青少年の育成に関する、官房長官の暴力団発言について(前半・後半)<前半> ○青山委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。 水島広子さん。 ○水島委員 民主党の水島広子でございます。 本日は、二度にわたって質問をさせていただきますけれども、どうぞよろしくお願い申し上げます。 さて、先日、官房長官の所信を伺いまして、早速、私も、官房長官が主宰される青少年の育成に関する有識者懇談会報告書を読ませていただきました。 ざっと一読させていただきまして、率直に申し上げて、大変よい内容であると思いました。 青少年の現実をよくとらえ、理解している人たちがつくっているなと感じたわけでございます。 まずは、報告書をまとめられた御努力に心から敬意を表したいと思います。 ところが、きょうはこの報告に基づいて質問をさせていただこうと思っていたんですけれども、その議論の前提として非常に信じられないことが起こっております。 私は常々、子供たちのモラルを育てるためには大人がどう行動するかが重要であるということを申し上げております。 政治家の不祥事というのも、子供たちに大きな影響を与えるわけでございます。 直近の例では、松浪議員の問題がございます。 私も、選挙区の方たちに、なぜあの人はやめないのかとか、なぜみんなはやめさせないのかとか、子供たちに聞かれて困っているんだということを言われまして、本当はきょうは、ぜひ官房長官にそういうときの答え方を教えていただきたいなと思って来たわけでございます。 そうしましたら、きのう官房長官は、これは記者会見ででしょうか、暴力団も有権者だと言って、それを正当化するような発言をされているということでございまして、これも正直に言って、もう信じられないという感想でございます。 折しも、これは私の地元の下野新聞なんですけれども、きのうの新聞なんですが、今、栃木県内は暴力団抗争が相次いでいまして、十八日だけでも六件、二十一日には二件と、この選挙をやっているさなかであっても人が殺されたり、そんな状況になっておりまして、ここに「恐怖に震える住民」、こんな大きな見出しがございます。 先日は、産業廃棄物関係で市の職員が殺されたりですとか、そのとき私は環境大臣に質問をさせていただきまして、やはり産廃の問題というのは暴力団絡みのことが多いのでというような、そんな答弁もいただいているわけです。 今、非常に地元で恐怖心が高まっている中、あの松浪さんの問題がございまして、ただでさえ説明に困っていたところ、きょうはぜひ官房長官に伺いたいなと思って来たところ、官房長官御自身がきのうそんな発言をされているということなんですが、まず、ちょっとこの発言の真意を、本当にこれは、私、選挙区に戻って子供たちに説明をしなければいけない立場でございますので、お願いいたします。 ○福田国務大臣 マスコミというのは、書いて関心を引くようなことを、その部分だけを誇張して書くということはよくあることなんですよね。 昨日でしたか、記者会見でそういうような質問がございました。 要するに、松浪議員と暴力団とのかかわり合いということで、これが政治的にどういうことかといったようなことですけれども、私も正直申しまして、このかかわりについては、松浪委員もまだ十分説明していないと思うんですね。 ですから、政治倫理審査会でこれから説明しよう、こういうふうにも言っているわけですから、それを見ないと何とも言いようがない。 ですから、私は、前提として、このことについては、そういう質問は出るんじゃないかと思ったものですから、ちょっと昨日の記者会見のやりとりを持ってきましたけれども、新聞に書いていないところについては、全くこの内容についてはわからぬと。 わからないんだけれども、しかし、そういうふうな関係がもし政治家としてあるということであるならば、それは明らかにしなければいけないということは前提。 そして、その関係がどういう関係なのか、そのことがわからないと評価しにくいじゃないかと。 ということは、私どもも経験があるんですけれども、暴力団と知らないで、我々は来るもの拒まずですからね。 ですから、そういうふうなことで、つき合いじゃないけれども、来る人に対して接遇するとか、そういうことはあるわけですよ。 それだけの関係ではないようでございますから、それはそれで、問題はそんなことで済まないかもしれませんけれども、ただ、そういうことをすべて明らかにした上で評価すべきことであるということであって、それだけのことで今結論を出すのは早いんじゃないかというふうに私は言った。 私も、実は、新聞記事をよく読んでいるわけでもないんです。 ですから、私は全然知らないんだということを前提にしてそういう話をした。 暴力団も有権者の一人であることは間違いないでしょう。 それは事実なんです。 だから、そこのところだけ取り上げるとそういうことになってしまうけれども、前後を見てもらえばよくおわかりになることであって、マスコミのいいところ、悪いところはございますけれども、そういうつまみ食いをして評価をしようということは実にけしからぬところだと思いますよ、そういうところは。 そういうことによって国会議員を傷つけるとかいうようなことはあってはならぬと私は思っております。 マスコミも十分気をつけて、公平に、公正に書くべきであると思っております。 ○水島委員 私自身もマスコミに傷つけられたこともございますし、おっしゃることを理解できないでもないんです。 ただ、今回の松浪さんの問題というのは、官房長官がおっしゃったように、たまたま一緒に写真を撮った相手が暴力団員だったということが後でわかったとか、そういうレベルの話ではなくて、松浪さん御本人みずからが、結局、相手が暴力団だということがわかってからも関係を続けていたということも認めているわけですし、少なくとも、私が今まで報道などで追っている限りでは、御本人が認めている。 事実がそこまで明らかになっているんだからというのが私たちの立場であるわけでございますけれども、私のような一国会議員というか一市民として知っていることを、官房長官が全くわからない、事実がよくわからないとおっしゃるのもまた変な話でございまして、同じ政権与党の中の話でございますので、ちょっと明らかになっていないと思ったら――それが連日報道されているわけでございます。 政治への関心の低下がこの報告書でも指摘をされているわけですし、メディアでも、政治への関心のなさを正当化するような記事が書かれていて、政治に関心がある方がむしろおかしいというような風潮があるのは、私は大変危機的なことだと思っているわけですけれども、そんな中で、連日、この問題が報道されていて、それに対して、官房長官ならきちんと事実を早く調べて、そしてきちんと今のこの状態を何とかしなければいけないという立場であると思うのです。 その辺については、与党内の危機管理ができていないんじゃないんでしょうか。 ○福田国務大臣 まず、官房長官であれば政治家一人一人のことについてよく知るべきだ、これは違うんじゃないでしょうか。 立場は全然違いますよ。 私は政党の役員にもついているわけでないし、協力をしていただいている他の政党のことについてとやかく言うべきものかどうか、それも、事実関係が明らかになっているという段階ではないんですから。 それは政倫審で自分から説明をしたいと今言っているんじゃないですか。 ですから、そこでよく聞いた上で判断できるんじゃないでしょうか。 だから、慌てて決めつけることはよくない。 それから、私がそういうことをどうこう言う立場にはないかもしれぬけれども、私が言えば、それはそれでやはり影響は大きいというように考えます。 私は慎重ですよ、そういうことについては。 政治家一人一人の、それも、選挙民が選んできているものを、他の選挙民と関係ない私が何で言えるんですか、そんなことを。 失礼じゃないですか、選挙民に対しても。 そういうことも全体的に考えていただきたいと思います。 ○水島委員 それでは、ちょっと最初の質問に戻らせていただいて、また、今、官房長官だから一人一人の議員のことを知るべき立場ではないというお答えでございますけれども、とにかく政府・与党内の議員の問題であって、これは、一般の国民から見れば政府・与党の問題として見えているからこそ、与党内の各党の方たちが対応を問われているんだと思いますけれども、それを、党の役員についていなければ、官房長官だったら何でもいいのかというのは、私、ちょっと違うのではないかと思います。 では、最初の質問に戻りますけれども、いずれにしましても、今の官房長官がおっしゃったことを百歩譲って、きのうのこの一連のことに対して、私、選挙区に戻りまして、子供たちに、松浪さんのことというのはどうなっているの、何でやめさせられないの、暴力団と関係があるんでしょう、官房長官が何かそれを正当化しているようなことを言っているけれどもと言われたときに、どのように説明したらよろしいかというのを、ちょっとわかりやすく言っていただけますか。 ○福田国務大臣 それは、国会議員のことは非常に重要なことである、まず、選挙民が選んだ選ばれた人なんだということ、ですから、その人のいいとか悪いとかいうようなことについては、これは慎重であるべきであるということ、そして、本人が国会で説明するというのであれば、その説明をよく聞きましょう、その上で判断しましょう、それからでも遅くないでしょう、そういうように言われたらいいんじゃないでしょうか。 ○水島委員 官房長官がそのようにおっしゃるということ、今記録はさせていただきましたので、また、これは私以外の方たちもいろいろなところで御質問になると思いますので、本日は貴重な青少年の問題についても質問したいと思いますので、この程度にとどめたいと思いますけれども、党の役員にもついていないと官房長官がおっしゃったのであれば、逆に言えば、今度は保守新党の、同じ党の方たちの責任が重いのかなというふうにも思います。 今、うなずいていらっしゃいますので、ぜひ、この官房長官のうなずきをごらんになった保守新党の方は、本人にこれ以上政治不信を長引かせないようにということをアドバイスする立場でもあると思いますし、本人から事情を真っ先に聞くべき立場であるとも思いますので、本当に一刻も早く、連日、新聞にこのようなことが載るような事態で、ますます政治離れが進んでいくような事態を避けるために、今本当に一人の国会議員として何をすべきかというのを、これは保守新党の方だけではなく与党の皆様にもぜひお考えをいただきたいと思っております。 さて、こちらの報告書の方に戻りますけれども、まず、私、この報告書は非常によくできていると思ったんですけれども、官房長官は、この報告書についてはどのように受けとめられておりますでしょうか。 ○福田国務大臣 やっとまともな質疑に戻りまして、ほっとしておるところであります。 懇談会におきましては、多様な論点があります青少年の育成について、一年間にわたって熱心にしてまた精力的な審議をしていただきました。 先般、先週でしたか、報告書を取りまとめいただき、そして御提出いただいたわけでございます。 この間、大変いろいろな角度からいい提案をしてくださったと思って、私からも感謝をしているところでございます。 報告書におきましては、まず第一に、多くのデータに裏づけられた青少年の現状について分析する、それから第二に、年齢期ごとの特性に着目した重要課題、それから第三に、今後の青少年育成の基本的な対応の方向、これらが盛り込まれております。 今後、政府としては、この有識者懇談会報告書で提言された内容も踏まえた幅広い検討を行い、本年夏ごろまでに、青少年育成の基本理念や中長期ビジョンなどを示す青少年プランを作成することといたしております。 そのプランに基づいて、青少年の育成のための諸施策を、関係府省が協力して政府一体となって推進してまいりたいと考えておるところでございます。 ○水島委員 まともな議論に戻られて安心されているところを、ちょっともう一言言わせていただいて申しわけないんですけれども、私、決して、先ほどの議論がまともじゃなくて今度の議論がまともだという認識は持っておりませんで、どちらも極めてまともな議論だと思っております。 といいますのは、子供たちが何で大人を信用できないかというと、特に政治家をなぜ信用できないかというと、子供のことになると何だかきれいごとでいろいろ押しつけてくるけれども、では我が身はどうなんだということを見たときに、自分は日ごろすごいことを言っていても、急に、自分のぼろが出てくると、いや、これはいいんだとか、これは後で説明するからとか、こんなことはだれにでもあるんだとか、責任をとるべきところできちんととらない、そういう態度が子供たちには非常に、大人というのは結局身勝手なんだ、自分たちのことを真剣に考えているわけじゃないんだというふうに映るのではないかと思います。 私自身も余り偉そうなことは言えませんが、少なくとも、子供を育てている中で、子供にこうしてほしいと思うことを自分も実践していこうとすると、これはかなり大変なことですけれども、やはり努力をしなければいけないなと思って、あいさつをする子に育てたいと思えば、自分はだれを見てもあいさつをする。 子供をちゃんとありがとうと言える子に育てたければ、子供が何かしてくれたときに自分もちゃんとありがとうと言うとか、みんな家族がそろって食事のテーブルに着いているべきだと思えば、私も急いでいても子供が食べ終わるまで一緒にテーブルに着いているとか、一応そうやって忙しいながらも努力をしているつもりなんです。 やはりそういう中で子供はいろいろなことを学んでいくんじゃないかというのを、かつて子供だった立場としても、また、いろいろ子供たちの問題を見てきた立場といたしましても痛感しているわけなんですけれども、何か発言されたいようですので、どうぞお願いいたします。 ○福田国務大臣 おっしゃっていることは私もよくわかります。 また、謙虚に申されているな、こういうふうに思います。 先ほど来の質問は、これは新聞報道を見て、その部分、囲み記事ですか、それを見ておっしゃっていることで、あの囲み記事を見ておっしゃれば、御質問されるのは当然だという感じもしないではありません。 ですから、そういう誤った報道をする報道の方の責任も大きいというように思っています。 そういうことが政治不信につながるとかいうことであるなら、報道はもっと気をつけなければいけないということです。 いずれにしても、政治家は、やはり一人一人が自分のことについて十分気をつけるということが大事だと思います。 他からとやかく言われてどうこう、こういうことは何も暴力団に限るわけじゃありません、すべての行動においてそういうことを言われる。 そうすると、政治家というのは極めて窮屈な存在である。 常に人から見られて、模範的なことをしていなければいけない。 そういうことであってもいいのかなという感じもしないでもないんですがね。 そういうことが求められているということになると、やはり選ぶ人も、選挙民の方もそういう人を選ぶべきだというように思うんですね。 それは、その時々、国民の価値観というのは変わりますから、いつの時代もそういうことであるのかどうかわかりませんけれども、そういうことを求めるというんだったら、選挙民にも求めなければいけないということは言えるんじゃないでしょうか。 ○水島委員 選挙民がきちんと選ぶべきだというところは同感でございます。 ただ、選ぶための情報が余りにも少ない今、何か問題が起こったときに、余り味方同士でかばい合いをするという体質ではなく、情報をすべて公開して、きちんと次の選挙で選ぶ基準となる、そのような情報を公開すべきだと思いますし、くれぐれもきちんとした目によって選ばれていくように、選挙の本質をもう少しきちんとわからせるために、ぜひ公職選挙法全般も見直していく必要があるんじゃないかなと思っておりますが、きょうはちょっと選挙法について話をする場ではございませんので、またこちらの議論に戻らせていただきます。 この報告書の「はじめに」に書いてあるように、今まで、青少年に関する問題は縦割り行政の中で扱われてきておりまして、その反省の中でこの報告書がまとめられたと理解をしております。 報告書には、「青少年の育成にかかわる知見には、ある分野の専門家にとって常識でありながら他の分野や一般の人々には知られていないものも多いことも明らかになった。 」とあります。 これは大変重要な指摘だと思います。 私は、今まで、教育改革国民会議ですとか中教審の議論を聞いておりまして、本当にこの人たちは現実がわかっているのだろうかと首をかしげざるを得ない体験が多くございました。 これは恐らく、私は精神科という領域にいましたので、その分野の専門家から見れば当たり前のことが教育の分野の専門家という方たちにはわかっていないんじゃないかという実感だったわけでございます。 例えば、今取り上げられている教育基本法の改正の問題につきまして、この報告書を踏まえて先日、中教審から出されました「改正の方向」という中で、矛盾する内容はないと官房長官は考えられますでしょうか。 ○福田国務大臣 懇談会報告書の内容は、教育を含めて保健、福祉、労働、非行対策など、多岐にわたっております。 一方、中教審の答申は、教育振興基本計画の策定及び新しい時代にふさわしい教育基本法のあり方についての諮問を受けて審議されたものでございまして、検討の対象とするものは異なっているところがございます。 しかし、両者の内容を見ますと、まず、社会全体が大きく変化していることを踏まえた取り組みの必要性とか、また、職業に役立つ知識・能力の教育の重視など社会的自立に向けた知識や能力の習得の必要性、そして公共へ主体的に参画することの必要性、そういうような多くの点において共通する課題が提示されておりまして、特に矛盾する、そういうふうには考えておりません。 ○水島委員 検討の対象が異なるとはいっても、相手は一人の子供であって統一された人格でございますので、それは同じ理念に基づいていないとまた問題ではないかと思いますけれども、今、矛盾はないという御答弁でございまして、青少年の問題というのは重要ですので、少し細かく伺わせていただきたいと思います。 まず、教育基本法の「改正の方向」の中で述べられている「社会の形成に主体的に参画する「公共」の精神、道徳心、自律心の涵養」というところがございますが、これは懇談会報告書の中の「公共への参画」とか「他者の認識と自己の形成」などで述べられている内容と同じような意味であると考えてよろしいと思われますでしょうか。 ○福田国務大臣 懇談会報告書におきましては、大人への移行があいまいになって自立が困難になった現在の状況を踏まえて、基本的な対応の方向の一つとして、社会的自立の支援の必要性が提言されているところでございます。 このためには、乳幼児期からの連続性ある社会的自立の促進が重要であるということが強調されておりまして、学童期における他者の認識と自己の形成や、青年期における公共への参画も社会的な自立のための課題である、こういうふうにされております。 中教審の答申で言われております「公共」の精神、道徳心、自律心の涵養につきましても、社会の形成に主体的に参画する意識や態度を涵養することを目指す内容となっておりまして、方向性としては、そごがある、そのようには考えておりません。 ○水島委員 ということは、個々がきちんと自立をする中で相手のことも考える、どうすると相手の迷惑になるかを考えながら公共心を養っていくという方向でよろしいのかなと今確認できまして、少々安心をいたしました。 次に、「改正の方向」の中で述べられております宗教の部分なんですが、宗教の持つ意義を尊重することが重要であることを適切に規定するというところがございます。 こちらの報告書の中では「自分たちとは異なる価値観への寛容さと多様な価値観を持つ集団が共存する一般社会の規範の習得が必要となってくる。 」と書かれております。 これに基づいて考えますと、宗教の持つ意義を尊重すると同時に、宗教を持ちたくない人の気持ちも尊重する必要があると思いますけれども、一方のみを書き込んだというのはちょっとバランスがとれていないのではないかと思いますが、いかがでしょうか。 ○福田国務大臣 中教審の答申におきましては、「憲法に定める信教の自由を重んじ、宗教を信ずる、又は信じないことに関して、また宗教のうち一定の宗派を信ずる、又は信じないことに関して、寛容の態度を持つことについては、今後とも教育において尊重することが必要」というふうにされておりまして、宗教を信ずることに対してのみ一方的に尊重する内容とはなっておりません。 また、中教審の答申におきましては、二十一世紀の社会の最も大きな課題の一つとして、「様々な文化や価値観を持つ多様な主体がこの地球に共生すること」を挙げております。 こういうことから、異なる価値観への寛容さなどの点も含めまして、懇談会報告書と矛盾するとは考えていないところでございます。 ○水島委員 確かに、中教審の答申そのものを見ますと、今おっしゃったように、「信じないことに関して、寛容の態度」というのが書いてあるんですけれども、なぜかこれが、概要版の囲みになりますとそこの部分が落ちていまして、私はこれは非常に見やすいなと思って愛用しているんですが、中教審が出している教育基本法と教育振興基本計画になりますと、宗教のところは、信じないことを尊重するというようなところは完全に抜け落ちておりますので、どうしてそうなってしまったのかなと思っているのです。 とりあえず、内容としては、それでは宗教を信じないことに関しても、もちろん尊重されるという内容でよろしいと、官房長官はそう理解されたので、矛盾がないと思われているということでよろしいんでしょうか。 ○福田国務大臣 今ごらんのパンフレットにも宗教に関する寛容の態度、知識、こういうふうに表現しているところでございまして、これはそもそも、先ほど私が申し上げました趣旨と同じであるというふうに考えていいと思います。 ○水島委員 私が中教審のものに何もとやかく言う立場ではないのかもしれませんが、それだったら、私は、宗教に関する寛容の態度や知識を適切に規定するぐらいで十分であって、その後に、殊さらに、宗教の持つ意義を尊重することが重要であることをというところだけ書き出しているというのはちょっとバランスがとれないと思いますので、これはまたぜひ御検討いただきたいと、きょうは指摘をさせていただきたいと思っております。 ただ、官房長官がそうではないとおっしゃってくださっているので安心をいたしまして、次に進ませていただきます。 今回の報告書は、先ほど官房長官もおっしゃったように、根拠となる調査結果を資料として添付しておりまして、データに基づいた議論であることが明らかになっております。 これは私がかねてから求めてきたことであって、大変結構なことだと思います。 一方、中教審の答申などにはこのような資料が添付されておりませんで、一体何を根拠にそのような結論が出ているのかわからないのですけれども、官房長官は何か御存じでしょうか。 ○福田国務大臣 詳しく知っているわけじゃありませんけれども、中教審におきましては、文部科学大臣の諮問を受けまして、必要な資料などを参考としつつ審議が進められた、こういうふうに考えております。 ○水島委員 その資料が一体何だったのだろうというのが大変気になるわけですけれども、ちなみに、これが中教審の答申、そしてこれが今回の報告書。 厚みがこんなに違いますが、本文の部分というのはほとんど同じ厚みで、こちらの報告書は、残りは全部資料でございます。 これらの資料に基づいて結論をまとめたと。 ほとんど同じ厚さのこちらの中教審の答申にはそのような部分がないんですけれども、これは本当にそのような資料に基づいてつくられたものなんでしょうか。 これは、きょう文科省に来ていただいておりますので、お答えいただきたいと思います。 ○近藤政府参考人 お答えいたします。 中央教育審議会におきましては、教育現場の実情に詳しい教員、校長を初め、いろいろな方々、有識者に、委員として審議に参画をしていただきました。 また、教育や教育を取り巻く現状に関する資料等、各種の資料、データをもとに、また、教育関係者からのヒアリングですとか国民からの意見も参考にして、答申を取りまとめていただいたところでございます。 なお、そういった資料、データがついていないではないかということでございますけれども、審議の経緯、現状分析の際には、常に大変多くの資料、きょう一つ持ってまいりましたけれども、教育の現状をめぐる資料でありますとか、その他各国の教育基本法に関する資料、あるいは、これまでの各種審議会等の提言、報告、こんな分厚い資料でございますけれども、審議会では常に卓上に置きまして、そういったものも参考にしながら審議をしてきたわけでございます。 なお、中間報告では、第一章の「教育の課題と今後の教育の基本的方向について」は、答申よりもかなり詳細に記述をしていたわけでございますが、答申につきましては、多くの国民に読んでいただくために、中間報告を要約し、重複を整理して、教育基本法等のあり方をできるだけ簡潔でわかりやすくしたい、こういう方針で答申を取りまとめていただいた、こういったことから、最終的には現在のような記述になっているというふうに承知をいたしております。 ○水島委員 今の中で資料としてお挙げになったものは大体、人の意見、いわゆる経験者の意見とかそういうものが主であって、一方、こちらの報告書の中では子供そのものの実態を資料として挙げておりまして、なぜ一人で食事を食べなければいけないのかとか、そういう、子供がなぜ今のような状況に置かれているかという現状をきちんとデータとして並べているわけでございます。 データとしての信頼性はこれからきちんと検証されなければいけないと思いますけれども、では、これと同じような資料を文科省は出せますか。 ○近藤政府参考人 出せますかという御質問があれでございますが、そのときには大変多くの資料を配付いたしまして御議論いただいたわけでございますし、それから、確かに答申にはそういったものは添付しておりませんが、近々、中央教育審議会で実際に配付されました資料を資料集として文部科学省において取りまとめて、これまた国民の皆様方に見ていただきたい、そういう努力はしてまいりたいと思っております。 ○水島委員 私が申しておりますのは、例えば、この報告書であることを述べるときに、その根拠となった資料をきちんと肩に引用文献として載せているわけでございまして、これは、何か論文を書くときには当たり前のことだと思うんですけれども、そのような姿勢がこちらにないのではないか。 みんな参考にした、参考にしたと言われても、一体どこをどういうふうに参考にしてこういう結論が出たのかということが検証できないようなことではだめではないかということは、私はかねてから、文科省が物を決めるときに言っているわけでございます。 前半の時間が終わりますので、最後に官房長官に、こういうのは、やはり子供たちの現状やデータに基づいて施策を決めていくことがよいことなんだというふうに、ちょっとその姿勢だけ最後に明確にしていただいて、前半の質問を終わらせていただきたいと思います。 ○福田国務大臣 特定の審議会などだけでなく、一般に政策の企画立案に関しては、必要に応じて幅広く各種資料等を参考にすることが望ましいと考えております。 青少年問題というのは非常に幅の広い分野をカバーしなければいけないということもありますので、特にそういうことは求められていると思っております。 ○水島委員 データを尊重するという姿勢をおっしゃっていただけたと思いますので、前半の質問はここまでとさせていただいて、また後半、よろしくお願いいたします。 <後半> ○青山委員長 次に、水島広子さん。 ○水島委員 それでは、再び質問をさせていただきます。 官房長官、よろしくお願いいたします。 先ほどに続いてまた質問させていただきますが、青少年の問題というのは、文部科学や厚生労働、法務など各省にまたがる問題でございますし、この報告書においても、各分野にまたがる有機的な連携や協力の必要性が述べられております。 どうやってそれを行うのかということをお伺いしたいわけなんです。 国連子どもの権利委員会から、子供の権利にかかわっているさまざまな政府機構間の調整を全国レベル及び地方レベルのいずれにおいても強化するように勧告するとされまして、二〇〇一年の第二回政府報告では、「中央省庁等改革以後は、内閣府が青少年育成推進会議等を通じて引き続き関係省庁の緊密な連絡を図りつつ総合調整を行っている。 」となっているわけでございます。 でも、本当に調整が強化されているのでしょうか。 例えば、この報告書の中にも、父親の育児参加の必要性や一人で食事をとる子供の存在などが述べられているわけですけれども、これらの問題を解決するためには、労働法制を変える必要があるわけでございます。 これは、かなり独立性の高い、権限の強い機関でなければ、この調整というのはできないのではないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。 現在の内閣府の力は、そこまで強化されているんでしょうか。 ○福田国務大臣 先ほども御説明したかもしれませんけれども、この青少年育成施策というのは幅広い省庁にまたがっている、そういうことも課題でございまして、各省庁の分担に応じた事務を着実に実施していくことが重要であると考えております。 内閣府としては、青少年の健全な育成に関する事項の企画及び立案並びに総合調整等を行う立場でございますので、そういうことから、関係省庁と連携を図りつつ総合的な施策の推進を図ってまいりたい、このように考えております。 ○水島委員 本当にその総合調整というものを、今言いましたように、労働法制に踏み込んで、子供のためには父親、母親はこういう働き方をした方がいいんだということをぜひ、きちんと子供の立場に立って調整をしていただきたいと思っているわけなんですけれども、それを内閣府でできるのだろうか。 私は、むしろ、子供の問題を横断的に扱えるように、例えば子供担当大臣とか子供省というものを独立して設置すべきではないかとも考えているわけですけれども、官房長官はどう思われますでしょうか。 ○福田国務大臣 今、内閣府で担当しておりますけれども、その報告はもちろん私のところに上がってまいりますし、私からの指示に基づいて、内閣府としていろいろな施策の充実に努めておる、こういうことでございます。 青少年育成問題は、重要課題であるということはもう何度も申し上げておりますけれども、多くの省庁に関係するという意味から、一つの省の設置などによって対応するというよりも、内閣府が総合調整を行うということで、政府一体となって推進していくことが重要だと思います。 あとは内閣の意思であります。 ○水島委員 政府一体となって頑張っていただきたいんですけれども、ただ、今、官房長官のところにいろいろ情報が上がってくるし、指示をされているということなんですが、官房長官は本当にお忙しい方でございまして、青少年の担当大臣として子供の問題に専念できると本当に思われているでしょうか。 きょうも、与党の理事さんが本当に誠心誠意努力してくださったにもかかわらず、ここに来ていただく時間が十分にとれなかったため、私は四十五分以降は副大臣に質問をしなければいけないということになっているんですけれども、それで、与党の質問者の方たちは皆さん副大臣にということで、本当にお忙しいと思うんですけれども、そんな状態で、これからもこちらが、委員会で子供の問題を聞くので、官房長官、ぜひ答弁にいらしてくださいとお願いした場合に、いらしていただけるだけのお時間はあるんでしょうか。 ○福田国務大臣 私としても、責務を果たすために努力をしてまいりたいと思っております。 ○水島委員 まだ官房長官への質問を少しさせていただきたいんですが、多分、その途中で時間切れになりそうですので、ここでもう一つ確認させていただきたいのです。 今、官房長官は、十五分で十分十分とおっしゃったわけでございますけれども、副大臣が答弁されることは、官房長官のお考えと完全に一致した御答弁をきょういただけるということで確認させていただいてよろしいでしょうか。 ○福田国務大臣 そのとおりでございます。 ○水島委員 それでは、今からまた次の質問に入らせていただきますが、恐らく、途中から答弁者を副大臣にお願いすると思いますけれども、それは官房長官が答弁されたことと同じ重みを持つとして受けとめさせていただきたいと思いますので、どうぞ副大臣、よろしくお願いいたします。 それで、この懇談会報告書の中では、社会規範の習得のために「自分たちとは異なる価値観への寛容さと多様な価値観をもつ集団が共存する一般社会の規範の習得が必要となってくる。 」と指摘をされておりまして、「そのためには、仲間集団を超えたより広い社会への参画を通じて、社会の一員としての意識を形成し、仲間以外の者との付き合い方を学び、試行錯誤をしながら一般社会のルールを身につけていく経験が有効である。 」とされております。 私も、全く同感でございます。 でも、大人にこのような姿勢がなければ、子供たちは学べない。 大人が全くそのようなことをやっていないのに子供たちが勝手にそれを学んでいくということはあり得ないわけですので、このプロセスを大人がみずから示していく必要があると思いますし、特に、議会というのは民意の調整機関でもあるわけですので、その責任は重大だと思っております。 私は、かねてから、結婚をしても同姓も別姓もとり得る選択的別姓の推進をしているわけでございますけれども、これはどちらかというと今のような考え方に基づくものでございまして、いろいろなタイプの夫婦がいるわけですから、まさに自分たちとは異なる価値観への寛容さが問われているのではないか、そこで、いろいろなタイプの夫婦が暮らしていく中での一般社会のルールをきちんとつくっていくべきではないかという観点から、ずっと提案をさせていただいているわけでございます。 これからその議論をさせていただく前提としまして、まさかとは思いますけれども、官房長官は、別姓夫婦は同姓夫婦よりも社会規範意識がないと思っておられるわけではないでしょうねということを、ちょっと確認させていただきます。 ○福田国務大臣 議員御指摘の部分は、青少年についての一般社会の規範の習得を指摘しているものでございまして、夫婦間の規範との関連は薄いと思われます。 いずれにせよ、同氏または別氏のいずれかを選択するということと規範意識の高さとは関連性がない、考えにくい、こういうことでございます。 ○水島委員 ありがとうございます。 時々、この別姓の話をすると、倫理的に考えろと言われることがありまして、別姓でございます私は、何だか自分が倫理がないんじゃないかと言われているような気がして、非常に傷ついていたわけでございますけれども、官房長官はそう思っていらっしゃらないことがわかりまして、安心をいたしました。 そうしますと、これは社会規範とは関係ない、どちらも夫婦として尊重されるべきであるということを考えますと、そのようないろいろなタイプの夫婦がいて、制度を変えてほしいという声がかなりあるわけですし、内閣府としても世論調査もされているにもかかわらず、実際に国会では審議もされないし、前向きにこの話が進んでいかないというのはどういうわけなのか、また、政府提出の法案が出てこないというのはどういうわけなのか、これは、子供たちにわかりやすいように説明するにはどうしたらよいでしょうか。 ○福田国務大臣 選択的夫婦別氏制につきましては、法務省を中心にして、少しでも多くの方の理解を得られるよう、例外的夫婦別氏案を提示するなどの努力を続けてきたところでありますけれども、これまでのところ、一つの立場に意見を集約することは困難でありまして、さきの通常国会では、本制度の導入を内容とする法律案を政府として提出することは見送ったという経緯がございます。 なお、この問題につきましては、二件の議員提案が継続審査となっておりますほか、別に議員立法に向けた動きもあるものと承知しておりまして、政府としても、その推移について注意深く見守ってまいりたいと思います。 政府といたしましては、子供たちも含め、選択的夫婦別氏制について、国民各層や関係方面の御理解を得ることができるよう、関係方面での議論が深められることが必要である、こういう認識をしておるところでございます。 ○水島委員 あと一分ですので、今の点だけもう一問聞かせていただきたいと思うんですが、確かに、おっしゃっておりますように、私も森山眞弓法務大臣に期待をしていた者の一人でございますけれども、現在、法務省は、名古屋刑務所の問題でそれどころではない状態になってしまっておりまして、法務省に今国会はちょっと期待できないなと思っているのです。 ですから、むしろ、男女共同参画担当、そして、青少年の担当でもございます官房長官が旗振り役をすべきではないかと思うんですけれども、これを強力に推進していただく御意思はございませんでしょうか。 ○福田国務大臣 法務省はほかのことで忙しいという御心配でございますけれども、この問題は、そういうこととは別に、十分に法務省は対応しなければいけない課題であると思っておりますので、今後も、法務省が中心になって、関係方面の理解を得るべく努力をしていくと思っております。 内閣府も、引き続き、このような内閣府としての努力を続けていくべきものと考えております。 ○水島委員 議論を続けていきたいということなんですが、国民から見ますと、議論というのは国会で審議されていないと見えないので、まずは、やはり法案を提出して審議を始めるということが非常に重要だと思います。 そういう意味では、今、法務省がとても法案を取りまとめて提出できる状況にないのであれば、内閣府で何らかのリーダーシップを発揮されてもいいのではないか、その意見を述べさせていただきまして、今うなずいて聞いてくださっておりますので、この思いを受けとめていただいて、では、官房長官はここで、ありがとうございました。 それでは、残り時間、副大臣に質問をさせていただきます。 最後に、この別姓の問題について、もう一問だけ質問をさせていただきたいんですけれども、この議論をするときには、よく、子供のことも考えなければいけないということを言われることがあるんですけれども、もしおわかりになるのであれば、これはどういう意味なのかというのをちょっと教えていただけますでしょうか。 ○米田副大臣 夫婦別姓の議論で子供のことを……。 ちょっと、御質問の趣旨がよくわかりません。 ○水島委員 これは、子供の立場にもなって考えなければいけないとか、この制度を導入するに当たって、よくそういう論点として子供という論点が出てくるんです。 ですから、恐らく、親が別姓になることが子供にどういう影響を与えるかというようなことかなと私は何となく思っているんですけれども、今までこういう議論がよくあちこちでありましたので、副大臣も承知されているのじゃないかと思うのです。 全くそういう感覚が理解できないというのでしたら御答弁は結構ですが、おわかりになるのでしたら教えてください。 ○米田副大臣 この問題に関しては、子供のことを考えることは当然だろうと思います。 ただ、一部で言われるような、いじめが起きる云々とかいろいろありますが、目下のところ、必ずしもそれが何らかの根拠に基づいて論じられているとは思えないようなこともたくさんあるし、また、真剣に議論を深めなければならないこともあるだろうし、それは千差万別だろうというふうに思っております。 ○水島委員 時々、親が別姓だと子供がいじめられるんじゃないかとおっしゃる方は、確かに私もお会いしたことがございますし、それは割と極端な方の御意見なんだと思いますけれども、よく言われるのは、親の姓が別々だと子供がかわいそうなんじゃないかということも言われることがあります。 ただ、本当に、現にいろいろな事情の家族がいる中で、ある家族にかわいそうとかおかしいとか、そういう一方的なレッテルを張ることこそ、慎まなければいけないのではないか、大人の非寛容というものを示しているのではないかと思っております。 別姓にすると子供がいじめられるから法律を変えるのはよくないなんと言う大人がもしいるとすれば、私は、既に大人としての責任を放棄しているんじゃないかと思いますし、家庭の事情が他者と違うだけでいじめてしまう子供社会を直すために、まずは、自分が断固、法改正に立ち向かって、そのルールの整備をしていこう、そのような規範を示すのが大人の役割なのではないかと思いますけれども、この点については同意していただけますでしょうか。 ○米田副大臣 いかなる理由があろうとも、子供がいじめられるなんということがあっていいわけはないわけでありまして、夫婦別姓の論議と子供の立場というものは全く別な話である、子供の人権はきちんと確保されなければならない、そう思っております。 ○水島委員 それでは、今後ぜひ、先ほど官房長官にもお願いさせていただきましたけれども、内閣府としても前向きに、議論ができる体制をつくっていただきたい、そのことをお願い申し上げまして、次の質問に移らせていただきます。 副大臣にお伺いいたしますけれども、まず、リプロダクティブヘルス・ライツとは何でしょうか。 これは、性と生殖に関する健康と権利と訳されると思うんですけれども、これをわかりやすく子供たちに説明する場合には、どういうふうに言ったらいいでしょうか。 ○米田副大臣 直訳すると、リプロダクティブですから再生産可能なというふうになるんでしょうか、健康と権利。 ただ聞いただけではよくわかりにくい部分もあるんですが、御案内かと思いますが、改めて御説明を申し上げますと、このリプロダクティブヘルス・ライツの考え方は、一九九四年にカイロで開催された国際人口・開発会議において提唱された概念であります。 今日の女性の重要な人権と認識されているというふうに承知をしております。 その中心のテーマは、いつ何人子供を産むか産まないかを選ぶ自由、安全で満足のいく性生活、安全な妊娠・出産、子供が健康に生まれ育つことなどが含まれておりますが、これらに関連しまして、思春期や更年期における健康上の問題等、生涯を通じての性と生殖に関する課題が幅広く議論されているわけであります。 今申し上げたようなテーマ、その言葉どおり素直に受け取るならば、これは至極当たり前の常識的な課題であるし、大変重要な課題であるだろうというふうに考えております。 したがいまして、平成十二年に閣議決定されました男女共同参画計画におきましても、女性の生涯を通じた健康を支援するに当たっての重要な基本的な考えであるということで明確に規定されております。 ○水島委員 ありがとうございます。 その重要なリプロダクティブヘルス・ライツにつきましては、今回の懇談会報告書の中でも「性に関し適切に行動を選択できる力の習得」としてページが割かれておりまして、性は今の子供たちにとって重要なテーマであると思いますし、私も、十代の人工妊娠中絶が余りにふえているということに本当に心を痛めている一人でございます。 性教育とリプロダクティブヘルス・ライツの関係についてですけれども、この報告書の中では、「思春期の若者の性に関しては、親やその他の大人はとまどい心配しながらも、とかく目をそらしてしまいがちであり、大人の適切な支援がないままに若者の性に関する多くの問題が生じている。 情報メディアの進展で若者が性的情報に直接さらされるようになり、また、身体的な成熟の時期をより早く迎えるようになっている。 」と、今日の状況を認めた上で、性の意義と危険性を述べ、さらに、性的な対人関係における主体性の強化、相互の尊重、いたわりの精神や男女平等の意識に根差した行動を選択できる力をはぐくむことの重要性を指摘しておりまして、「若者の性感染症や人工妊娠中絶の増加に対しては、性感染症の予防や治療、避妊などについて正しい知識を教育することが重要である。 」などと、性教育の必要性を説いているわけでございます。 この内容は、副大臣、全くこのとおりということでよろしいでしょうか。 ○米田副大臣 全く当然のことだと思います。 ○水島委員 ありがとうございます。 ここのところ、国会におけるリプロダクティブヘルス・ライツ、特にライツの部分について、私は、何だか、かなり議論が矮小化されているのではないかということを危惧しているわけでございます。 どうも、子供を産むか産まないかの権利という議論が中絶問題に特定され過ぎているような、それは意識的にか無意識にかわかりませんけれども、そんなふうに今までの国会における審議を見てきたわけでございますけれども、本来、リプロダクティブライツというのはもっと本質的な権利でございますし、それは先ほど副大臣が、極めて常識的なこととしてお認めになったことであるわけです。 産むか産まないかを決めるというのは、例えば、今子供を産んだら自分の生活はどうなるかとか、自分が思い描いている人生にとってそれはどういう意味を持つかとか、だれがサポートしてくれるのかとか、このようなことを総合的に考えて、パートナーとも十分に相談をした上で相手との関係を考えるということだと思いますけれども、この姿勢が欠けているから望まない妊娠や中絶が多くなるのではないかと私は思っているわけでございます。 このように、リプロダクティブライツというのは、何も、中絶をしていいかいけないか、そういう話ではなくて、トータルに考えて、ちゃんと自分の人生の中で性の問題を位置づけていくという権利と思っておりますけれども、例えば二〇〇二年七月二十二日の決算行政監視委員会におきまして、坂東局長が、「リプロダクティブヘルスについては、生涯を通じた女性の健康ということで、大事だという合意はされているんですけれども、ライツについては、いろいろな意見があるというふうな記述になっております。 」というような答弁をされていたりしておりまして、それ以上には踏み込まないというような姿勢が気になっております。 先ほど、副大臣もお認めになったように、これは極めて当たり前の、常識的な、また重要な権利であるとするならば、なぜここで、「ライツについては、いろいろな意見があるというふうな記述になっております。 」と言われて、その後、でも、権利というのはごく当たり前のことですというふうに続けられないんだろうかと、私は、ここの部分が非常に気になっております。 これは中絶の問題に矮小化された議論に乗るのではなくて、政府として、リプロダクティブライツというのはもっと大きな概念なんだということをきちんと啓発すべき、そういう答弁をされるべきだったのではないでしょうか。 ○米田副大臣 その坂東局長の答弁の際の細かい状況を今確認する手だてはございませんが、今、水島委員のおっしゃっている基本的な考え方、私も全く同意をしております。 恐らく、この間、そのライツの部分につきまして、いわゆる中絶、堕胎の自由もあるんだというふうな流れが一部にあるのではないかということを指摘して、もしそういう流れがあるならば極めて警戒すべきである、審議等でそういう御意見も出た時期、段階がさきの国会でもございました。 そのことについて、そのライツの部分にいろいろな議論がある、まさに矮小化された部分の議論、かなりそういう議論が存在する時期があったということを念頭に置いての局長の答弁であったのではないかというふうに思います。 ○水島委員 私も何だかその中絶の議論に乗るようであれなんですけれども、中絶をする権利、堕胎をする権利というようなことが議論になったというふうにおっしゃるわけですけれども、中絶というのは、私は、権利だから喜んで行使するというようなものではなくて、本当に追い詰められた最後の手段なんじゃないかなと、一人の女性として思っております。 副大臣は男性ですから、当然、中絶された経験はないでしょうけれども、これは体にも非常に傷を残しますし、心にも傷を残す。 よく私も、十代の子供たちで、中絶をした子供たちのデータを栃木県がまとめたものを見ましたけれども、そのアンケートの中では、本当に傷ついたので、もっと早く学校で教えておいてほしかった、知識があればこんなことにはならなかった、本当に傷ついたという意見が大半で、中絶をして楽しかったとか、またしたいとか、そういう意見は、私が見たところ、見つけることができませんでした。 それほど、非常に傷を伴うものであるわけですから、その権利があるかないかということを議論すること自体、私は非常に、意味がないと思いますし、例えばレイプをされて、どうしても育てられない、子供を中絶せざるを得ないとか、本当にいろいろな事情によってせざるを得ない、追い込まれた状況の中で恐らくするんだと思います。 そういうことを殊さらにそこだけ取り出してきて、中絶する権利があるかないかというような話をするというのは、このリプロダクティブライツ全体の概念を非常にゆがめることになるのではないかと、これは真剣に心配をしております。 今の点について、私が話したようなことを米田副大臣も、私、多分変なことを言っていないと思いますけれども、変なことを言っていないと言っていただけますでしょうか。 ○米田副大臣 いや、変なことをおっしゃっていませんよ。 要するに、先生は御専門でおられるので、もちろんよく御承知でしょうが、我が国は中絶、堕胎を認めている、その要件は厳しく法によって限定されているわけでありまして、むしろ、この一連の議論の中で、リプロダクティブヘルス・アンド・ライツの、先ほども確認したような基本的な考え方、それは当然であるという、だれしもが基本的にそう思っていると私は思うのです。 ただ、そこから派生して、まさに今委員が御指摘のような、大変なことだろうと思います。 女性にとって、中絶、堕胎というようなことは体を傷つける。 そういう極めて重大な課題であるにもかかわらず、それが安易に行われるような方向に行ってはならないという警戒感からのいろいろな議論がこの間存在をしたということを私は申し上げているわけであります。 ○水島委員 ぜひ、そういう御認識であれば、これは権利がある、ないという議論に陥らないように、中絶をするとこんなに傷つきますよとか、私も、中絶をした友人からしょっちゅう電話がかかってきて、その心を聞いたりとか、そういうことが今までいろいろありましたけれども、そのときには何とも思っていなかった人でも、後でこれは物すごい心の傷になるんだなということを本当に実感しております。 ですから、権利がある、ないという話にするのではなくて、ぜひ、本当に危険情報を公開していただく。 これは何てことないように見えるかもしれないけれども、後でこんなに多くの人が傷ついているんですよ、もう一度思いとどまったらどうですかというような、そういう形での啓発をしていただいた方がよろしいのではないかと思いますし、そうやって、中絶という最後の事態を防ぐための性教育であるとか、あるいは緊急避妊薬であるとか、そういった前段のことをきちんと整えていく必要があると思っております。 中絶する、しないを本当に権利という観点から考えるのであれば、逆に、本当に、生まれた子供を、では国が、社会が責任を持って、親と関係なく全員育てられるのか、私は多分そこまで話が発展していくと思いますので、その覚悟があるというのならまた話は別かもしれませんけれども、ぜひ、安易に中絶が権利か権利じゃないかという議論にはまっていくのではなくて、本当にこれは当事者を非常に傷つけることであって、何としても避けなければいけない、そういった観点から、当事者をむしろ被害者として位置づけていただくぐらいの感覚で話を進めていただきたいと思っております。 また、このあたりに関連いたしまして、これは遠山文部科学大臣が、ことし二月二十六日の衆議院文部科学委員会におきまして、「性の自己決定権なんていうのがよくわからないんでございますけれども、」と答弁をされております。 文部科学大臣でございます。 こんな人が大臣をやっていて大丈夫なんでしょうか。 ○米田副大臣 文部科学大臣がどういう趣旨で御発言されたか承知しておりません。 したがいまして、内閣府としてコメントする立場ではないと思います。 ○水島委員 これは私、きちんと事前に通告もしておりますので、ぜひそこの議事録をきちんと読んできょう来ていただきたかったなと思いますけれども、特にきょうは官房長官のかわりということでございますので、ちゃんと読んできていただきたかったなと思います。 それは、性の自己決定権から子供を守れというような、そういう記事に対して、これは非常によくわかる、つまり、子供に性の自己決定権というのを与えるのはむしろ子供がかわいそうだ、そんなような趣旨だったのかなと思います。 いずれにしても、性の自己決定権なんていうのがよくわからない、これはリプロダクティブライツのことであるわけですけれども、それがわからないと言っている人が、本当に学校の教育の中で性教育なんてちゃんと責任を持ってできるのでしょうか。 私、先日いろいろ物議を醸し出した冊子の問題なんかを見ておりますと、これは何か、厚生労働省の問題というよりは、本来必要な性教育を現場でできていない文部科学省の問題なんじゃないかなと思ったりもしたんですけれども、今回の報告書の内容でも、かなり教育に踏み込む部分、性教育に踏み込む部分がございますけれども、ちゃんとこの報告書の内容に沿って、大臣を初めとして、文部科学省への指導がちゃんとできますでしょうか。 今、副大臣は、文部科学省にとやかく言う立場ではない、私は内閣府の人間だというふうにおっしゃったわけですけれども、先ほど官房長官が約束されたように、今回、青少年プランをつくって各省庁ときちんと連携をしてやっていくというふうにおっしゃっているわけですから、文部科学省が何をやってもそれは文部科学省の勝手だという立場はとれないと思いますけれども、改めていかがですか。 ○米田副大臣 文部科学大臣の思い、御趣旨を今確認するすべがないというふうに申し上げたわけでありまして、ここに、手元にちゃんと議事録もございます。 要するに、私が申し上げたいのは、まず、リプロダクティブヘルス・アンド・ライツの基本的な考え方、先ほど御答弁申し上げました。 水島先生からも御指摘があった。 それに政府が異論があるわけではないし、私個人も異論は別にあるわけではない。 ごく常識的な、当たり前の、すばらしい理念であるというふうに思っております。 それから、この文部科学大臣の御答弁を見ますと、最後に、「子供たちにとって大事なのは、人間としての尊厳をしっかり守れるかどうか、そして、みずからの将来にとってマイナスになるような行動をしないようにするかどうか、そういったことをきちんと学校教育においても支え、指導していくということが大事だと思っております。 」こういうふうにお答えになっているんですね。 ですから、言葉の使い方という問題もあるわけでありまして、御趣旨はきちんと踏まえていらっしゃるというふうに私は思いますよ。 そこで、内閣府としましても、引き続き、文部科学省を初めとする関係機関との緊密な連携を保って、女性の生涯を通じた健康支援のための総合的な施策を推進していくという考え方に変わりはございません。 ○水島委員 ありがとうございました。 きちんと、少なくとも、この懇談会報告書に書かれているこのリプロダクティブヘルス・ライツの考え方、私は大変結構な考え方だと思いますので、ぜひこの姿勢に従って、各省庁、特に文部科学省ときちんと連携をとりながら施策を進めていただくことを改めてお願い申し上げまして、質問を終わらせていただきます。 ありがとうございました。 |