青少年問題特別委員会
(2003年5月13日)


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「出会い系サイト規制法案」について




○青山委員長
 次に、水島広子さん。

○水島委員
 民主党の水島広子でございます。
 きょうは、専ら谷垣大臣に質問をさせていただきたいと思いますので、子供たちのために、どうぞよろしくお願い申し上げます。
 まず、大臣にお伺いいたしますが、今回、この法案をつくるに当たりまして、実際に出会い系サイトに書き込む子供たちの実態を調査されましたでしょうか。

○谷垣国務大臣
 これは、かなり調査をしておりまして、この法案の策定に当たりましては、少年有害環境対策研究会というのを組織していただいて、「いわゆる「出会い系サイト」の法的規制の在り方について(中間検討案)」というのを公表していただいたんですが、この際に、国民の意見を幅広く募集いたしました。
 それから、警察庁等が主催しまして、出会い系サイト問題に関するシンポジウムを開催しまして、こういう機会を通じて、児童心理の専門家や児童買春の防止に取り組むNGOからもいろいろ実情を伺った。
意見の表明もなされた。
 それから、警察部内でも、こういう被害児童の保護に携わった少年補導職員等がおりまして、相当経験が蓄積されておりますので、現場の実態を聞いて、把握に努めたということがございます。
 それで、個々の児童買春事件で、被害児童が、援助交際というか、それの勧誘を行うに至った原因とか背景というのは、先ほども丸谷委員の御質問に、東南アジア等で行われている貧困の問題とちょっと違うのではないかというようなことも申し上げたわけですが、背景はさまざまで、必ずしもまだ実態が十分にわかっているわけでもないという面もございますけれども、いろいろ勉強してみますと、根本は、児童の性の商品化という社会の風潮と言っていいんでしょうか、そういう流れがある。
それから、児童にも、なぜそういうことをしてはいけないのかというのがよくわからなくなっている、抽象的に言えば規範意識の低下ということになるんだろう、そんなふうに思っております。
 そこで、これまでも、いろいろな取り締まりとか広報啓発には努めてきたところでありますけれども、出会い系サイトを利用した児童の犯罪被害が急増しておりますので、こういう法体系をつくった。
かなりいろいろ勉強させていただいたつもりでございます。

○水島委員
 今の御答弁に関して、いろいろお伺いしたいんですけれども、まずお伺いしたいのは、今回、警察庁によって示されたものは、一般の方たちからの意見、法的規制が必要であるかどうかというようなことに関するアンケートについてはよく御説明をいただきましたけれども、今大臣がおっしゃったような、例えば、少年補導職員の方たちの実体験であるとか、あるいは実際にそういう援助交際の問題にかかわってこられた専門の方たちの実体験、一体、その子たちには何が欠けていて、どういうケアをしたところ、どういうふうにまた健康を取り戻したかというような、そのようなデータの開陳がなかったと思うんですけれども、そのようなものをお持ちなんでしょうか。
要するに、学術論文が書けるようなデータというのはお持ちなんでしょうか。
大臣、お願いします。

○谷垣国務大臣
 学術論文とおっしゃられますとうまくお答えができるかどうかわかりませんが、先ほど申しましたように、こういう問題で、少年係と申しますか、指導体験というか補導体験、実例がかなり積み重なっておりまして、中でも、警察部内でも研修等は相当積み重ねておりますので、それは学術論文になるのかどうかはわかりませんけれども、相当経験の蓄積はあるというふうに考えております。

○水島委員
 具体的に、その研修というのは、子供たちにこういうことを教えて、こういうところに配慮してというような、そうやってかなりマニュアル化された研修という意味でおっしゃっているんでしょうか。

○瀬川政府参考人
 これは、全国の少年補導に携わっております少年補導職員その他、そういった業務に従事している者たちが、いろいろな機会で意見交換会あるいは研修会等を実施しております。
その中で、先生御指摘のような学術論文というものではありませんけれども、自分たちが取り扱った子供たちについて、こういうことをして立ち直りを図ることができたとか、児童のこういったところが問題でこういう行動に走っているんだとかいう、いろいろな意見交換をしておるところでございます。
 学術論文と言えるかどうかはあれですけれども、警察部内のいわゆる機関誌的な、警察職員の間での雑誌等もありますけれども、そういったところにもそういう経験が随分発表されておりますし、また、科学警察研究所がございますが、そういったところにおきましても、児童の問題行動に対する研究等が行われているところでございます。

○水島委員
 そこから結論として言えることは何なんでしょうか。
ついでにお答えいただければと思うんですけれども。

○瀬川政府参考人
 これはさまざまな要因が重なり合っているということになろうかと思います。
家庭の問題あるいは学校教育等の問題もある。
それから、先ほど大臣が申しました社会全体の風潮というものがある。
そういったもろもろの影響を受けて、最終的にはといいますか、児童にはそれが児童自身の規範意識の低下としてはね返ってきている、こういう状況が見られるということでございます。
 私ども、一生懸命そういった問題についての研究といいますか、議論、検討をしておりますけれども、こうこうこうだからこうだ、ここをこうすればこうなるというふうな形での結論というのは、なかなかこれは出しにくい問題であります。
 しかし、そういった社会全体の問題なり、大人側の意識の問題なり、それから家庭、学校、教育の問題なり、そういったことは非常に重要なことである、そういったものが基本的に問題の根本にあるということは十分認識をしております。
 そういった意味で、本法律案におきましても、国、地方公共団体の責務、あるいは児童がこういった危険な、犯罪に巻き込まれるようなサイトに簡単にアクセスできるようなものを提供している事業者の方々に対して、児童をそういうものに巻き込ませないような義務をいろいろお願いする、こういう法律案を考えたところでございます。

○水島委員
 また大臣にお伺いしたいんですけれども、私は医者でございますので、目の前に問題を抱えた人がいらっしゃるときに、なぜそういうことになっているのかということを、まず現状をきちんと認識した上で、こうすればよくなるとわかっていることをするというのが自分の責任だと思っておりますので、そのために、何をすればよくなるかということをいろいろなデータを積み重ねて研究をしていく。
 大臣も、病気になられたときに、何か悪そうだからとりあえずこんな薬でも飲んでみたらどうだろうか、アンケート調査をしたところ、谷垣大臣にこの薬を飲ませるべきだという人が八割ぐらいいるから、とりあえず飲ませてみようといって、全く変な薬を飲まされても困ると思うわけです。
 今回のこの法案をつくるに当たって、私、一般人のアンケートを前面に出してこられているという手法に非常に疑問を持っております。
当事者の方たちの声を集めたというのならまだわかります。
出会い系サイトに書き込む子供たちに直接アンケートをして、自分たちは何が寂しいんだとか、こういう知識が欲しいんだとか、そういうことから法案をつくるというのなら、大変よく理解できる、いい姿勢だと思うんですが、当事者以外の方たちのアンケートで法律がつくられていくというのは、実は差別の問題などを考えてみますと、かなり危険な手法なのではないかと思うんですけれども、一般論としてで結構ですから、大臣の御見解をいただけますでしょうか。

○谷垣国務大臣
 今、水島さんが御職業が医者だからというふうにおっしゃって、それはある意味では警察もよく似ているんですね。
目の前に犯罪が多発するというか、そういう危険性があるときに、どうやったらそれを抑止あるいは制圧できるか、そのために有効な手法は何だというふうに我々は考えるわけでございます。
 ただ、今一般人の意見だけでは危険だとおっしゃった、それは確かにそういう面もあると思いますが、実は、一般人の意見も犯罪においてはなかなか大事でございまして、やはり社会の危険感をどう解消していくかというのも警察にとっては、治安維持にとっては大事なことでございますから、それも無視はできないと思います。
 一方、今実際に出会い系サイトを使っている人たちにアンケート調査をするなどとおっしゃいましたけれども、患者の場合と違いまして、これは、どちらかというと、やや、つまり、今回はある意味での犯罪化が行われるわけであります。
率直に申しまして、そういうところをアンケートの手法をとっていくというのはなかなか、例えば暴力団対策をつくるときに、暴力団にアンケート調査をして、なぜあなたはこういうことをやるのかというのも、なかなかこれは簡単でない。
ちょっと例は適切ではないかもしれませんけれども、そういうような面もあるわけでございます。
 ですから、現実に、警察としては、そういう被害に遭った児童に接触をした、補導経験とか、そういうようなものを、経験にあるものをできるだけ法律化してくるという作業が、手順が必要なんだろうと思います。

○水島委員
 もし大臣が今の御答弁を本気でおっしゃっているんだとしたら、ぜひもう少し、この法案をつくる前にせめて私ぐらいには御相談いただきたかったなと思うのです。
 実際に精神科ですとかそういうところに行きますと、出会い系云々は別としましても、性的逸脱行為を繰り返す子供というのは今たくさんいます。
ですから、何も犯罪者のところで見つけようとしなくても、そういう子供たちと日々接触している専門家はたくさんいますので、そんなところから、例えば性的逸脱体験といろいろな心理的な指標との関係、あるいはほかの合併症との関係、そういったもののデータもございますので、何も警察で犯罪者にアンケートをしろと言っているわけではなくて、そういうところからぜひこの御研究の枠を広げていただきたかったなと思います。
 今、私の疑問意識をちょっと申し上げたわけでございますけれども、それはそれで、警察の方たちもきっと、現場でいろいろかかわっていらっしゃって実態はよく御存じだということでございました。
 その上でお伺いしますけれども、よくこの法案の審議の中で普通の子供という言葉が出てまいります。
実際に、大臣の感覚としまして、出会い系サイトに、先ほどここの委員会で口にするのもはばかられるような表現を書き込んでいる、そういう子供たちは普通の子供なんでしょうか。
 例えば、私、大臣にお嬢さんがいらっしゃるかどうかは存じませんけれども、自分のうちに普通にいるような子供が普通に書き込むようなことなのか。
例えば今、子供で茶髪にしたり金髪にしたりしている子供が多いですけれども、うちの子も茶髪にするかもしれないなというような意識は多くの親が持っているかもしれませんけれども、うちの子供も出会い系にそういうみだらな書き込みをするだろうなと多くの親が思っているでしょうか。
そういう意味で普通の子供なんでしょうか。

○谷垣国務大臣
 私も娘が二人おりまして、出会い系サイトに書き込むようなことはあってほしくないとは思っておりますが、こういう犯罪の問題を議論しますときは、なかなか難しいんですね。
 難しいというのは、犯罪というのは自分とは無縁のことだと思っておられる方が、やはりアンケートみたいなのをとれば大部分だろうと思いますが、警察のようなところで仕事をしておりますと、私は国家公安委員長で直接警察ではございませんが、警察を管理する立場で仕事をしておりますと、やはり犯罪というのは日々起こっておりまして、人間存在と不可分とまで言っては言い過ぎかもしれませんが、昔から申しますように、「浜の真砂は尽きるとも世に盗人の種は尽きまじ」という言葉がございますけれども、普通か普通でないかというのは難しいですね、今の水島さんのお問いかけは。
だから、我々の生活の周りにあるものだというふうに私は思っております。

○水島委員
 実際に、私が茶髪にしているような中学生、高校生にちょっと聞いてみたところでは、やはり援助交際をする子というのはちょっと違うと。
友達が茶髪にすれば自分も茶髪にする、友達が、今履くのかどうかわからないですけれども、厚底靴を履けば自分も履く、友達がパンツが見えそうなスカートをはけば自分もはく、そのくらいまでなんですって。
援交をしている子というのはいるけれども、やはりちょっと病んでいるよね、やめた方がいいよねというようなのが、どうやら、私がいろいろ地元で聞き回ったところの今の子供たちの実態のようで、ちゃんと押さえるところは押さえているんだなと私は思いましたけれども、恐らくそんなところが現状なんじゃないかなと思います。
 私は、その書き込みをするような子が普通じゃないといって差別化しようとしているわけではなくて、やはりそうやって書き込みをするような子というのは、悪いと言えばやめるようなレベルではなくて、それなりに心のいろいろな病んだ部分を抱えていて、何らかの援助を求めているからそのような、自分を粗末にするような行動をとるんだろうというふうに考えるのが妥当だと思います。
 私は、そのようにこの問題をとらえておりまして、実際問題、出会い系サイトの問題は日本で始まったばかりだということでございますけれども、これは昔から、例えば町で売春の勧誘をしている売春婦の方たちの中には、性的虐待の被害者であった方が非常に多いと言われておりますし、実際に私自身が実地の体験をした中でも、援助交際を求めたり性的な逸脱行為を繰り返したりする女の子たちは、みずからが性的虐待の被害者としての経験を持つケースが決して少なくはございません。
 自分が実の親から、あるいは義理の父親から性的な虐待を受けた、その汚い自分を消したくて、あるいは一度何か間違ってやられてしまった、その汚い記憶を消したくて、あるいは自分はしょせんそんな汚い人間なんだという思いからみずからを売る行為を繰り返す、そのような子供たちが決して少なくはございません。
専門的にも、性的虐待の被害と性的逸脱行為にはかなりの相関があると考えられているのが定説でございます。
 例えば、家庭内で性的虐待を受けたような場合、その晩、あるいはしばらく、その後、非常に子供は悩みます。
その記憶を消そうとしてというような動機で出会い系サイトに、こんな私、買ってくださいみたいに書き込むということは十分あることなんです。
そのような場合に書き込みをしたことであっても、本法案の六条による加罰対象となるんでしょうか。

○谷垣国務大臣
 それはこの法律上、要件を満たせばなるわけでございまして、委員のおっしゃったようなことは、後はいわば情状の問題ということに法律的にも、これはもちろん罰金刑でございますから、少年の場合にはすぐに少年法の適用になりますのであれですが、刑事法的にいえば情状の問題ということになるのかなと思います。

○水島委員
 私は、子どもの権利条約からも、またストックホルム宣言の精神からも、被虐待体験を持つ子供たちの傷をいやして、また社会的再統合を図っていく、その責任が社会にあると思っておりますけれども、つまり、虐待の被害者の子供たちが、再び社会の一員として、他者への信頼を取り戻して、また健康に生きていこうとさせていく、そのような責任が大人側にあると思っておりますけれども、性的虐待の被害者である女の子を、そのことがほとんど直接のきっかけとなって起こったその書き込みという行為によって罰するというのは、虐待後の子供に対する社会全体の取り組みとしていかがなものなんでしょうか。

○谷垣国務大臣
 法体系のつくり方ですけれども、私は、この委員会で御答弁申し上げていることは、やはり現状を見ると、非常に子供たちを、児童買春のみならず、強盗あるいは強姦とか強制わいせつのような、場合によっては殺人に至ることがあるかもしれません。
そういう非常に悲惨な犯罪に引き込んでいく、いわばきっかけとなっていることが非常に多いことがわかってきた。
だからこれを何とか抑えたい、何人といえどもそういう行為はしてはいけないという一般的な体系でつくってあります。
 そこで、委員がおっしゃるように、今のような過去のいわゆるトラウマというんでしょうか、そういうものを抱えてこういう行動に走る子供たちを罰するというのは矛盾じゃないか、それはストックホルム宣言にも反するのじゃないかとおっしゃったわけですが、これは児童買春、児童ポルノ法の場合も、先ほど丸谷委員もおっしゃいましたけれども、あれも性的搾取に遭った者は被害者であるという考え方でつくった法律でありますけれども、法の立て方としては、子供であっても、相手の児童を性的に搾取する者は処罰を受けるという体系になっております。
 ただ、その後もちろん、日本の法体系では、それは直ちにいわゆる裁判所、刑事裁判所における手続に移行しないで、少年法あるいは児童福祉法の体系に行くこともありますが、そういう形で子供としての保護をしていこうという体系になっているわけでありまして、この法律もそういうことでございます。
 それで、委員のおっしゃるような問題は、より大きな犯罪の抑止といいますか、そういう面から考えていかなければならないことだと思いますけれども、こういう子供に対して危険な場をつくるということを刑罰、刑事体系によって防いでいく必要は、私は依然として残るのではないかと思っております。

○水島委員
 先ほど大臣は、社会の危険感をどう解消していくかも大事だということで、また今もそのような御趣旨での、犯罪抑止という点からの御答弁をいただいたわけでございますけれども、そんな中、先ほど言いましたように、本当に個々の子供たちが一体どういう事情でそうなっていて、その子供たちを本当にまた再び、再びというか初めてかもしれませんが、人を信頼できるような子供たちにしていくにはどうしたらよいかという、本当に個別の子供たちにとって決してマイナスにならないような包括的な取り組みをぜひ進めていただきたいと、これは本当に心からお願いを申し上げるところでございます。
 谷垣大臣もよくわかっていらっしゃるとは思いますけれども、ぜひ、全体としてそのような機能が担保できるようにしていただきたい。
そして、関係の方たちに必ずそういうケースがあるということを周知徹底していただきたいとお願い申し上げます。
 次に、だんだん時間がなくなってきましたので、法案の中身について少しお伺いしたいと思います。
 この法案を読んでみますと、七条と八条が実効性を持てば六条は意味がなくなるというようなつくりになっていると思うんですけれども、なぜ、まず七条、八条だけの法案をつくられなかったのか。
また、六条違反の数を減らすということが結果としては七条、八条の実効性を証明することにもなると思いますけれども、そういう御認識がありますでしょうか。

○谷垣国務大臣
 児童、子供がこういう、適切な表現かどうかわかりませんが、犯罪が非常に多くできるような場に引き込まれることを防ぐ手法として、七条、八条というのは非常に大事な規定だと思うわけです。
 それで、しかし、完全な事業者規制が行われれば、児童がインターネット異性紹介事業を利用することは不可能となって利用者規制は不要だという考え方も成り立つんじゃないかというお立場だったと思うんですが、現在のところ、インターネット上でだれもが容易に確実に相手方の本人確認をする方法は普及していないんですね。
それで、企業や個人といった大小さまざまなインターネット異性紹介事業者が一律に実行できて、かつ、効果が期待できる措置というのは、利用者の自主申告に基づく年齢確認措置にとどまらざるを得ないのが現状だろうと思います。
 こういう現状では、いわゆる出会い系サイトを利用して子供たちが危険にさらされるという状況を完全に防止することまで期待はできないのではないか。
だから、児童の健全な育成に障害を及ぼす行為を防いでいくためには、七条、八条では足らないので、やはり六条のような規定が、補完的と言うとちょっと言葉は悪いかと思いますが、総合してやっていく、不正誘引を禁じて総合的な施策としてやっていくということではないかな、こういうふうに考えてこの法律をつくった次第です。

○水島委員
 補完的という言葉をいただきましたので、大臣も本来は七条、八条の方をしっかりやっていくべきだというお考えなのかなと理解をいたしましたけれども、ぜひ七条、八条の実効性をきちんと担保していけるように、技術は日進月歩でございますけれども、いろいろなお取り組みをいただけますようにお願い申し上げます。
 また、この七条で、出会い系サイトを子供たちが使ってはいけないというだけではなくて、使うことの危険性を、実際にそれがきっかけになって殺人事件が起こっていますなどというような情報をもって示すべきではないかと思いまして、私は、これは教育的な法案にならなければ意味がないと思っているんですけれども、ここでそういう規定を盛り込む。
 実際に自分が思春期ぐらいの子供の立場に立って考えてみますと、いけないと言われてやらないというよりは、本当に危ないですよと言われた方が説得力もありますし、また、恐らく大臣も私も、怒られるからやらないという人間を育てるのではなくて、ちゃんと、危ないことだから、いけないとわかっていることだからやらない、他人を傷つけることだからやらない、そういうことが自分の頭で理解できるような人間を育てていきたいと私は思っています。
多分大臣も、単にこれは罰せられるからやらないんだと言っている人間ではなくて、ちゃんとその内容を理解した上でやらない人間を育てることの方が正しいのではないか、多分それは同意していただけるんじゃないかと思うのです。
 そのように考えますと、ここは罰則というだけではなくて、本当に限りなく教育的な色彩を強めるべきだと思っておりますが、七条にそのような情報を提供する義務も同時に盛り込むということは考えられないんでしょうか。

○谷垣国務大臣
 今おっしゃった点は他方の問題と関連してまいりまして、インターネットというのは今まだ完成し切ったメディアにはなっておりませんで、生成途上のメディアであるということから、ある意味では、事業者規制というのも過剰なものであってはならないということがあるんだろうと思います。
 そういう意味で、今回の規定はすべての事業者が実行可能な内容で、警察は、それに違反したものに対しては取り締まりをやっていく、こういう考えでつくっておりまして、具体的にどういうことを七条の内容としてやってもらうかということは、今後の広報啓発とか、あるいは総務省などの関係省庁の協力もいただいて、コンテンツ事業者とかプロバイダー等の業界団体を通じてこの法律の内容、物の考え方というものを周知徹底、ともに勉強していくということかもしれませんが、そういう中で、今水島さんがおっしゃったような実効性を確保できる方法を探していくのかな、こう思います。

○水島委員
 やや消極的な御答弁なんですけれども、罰則よりも教育だというところだけは大臣も賛成していただけますか。

○谷垣国務大臣
 罰則というか刑罰は非常に劇薬ですから、できれば刑罰を使わずに、その前のいろいろな教育や環境を整備することによって犯罪が抑止できればそれにこしたことはないわけです。
私は、それはそう思います。
しかし、今の実情を見ますと、最後はやはり刑罰という担保が必要かな、こう考えております。

○水島委員
 そのあたりまた、これは今の少年法の精神にもかかわるような部分でございますので、今時間がございませんから、きちんとそのうち議論させていただきたいと思っております。
 あくまでも、今子供たちが必要としているのは、規範意識が低下しているというのは、一つには、それがどれほど危険なことなのかというのを知らないからついつい気軽に使ってしまうという一面は確かにあると思います。
それを知った後にもさらに繰り返してしまうというのは、やはりある程度特殊なケアを必要としていると思います。
私は、それらは児童福祉の受け皿をきちんとつくっていくべきだという考えでございます。
 もう少し質問を続けさせていただきたいんですが、例えば六条の規定そのものも非常にわかりにくいところがあるんですけれども、例えば、中学生の女の子、旅行代は持ちますから僕と一緒にハワイでデートしませんかというような書き込みは六条違反になりますでしょうか。
    〔委員長退席、馳委員長代理着席〕
○瀬川政府参考人
 御指摘のような誘引行為は、社会通念上「対償を供与することを示して、児童を異性交際の相手方となるように誘引する」行為であるととらえるのが通常と考えられますので、六条三号の禁止行為に該当するものと考えております。

○水島委員
 今、御答弁を聞いて驚いたんですが、これは、きのうの事前通告の時点まで、私が党の会議でお招きしたときも、一貫してそれはひっかかりませんというふうに警察庁の担当の方はおっしゃっていました。
そんなふうに内部でころころ日によって解釈が変わるような法案で大丈夫なんでしょうか。
非常に心配になってまいりました。
 時間がないので、本当にもう少し個別の事例をどんどん伺っていきたいんですけれども、きのうの時点までこれは罪にならないですねというふうにおっしゃっていたのに、今急にここで違反ですと言われたので、今の御答弁で確実に大丈夫ですか。

○瀬川政府参考人
 ハワイまでの旅行代を出すということでございますので、これは、全く見ず知らずの児童をそういうことで「異性交際の相手方となるように誘引する」ということですので、六条三号の禁止行為に該当するものと考えております。

○水島委員
 では、そうしましたら、中学生の女の子、フランス料理をごちそうしますから会ってくださいというのはどうですか。

○瀬川政府参考人
 これにつきましても、社会通念から考えて「対償を供与することを示して、児童を異性交際の相手方となるように誘引する」行為であるというふうにとらえるのが通常だと考えられますので、同様に六条三号に該当するものと考えております。

○水島委員
 今のフランス料理の方に関しては、これはフランス料理の掲示板であればならないけれども出会い系サイトだったら難しいですねというのが今までの警察庁の見解でございましたので、今のはその趣旨の御答弁なんでしょうけれども、ちょっとハワイでデートというのは、私、実は、最初にこの法案の御説明を受けたときからしつこく聞き続けてきた質問で、そのお答えがここまで変わってきたというのは、本来はここでちょっと審議をとめてもう少し御検討いただいてもいいくらいのことだと私は思うんですけれども、時間が残り本当に限られてきておりますので……。

○谷垣国務大臣
 結局、法律の解釈、当たるか当たらないかという場合に、我々も法律書生の出身ですから、随分そういう議論をして、こういう場合はどうだ、ああいう場合はどうだという議論をいたします。
しかし、実際、取り締まりなり現状を考えますと、そこで現実にどういう被害が起こっているかとか、どういう弊害が起こっているかということがやはり先にあるんだろうと思うんですね。
今のようなフランス料理の場合でも、委員のところに御説明に行った警察が、一般のサイトだと問題にならないけれども出会い系サイトだと難しいと申し上げたのは、やはり、言っていることの実態がどういうことなのかというデリケートな事実認定の問題が入ってくるのではないかと思います。

○水島委員
 今のフランス料理の方はそうなんですが、ハワイでデートというのは、それが出会い系サイトに書き込まれていたら、今の大臣の御説明ですと、かなり、実際そこで行われることは、ハワイに一緒に行けばどうなるかというのは考えれば何となくわかることでございますので、私は、どちらかというとこれは違法じゃないですかということをずっと言っていたんですけれども、このお金というのは旅行代の実費であるので交際に対する代償ではないという御説明を今まで聞いてまいりましたので、今、不信感を非常に強く持っております。
 このあたりについて、後ほど、またいろいろと協議をさせていただきたいとは思いますけれども、残り時間五分という紙が来ましたので、青少年問題特別委員会ですので子供の問題に最後にもう一つまた戻らせていただいて、ただ、今の点はまだ余り納得をしておりませんので、頭におとめ置きいただきたいと思います。
 いろいろとストックホルム宣言のことなどを言い始めますと外務省に聞けと言われそうなんですが、谷垣大臣はこの件に関する政治家としての専門家であるということで、また以降の質問をさせていただきたいと思うんですけれども、今回の法案がストックホルム宣言に反しているということはもう随所で指摘されておりますけれども、それに対する反論をここで大臣としてきちんと総括していただけますか。

○谷垣国務大臣
 私も別にストックホルムの専門家というわけではございませんけれども、何度か、ストックホルムで行われました会議の後、フォロー会議とかいうのが横浜でも行われましたね。
私も出席させていただいて、児童買春、児童ポルノの法案の成立にも取り組ませていただきました。
 それで、ストックホルム宣言というのは何なのかというのは、外務省に聞けとは申しませんけれども、いろいろな理解はあるのかなと。
やはり、まさに先ほど申し上げましたような、メコン川の奥地の少数民族が子供で出てきてバンコクでいろいろ搾取されていると。
私もバンコクへ行って、その中で、大阪へ行ってセックスインダストリーに従事していたという十六歳の女の子に会ったことがありますけれども、やはりそういう子供を被害者として更生保護というようなことをどうやって取り組めるか、かえってその犯罪の摘発に遭って、後、追い込んでしまうということはよくないという考え方ででき上がっているんだろうというふうに思います。
 それで、今度のこの問題は日本で新しく起きている問題ですので、これはいろいろ実態の把握が難しいという面があることは私は率直に認めるわけですが、現実問題として、子供たちを犯罪に引き込む危険な場となっているということを考えますと、やはり私は、何人もこれをやってはいけないという規範を定立すること自体は決して間違っていないだろうと思います。
 そして、先ほど申しましたように、その子供たちが犯罪に引き込まれてもっと凶悪な犯罪に遭っているという現実を見ますと、事業者規制だけでは不十分であるから利用者規制もやっていこうという問題の立て方は、これは、この被害を防ごうという観点から見ると間違っておりませんで、むしろストックホルム宣言の背後にある、これは子どもの権利条約でも書かれていることでございますが、子供の最善の利益というものに合致した方法ではないかというふうに私は考えております。

○水島委員
 きょうは法務省の刑事局長に来ていただいているんですけれども、ちょっと短くお答えいただきたいんですが、今谷垣大臣がおっしゃったように、犯罪に引き込まれないようにその前で罰しておこうという今回のこの法案の説明があるわけですが、これは、例えば児童買春・ポルノ禁止法というのは、ストックホルム宣言の枠組みに従いまして、子供を児童買春の被害者として位置づけている、だから買春行為によって罰せられない仕組みになっているわけですけれども、それと同時に日本には売春防止法というのがございまして、売春防止法の中では、買春の勧誘とか誘引行為によって、法律をそのまま読みますと、子供自身も処罰されるような仕組みになっているわけです。
これについても法務省としては、子供が買春の被害に遭わないために勧誘や誘引の段階で処罰しているんだというような今の谷垣大臣と同じような論法をとられているんでしょうか。

○樋渡政府参考人
 大臣がそこまでおっしゃっているかどうか、そういうことではないんではないかという気もいたしますが、本法案におきましては、「インターネット異性紹介事業を利用して児童を性交等の相手方となるように誘引する行為等」を罪としておりますのは、当該児童についての犯罪被害を防止することを一義的に考えているのではなく、児童一般を性的行為の対象とする社会的風潮を助長し、ひいては児童一般が児童買春等の犯罪に巻き込まれることを防止するためであると承知しておりまして、本法案が成立した場合、児童買春・ポルノ法がこれと矛盾することになるものではないというふうに思っております。

○水島委員
 ということで、ちょっと警察庁のおっしゃっていることと法務省のおっしゃっていることは微妙に違うなということを私は感じてきているんですけれども、その辺も政府としてきちんと一度趣旨をそろえられた方がよいのではないか、この点も申し添えさせていただきます。
 時間がもうありませんので、最後に一言確認させていただきたいんですが、先ほどから、貧困の国々、途上国の子供たちが経済的な理由によって買春の被害者になっている。
そのようなことは被害者ですということは納得していらっしゃると。
ただ、日本で出会い系サイトなんかに積極的に書き込んでいく子供たちというのはちょっと違うんじゃないか、そのようなことがずっとここで展開されているわけでございますけれども、果たしてそうなのかということを、ちょっと大臣に最後に御答弁をいただきたいのです。
 日本の子供たち、何でそうやって自分を売るような、自分を大切にできないような育ち方をさせられてしまったのか。
そのことを考えますと、やはり今の日本の社会の子育てが非常に貧困であって、子供たちにちゃんとしたものを与えられていないから、子供たちはそうやってみずからを売るようなことを申し出るような子供たちになってしまっているという意味では、社会全体の被害者であるというところは、私は全く同じだと思います。
 また、子供と大人の物理的な力関係、また経済的な力関係を考えますと、やはりそこにはおのずと買う、買われる側に力関係が生じているんだということ、それがその後傷になって残るかどうかということに関しても、それは買われた側の傷になって残っていくんだということ、いろいろなことを考えますと、一見積極的に書き込んでいるように見えている子供たちであっても、私は、それはやはり喜んで積極的に書き込む子供たちがそんなにいるわけではなくて、やはりその貧困の中で売られてしまった子供たち、やむなく生活のためにみずからの体を売る子供たち、その子供たちと全く違う生き物として論じていくというのは、そもそも、子どもの権利条約から考えてもおかしいのではないかと思います。
ちょっとこのあたりを大臣に、最後に、トータルにコメントをいただきたいと思うんですけれども。

○馳委員長代理
 大臣、既に質疑時間を大幅にオーバーしておりますので、簡潔に御答弁をお願いいたします。

○谷垣国務大臣
 今の委員の御議論を聞いておりまして、それは委員がそうお考えになるような面も私はあると思います。
ただ、これは犯罪一般を考えますと、犯罪の加害者になった人間が、逆に言えば、ある意味では社会からの被害者だという議論も十分に成り立ち得ますし、犯罪の実情には常にそういうところが私はあるんだと思います。
 しかし他方、そうだからといって、その犯罪に対して規範を定立して、そして犯罪を犯した人間を刑罰という手法をもってやっていくということが、何というのでしょうか、さらなる危害を抑止するためには必要だということは、私は十分あるんじゃないかと思っております。

○馳委員長代理
 水島さん、質疑時間が終了いたしておりますので。

○水島委員
 もう時間が過ぎていますので終わりにしますけれども、殺人のような犯罪とは違って、買春の場合は、買う大人がいなければ成立しない犯罪だということをちょっと最後に思い出していただいて、質問を終わらせていただきます。






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