労働と男女共同参画について(子どもの権利条約の精神を踏まえて)○水島委員 男女共同参画について発言をさせていただきたいと思います。 この前の小委員会での議論を総括いたしますと、日本国憲法が定めている働く権利を男女平等という観点から見ますと、まだまだ憲法が定めているところには達していないというのが大方の理解であったと思いますし、参考人もそのような意見表明をされておりました。 雇用機会均等法、男女共同参画社会基本法が制定されたとはいえ、まだまだこれから取り組まなければいけないことはたくさんございますので、それについてはまた国会の中で審議を続けてまいりたいと思っているところでございます。 どうしても、このように女性が働くということになりますと、必ず典型的な議論が起こってまいります。 この前の小委員会の中でも、典型的な意見が出ておりました。 つまり、女性が働くのは結構だけれども、家庭はどうなるのだ、子供はどうなるのだ、そういう意見でございます。 そんな意見を反映してか、憲法上に家庭を守る義務というのを規定すべきではないかなどというようなおもしろい意見も出たわけでございますけれども、日本は、御承知のように、子どもの権利条約を批准している国でございまして、憲法上これを遵守する義務を負っているわけでございますけれども、子供の権利という観点から見ますと、当然、子供が健やかに育つ環境を提供する義務を周りの大人たちは負っているということになるわけでございますから、今さらこれを憲法に書いてもらわなければわからないなどという情けないことをおっしゃらないで、ぜひ、子供の権利という観点から、親が働くあるいは地域の大人たちが働くという問題を考えていただきたいと思っております。 その上で、今は少子高齢化社会でございまして、子供にとって、周りの子供の数も少ないですけれども、身近な大人の数も少ないという、もうかなり大きな変化を社会は遂げているわけでございます。 親はもちろん、地域の大人たちが子供に対してもたらす影響というのは非常に重いと思っております。 そんな中、一人一人の大人たちが、これは男性だろうと女性だろうと、どれだけ自分の子供あるいは地域の子供たちと向き合う時間を持てるか、向き合うだけの精神的な余裕が持てるかということが、日本の子供たちを健康に育てていく上で、もうこれは至上命題だと思っておりますので、この女性が働くという問題、女性が働くと家庭はどうなるのだという、そんな卑近なレベルで考えるのではなくて、男性も女性ももっと家庭に帰れるように、自分の仕事と生活とをバランスさせられるように、そのための施策を講じていくのが国会の役割ではないかと思っておりますので、ぜひそこのところの考えを一度きちんと整理していただきたいと思っております。 データを見ますと、母親が子供と長時間一緒にいるからいい子が育つというのではなくて、一緒にいるときの母親がどれほど安定した精神状態でいるかということが子供の発育に直接の影響を及ぼすということがデータからもわかっておりますので、きちんとそれぞれの人の仕事と生活をバランスさせて、非常にバランスのとれた精神状態に置くということが男性にとっても女性にとっても極めて重要なことであるということをぜひ皆様の念頭に置いて議論を続けていただきたいと思っておりますし、少子高齢化社会の中、これは机上の空論ではなく、そのような現実に目を向けなければ日本は立ち行かないのだということをぜひ真剣に考えていただきたいと思っております。 これから、働く権利と男女平等ということを論じる際には、ぜひ、そこで子供がどのように育っているかということを観念論ではなく現実論としてとらえていただけますようにお願いを申し上げたいと思います。 また、この働く権利と男女平等ということで考えますと、もう一つ大きな問題がございまして、私もかつて法務委員会で取り上げたことがございますが、例えば交通事故などで子供が亡くなったときの逸失利益の算定方法、これが男女で異なっているという現実がございます。 これは、男性と女性の平均賃金が違いますので、その子があと何年生きていたら幾らお金を稼いだかということで考えますと、男女別に計算している限りどうしてもその値段が違ってくるということになります。 私にも娘と息子がおりますけれども、例えば残念なことにこの子たちが何らかの事故で命を落としたときに、この子たちの命の値段が違うとはとても思えない。 私の自分の家庭で見ればどうも娘の方がお金を稼ぎそうだとか、いろいろそういうこともあるわけですけれども。 そうやって考えますと、逸失利益が男女で異なるというのは憲法が定めている性別による差別にもしかしたら当たるのではないか、ちょっと素人ながらそのようなことを考えておりまして、これは、働く権利を男女ともに保障するということと、さらに現状に基づいて男女の逸失利益を算定するということ、これはまた違う話として論じてもよいのではないかと思います。 私が質問をしましたときの法務大臣の答弁は、まずは男女の賃金格差をなくすことが先かと存じますという極めて冷たい答弁でございましたけれども、これは、憲法が定めている男女平等という観点からもぜひ委員の皆様にはお考えをいただきたいと最後にお願いをいたしまして、以上、発言とさせていただきます。 |