2011年3月のツイッターより、反響が大きかったものの抜粋です。
2011年03月01日(火)
拙著「対人関係療法でなおす 双極性障害」が重版になるとのお知らせをいただく。昨年の今頃熱心に書いていた本。対人関係療法の最もラディカルな修正版である対人関係・社会リズム療法が日本でも注目されてきたことは嬉しい。http://amzn.to/hGqSVQ
2011年03月02日(水)
与党がマニフェストを守れないことはもちろんよくないが、これを単に「約束は守れ」というレベルで議論している限り、政治は進歩しないと思う。マニフェスト政治を日本に定着させたければ、その立案プロセスを検証し、「問題と対策」をはっきりさせた方がよいと思う。
民主党の2005年マニフェストとその後のマニフェストはずいぶん性質が違う(先日「2005年の断絶」と呼んだ部分)。そもそも野党が作ったマニフェストには限界があるのか、2007年以降のマニフェストに無理があるのか、その「無理」はどこから来たのか、など論点は多い。
2011年03月04日(金)
参院議長発言。参院の「独自性」は、法案受け取りのタイミングよりも、本来の形で示してほしい。衆院と参院とどこが違うのかということだ。かつて参院の共生調査会から超党派でDV法が作られたのは一つの好例だと思う。解散もなく任期が6年もあるのだから自ずと役割があるはず。
昨日の読売新聞の記事「アティテューディナル・ヒーリング『評価』やめて心の平和得るとは」→ http://ow.ly/47Hz8 記事の威力はすごく、本日はAHの定番本「怖れを手放す」がアマゾンで100位台です。http://amzn.to/gPGkLc
2011年03月07日(月)
新聞の言葉遣いが気になる。「外交に疎い菅首相」「菅首相は外交を苦手とする」というが、正確には「外交が苦手と言われることが多い菅首相」あたりがせいぜいではないだろうか。同じく、前原氏のことを「外交のプロ」「外交通」などと書くが、根拠は何だろう。
これらを組み合わせて「菅直人首相は外交を苦手とするだけに、党内有数の『外交のプロ』の前原氏を失う痛手も大きく、政権は重大な局面を迎えることになる」と朝日新聞1面に書かれてしまうと、まるで真実のように聞こえる。新聞の一面記事は昔からこんなに決めつけ調だっただろうか。
今のような時代には、何が事実で、何がそうではないのか(人が下した評価なのか)、を峻別していく、地に足のついた姿勢がとても重要だと思う。それが、私たちを支える社会の地盤を築いていくということだと思っている。
2011年03月09日(水)
ケビン・メア氏の「沖縄はゆすりの名人」発言の講義に参加していた学生さんのインタビュー。驚くばかりの差別意識を、若く、「絆」を大切にする感性が是正していくのは、今後の可能性を感じさせる。http://bit.ly/fbodYA
2011年03月10日(木)
「主婦年金」の大臣間「引き継ぎ」問題は、私には、民主党政権が当初形ばかりの「政治主導」を目指したことの後遺症に見える。官僚に支配されることなく、かつ、官僚に責任感をもって働いてもらえる真の「政治主導」は、日本初の試みであり、真剣に考える価値のあるものだと思う。
2011年03月11日(金)
日弁連には少年事件に取り組む全国の弁護士から、裁判員裁判について「十分な審理がされず、少年事件の特徴をわかってもらえない」という声が届く。特に不満が強いのは、生育歴や発達障害など「犯罪の背景」の立証に時間をかけられないことだ。(朝日3面)
犯罪背景の検討もせずに、同様の問題の再発防止はできない。「この」社会の中で育った少年が凶悪犯罪を犯したという事実を共同体としてもっと直視しなければ、共同体自体が崩壊していくと思う。これはとても多くの要因が関わった重要な話であり、軽視してよい話とはとても思えない。
2011年03月13日(日)
急性のトラウマ反応を、その後の社会機能を低下させる長く苦しいPTSDへと移行させるかどうかを決める最大の因子は、人による精神的な支えの有無。精神的に孤立する人ができませんように。どんな人もありのままを受け入れられますように。
できるだけ「普段どおりのこと」を、「自分のやり方で」やることも、とても貴重。物理的な限界がある中でも、そういう要素を少しでも作り出せますように。
阪神淡路大震災のときの衝撃的な映像をテレビで見たことがトラウマ体験となってPTSDを発症した人もいる。今回も、繰り返し流される衝撃的な映像を見ると、それが心配。トラウマを受けやすい人は情報をラジオで得た方がよいかもしれない。
2011年03月14日(月)
日本トラウマティック・ストレス学会の大震災支援情報サイト http://bit.ly/hhrYLS
2011年03月17日(木)
日本認知療法学会も震災関係の「心のケア情報」のサイトを作りました。http://bit.ly/h3e7px
2011年03月20日(日)
AHを被災者支援に役立てられないのか、というご質問を複数いただく。震災ボランティアの方がAHを知っておくことは、燃え尽き防止、効果的な支援のためにものすごく役立つと思う。現地入りしない人も、それぞれの立場で、AHを意識して暮らすことが結果として支援になると思う。
2011年03月23日(水)
分離の姿勢ではなくつながりの姿勢を持ちたい。罪悪感(自意識)を手放し、温かいつながりの心をもって、自分にできることを小さなところからでも。罪悪感は、結果として、疲れや否認につながってしまう、分離の姿勢。相手の現実からもずれていく。
2011年03月29日(火)
精神科医としてのお願いです。震災によるトラウマからの回復につながる一つの因子が、「政府への信頼」であると言われています。いたずらに政府への不信感をあおることが、すでに不安定になっている人たちの大地を時に致命的に不安定にすることを知っていただきたいと思います。
もちろん政府を盲信しろと言っているわけではありませんし、大政翼賛会を作ろうと言っているわけではありません。どんな時期にも、政府のチェックは重要です。しかし、政府への不信感をあおることと、改善が必要な点を示して後押しすることは、正反対の意味を持ちます。
特に「有識者」の方たちは、政府の対応が不適切だと思うのであれば、ただ不信感を表現するのではなく、より適切な方法を建設的に提案すると同時に、その実現に向けて動いてほしいと思います。「自分が暮らしている社会は、まだ安心できる」と思えることが、多くの人の心を救うでしょう。
緊急事態においては、いつも以上に、「自分の発言の着地点」を意識する必要があると信じています。平時であれば「言いっぱなし」の批判も許される余裕があると思いますが、こんなときには、「信頼できる何か」を共有できるように、それぞれの叡智をいただきたいと思います。
もちろん、「信頼できる何か」は、決して気休めや隠蔽であってはならないと思います。動員できる科学的知識は全て動員すべきだと思います。そして、この状況に、絶望せず、投げ出さず、逃げず、真摯に向き合っている人の存在が目に見えることはとても大切だと思います。
なお、以上のことは、被災して困窮している方が「政府は信じられない」と言うこととは全く別の話です。トラウマを受けた人たちが、それぞれのプロセスの中で、政府への不信感や怒りを感じることは全く当然のことで、時に必要なことでもあります。