青少年問題特別委員会

(2005年7月26日)

質問バックナンバー|HOME

青少年問題に関する参考人質疑




(全文掲載はこちらをご覧ください。)

 
○水島委員
 民主党の水島広子でございます。
 参考人の皆様、本日は、貴重なお時間をいただき、貴重なお話を聞かせていただきまして、本当にありがとうございます。
 また、今、子供たちが非常に貧困な環境で育たなければならないこの日本の社会にあって、多くの方たちが胸を痛めながらも、どうしたらいいかわからない。
そんな中で、いろいろと好き勝手なことを言う方たちもいらっしゃって、社会全体が混乱して右往左往してしまっているという中、私は、本当に地に足の着いた活動を現場でされている方たちの声にこそ真実があると思っておりますし、私自身も、精神科の医者として、子供たちの話を聞きながら、本当に多くのことを学ばせていただきました。
 そんな中で、きょうは本当に現場からのお話をいただけているということ、また、そのような取り組みを日ごろからしてくださっているということ、また、先ほど牟田さんがおっしゃいましたように、子供は自分で解決する力があるということを信じて待ちの姿勢で接してくださっているということ、こういったことすべてを含めて、まずは感謝を申し上げたいと思います。

 その上で質問をさせていただきたいと思いますけれども、まず、牟田参考人に質問をさせていただきたいんですが、先ほど、ちょうど坪井参考人のお話の中で、子供の話をこんなに一生懸命聞く大人がいるとは思わなかった、一緒に苦しみ考えてくれる大人の存在ということが子供には一番の救いであるというお話があったわけですけれども、そのようなことで、子供の話の受けとめを一生懸命やってくださっているのがチャイルドラインということであると思います。

 私もチャイルドライン支援議員連盟の事務局をさせていただきまして、本当にできるだけ応援をさせていただきたいと思っているところでございますけれども、せっかく、きょう、こうして青少年問題特別委員会にいらしていただきましたので、ぜひ、チャイルドラインの意義というものをここで改めてお話しいただきたいと思うんです。
やはり、価値観を押しつけることもなく、お説教をすることもなく、ただ聞く、それを電話で聞くということ、これについては、必要なんだろうなと思う人がいる一方で、本当にそれで何か効果があるんだろうかと思っている方もいらっしゃると思いますので、まず、牟田参考人から、子供の声をただ聞くということの意義について、一言御説明をいただけますでしょうか。

○牟田参考人
 意義といいましょうか、私は、社会全体、人の話を聞くということがどうも余りうまくなくなったんじゃないかなというふうに思うんですね。
そういう意味で、人の話を聞くということはとても重要だというふうに思います。
 そういう意味で、子供にとって、この世の中で自分のことをしっかり認めてくれる、受けとめてくれる人がいるんだという安心を上げたいというのがまず一つございます。その辺はかなり大きいと思うんですね。

 それと、先ほど申し上げたコミュニケーションの問題で、自分が思っていることをちゃんと話せない、無言電話なんというのが非常に多いですね。それは、言おうと思うんだけれどもどう言ったらいいのかわからないということがあったり、NHKで「しゃべり場」とかというのをやっていますけれども、あれを拝見していると、やはり感覚的な表現が多くて、何かロジカルじゃないんですよね。だから、今、論理という問題が子供にとってどういう状態にあるのかと考えると、非常に私は論理が貧困になっているような気がしてなりません。

 そういう意味で、自分が思うことをしゃべることができたときに子供というのは一つの自信を持てるんじゃないかな、そういう効果はあるんじゃないかなというふうに思います。
 それで、こういう活動が全国に広がるとは私も思ってもいなかったです。
広げたいとは思ったけれども、広がるとは思わなかった。だけれども広がったということは、皆さんお一人お一人の中で、そういうコミュニケーションをする、そして、しかもそれが子供と大人のコミュニケーションであるということに対して、ああコミュニケーションが下手になっているなとか、なかったなとかという思いがおありになるから広がったんじゃないかな。
 快適なことというか楽なことというか、おもしろい、おかしいことを追い求めて生活する中で欠落していく部分が人間の生活の中にあるような気がしてなりませんけれども、そういう部分を何か大人と子供が共有できる、そういう場ではないかなというふうに考えております。

 それと、ついでに申し上げますけれども、先進国の中だと思いますけれども、国が子供に使う交付金の割合は日本が最低なんですね。
文科省から発表になったのを皆さんごらんいただいたと思いますが、日本が最低だということは、いかに子供に対して皆さんが気を使っていただけなかったかということだと思います。
ですから、いろいろな事業をやりたい、こういうことをやりたい、ああいうことをやりたいと思っていたって、それを厚労省に行ったり文科省に行ってお願いしても、いやそういう予算はとれませんということで終わっちゃう場合が多いですね。これをひとつ皆さんよろしく。子供にもっとお金を使いましょうよ。
 失礼いたしました。

○水島委員
 ありがとうございます。本当におっしゃるとおりだと思います。
 チャイルドラインも、国際比較で見ますと、きちんと公費が投入されていて二十四時間フリーダイヤルで受けられる国ほど子供の声をきちんと拾えているというようなデータもチャイルドラインの方から見せていただきまして、やはりまだまだチャイルドラインに対しては支援すべき点があるんじゃないかと思っております。

 一つは、今、子供のことにお金を使いましょうよということの一言に尽きるとも言えるんですが、もしも具体的に、政治、行政に対して、チャイルドラインとしてもっとこういう支援をしてほしいという御要望がありましたら、お聞かせいただきたい。

 あと、先ほどからのずっと牟田さんのお話を伺っていますと、やはりもっと子供たちが安全に試行錯誤できる社会を大人たちがつくっていかなきゃいけないということなのかなと思って伺っていたんです。そのためには地域の力というのが何といっても欠かせないわけなんですけれども、今はなかなか、児童相談所の人員配置を見ましてもパンク状態で、それをずっと国会で言っていても、国会が非力なのか関心を持つ議員が少ないのか、本当に時間だけがたっていくというような状況で、その一方では、チャイルドラインですとか、また、牟田さんが世田谷でやってくださっているような、そういう民間の力というのも明らかに伸びてきている。
そんな中での官民の連携のあり方、そのあたり、今の地域にどの程度の力があるかということも含めまして、ちょっと展望を述べていただければと思います。
 いろいろ盛りだくさんで申しわけございません。

○牟田参考人
 今おっしゃったとおりで、児相、児童相談所というのがもうパンク状態にあります。ただ、なのに、いわゆる行政が動いていただいていないというか、新しい方向を模索していただいているとはどうも思えないんですね。

 私は、児相そのものの専門性がどうも低いような気がしてならないんです。人事でもって関係ない方がそこに配置される場合もあったりなんかして、やはり児相というのは、そういう意味ではかなり高い専門性を持っていなくちゃならないし、それから人員だって足らないし、だから私は、子供専用のソーシャルワーカー制度というのをつくっていただいたらどうかなというふうに思うんです。

 つまり、それは、かなりの学習をしていただくというか研修をしていただく。最低二年ぐらいの研修を経て、まあ資格を取るのがいいのかどうかわかりませんけれども、そういう方々が地域に散っていただいて、それぞれの拠点で活躍していただく。そしてまた、そういう方々が児相に配置されていく。

 これは、国がそういう制度をつくっておやりいただければ、その専門性も高まるし、そして、現実の子供のニーズというものを読み取っていく、またそれを提言していくみたいな状況が生まれるんじゃないかな。その辺がちょっと弱いんじゃないかな、ちょっとじゃない、大分弱いんじゃないかなと私は思っておりますけれども、ひとつ先生方、よろしくお願いいたします。

○水島委員
 貴重な御提言をありがとうございました。

 それでは、時間が限られていますので、次に坪井参考人に伺いたいと思いますけれども、私も、子供たちとかかわっていく上で一番大切なのは愛情ともう一つ一貫性だと思っておりまして、やはり坪井さんがそれだけ子供たちに信頼されるというのも、常に一貫性を持って、一貫したメッセージを持ってかかわっていらっしゃるからだと思っております。
 そのような観点から見ますと、最近の政策決定の姿勢というのは結構ちぐはぐで、一貫性に欠けているなと思うんです。虐待の防止というのは厚生労働省を中心に結構熱心に取り組んでくださっているんですけれども、その一方で、今度は健全育成と称して何かを押しつけてみたり少年法の改正をしてみたりと。

 今、実際に少年院に収容されている子供たちの大部分が虐待を受けた経験がある、あるいは本当に人間として扱ってもらえないような環境で育ってきた、そのような状況を見ますと、本来やっていくべきことというのは、虐待防止も、そうやって既に今問題を起こしてしまった子供たちをまた支えて育ち直していただくという、その中でも本来問われている思想というのは私は一貫したものであるべきだと思っておりまして、その方向が全く違う方向を向いてしまっているために、こんなに混乱して、また子供たちに悪い影響が及んでしまうというようなことなのだと思います。
 もうお金も時間も限られているわけですから、そこはもう一つ一貫した思想を持ってきちんと取り組んで、それでようやく間に合うかどうかというところではないかと思っていますので、非常にじくじたる思いでいるわけです。

 また、よく子供の規範意識と申しますけれども、やはり大人が子供に対して愛情と一貫性を持って接していく中で、子供の中に規範意識なるものが生まれていくものだというふうに私は思っておりますので、それは全く違う議論ではないというふうに思うわけですけれども、今現場にいらっしゃって子供たちと日々接しておられて、そして、まさに今全く足りなかった部分をカリヨン子どもセンターとしてつくっていただいて、また御活動されている中で、本当にこのあたりの子供関連の政治、行政を貫く一貫性の必要性といいますか、そのあたりについてお話しいただけますでしょうか。

○坪井参考人
 おっしゃるとおりで、私からつけ足すことがないほどおっしゃっていただいていると思います。

 現場の声というものをもし受けとめていただけるならば、子供たちに、こういう子供たちとこういう子供たちと全然違う子供たちがいるわけではないということをおわかりいただけると思います。
虐待をされている子供たちも少年犯罪を率いる子供たちも、しかしエリートとなって頑張っている子供たちも、決して別の人間たちではない。そこのところをきちっと見ていただきたい。子供施策を場当たり的に、そこの子供たちだけに焦点を当てて、そして、そこだけ何とかすれば何とかなるんだろうというような発想法でやっていただきたくないというふうに思います。

 やはり子供をどう見るかということが、何度も申しますけれども一番大切なことで、そのためには、子どもの権利条約が批准されているこの国で、きちっと子供たちが一人の人間だと、その尊厳を守ることこそ子供の権利保障として必要であるというそこの根本をきちっと押さえていただく、法制度の中でもきちっとそこを押さえていただきたい。

 健全育成というような言葉が出てくるたびに私は非常に嫌な思いをします。大人たちが子供たちを自分たちよりも下にある存在と見て、自分たちが何とかしてやれる、そういうふうに思い上がっているというふうに思います。
 もちろん子供たちは、情報も必要ですし、助言も必要ですし、転んだら差し伸べる手も必要です。自分を守る力もありません。
ですから、大人たちはいっぱいしてあげなければいけないことがありますが、それは、大人たちが子供たちより偉いからではなくて、この社会をともに支える仲間としてやれることはやる。そして、子供たちからいっぱいエネルギーや希望をもらっているということを忘れずに、この社会をつくっていくんだという、そのことを忘れずにやっていただきたい。

 そして、何としても場当たり的な、やはり政治家の方には、十年後、二十年後の日本の社会を考えて、今いる子供たちがこのままだったら日本の社会は本当に大変なことになるという危機感を持って子供のことを考えていただきたい、そのことをぜひともお願いしたいと思います。

○水島委員
 ありがとうございます。
 時間がいよいよ限られてまいりましたけれども、次に、藤田参考人に一言質問させていただきたいのです。

 やはり、若年の雇用のことに取り組んでおりますと、どうしても教育現場と実際の経済界との連携ということが非常に重要になってきまして、インターンシップをするにしても、また職業訓練をするにしても、その場がどうしても必要になるということ。これが、地域でいろいろ取り組んでいる方たちにとっていつも頭痛の種ということなんですけれども、そのあたり、高専ならでは、特に、強い連携があって生かしていけるんだというようなことがもしございましたら、御紹介いただきたいと思います。

○藤田参考人
 まさに、今のお話でございますが、民にできることは民にという、総理大臣も申しておりますが、私どもやはり国立高専を初め、都立高専も官でございます、ある意味では。官によってできることは、やはり法律に基づいて、我々の場合は教育基本法に基づいて、そのとおりに教育を施行するということでございます。

 今の御質問でございますが、実は、特に高等専門学校に関しましては、地域の要望というのは非常に強うございます。私どもの都立の高専では、三十七年に開学いたしまして四十三年になりますか、そういう伝統を持っておりまして、いろいろな意味で、教育の面でも、それから学校運営に関しましてもいろいろな助言をいただいております。

 例を申しますと、大田区の中小企業の同友会というのがございますが、そこで、中小企業の経営者の方で、功成り名をなしていろいろな苦労をされた方たちを先生にお迎えいたしまして、学生諸君にじかに公開講座的に授業をやってもらい、学生たちが感銘しております。
 そういう意味で、むしろ、今の御質問に対しては、私どもの高専は地域密着型の高等教育機関であるということでございます。

 お時間があれなので、これでよろしいでしょうか。

○水島委員
 ありがとうございました。
 中西参考人に質問する時間がなくなってしまったんですけれども、本当に貴重なお話をいただきまして、ありがとうございました。






 
質問バックナンバー|HOME