衆議院憲法調査会
(2003年4月17日)



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「憲法記念日を迎えるに当たって」(自由討論)



○中山会長
 次に、委員各位からの発言に入ります。
 御発言は、会長の指名に基づいて、所属会派と氏名を述べられてからお願いをいたします。
 それでは、ただいまから御発言をお願いしたいと存じます。
 御発言を希望される方は、お手元のネームプレートをお立てください。

○水島委員
 民主党の水島広子でございます。
 私も、今までいろいろと御発言をいただきました委員の皆様と、恐らく今の日本の大人たちまた子供たちに関する危機感という点では共有をしていると思います。
 確かに、普通に暮らしておりましても、あいさつをしないとか他者への思いやりがないとか他人の迷惑を顧みないで好き勝手なことをしているとか、そういう人たちが非常に多いということは私自身も同じく認識をしているところでございますけれども、ただ、私はそれが、日本国憲法や教育基本法が間違っているからというのではなくて、日本国憲法や教育基本法の理念がまだきっちりと定着していないことに大きな原因があると考えているものでございます。
 そして、ぜひこの調査会の委員の皆様にお願いを申し上げたいのは、もうそろそろ、自由がいいのか抑制がいいのかという、そのレベルの議論を終わりにして、自分の自由を大切にするとともに相手の自由を尊重する社会というのは何なのかという、もう一段高いレベルに達していただきたいということを、僣越ながら御意見を申し上げたいと思います。
 つまり、思いやりというものがどうやって生じるかというと、それは他者の人権を尊重するところから始まるわけでございまして、困っている人に対して共感をするから生じるわけでございます。
 そして、日本国憲法は公共の福祉というものを規定しているわけでございまして、公共の福祉に反しない限り個人の尊厳が尊重されるということであるわけですが、この公共の福祉というものは、私は、要するに他者の人権を侵害しないというふうに理解しております。
ですから、よく公共の福祉ということをかさに着ていろいろなことをおっしゃっている方を時々見かけるわけでございますけれども、これは公共の福祉というものがあるのではなくて、目の前にいる人の人権を侵害しないということを原点にして考えていかなければ公共の福祉などというものは語れないと思います。
 そんなふうに考えていきますと、今、日本の国にございます法律、制度の中には他者の人権をきちんと尊重できていないものがまだまだあると思います。
思いやりの精神に欠けているものがまだまだ残されていると思います。
 本日、この委員の皆様の名札を拝見してみますと、例えば選択的夫婦別姓制度に反対していらっしゃるお歴々の方たちの名札を拝見するわけでございますけれども、この制度というのも、私は思いやりの欠如に立った制度だと思います。
確かに、選択的別姓が認められていないことで困っている人は少数派かもしれませんけれども、その人たちの人権、その人たちの生活というものに配慮することができないでどうして公共の福祉が語れるのだろうかと思います。
 結局そうやって、少数派ではあっても、価値観を押しつけられて、また我慢を強いられている人たちがこの日本に存在しているということを、ぜひ委員の皆様には思いをはせていただきたいと思いますし、そういったところを地道に取り組んでいかない限り、恐らく今の日本、確かに他者への配慮がなさ過ぎます。
人の顔を見たらちゃんとあいさつをするとか、相手が迷惑そうだから電車の中では携帯を使わないとか、そういった当たり前の判断ができなくなってしまっている原点に、やはりいろいろな大義名分のもとに他者の人権というものを余りにも考えない、そんな大人社会の仕組みがあるのではないかと私は考えております。
 ですから、今必要なことは、まずは、憲法の理念に合わせて、そうやって日本の一つ一つの法律をいま一度チェックをして、改正が必要なものを改正していくということではないかと思いますし、そのような地道な努力を通して、他者の人権とは何か、他者を大切にするとは何か、どういうときに自分が譲らなければいけないのかということを子供たちも学んでいくのではないかと思います。
 憲法を変える、教育基本法を変えればすべてがうまくいくなどという、そんなウルトラCがあるわけはないというのが現場でいろいろな問題に取り組んでまいりました私の実感でございますので、こんな若輩の私が言いますのも僣越ではございますが、くれぐれも地道な努力を怠らずに、こうすればすべてがバラ色に変わるということはないわけですので、まずは、この日本国憲法に定められている当たり前の理念を一つ一つの法律に照らし合わせて、法改正の努力をしていただきたい。
 そして、ぜひきょうを機に、今まで選択的別姓に大反対という論陣を張ってこられた大先輩の皆様方には少し、日本の中におります少数派、本当に困っている、一人息子、一人娘で、もう十年も結婚できないで待っている人もいます、またどうしても仕事上不利益をこうむっている人もいます、そういう少数派の人たちの気持ちにぜひ思いをめぐらせていただければとお願いを申し上げまして、発言を終わらせていただきます。






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