アメリカ報告13 ――センター外の青少年支援プログラム

 アティテューディナル・ヒーリング・センターの中で行われている青少年支援は、水曜日の夜に互い違いに行われている「喪失グループ(近親者を失った子どもたちのグループ)」と「病気グループ(子ども本人か家族が病気のグループ)」だけですが、センター外の支援活動も活発に行っています。

● 学校プロジェクト

 これが最も歴史の長いもので、10年以上続いているそうです。日本で言う中高生(11歳~18歳)に対して、プログラムを提供します。

 一つは、危機介入です。クラスの子どもが銃で撃たれた、などというときに、短期的に介入をします。子どもに対するサポートグループはもちろんのこと、教職員、保護者、学校の管理者、といった人たちに対してもサポートグループを行っていきます。

 もう一つは、学校の教育課程に組み込まれる定期的なグループです。うちの娘が通っている学校でも、高学年の子どもたちに対して昨年このグループを採用したそうです。一学期あるいは半年という期間、毎週グループを行っていきます。これは「総合学習」のような時間を使って行われるそうです。学校で日ごろから問題になっている人間関係のトラブルなどがあれば、この期間に対応することができます。

 センターとは直接関係ありませんが、センターに来るHIVの人から聞いたところ、HIV陽性の人が学校に行って子どもたちに話をする、というボランティアもさかんに行われているようです。このボランティアをするための2日間のトレーニングまであって、そこでは「教育現場にふさわしい話し方」などを学ぶそうなのですが、偏見によって苦しんでいる人たちの声を直接発してもらう、という手法が日本の学校現場に必要だとかねてから思ってきましたので、これは大変参考になります。

● conservation corps

「環境保護青年隊」とでも訳すのでしょうか、なかなかユニークなシステムです。高卒の資格あるいはGEDと呼ばれる「一般教育修了証書」(高卒よりも簡易なもの)をもらい、職業訓練も受けられる場所です。最低賃金をもらいながら自然保護の仕事をすると、証書取得に向けての教育が保障される、という仕組みになっています。学歴、最低賃金、仕事を通じてのスキル習得、と、3つが同時に得られる点は、「やり直しのきく社会」に向けて効果的な仕組みだと思います。

 ここにいる18~25歳の青年に対して、やはり週1回のグループを行うのがアティテューディナル・ヒーリング・センターのスタッフの役割です。それまでドロップアウトしていた多感な年頃の青年たちが「やり直し」を始めるわけですから、グループは大きな心の支えになるようです。

● juvenile hall

 一時保護所のようなところと言えばよいのでしょうか。18歳未満の少年非行・犯罪に対して、施設・グループホーム・里親のどこに行くかを決めるまで子どもたちが置かれる場所です。ですから、基本的には2ヶ月以内の滞在、ということになっているそうですが、常態として6~12ヶ月滞在している子どもが多いそうです。ここでもセンターのスタッフが週1回グループを行っています。

 もちろん、いずれのグループも、アティテューディナル・ヒーリングの原則に基づいて行われます。わざわざセンターに来る人たちを対象としているわけではないところが特徴ですので、センターの価値観を前提としないなど配慮がなされます。

 センター外の支援は11歳以上の子どもたちが中心ですが、センター内のグループは年齢制限がありませんので、5歳の子どもも来ています。