労働安全衛生法○水島委員 民主党の水島広子でございます。 本日もよろしくお願いいたします。 まず、法案の質疑そのものに入る前に、やはりどうしても私も伺っていて腑に落ちないので、アスベストについて一問だけ伺いたいと思います。 先日、西副大臣がきちんと、これは行政の決定的な失敗というふうに御答弁されたということは、大変私たちは頼もしく伺ったところであったわけなんですけれども、それに対して、その翌日でしたでしょうか、事務次官が早速それを否定するようなことをおっしゃり、そしてそれに追い打ちをかけるように、今度は大臣が、その都度厚生労働省としては対策をとってきたと考えているとおっしゃっていまして、問題があったとすれば、それは省庁間の連絡と、先ほどもそのような御答弁であったと思います。 本当にこれが省庁間の連絡、省庁間の連絡も確かにかなり悪かったと思いますけれども、例えば、きょう午前中、福島委員もお触れになったようですが、新聞にも七月二十一日に載っておりますけれども、旧労働省が作業場での石綿粉じんの濃度を規制する基準値、作業環境評価基準と言われているものですけれども、これを一九七六年から今年四月まで、二十九年間も変更しなかったということが明らかになっているわけで、この基準値のレベルは、WHOが安全の目安とする基準の二百倍。 これは本当に驚くことなんです。 全くこれは省庁間の連絡という問題ではなく、旧労働省の問題だと私は思います。 このこと一つとっても、省庁間の連絡が悪かったとだけおっしゃるのはやはり問題ではないか、大変僣越ながら申し上げますと、尾辻大臣らしくないのではないかと思うわけです。 薬害エイズの問題も水俣病もそうでございますけれども、何か、官僚というのは間違いを犯さないものなんだという神話にみんながしがみついてしまって、失敗を認められないために、どんどん対応が後手後手になっていく、その間に被害がどんどん広がっていくということが過去の歴史でも繰り返されてきているわけでございます。 ここはひとつ政治家として、尾辻大臣も西副大臣としっかりと力を合わせていただいて、官僚も、間違いを犯してほしくはないけれども、時にはやはり結果から見ると間違いを犯している、それに一刻も早く気がついて前向きに対応していくことで、それまで被害に遭われた方たちへの、それがせめてもの気持ちということにもなりますし、また、新たなる被害を、本当にこれはきちんと禁止して対応していかないと、一日一日被害というのは広がっていくわけですから。 本当にそのことはぜひ、尾辻大臣として、政治家として、官僚は、間違ってほしくはないけれども時には間違って、気がついたら、みんなで力を合わせてまた立て直していこうじゃないか、そのような気概を今回、厚生労働省でしっかりと見せていただきたいと思うんですけれども、一言、御答弁をお願いいたします。 ○尾辻国務大臣 私も日ごろ、役人、行政が決して間違いを犯さない、そういうことで過去を見てはいけない、そしてまた、言うならばそういうことに立っての言いわけといいますか、そうしたことを言ってはならないということはいつも言っております。 今回もそうあるべきだと基本的にまず思っております。したがいまして、きっちりした検証をしようということを今言っておるわけでございます。 ただ、だからといって、何でもただ謝ればいいというものではないと思っておりまして、説明すべきは説明すべきでありますし、こうしたことでしたということはちゃんと申し上げた上で、改めて検証すべきことは検証し、反省すべきことがあれば反省しなければならぬというふうに思っておるところでございます。 今幾つかお述べになりました、例えばWHOの基準との違いでございますけれども、これも、申し上げますと、WHOが言っていますのは、自然界にアスベストはありますので、自然界にあるアスベスト、我々が日常生活をしている、子供から大人、お年寄りまで生活している、そうした中で、二十四時間生活している中で、アスベストの濃度というのがどのぐらいであれば危険だというのを示しておるはずでございます。 私どもが示しておりました濃度の基準というのは、これは、作業をする中で、宇宙服みたいな完全防護した作業服を着て、そして防護マスクもかぶって作業をする、その作業場における濃度がこのぐらいの基準以下でなければ危険だということを言っておるわけでありまして、およそ基準が全く違うものでありますから、これは単純比較はできない基準だというふうに思っております。 いろいろ申し上げたいことはあるんですが、そのように、御説明すべきは御説明し、私どもはきっちり、改めて過去へさかのぼって検証し、間違いがあれば、それは真摯に反省をするつもりでございます。 ○水島委員 今の御説明、こちらもいろいろ申し上げたいことはあるんです。 例えば、今の大気中の基準だということをおっしゃったわけですが、旧環境庁、現環境省ですけれども、こちらは、大気の方については、八六年にWHOが示した安全基準と同じ基準に八九年にされているということで、きちんと大気の部分については対応はされてきているわけですけれども、ただ実際に、では作業場の基準がそのままでいいのかといえば、これだけ有害性が指摘をされてきている中で、二十九年間も一切変更をしていない。 ここの新聞に書いてあることが正しいのであれば、基準は石綿以外にベンゼンやアセトンなど九十項目の物質の基準値を定めているので、石綿だけの変更は手続上難しく、時間がかかったと厚労省が説明していると書いてあるんですが、これがもし真実であるとすればそれはとんでもない話であって、今首を皆さん振られているので、真実でないのであれば、きちんとこのあたり、納得できるような御説明を、後ほどで結構ですので、明らかにしていただきたいと思っております。 この話をやり始めますと、多分一時間、全部持ち時間を使ってしまいそうですので、本日はこの程度にさせていただきたいんですけれども、やはりこちらは、薬害エイズに次いで今度はアスベストかということで、かなりもともと警戒心を持って見てしまうところがございますから、そのような経緯を踏まえて、必要以上に丁寧に御対応をいただきたいと思っております。本当に守るべきなのは人の命と健康ですから、何かフライングをしてしまって、取り返しがつかないものといったらやはり人の命と健康でございますので、ぜひ、疑わしいときは必ず人の命と健康を守るようにという方向にこれからも施策をリードしていただけますように、今回のこの検証の結果を期待してお待ちしたいと思っております。 ただ、本当に、できたら最初に大臣がおっしゃることとしては、その都度厚生労働省としては対策をとってきたと考えておりますで終わりにしないで、考えておりますが、まだ検討しなければいけないところもあるので現在検討中でございますと言っていただけると大分トーンが違ったのではないかと思いますので、その点は感想でございますので、時間もなくなってまいりましたから、法案の審議の方に入らせていただきたいと思っております。 これも、私が持っております記者会見のメモに基づいて今申し上げておりますから、いろいろと誤解があるかもしれませんけれども、ぜひ、その点も含めまして、後で、さすが尾辻大臣、きちんと対応してくださったと思えるような成果をきちんと残していただけますよう、そして一刻も早い対応を本当に心よりお願いをいたします。 さて、今回、労働安全衛生法において初めて職場のメンタルヘルスが法律事項として規定されたということは、一歩前進として評価をしているわけでございますけれども、本当はこちらも待ったなしの深刻な状況にございますので、その事態の深刻さを考えますと、一歩と言わずにもう何歩も前進してほしかったというのが正直なところでございます。 また、一歩前進とはいっても、規定されただけで実効性がないということでは困りますので、幾つか気になる点について質問をさせていただきたいと思います。 まずは、原則的な点について大臣に伺いたいんですけれども、今回の法改正で、産業医の職務はふえているわけでございますし、きちんと規定をされているわけですけれども、その権限の強化や独立性の確保については、結局全く触れられずに終わっているわけでございます。ドイツやフランスでは、産業医の選任、解任に当たっては、事業者と労働者の合意が必要というふうに聞いておりますけれども、我が国の場合、産業医の選任は専ら事業者の権限ということでございまして、そのあり方が産業医の中立性を損なっているという心配があるわけでございますけれども、その点について大臣がどのようにお考えになっているか、お聞かせいただきたいと思います。 ○尾辻国務大臣 今の御質問にお答え申し上げる前に、先ほどお触れになりましたことについて、一言だけはぜひ申し上げておきたいと思います。 一部報道などによりますと、ただずっと放置してきた、そして面倒くさいから放置してきたんだというようなことも言われておりますけれども、これも何回も専門家の皆さんに審議をお願いして、専門家の皆さんから、基準濃度を変える必要はないというお答えが出たものですから、結果として変えていない。 ただ、何回もその審議をお願いしておるという経緯はございます。 そうしたことはいずれ私どもも本当に検証したいと思っておりますから、何も言いわけをするための検証という意味じゃなくて、ちゃんと検証したいと思っておりますので、しっかりとお出しをしたいと思いますので、ぜひまたごらんいただいた上での御批判もいただきたいというふうに思っております。 あえて一言だけ申し上げさせていただきました。 それで、今の御質問でございますけれども、労働安全衛生法におきましては、産業医が労働者の健康を確保するために必要があると認めますときは、事業者に対し労働者の健康管理等について必要な勧告をすることができ、事業者はこれを尊重しなければならないとされておるところでございます。 労働安全衛生規則におきましては、事業者に対して勧告をした産業医に対して、解任その他不利益な取り扱いをしないようにしなければならないというふうにしております。 従来より、これらの規定により産業医の権限、中立性を担保しているところでございまして、医師はその患者を守ることが使命であることを考えますと、労働者の健康上不利益となるような判断はされないものと考えておりますけれども、今回の改正法の施行に当たりまして、改めて、産業医としての職務が適切に遂行されるよう、事業者の指導等にも努めてまいりたいと考えておるところでございます。 ○水島委員 きちんとその趣旨が徹底されますように、また事例の検証も含めて、ぜひ実行していただきたいと思っております。 また、今回、私がまず思いましたのは、そもそも産業医が義務づけられているはずの職場であっても、産業医を置いていないところすらあるという現状であるわけですけれども、そんなところでさらに義務規定をつくっても効果があるんだろうかというのが私の素朴な疑問でございました。 つまり、労働基準監督官の数が少な過ぎて、外的なチェックシステムが十分に機能していないと考えられるわけなんですけれども、この点についてはどうしていかれるおつもりでしょうか。 これも大臣に伺いたいと思います。 ○尾辻国務大臣 労働者の安全と健康の確保のため、今回の法改正の内容の適切な施行を図るべく、事業場に対する適切な指導に努めてまいりたいと考えております。 今、本来置くべきところにというお話もございましたけれども、私どもは、必ず産業医というのは置いてもらわなきゃいけない、これは当然のことでございます。ただ、そうしたところが万が一という場合には、これは当然解消をしなきゃいけないということでございまして、労働基準監督署におきまして監督指導を行っております労働基準監督官については、これまでも必要な増員に努めるなど体制の整備を図ってきたところでございますけれども、さらにその体制を充実させていきたい、そしてそういう中で指導してまいりたいというふうに考えておるところでございます。 ○水島委員 さらりとお答えいただいてしまったので、本当にちゃんとやっていただけるのかなとちょっと心配なんですけれども。産業医を置くことが義務づけられているのに置いていないところが明らかにかなりの割合あって、何でそういう現実が許されているんだろうかというのは、この分野の専門でない政治家としての本当に素朴な疑問であるわけなんです。 今の労働基準監督官の数から単純に計算いたしましても、何か問題の事例があったときにそれに対応することはできるかもしれないけれども、常時、全体をチェックして、ちゃんと義務づけられているところに産業医が置かれているんだろうか、そして今回規定されているような義務が果たされているんだろうかということをチェックするにしては、余りにも労働基準監督官の数は少ないんじゃないか。簡単に計算してもそのようになると思いますので、ぜひ、今ちょっとさらりとお答えいただいてしまったんですけれども、この増員ということも含めまして、何とかこの法律が絵にかいたもちにならないように、きちんと対応できるような仕組みをもう一つ考えていただけないかなとは思うんです。 局長から何か名案があるようですので、端的によろしくお願いします。 ○青木政府参考人 確かに、労働基準監督官の数は実働ベースでいっても三千人程度でありますし、私ども、安全衛生関係だけではなくて、労働関係法令、労働基準関係法令の施行をきちんとやるということでやっているわけであります。 適用対象事業場がたしか四百万ぐらいあったかと思いますので、なべて平たくやってしまうと、十年とか二十年に一遍しか事業場に立ち入りできないというような話でございます。ですから、私どもは、いろいろな工夫をしまして、個別に事業場を訪問して指導するというのが基本でありますから、このやり方なども、重点的な対象を決めたり、あるいは、むしろ多くの事業場に集まっていただいて集団指導をするとか、業界を活用するとか、そういうような工夫をしながら、必要な体制が不足している部分についてはやり方を工夫しまして行政を進めていっているところでございます。 今後とも、そういうことで、大臣からもお答えがありましたように、増員、体制の増強というのはもちろんまず第一義的に考えなくちゃいけませんが、そのほか、それでも足りない部分が出てまいりますので、そういう工夫をしていきたいというふうに思っております。 ○水島委員 ぜひ成果を上げていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。 また、現在、一つの事業所には実際には多くの方たちが入って仕事をしているという実態がございまして、そういういろいろな働き方の方たちが入っているという中では、時間外労働の把握というのは実は簡単なことではないと思うんです。 例えば、今回、時間外労働の把握をして面接義務をかけるということは、派遣労働者についても当然対象になるということでございますけれども、派遣労働者の場合には、時間外労働を把握できるのは派遣先だけだけれども、面接義務がかかってくるのは派遣元という関係になっていまして、そこの両者の連携をどのようにしていくのかというところが気になるんです。 この点は局長の御答弁で結構ですので、お願いいたします。 ○青木政府参考人 今委員お話しになりましたように、派遣労働者に対する面接指導については、派遣元の事業主が実施義務を負うということになっているわけでありますが、一方、労働時間の把握について、これは派遣先事業主が実際に現場で管理をしているということになりますので、したがって、労働者の派遣法におきまして、派遣先事業主は派遣元事業主に対しまして、派遣就業をした日ごとの始業し、及び終業した時刻並びに休憩した時間を通知しなければならないということに法律上規定をされております。これにより、派遣元事業主は派遣労働者の労働時間の状況を適切に把握するということが可能、こういう制度的な仕掛けになっております。 こういうことを通じまして、きちんとやっていきたいというふうに思っております。 ○水島委員 制度上可能となっていても、実際それが運用されるかどうかというところは、今後の御努力ということもあると思いますので、ぜひそこのところはきちんと、よろしくお願いいたします。 次に、メンタルヘルスに入ってまいります。 健康情報というのは個人情報の中でも特に機微な情報でございまして、そもそも厳格に保護されるべき性質のものだと思いますけれども、もちろん、一方では、事業者は安全衛生法等で労働者の安全の確保のために必要な措置を講ずる責任を有しておりまして、民事上の安全配慮義務を果たすことを期待されているため、法の許す範囲で、労働者の健康状態や病歴等の個人情報を収集し、職場環境整備等に活用するということになっているわけでございます。 その際、当該労働者の健康情報を医師以外にも必要に応じて関係者に対して提供されるということがございまして、これは、本当に気をつけていかないと、労働者のプライバシーの侵害に至ってしまうということもあるわけです。 特にメンタルヘルスについては、誤解や偏見を招きやすいわけですので、より慎重な対応が必要と考えますけれども、どのような配慮を行うべきであるとお考えになっているか、大臣のお考えをお聞かせいただきたいと思います。 〔北川委員長代理退席、委員長着席〕 ○尾辻国務大臣 心の健康の問題は、それ自体への誤解も残っておりまして、心の問題を抱える労働者に対して健康以外の観点から評価をされたりするなどの問題がありますために、メンタルヘルス対策を推進するに当たりましては、プライバシーの保護は非常に重要であると認識をいたしておるところでございます。 労働者の健康情報の保護につきましては、個人情報保護法に基づき示しております雇用管理に関する個人情報の適正な取り扱いのための指針に定めた措置について、健康情報を取り扱うに当たっての留意事項を示し、この周知、普及を図っているところであります。 この中で、診断名、検査値等の生データをそのまま扱うのではなくて、産業医等が適切に加工した上で事業者に提供する等の措置を求めているところでございます。 こういう表現をいたしますと、先生は御専門でいらっしゃいますから、加工した上でということは、むしろ私以上におわかりいただけると思いますので申し上げませんけれども、そのように考えておるところでございます。 ○水島委員 今おっしゃっていただいたところは非常に重要な点だと思います。 職場で必要とされることというのは、その人がどういう病気であるかというレッテルを張ることではなくて、どういう配慮がそこの職場で必要なのかということだけが必要な情報だと思いますので、今言ってくださいましたように、くれぐれも、診断名、病名がそのまま伝えられるというようなことではなく、どういう配慮が必要なのかという点だけがきちんと事業者側に伝えられるようにというところだけは、指針をおつくりになる上でもこれは徹底をしていただけますように、重ねてお願いをいたします。 二〇〇四年の九月六日に公表されました労働者の健康情報の保護に関する検討会の報告書には、「メンタルヘルス不調の者への対応にあたって、職場では上司や同僚の理解と協力が必要であるため、産業医・産業看護職・衛生管理者等の産業保健スタッフは、本人の同意を得て、上司やその職場に適切な範囲で情報を提供し、その職場の協力を要請することも必要であると考えられる。 」と書いてあるわけでございます。 この提起は、本人同意という考え方が示されたもので、安全衛生法の中ではかなり意味のあることかなというふうに思ったわけですけれども、この点について、大臣のお考えはいかがでしょうか。 ○尾辻国務大臣 メンタルヘルスの不調者への対応に当たりましては、産業医等の産業保健スタッフが、原則として本人の同意を得た上で上司やその職場の関係者に適切な範囲で情報を提供し、必要な措置をとっていくことが必要であると認識をいたしております。 今回の法改正にあわせまして、現行のメンタルヘルス対策に係る指針の見直しを行いまして、労働安全衛生法に基づく指針を示すこととしておりますけれども、この指針の中でプライバシー保護に関して留意すべき点についても記述することとしておりまして、産業医や事業者に対して、この指針の普及を通じてメンタルヘルス対策におけるプライバシー保護について徹底を図りたいと考えております。 ○水島委員 ぜひ、基本的な理念としてやはりプライバシー保護、本人の同意を得て何かを伝えるということはきちんと理念として徹底させていただきたいとは思うんですけれども、その一方で、気になりますのは、本人同意などという言葉がひとり歩きをしてしまうということでございます。例えば、今回は面接義務についても本人の申し出が要件になっているわけですけれども、本人同意とか本人の申し出という概念がひとり歩きしてしまいますと、自己責任論へと偏ってしまって、本人が同意しなかったから、本人が申し出なかったからということで、事業者の免罪符になってしまうのではないかということも心配であるわけです。 健康を顧みることなく働かざるを得ない、あるいは不健康がリストラの条件になりかねない職場の現状では、申し出ることのできない労働者も実際には多いと思いますけれども、本人の申し出、本人の同意というところに偏重しないように、そこのところは大臣はきちんとお考えくださっていますでしょうか。 ○尾辻国務大臣 事業場においては労働者が確実に申し出を行うことができるように事業者を指導するということがまず必要だと思っておりまして、この指導もいたしますけれども、産業医が面接指導を受けさせる必要があると判断した者に対して申し出を勧奨することができることを、面接指導マニュアルで詳細な勧奨の方法等を明示することとしておるところでございます。 ただ、この申し出が、そういうふうに言いますと、事業者の免罪符になるのではないかという御指摘でございますけれども、今回の改正におきましては、面接指導を行う労働者以外の労働者についても面接指導等必要な措置を実施する努力義務を課していることから、申し出をしなかったことが事業主の免罪符にはならないと考えております。 ○水島委員 本当にそこの点は、ぜひ、今後いろいろ御指導をしていただく上でもきちんと踏まえていただきたいと思っております。 ただ、やはり、それを伺ってもなお納得できないのは、午前中の審議からもございますけれども、なぜ百時間以上の時間外労働者に本人の申し出が必要かというところは、どうしても納得できません。 百時間という時間外労働時間は、睡眠時間が五時間以下になると脳・心臓疾患を発症する危険性が極端に高まるという疫学研究調査報告から導かれたということでございまして、疫学研究に裏づけられているということであれば、本人の申し出は必要のない、ある程度客観的な基準として考えてよいのではないかと思います。 一カ月百時間以上というのは、既に過労死し得る時間外労働であって、予防の域を超えているわけでありますから、申し出などと悠長なことを言っている場合ではないと思います。 そもそも、百時間も時間外労働をしていて、既に心身の健康を損なっているという状況で、本人の申し出を期待するということが、私は発想として間違っているのではないかと思うんです。私も精神科医として過労自殺の意見書を書くなどかかわったことがございますけれども、そういう状況になりますと、本人は仕事に圧倒されてしまって、それ以外のことが全く考えられない状態になりますし、既にうつ病を発症しておりますと、自己否定感や罪悪感なども手伝って、とても当然の権利である面接を希望するなどという前向きな行動がとれるものでもありませんし、また、疲労の蓄積を確認するというんですけれども、疲労の蓄積についても否定するということがあり得るわけでございます。 そもそも、百時間を超える時間外労働についてこうやって国会で大臣と議論をしているということが明らかに異常な事態であって、もうそんな異常な事態であるわけですから、百時間以上の時間外労働をしている人については、申し出は要らない、必ず面接をして、当然これは健康に既に悪影響を与えている数値なわけですから、即刻何らかの措置を講じていくというような対応が必要だと思いますけれども、百時間以上の時間外労働については申し出という要件を外していただくことはできないんでしょうか。 ○尾辻国務大臣 けさほど来、このことについては御議論がございます。 これは労働政策審議会でもいろいろ御意見があったというふうにもお聞きをいたしておりますけれども、この審議会の建議を踏まえますとどうしても、けさから申し上げておりますように、時間外労働が月百時間を超えているということと疲労の蓄積が認められるということを要件として面接指導の対象者とするということになる。 そこで私どもはそういうふうに予定をいたしているところでございます。 そして、その二番目の疲労の蓄積については、通常、体調の不良、気力の減退などほかの人には認知しにくい自覚症状としてあらわれるものでございますから、要件に該当するか否かの一義的な判断については労働者御自身にゆだねざるを得ない、こういうふうに考えておるところでございます。 いろいろ御意見はございますけれども、メンタル面の情報というのは、個人情報の話も出てまいりましたけれども、やはりどうしても事業主に把握されることを恐れる方がおられるわけでありまして、そういう恐れる方を守るためにもということで、私どもはこの申し出ということが必要だと今考えておるところでございます。 ○水島委員 百時間以上時間外労働をしている方をつかまえて、事業主に知られることを恐れるかどうかというレベルの話ではなく、もう死ぬか生きるかのところの話でございますので、ここは本当にお考え直しいただく余地があると思います。 ぜひ、大臣も含めて、委員の皆様方も、こういう過労自殺をする、それだけの長時間労働をされていた方の最期の日々がどんなだったかということのいろいろな克明な記録もございますので、本当にお目通しいただきたいと思います。 私も本当に、その意見書を書かせていただいて、もうとてもこれは何か小理屈をこね回してどうにかなるような世界の話ではなくて、明らかに間違った状況に突入してしまっているわけであって、その悪循環は自分の力ではとても抜け出ることができません。もうそういう精神状態になってしまっているわけですから、自分で気がついてそこから出ていらっしゃいというのは間違った期待であるということを、もう一度お考え直しいただきたいと思います。 これはもう強制的に、ある意味では、言葉は悪いですけれども、本当に仕事中毒的な状態にならされてしまっている状態ですから、周りから、こんなに働いてはいけないと言わなければいけないような事態にあるのだということを、ちょっとここのところについては、ぜひこの法案の審議が終わるまでにもう一度きちんと御検討をいただきたいと思いますし、やはりこんなことを悠長に審議の中で話しているということそのものが私は間違っていると思いますので、ぜひそこの点は大臣の御英断を期待させていただきたいと思います。 そして、地域産業保健センターについて伺いたいんですけれども、二〇〇五年度からメンタルヘルス支援事業が地域産業保健センターの事業の一部として入っているわけでございまして、そのセンターでは働き盛り層のメンタルヘルスケア支援事業が準備中ということでございますけれども、個別の労働者の相談に応じた場合、それを当該の事業者に報告するというふうに考えられているんでしょうか。 これは局長に御答弁をお願いします。 ○青木政府参考人 地域産業保健センターは、原則として産業医の選任義務のない小規模事業場の労働者の健康管理を行うということで、監督署のエリアごとに設置をしております。 今年度から、働き盛り層のメンタルヘルスケア事業ということで、そういう事業も始めております。 事業場の規模によらず相談を受けるという体制をとっているところでございます。 メンタルヘルスに関する相談を随時行えるようなさまざまな工夫を凝らして、地域に根差した産業保健の拠点として広く活用されるようにしていきたいと考えております。 (水島委員「事業者に報告するかどうかというところを聞いたんですけれども、今、質問に全く答えていないんですが。答えられなかったらちょっと時計をとめていただかないと」と呼ぶ) ○水島委員 では、大臣にあわせてお答えいただいてしまいます。 局長が何かお答えになりたくないようですので、大臣に伺います。 今局長が御説明になったように、地域産業保健センターというのは、産業医を選任する義務のない小規模事業所に働く労働者に対して、ある意味では産業医を代替する措置として置かれているものであるわけですから、今回、産業医がメンタルヘルスについて配慮が必要だということがわかったときには事業者にそれを意見するというのと同じような機能を、当然この地域産業保健センターが果たすべきだ、この仕組みから考えてもそうだと思うんですけれども、大臣はそのようにお考えになって、そのようにしていただけますでしょうか。 ○尾辻国務大臣 今の御質問の意味を改めて私が理解したところで申し上げますけれども、地域産業保健センターの産業医がおります。 この産業医というのは、登録をしてはおりますけれども、企業に産業医として雇われているわけではございません。この関係について、地域産業保健センターにおる産業医が、登録されている産業医が企業に対してどういうふうに意見を言えるか、また積極的にかかわり合いを持つべきだという御意見での御質問だと理解をしてよろしゅうございましょうか。 (水島委員「はい」と呼ぶ) では、そのように理解をさせていただいて、お答え申し上げたいと存じます。 労働者から相談を受けた地域産業保健センターの医師が、労働者の健康確保のため必要な場合に事業場に対して意見を述べるということは望ましい、当然望ましいと考えております。 まずは、地域産業保健センターの登録医が産業医として活用されることが期待されるところでございまして、産業医共同選任事業等、あるいは地域産業保健センターによる職場巡回指導等を通じて、小規模事業場でも産業医としての活動の促進が図られるようにしてまいりたいというふうに考えております。 実は私、先日見てまいりまして、頑張っておられる登録医の方々のお話も伺って、その役割が大きいということは実感をいたしておりますので、ぜひ活動の促進が図られるように私どもも努力したいと考えております。 ○水島委員 いろいろな施策の中で、どうしても小規模の事業所の方というのは、いつもいろいろな法律の例外規定のところに置かれてしまって、いろいろな恩恵にあずかることができないという仕組みになっているんですけれども、やはりメンタルヘルスのこと、また労働現場での健康の問題というのは、規模の小さいところで働いているからそれでいいんだということでは全くございませんので、産業医を置く義務のないところの代替措置としてこれがあるわけですから、当然、企業の産業医と同じだけの仕事をしていただけるような仕組みにはしていただく必要があると思います。 ちょっと、きのう、質問取りのときに伺いましたら、本人が希望すれば事業所の方に話しますよということでしたけれども、希望すればではなくて、基本的には話すのがいいけれども同意をしていただけますかというくらいの仕組みにしておいていただいた方が、本来の機能としてきちんとすると思いますので、そこはよろしくお願いいたします。 また、今大臣は地域産業保健センターの活性化というふうに言ってくださったわけですけれども、私は、メンタルヘルスについては意外とここが核になり得るんじゃないかなと思っておりまして、誤解や偏見を持たせやすいメンタルヘルスというのは制度をつくったからうまくいくというものでもありませんで、あらゆる資源を充実させておくことが現実的な考えだと思います。 メンタルヘルスの相談をまず自分の企業の産業医にするということがどうしても情報管理の点からも心配だというような人はいると思いますので、まずは、自分の企業に産業医がいるような場合であっても、地域産業保健センターに相談をして、それで、これはやはり職場に言った方がいいという判断があったときに改めてちゃんと企業の産業医に相談できるとか、そういう仕組み、そうやってワンクッション置くという方が気軽に相談できると思うんですけれども、地域産業保健センターをそのように活用されるということは、大臣はいかがでしょうか。 ○青木政府参考人 ただいま委員がおっしゃったことは、確かにそのとおりだと思います。 非常に言いにくいとか申し出にくいとか、それから、さすがに事業場内の労務管理との関係で、人事担当にはましてや言いにくいとか、そういうこともあろうと思います。ですから、そういうことを避けて制度的な仕掛けがちゃんと動いていくというためには、今おっしゃったような仕組みも取り入れてやっていくことが大切だというふうに思っております。 ○水島委員 局長からすっきりした答弁をいただきました。 大臣も同じお気持ちだと思いますけれども、本当にメンタルヘルスのことというのは、制度があるからどうぞお使いなさいと言って、それで済む問題ではありませんので、これが使いにくい人はこっちがいいですよというように選択肢をたくさん持たせることが幅広くいろいろな問題をくみ上げていくということになると思いますので、今局長からすっきりと答弁をいただきましたので、ぜひそのような経路をきちんと確立していただけますようにお願いいたします。 そのときには、当然、地域産業保健センターがメンタルヘルスの一つの拠点になっていくという場合であれば、医師以外の職種、例えば保健師の方などの活用を十分に考える必要があると思いますけれども、この点はいかがでしょうか。 ○青木政府参考人 労働者の健康管理のために保健師とか看護師という方々を雇用しているという事業場も少なくないわけでありますし、産業保健スタッフとして積極的な活動をしてもらえるという期待も持てるというふうに思っています。 そういう意味では、メンタルヘルス対策に関して、平成十二年に策定した事業場における労働者の心の健康づくりのための指針というのがございまして、そこにおいても、保健師の皆さん方は産業医等と協力しながら労働者のケアについて協力をしてもらう、担ってもらうというようなことも打ち出しております。 今おっしゃいましたように、さまざまな手段といいますかやり方というもの、あるいは多くのさまざまなスタッフを、ある資源といいますかそういったものを活用していくということは大切だろうと思っております。 今度、新たに指針を、今回の法律を契機としてまた定めようと思っておりますけれども、引き続きそういった役割の重要性についても示そうと思っておりますし、労働者の健康管理のために保健師等が活用されるように検討していきたいというふうに思っております。 ○水島委員 ぜひよろしくお願いいたします。 そして、メンタルヘルスについては、先ほど来申し上げておりますように、本人は申し出られるような精神状態にはないということが多くございます。これは、例えばうつ病の人に治療を勧める困難さを私自身も嫌というほど経験してきたわけですけれども、治療を勧めても応じないような方がメンタルヘルスの不調を自分の職場においてみずから訴え出るということは、症状が軽い場合であっても、また重い場合であっても、それぞれの理由によってやはり難しいと思います。 それよりも、いろいろな過労自殺の症例などを見ておりましても、やはり気がついておられたのは家族の方であって、家族の方が心配をして申し出るという仕組みが、これも今までも御提案があったわけですけれども、その方がよほど現実的だと思うわけです。 やはりメンタルヘルスに限っては、家族の申し出によっても、今、家族が意見を言えばそれによって産業医から何とかみたいに、いろいろややこしいことをおっしゃっているんですけれども、家族が申し出ることで、それが本人の申し出と同じだけの意味を持つというふうにしていただくのが一番現実的だと思うんですけれども、いかがでしょうか。 〔委員長退席、大村委員長代理着席〕 ○青木政府参考人 確かに、おっしゃいましたように、家族による気づきだとか家族による申し出とかいうものは非常に意義があると思います、効果もあると思います。 しかし、労働安全衛生法上に、法律上義務づけをしている制度の中に、そういった家族についての取り込みというものはなかなか難しいだろうというふうに思っております。 したがって、全く法律の中の制度として家族の申し出を本人の申し出とみなすというのはなかなか難しいとは思います。 しかし、実質的には、そういったことも可能となるようなやり方というのは、別途、指導するなり、それから家族からの申し出のやり方なども研究いたしまして、懸念されるようなことも排除しながらできるようなことを検討してみたいというふうに思っております。 ○水島委員 もちろん、家族と一口に言ってもいろいろな御家族がいらっしゃるわけですし、本当にそれが御本人にとっての利益と常に一致するかといえば、それは一〇〇%そうではないと言えるのでしょうから、今局長がおっしゃったことというのも全く理解できないわけではないんですけれども、そうはいっても、やはりもう最後の、本当に過労死寸前という状態のときには、御本人というのは、もうそれ以外に道はない、ここから逃れ出るなんということは自分には許されていないという気持ちで突進をしていってしまう。 でも御家族は、そんな仕事はやめてくれても、命の方が大切なんだという気持ちでそれを見ている。 それが一番典型的なパターンですので、やはりそういうときにどちらが申し出るかということは、現実的にちゃんと考えていただきたいと思うわけでございます。 そもそも、今回、なぜかメンタルヘルスの問題も一緒に百時間とかそういう中に横並びに入れられてしまっているんですけれども、これは甚だ、ある意味では迷惑な話であって、今回示されている時間外労働の長さというのは、脳・心臓疾患の疫学調査に基づいたものであって、メンタルヘルスとは本来何の関係もないわけです。もちろん、過労自殺を見れば、労働時間が長かった人が多いというのは、それは確かにそうなんですけれども、ではメンタルヘルスについて、ちゃんと脳・心臓疾患と同じような疫学データがあるかといえば、そんなことはございませんので、メンタルヘルスまでこの百時間の制度の横並びにされるということについては、おかしいんじゃないかと当初から思っているわけなんですけれども、ここまで来てしまいましたし、何か新しい制度に入れていただくというのはもちろん結構なことですので、せめてそこで、メンタルヘルスは本来、時間でただ切っていけるような話ではなくて、特別な配慮が必要なんだということは強く打ち出していただきたいと思います。 その一つの最たる例が、恐らく今の、家族が申し出るという仕組みなんだろうと思いますので、この点は、必ず実効性として、法律でちゃんと横並びで書いたのと同じくらいの効果が担保される、つまり、本人の申し出と同等に家族の申し出が扱われるような効果があらわれるようにするという点について、ちょっと一言大臣から約束をしていただけますでしょうか。 ○尾辻国務大臣 御指摘のことは極めて大事なことでございますから、今おっしゃった方向で私どもも考えてまいりたいと存じます。 ○水島委員 ぜひよろしくお願いいたします。 そして、いろいろなところの資源を充実させておくということの一つになると思いますけれども、現在も職場外の精神科医がメンタルヘルスの問題にかかわっているというケースが一番多いのではないかと思います。 今回できます制度の中を見ましても、産業医の面接を受けた人は外部の精神科医を紹介されるというようなことになりまして、本人の治療と職場復帰に向けては、外部の精神科医のかかわりというのはやはり大きいものがあるわけでございます。 産業医と精神科医のネットワークということを御提案いただいておりますけれども、これはぜひ充実をさせていただきたいと思っております。 それに加えまして、ちょっと大臣に、突然問題提起をして申しわけないんですけれども、私もこの領域で精神科医として働いてきたわけですけれども、嘱託医として企業の中にいる場合というのは割とやりやすいんですね。 上司と常に連絡がとれてというような形がとりやすいので自分の仕事としてできるんですけれども、外部の精神科医としてかかわると、職場復帰に向けて繰り返し上司と面談をしたりというようなことが必要になるわけで、ここには実はかなりの時間とエネルギーがかかります。 この作業は、もちろん診療報酬によってもカバーされておりませんので、現状では全くのボランティアということでやっているわけです。 ただ、ここの作業を丁寧にやっておくと、その後の職場復帰というのは大変質のよいものになってまいります。もちろん御本人の同意を得てですけれども、きちんと上司の方と繰り返しお会いをして、こういう配慮が必要で、また上司の方もいろいろな質問をお持ちですから、そういうときにはこうしてあげてくださいというようなことを繰り返し連携できるような体制をつくっておくと、御本人もまた安心をして、余り気負わずに職場に戻っていくこともできますし、実際にそうやって成功している例も私自身も経験をしているわけでございますけれども、ただ、これを今、全くのボランティアでということでやっておりますので、意外と面倒くさがられてしまう仕事になっております。 何とか、外部の精神科医が上司などと相談、面談するというようなコストをどこかしらで負担する仕組みをつくっていただきたい。 今、突然のお願いなので、今すぐここから出しますとおっしゃれないと思うんですけれども、ちょっと頭にとめていただいて、前向きに御検討いただけませんでしょうか。 ○尾辻国務大臣 現場を数多く踏んでこられた先生の思いといいますか、また貴重なお話をお聞きしたと思っております。 そして、そのとおりだろうなと思いました。 ただ、恐らく、これは言うならば自由診療の世界になるのかなと思うわけでありまして、保険適用なんといったらちょっと難しいだろうなと思いながら聞いておりましたけれども、大事なことでありますから、少なくとも私は心にとめておきたいと存じます。 ○水島委員 多分、診療報酬上どうとかなんとか言い始めると、まず実現しそうもない話だと思いますので、私もすぐハードルが幾つも浮かんできてしまうんですけれども、何らかの助成制度とか何かの仕組みをつくっていただくということは、多分、労働行政の範囲の中で可能なんじゃないかというふうに思っております。 ぜひこれは、頭のよい厚生労働官僚の皆さんばかりでございますので、大臣を先頭に、ここの部分、意外と、特にこれからこういう制度ができてきますと、ますます、産業医と精神科医の連携というところで、精神科医のエネルギーというのをそこに使うようになってきますし、逆に、そこで喜んで働いてもらえるようにならなければ、また職場に戻っていただくというのが難しくなると思いますので、ぜひこれは前向きに御検討をよろしくお願いいたします。 とにかく、そうはいいましても、日本の長時間労働というのはやはり異常でございまして、極端な少子化を脱するためにも、子供たちの健康な成長を確保するためにも、働き方を見直すことが必要だとだれもが認識をしているのに、なぜ日本ではできないんでしょうか。 そんな中、年間総実労働時間千八百時間という枠組みすらなくなると言われてしまうと、多くの人が不安を感じるわけでございます。 既に御指摘がございましたように、私も、通常労働者だけでもこの枠組みというのはしっかりと残していくべきだというふうに思っておりますけれども、それと同時に、今回、厚生労働省が多様な働き方をサポートしていくことの方が大切なんだとおっしゃるのであれば、やはりパート労働者の均等待遇というのがまずその大前提となると思っております。 また、均等待遇が実現しないとワークシェアリングも進みませんし、働き方を変えるということもいつまでたってもできないということになるわけです。 できない、できないと言っている間にどんどん過労死、過労自殺はふえて、子供たちはテレビやゲームの前に放置されて、家庭が崩壊をして、子供も生まれないというような状況がこうしている間にも悪化をしているわけでございますので、ぜひ、私たちが昨年の通常国会に提出をした民主党のパート労働者均等待遇確保法案、これがまだつるされたまま審議をされずに現在に至るということなんですけれども、ぜひこれを直ちに、このつるしをおろしていただきまして審議をしていただけますように、与党の皆様に強くお願いをしたいわけですけれども、委員長、理事会で御検討いただけますでしょうか。 ○大村委員長代理 はい、また協議をいたします。 ○水島委員 ぜひ理事の皆さんには、この法案のつるしを解いていただきますように、よろしくお願いをいたします。 最後に、今回の法案そのものではないんですけれども、非常に関連する領域で、ちょっと自殺のことについて残りの時間で伺いたいと思うんです。 今回、職場のメンタルヘルスに目を向けていただきましたのも、一つのきっかけがこの自殺ということであると思います。 このたび、厚生労働省のうつ病関連の自殺予防研究が行われるということで、先日、新聞でも大きく取り上げられておりました。 私もこの報告書をいただいて拝見させていただきましたけれども、この研究者の先生方というのは、私が直接御指導いただいた方も入っていますし、皆さん大変立派な方たちばかりですので、すばらしい成果を期待しているわけなんです。 ただ、この研究はこの研究でよろしいんですけれども、厚生労働省として自殺予防というのを総合的に考えるときに、まさかこの研究だけで済まされると思っているわけではないでしょうねということを確認させていただきたいんです。 これだけでは全く不十分だと私は思います。 やはり、今回もうつ病関連の自殺予防研究ということなんですけれども、うつ病に限らず、精神科を受診している患者さんに自殺が多いということはよく知られた事実でございますけれども、そもそも、自殺の背景にうつ病があるというのはどちらかというと高齢者の話であって、今問題になっている壮年期の場合には、むしろアルコールというのがかなりの問題になっておりますし、また、若年層では統合失調症というのがかなり大きな問題だと言われております。 また、パニック障害とか社会不安障害、強迫性障害でも自殺の危険率というのは高くなっております。 これは、ただ、いずれも欧米の報告で、日本にはデータもないので、エビデンスがないということにはなるわけですけれども、日本の自殺既遂例を見ていっても、アルコールの問題というのはやはりかなり大きな問題ではないかというふうに思っております。 精神疾患よりも、実は失業率、これは相関係数が〇・九、アルコール消費量、これは相関係数が〇・六と、相関が実はそちらの方がずっと高いので、実はそちらに介入をしていく方が効果的であるという可能性もあるわけですけれども、研究をするのであれば、やはり自殺既遂者の方の生前の精神状態や経済状態を詳細に調べて、複合的な視点から研究を積み重ねていくということが大切だと思うわけでございます。 ちょっとここで一つ伺うんですけれども、アルコールと自殺ということについては、厚生労働省は研究されておりますでしょうか。 ○西副大臣 今先生から自殺に関する種々のお話をいただきました。 御存じのように、今おっしゃられたように、厚生労働科学研究で始めるんですが、まさしく、その中で、特定の、実際の地域を選んで、自殺の予防に資するためにどのような介入をしていったらいいのかということを研究していくというのが一つの大きなテーマでございます。 その中で、御指摘のような種々の原因がきっと上がってくるであろう。 飲酒の問題もそうですし、私ども中高年の失業なんかも、テレビなんかで見る限り、そういうことも関連があるというふうに聞いておりますので、そういうさまざまな事例をその研究の中から挙げていっていただこう、こういうふうに思っておりますので、そういうことも十分考慮しながらこれから研究を進めていただこうというふうに思っております。 ○水島委員 ただ、この研究というのはうつ病関連の自殺予防戦略研究ということで、これは、例えば、私も昔こういう研究の末端なんかにおりましたけれども、研究者というのは、うつ病関連の自殺予防研究と言われれば、当然その枠の中でいろいろと研究を組み立ててこられるわけですので、やはりうつ病関連のとついてしまうと、なかなかそれ以外の、では、アルコールはどうなんだ、失業との関係はどうなんだというのをここの研究の中で自由にやっていただくというのは、またこうなってしまうと難しいんじゃないかと思いますので、きちんと、厚生労働省として、もう少しトータルに全体を組み立てていただいた方がいいんじゃないかと思うんです。 また、もう既に、うつ病についてはいろいろな研究が地域レベルでもされてきておりまして、少なくとも地方においては地域介入が効果を上げるということは実証済みと言ってよいと思います。それは、うつ病の対策というよりも、地域おこしやコミュニティーづくりが役に立っているというふうに考えられているわけですけれども、地方はもう研究の段階を過ぎて事業の段階に入っているけれども、経済的な制約のためになかなかそれができないというような現状もあるようですので、ぜひ、こういうところにどんと研究費をつけていただくのもいいんですけれども、同時に、そうやって既に地方でそういうレベルに達しているところについては、何か、どんどんそういう既に効果があるとわかっていることを始めていただけるような、そんな体制を考えていただきたいと思っております。 本当に自殺予防というのは一日を争うことであるわけですし、欧米では精神療法の、うつ病に対する再発予防のエビデンスも出ているんです。これは、認知行動療法や対人関係療法を早く日本の医療現場で保険適用にして普及させてくれということを、私、当選してからずっと申し上げているんですが、もう五年になりますけれども、まだそこまでもいっていない。やらなければいけないことがわかっているのに、それをやらないでいて、今からまた五年間で研究をしますというふうに言われてしまうと、何だかこちらは非常に肩透かしを食ったような気になってしまうわけなんですけれども。 また、いろいろと現実に私も話を聞いてまいりますと、例えば、現在の自殺の急増、高どまりは、五十代の無職者、離職者の自殺が急増したことが主な要因だからといって、例えば、ハローワークでのアプローチというのが、従来の地域介入でも、またこの研究班の報告書を見ても入っているんです。 ところが、患者さんに伺いますと、ハローワークというのは、うつ病などの病気にかかっていることを知られてしまうと失業保険がもらえなくなるので、ハローワークではうつ病というようなことは御法度だ、無理にでも元気に装う必要があるんだというのが患者さんの証言でございますので、こうした制度の整合性の検討も含めまして、また海外で既に得られていること、国内の地域の研究で得られていることも踏まえて、リーダーシップを持ってきちんと自殺予防に取り組んでいただきたいと思っております。 また、今ずっと話題になっているのは実は壮年男性の自殺が主なんですけれども、実は、日本という国は、もともと女性の自殺率が世界のトップクラスであるという事実は余り知られていない。 女性が大変不幸な国というふうに言われているんですけれども、ぜひ、この自殺対策の中で女性が取り残されることがないように、日本の女性の自殺率もせめて国際水準ぐらいに引き下げていただけますように、その点もあわせて、多分、今初めてお聞きになった方が多いんじゃないかと思うんですけれども、私も、恥ずかしいことに、意外と最近まで知りませんでした。 男性の自殺のことばかり頭にあったんですけれども、ぜひ女性の自殺ということもこの研究の中にきちんと含めていっていただいて、五年後に結果が出るまで何もしないというのではなく、できることを今すぐに手をつけていって、この研究もすばらしいものになればよい、そういった視点で即刻いろいろなことに取り組んでいただきたいとお願いいたしまして、最後に大臣から自殺予防に向けての御決意を一言だけ伺って、終わりにしたいと思います。 ○尾辻国務大臣 自殺が極めて深刻な問題であるということは、このところまた強く皆さんに言われておることでございます。 先日、参議院の厚生労働委員会が自殺予防に対する特別な決議もされまして、政府に対して、しっかり取り組めというお話もございました。 それを受けて、官房長官のところにチームをつくって対策をとろうと思っておりますから、このことも政府を挙げて頑張ってまいりたいと存じております。 ○水島委員 本当に、御本人にとってだけでなく、残された御家族の深刻な状況をぜひ皆様も見ていただいて、本当に政府を挙げて取り組んでいただけますように最後にお願いをいたしまして、終わらせていただきます。 ありがとうございました。 |