もただ聞きほれてしまいますが、権力から独立した唯一のメディアとして、これからもがんばってもらいたいです。安倍次期首相はメディアへの圧力をかけることで有名なので、なおさら、このような良質な番組には生き残ってほしいものです。皆さまもぜひ応援してください。