障害者自立支援法案○水島委員 民主党の水島広子でございます。 私も、五島委員に引き続きまして、自立支援医療について質問をさせていただきたいと思います。 今、五島委員の質問に対する尾辻大臣の答弁を伺っておりまして、ますます納得できませんし、全く尾辻大臣が御答弁されているとは信じられないような光景でございましたので、ぜひ、ここからは、いつもの尾辻大臣らしい、人情味あふれる、心温まる御答弁をいただけますようにお願いいたします。 このたび、今回の自立支援法によりまして、三つの公費負担医療制度の支給認定手続、利用者負担、指定医療機関制が一本化されます。 ただし、実施主体は精神と育成が都道府県で、更生は市町村と現行のままでございまして、一本化、一本化と大げさにおっしゃる割には、結局一本化されるのは利用者負担の仕組みで、育成と更生は応能負担から応益負担、一割定率負担へ、精神は五%の定率負担から同じく一割の定率負担となる、まさに一本化されるのはそこの部分だけだということだと思います。 この三つの公費負担制度は、それぞれに特徴があるものでございますし、また、育成医療は対象が子供であるという特色を持っておりますし、また、例えば精神は通院のみというふうに、カバーする範囲も異なっているものでございます。 これらを一本化することが公平とおっしゃるわけですけれども、どうしてもそれが納得できないわけでございます。 まず、育成医療について質問させていただきたいと思いますけれども、そもそも育成医療が児童福祉法に規定された趣旨は何であるかということをぜひ思い出していただきたいと思います。 児童福祉法は、総則におきまして、第一条「すべて国民は、児童が心身ともに健やかに生まれ、且つ、育成されるよう努めなければならない。」第二条「国及び地方公共団体は、児童の保護者とともに、児童を心身ともに健やかに育成する責任を負う。」第三条「前二条に規定するところは、児童の福祉を保障するための原理であり、この原理は、すべて児童に関する法令の施行にあたつて、常に尊重されなければならない。」と記しております。 その中で育成医療は位置づけられてきたわけです。 この趣旨からいえば、重症化すればするほど負担がふえる応益負担という考え方はとても出てこないのではないかと思いますけれども、いかがでしょうか。 今回、自立支援医療にこの育成医療が組み込まれることで、従来、児童福祉法に規定された育成医療の意味は変わるというふうに理解していいんでしょうか。 大臣の御答弁をお願いします。 ○尾辻国務大臣 障害児の健全な育成を図るという観点から、障害の軽減等に必要な医療を対象に育成医療を実施しておるところでございます。 その趣旨につきましては、今回の改正においても当然変わらないものでございます。 ただ、制度の具体的なあり方におきましては、育成医療も含めた障害に係る公費負担医療制度につきましては、いずれも障害のある方のための制度ではございますけれども、申し上げておりますように、諸制度をどうしても合わすといいますか、整合性を持たすという観点がございますので、制度によって異なっておる負担の仕組みの共通化が必要であるというふうに考えておりますし、制度の安定性、持続可能性を確保するということも必要でございます。 したがいまして、今、私どもは、費用をみんなで支え合う仕組みにすることが必要ですからとお願いを申し上げているところでございます。 ただ、そうした見直しの中にありましても、所得の低い方などには負担の上限額を設けるなどの配慮をいたしておりますし、障害児にとって必要な医療が確保されるように留意しながら、制度の運営を図ってまいりたいと考えております。 ○水島委員 今、大臣の御答弁、後半の部分はもうここのところおなじみの御答弁ですので、そちらは余り聞いておりませんでしたけれども、少なくとも児童福祉法に規定されたこの医療の意味づけが変わるわけではないということは、前半で御答弁くださったわけでございますが、今回、厚生労働省から提出されております資料を見ましても、例えば激変緩和措置、これについても、若い世帯という言葉で親に配慮する言葉はあっても、子供そのものの権利に言及した表現は一つも見つからないわけでございます。 子どもの権利条約からも児童福祉法からも、子供が適切な医療を受けて育つ権利を政府は保障すべきだと思いますし、今、大臣はそのような趣旨でお答えくださったんだと思いますけれども、そもそもこの制度を、若い世帯への配慮というのはもちろん二次的なものです、そこで育つ子供、その子供がどのような環境に置かれるかというような考えから組み立てるべきだと思っておりますけれども、この考えについては大臣は同意してくださいますでしょうか。 ○尾辻国務大臣 子供を中心に考えるべきだというのはそのとおりだというふうに私も考えます。 ただ、一方、どうしても負担なさるのは保護者の方々の方でありますから、そのこともまた同時に、負担ということを言いますときには、その方々のことといいますか事情というのも当然考慮しなければならない、こういうふうに考えるところでございます。 ○水島委員 子供中心に考えるのが当たり前で、その環境として、育ててくださっている親御さんのことを考える必要がある、その考え方でしたら私も全く同じでございますので、ここからもぜひそういう趣旨で御答弁をいただきたいと思うわけです。 大臣は、例えば先天性の心臓疾患を持ったような子供の医療にどれだけのお金がかかるか御存じでいらっしゃいますでしょうか。 現在の育成医療は所得に応じた応能負担になっていますので、所得に応じて四千六百円から二万九千三百四十円の自己負担となっております。 平均負担額は御存じだと思いますが、五千六百円ということです。 きょう、お手元に資料を配らせていただいていまして、資料二の方をごらんいただきたいんですけれども、これが自立支援医療ということになるとどうなるかということを、全国心臓病の子どもを守る会の方たちが試算をしてくださっております。 これを見ますと、二十四倍から三・八倍の負担増ということが右側に出てくるわけでございます。 この紙、多分大臣もごらんになっているか報告を受けられているかとは思いますけれども、この試算、この推計を大臣はまずどのように受けとめていらっしゃるでしょうか。 ○尾辻国務大臣 お示しいただいております育成医療に関する医療費用負担モデルというものは、私も見て承知をいたしております。 それぞれ百五十万それから三百万という大変高額な医療でございますので、それに対する負担というのも所得のある方に対しては大きくなるということは認めざるを得ないところでございます。 ○水島委員 負担が大きくなるということは認めざるを得ないという御答弁で、まさにそういうことであるわけですけれども、激変緩和措置、経過措置などと幾ら言ってみても、基本的にこれだけの負担増になるということはお認めいただけると思います。 これを、どうしても医療費という話になりますので、ついついこの医療費の額面だけで議論してしまいがちなんですけれども、心臓病のお子さんの医療ということに関しますと、これは医療費だけの問題ではございません。 必ずしも手術ができる病院が身近にないという場合も多く、そしてまた日本では、親のための宿泊施設を病院内に持つということが一般的ではございませんので、親は付き添いのために宿泊をしなければいけない、その宿泊代もかかってまいります。 子供に付き添うことで、実際上収入を得ることができなくなり、そこにさらに宿泊の費用もかかってくるということで、今でも実に重い負担がかかっているわけです。 今、育成医療の額だけで見ればこの程度かというふうに思われるかもしれませんけれども、お子さんの医療の場合、特に、手術を受けるために一定期間入院しなければいけないというような場合には、プラスアルファの支出が非常に大きくなるわけです。 今でさえ、それだけ重い負担がかかっているところに、それでも今までは育成医療があるから何とかやってきたというぎりぎりの現実のところに、今度はさらに医療費の負担増まで押しつけようとしているという自覚を大臣は本当にお持ちなんでしょうか。 本当に率直にお答えいただきたいんですけれども、医療費以外の負担がどのようにその家庭にかかっているかということをお考えになってこの制度を、最終的に結論をお出しになったんでしょうか。 ○尾辻国務大臣 単に医療費だけじゃなくて、今おっしゃったようなその他の経費がかかるということは、当然承知をいたしております。 そういうことも配慮しながら、今後のこと、また各制度を私どもは検討しなきゃならぬとは思っておりますけれども、まずお尋ねのことでいいますと、私どももその他の費用がかかることは承知をいたしております。 ○水島委員 それでは、例えば、こんな制度を導入するのであれば、すべての病院に親が無料で泊まれるような宿泊施設を整備するとか、いろいろそれ以外の面での配慮が必要になってくると思うんですけれども、そこまで思い切ってなさるおつもりなんでしょうか。 ○尾辻国務大臣 今たちどころにそうした制度をつくれと言われましても、これは率直に申し上げて大変難しい面があると存じます。 ○水島委員 今大臣がたちどころに言われても難しいとおっしゃったその感情を、今心臓病のお子さんを持つ家族の方たちはお持ちであるわけです。 たちどころにこんなことを言われても本当に難しいということを今皆さんお感じになっているわけですから、ぜひそれは大臣、人間として共感をしていただきたいと思うわけでございます。 そして、ぜひ、この医療費の部分だけをいじるような仕組みを唐突に出してくる前に、それ以外の生活がどうなっているかというところを、それ以外の経費がどうかかっているかということを一度きれいにおさらいをしていただいて、そこにどういう手当てができるかということもセットにして持ってきていただかないと、これでは余りにも現実無視と言わざるを得ないと思います。 児童虐待が増加をしている、その中でネグレクトもふえているということは、厚生労働省もよく承知されていると思いますし、それも当然大臣の所管事項であるわけです。 こんな制度をつくってしまって、親が、自分自身は望まないとしても、医療費の自己負担に耐えられずに、結果として医療ネグレクトが起こってしまう可能性すらあると私は思いますけれども、大臣はそんなことを全くお考えになりませんでしたでしょうか。 また、虐待というのは、経済的、精神的な安定と大きな関係があることが知られておりまして、経済的に不安定になったり、あるいは精神的に不安定になったりしたところに虐待が起こってくるということは、そろそろコンセンサスになってきていると思いますけれども、こんな形で親を追い詰めることによって、その安定を脅かすことになるのではないかということを私は大変心配しているわけでございます。 既に、現在、育成医療の対象になっている方たちは不安におびえておられます。 このように、今一生懸命子育てをしている親たちを不安に陥れるというようなことそのものが私は間違っていると思います。 そもそも厚労省は、虐待につながるような環境をつくらないように全力を挙げてくださっているものと私は思っておりましたけれども、そうではなかったんでしょうか。 何でこんなわざわざみずから好んで不安定要因をつくり出そうとされているんでしょうか。 ちょっと今の関連で、ぜひ大臣からお答えいただきたいと思います。 ○尾辻国務大臣 まず、子供を虐待から守るということは、これは当然重要な課題でございます。 子供が心身ともに健やかに成長できるように私どもも全力を尽くしておるところでございます。 そのことでさらに申し上げますと、児童福祉法の改正などもいたしまして、児童虐待の防止、それから早期発見、早期対応などにも取り組んできたところでございます。 その一方でございますけれども、子供の健全育成を目的とした育成医療など障害者に係る公費負担医療制度につきましては、制度を維持し、それから、これは今回の見直しの中で何回も申し上げておることではありますが、限られた財源の中で必要な医療を確保する、極めて限られた財源の中でという、このことをぜひ御理解いただきたいと思うんですけれども、申し上げますと、そうした中で必要な医療を確保するためということで、見直しを行うこととしておるわけでございます。 そうした中で、また育成医療につきましては、先ほど来お話出ておりますけれども、若い御両親が多いことに着目をいたしまして、できるだけ御負担にならないようにということで経過措置を設けるなど配慮もいたしてきたところでございます。 今後とも、私どもは、障害児に係る制度を維持しながら、この維持するというのも一番大事なことでございますから、そのことをまず考えて、そして、児童の健全育成の観点から各般の施策に取り組んでまいりたいと考えております。 ○水島委員 制度そのものは維持されて生き残っても、それが、本来その制度が恩恵を与えるべき子供たちや御家族がそこまでついていけなくなってしまう、そんなことになったら、そもそも制度としての意味が全くないわけでございますので、先ほど私が、まず子供を中心に、そして子供の環境をつくっている一番の中心である親御さんのことをよく考えてほしいというふうに申し上げたのは、まさにそういう点でございます。 ぜひ、医療費以外の負担のことも含めて、これは、今この場で大臣は、ちょっと今まで配慮が足りなかったので考え直しますとおっしゃれないお立場におられるのかもしれないですけれども、そこの部分は本当に早急に、医療費以外の状況がどうなっているのかということを、ぜひ当事者の方たちからよくヒアリングをしていただいて、今育成医療が仮に存続するとしても、それ以外の負担というのは本当に無視できないことでございますので、ぜひそういう形からまたここできちんと御答弁いただけるような体制をつくっていただきたいというふうにお願いをしたいと思います。 そして、今の大臣の御答弁を伺っておりましても、結局のところは、最初に財政論ありきで、そのしわ寄せを子供に押しつけているということになると思います。 きょう資料の一として配らせていただいておりますが、これは厚生労働省からいただいた資料でございます。 先ほど五島委員の方からも御紹介いただきましたけれども、この改正の影響、育成医療の方で見ますと六億円、何か一カ月ずれて医療費の請求があるということですので、これが五カ月分ということになるそうで、これから一年分を計算いたしますと、年間の国庫ベースの財政効果というのはたかだか十四億円というような計算になると思います。 政官業の癒着の中でむだに使われている税金や年金保険料のむだ遣いの額を日ごろ聞いている立場としては、十四億円のためにこれほど非情なことを強行するのではなく、ほかのむだをなくして十四億円くらい捻出すべきだと考えます。 税金のむだ遣いのツケを子供たちの医療に回すのが日本ですと、大臣は外国に行って胸を張っておっしゃれるでしょうか。本当に考え直していただきたいと思っています。本当にこれは大人として恥ずかしいことだと思います。 また、今、政府は少子化対策、次世代育成支援ということを声高に叫んで、国を挙げての取り組みをすると表明しているわけですけれども、その一方で子供の医療について事実上負担を大きくするというのは、まさに言行不一致ということになると思います。 例えば心臓病をお持ちのお子さんを持たれた親御さんは本当に頑張っておられます。 その頑張りというのはもう頭が下がる思いでございます。 また、病気をお持ちのお子さん自身も、遊びたい盛りに、いろいろな楽しみをあきらめて、厳しい治療に耐えて、本当に頑張っておられます。 そういう人たちを応援するのが本当の次世代育成支援なんじゃないんでしょうか。 育成医療の現実を知ってもらった上で世論調査をすれば、育成医療の存続を圧倒的多数の方が支持されると私は信じています。 今この委員会室にいらっしゃる与党の議員の皆様も、いかがですか、この十四億円を浮かすために育成医療を切るべきだということを自信を持っておっしゃれる方、もしいらっしゃったら、本当に手を挙げていただきたいと思いますけれども、これは人間として私は挙げられないと思うんです。 それほど、私は、これは日本の政治の中でのモラルの最後のとりでではないかなと今回思っているところでございます。 民主党はもちろん次世代育成を本気で取り組んでいきたいと考えていますし、私も今その政策責任者として次世代育成支援の政策集をまとめさせていただいておりますけれども、これは民主党だけではなく、与党である自民党の皆さんも公明党の皆さんも、本気で次世代育成支援をしていきたいという気持ちは同じだと思います。 そうであるなら、法案を修正して、育成医療をとにかくこの自立支援医療の対象から外すということに同意をしていただけると思いますけれども、大臣も、もちろん、政府の一員の大臣でおありになると同時に与党の政治家でもいらっしゃるわけですが、政治の意思として、この点はきちんと決断をしていただかなければいけないと思いますけれども、いかがでしょうか。 ○尾辻国務大臣 今、厚生労働省をお預かりする者としてこの法案をお出ししておるわけでございますので、その立場では、この法案をどうぞ成立させてください、こう申し上げる立場でございます。 ただ、今、与党の立場というお話がございましたが、これはまた国会の御論議でございますし、当然私どもは国会の御意思というのは体さなきゃならない立場でございますから、御論議をいただきますように、そしてまたそれに対しましては私どもも、きょうの冒頭のお答えでも申し上げましたけれども、誠実にお答え申し上げたいと存じます。 ○水島委員 まだ大臣はおこたえくださらないわけですけれども、ただ、これは、委員長も含めて、この審議をお聞きになっていた政治家の皆様、国会議員であれば、これは何とかしなければいけないんじゃないかなとそろそろ思われているのではないかと思いますので、私は、そういう皆さんの良心を信じたいと思いますし、ぜひこれはきちんと修正をしていただいて、育成医療もこの自立支援医療の中に一本化することが、それが公平なんだというふうに思う国民はほとんどいないと思います。 私も大変気になりましたので、ここのところお会いする方すべてに、大人と子供の負担率を一緒にするということが公平ですか、そうじゃないと不公平だから納得できませんかと、いろいろな方に、これはいろいろな立場の方に聞いてまいりましたけれども、何をばかなことを聞いている、そんな、子供の医療を特別枠に入れてちゃんと確保していくなんというのは当たり前のことじゃないかと、普通の常識のある方なら皆さんそうお答えになりますので、これは世論調査していただいても私たちは勝つ自信がございますので、ぜひいろいろな方の意見を聞いていただきたい。 そして、わずかと言うとちょっと変ですけれども、十四億円の話でございますので、これは、皆様に少し汗をかいていただいて、何とかむだ遣いの中から確保していただきたいと思う金額でございますので、そこは本当に重ねてお願い申し上げたいと思います。 育成医療については何とかしていただけるだろうという、その期待を持ちながら精神医療について次に質問を続けさせていただきたいと思いますけれども、前回質問をさせていただきまして、その中でかなり答弁が錯綜したようなところもございましたので、きょうは、まずそこの整理から入らせていただきたいと思います。 まず、重度かつ継続ということについてなんですけれども、前回の質問の後に厚生労働省に資料での説明を求めましたところ、重度かつ継続とは、医療上の必要性から、継続的に相当額の医療費負担が発生する方について、一定の負担能力がある場合も月の負担額に上限を設けるものであるということでありましたけれども、まず、これでよろしいでしょうか。 〔委員長退席、大村委員長代理着席〕 ○塩田政府参考人 重度かつ継続の意味については御指摘のとおりでありまして、重度かつ継続とは、医療上の必要性から、継続的に相当額の医療費負担が発生する方について、一定の負担能力がある場合にも月の負担額に上限を設ける措置でございます。 ○水島委員 そのような位置づけについて、実は私、前回質問をするまでにははっきりとした説明は聞いたことがないような気がしておりますけれども、ですから、重度かつ継続というのが、症状の重さというのを意味する重度という言葉なのかなと私は思って前回の質問をさせていただいたところでございました。 そのように書面でも確認をさせていただきましたので続けさせていただきますが、つまり、疾患そのものの特性や症状がどうなっているのか、治療の必要性等というような医学的な観点というよりは、医療費負担という負担の観点から設けようとしている仕組みであるというふうに理解してよろしいんでしょうか。 ○塩田政府参考人 重度かつ継続とは、継続的に相当額の医療費負担が発生する方に関する配慮措置でございます。 御指摘の点につきましては、この重度かつ継続の対象範囲などを御論議していただくために、去る六月二十二日に開催しました自立支援医療制度運営調査検討会におきましても同様の御意見をいただいたところでございます。 医療費負担への配慮という制度の趣旨が伝わるような名称等について検討を行うこととしております。 ○水島委員 前回の整理ということでもう一つ伺いたいんですけれども、通院医療の認定の有効期間のことでございます。 この認定の有効期間については、現行は二年に一回再認定をするかどうかの手続がございましたけれども、今回の見直しは、この期間を一年に短縮して、公費負担医療が必要かどうかよりきめ細かく確認していくという趣旨であると理解してよろしいんでしょうか。 ○塩田政府参考人 有効期間、再認定の趣旨については議員御指摘のとおりでございます。 一年ごとに更新手続を行うことにより、公費負担医療の必要性をよりきめ細かく確認できるとともに、より適切な制度運営に資することなどを目的としているところでございます。 ○水島委員 ちまたに流れているうわさの中には、重度かつ継続以外の人はだれでも一年だけで打ち切られると言っているような人もいるようですけれども、それは全くの誤解であって、再認定も、あくまでも症状と医療の必要性に基づき行われるものであり、必ずしも一年で打ち切られるというものではないということでよろしいんでしょうか。 ○塩田政府参考人 自立支援医療の対象とするか否かは、症状、状態等に基づき判断するべきものであります。 再認定の際も同様と考えており、重度かつ継続に該当しない方が一律に再認定の対象外になるというものではございません。 重度かつ継続の対象範囲を御議論いただくために設置しました検討会におきましては、再認定の対象などについても御議論いただくこととしており、今後、御指摘のような点も含めて、いかなる症状、状態のときに再認定対象としない取り扱いとするのか検討することとしております。 ○水島委員 先ほど部長が触れられました自立支援医療制度運営調査検討会、専門家による会議でございますけれども、この第一回の会議が六月二十二日に開かれましたので、私も傍聴に行かせていただきました。 この検討会の中では、重度かつ継続の範囲を考えるということが、部長がおっしゃったように最優先課題とされているわけでございますけれども、この重度かつ継続について、疾患名で限定することへの疑問がこの会議の中でも続々と表明をされておりまして、率直に言ってしまえば、これを疾患名で限定することが正しい、この三疾患で納得しているという方は、私が傍聴した範囲では一人もいらっしゃらなかったというのが現状でございまして、私たちが問題だと思ってきたことが専門家の方たちにも共有されているということがよくわかりました。 そして、疾患名で限定することをかたくなに主張しているのは厚生労働省だけだということもよくわかりました。 この日の会議では、重度かつ継続を統合失調症、狭義の躁うつ病、難治性てんかんの三つに絞ったことの理由を問われた厚生労働省は、医療費の高額事例を集めてどういう疾患が含まれているかを見たところ、この三疾患になったというふうに説明をされていました。 これに対して、日本精神科病院協会と日本精神神経科診療所協会から、もっと説得力のある反論データが出されているわけでございます。 統合失調症の医療費を引き上げているのは、主にデイケアでございます。 日本精神科病院協会のデータでは、デイケアを利用している統合失調症の方の月額医療費平均は十一万三千五百七十七円、デイケアを利用していない統合失調症の場合には一万八千二百四十三円で、全体の平均よりもむしろ低くなっているということでございます。 統合失調症の方の場合は……(発言する者あり) とめるんですか。一回とまっていますか。 はい。では、また今度させてください。 ○大村委員長代理 では、速記をとめてください。 〔速記中止〕 ○大村委員長代理 では、速記を起こしてください。 それでは、水島広子君。 ○水島委員 統合失調症の方の場合はデイケアの利用率が相対的に高いので、厚生労働省のようなデータ抽出を行えば医療費が高いのは統合失調症ということになるのですが、統合失調症の方すべてがデイケアを利用しているわけではありませんし、ほかの疾患の方でもデイケアを利用することはあるわけです。 高額医療費の人を調べたら三疾患が多かったからその三つを重度かつ継続と決めたというやり方は、余りにも非科学的で乱暴で意味がないと思うわけですけれども、精神科臨床の現状を知らないと言われても仕方がない話であって、だからこそ、この検討会でも構成員の専門家たちがこぞって疑念を示されたのだと思います。 そもそも、先ほどの部長の御答弁からいって、重度かつ継続というのが医療費の負担を軽減するため、そういう経済的な動機からつくられた制度であるとするならば、重度かつ継続から漏れた疾患の方が、医療上の必要性からデイケアを利用して月額医療費が高いのに、たまたま厚生労働省が恣意的に決めた病気には入っていないからと、高い自己負担を求められるということについて、これがそもそも、先ほどの答弁の内容にも合わないものですし、こういうことが公平だと言えるんでしょうか。 今回盛んに公平公平とおっしゃるようですけれども、まさに、こういうことこそ不公平だというのではないかと私は思います。 また、私も医療者の一人としまして、デイケアがこの患者さんには必要だと考えた場合でも、自己負担が阻害要因となって勧められなくなるということはどのように解決したらよいのでしょうか。 前回の質問のときにも大臣に御説明いたしましたけれども、そのようないろいろな事情によって精神科の患者さんに医療を勧めるということは、実は今でも大変苦労しているわけですけれども、これで新たなハードルができてしまうということ、これにはどのように答えてくださるんでしょうか。 大臣、お願いいたします。 ○尾辻国務大臣 先ほど来お答え申し上げておりますように、重度かつ継続の対象となる疾患につきましては、当面、統合失調症、狭義の躁うつ病及び難治性てんかんを対象とすることにいたしております。 ただ、この三疾患については、先生もきょうお話しいただいておりますし、範囲としていろいろな御意見があります、狭過ぎるという御意見もあれば、広過ぎるという御意見もあるわけでございまして、この重度かつ継続の対象とすべき範囲を明確にするために、これまたお述べいただいておりますように、去る六月二十二日に自立支援医療制度運営調査検討会を発足させて、検討を開始したところでございます。 この検討会の御議論についても、先生は御案内のとおりでございますけれども、精神疾患における診断名が混乱しないような配慮も含めまして、重度かつ継続の範囲についてデータに基づいた御議論をいただくこととしておりますので、そして、その御議論によって結論を得たものから順次対応してまいります。 ○水島委員 検討会を続けられるのはもちろん結構なんですが、その中で、重度かつ継続にどの病気を入れるかという議論をしている限り、私は議論は不毛だと思っております。 日本の精神医学では、いまだにエビデンスベーストあるいはエキスパートコンセンサスとして、この疾患に対してはこの治療パッケージが第一選択、それでも無効であれば第二選択はこれというような整理ができているわけではございませんし、それを可能とするような臨床の枠組みがあるわけでもございません。 そんな状況下で、それぞれが最大限の工夫をして、患者さんの病状や事情を見ながら何とか医療を行っているというのが日本の精神医療の現実でございます。 とても疾患名で医療費を区分できるような状態ではないと思っておりますので、これを疾患名でどれだけ重度かつ継続で拾っていくかというような、そういう議論をこれからも検討会で続けていかれるとしたら、それは時間のむだだと思いますし、そうではない、どういうあり方が最も公費負担制度の一番適正な運用のあり方なのかということを議論していただく必要があると思っております。 これを疾患名で区分していくということについて、今の日本の精神医療の現状はそんなふうにはなっていないということ、これについては大臣は認識しておられるでしょうか。 ○尾辻国務大臣 御指摘のような精神科医療における治療のいわば標準化などだ、こういうふうに理解をいたしてお聞きいたしましたけれども、そうしたものが可能かどうかも含めまして、今後の研究を待たなければならないと考えております。 我が国の精神科医療につきましては、歴史的に入院処遇を中心としてきたという経緯がありますので、近年、精神科医療の質的向上や早期の社会復帰への方向転換が図られてきたところではございますけれども、その成果はいまだに十分ではないと考えております。 このような現状を踏まえまして、今後の精神科医療につきましては、入院医療中心から地域生活中心へという基本的な考え方に基づきまして、精神医療の質的向上を図りつつ、入院患者についてできるだけ早期に退院を実現し、地域生活に移行できる体制を構築することが必要だと考えております。 そうしたことを踏まえまして、今お願いをいたしております御議論、そして重度かつ継続的というところの定義もまたしていただきたい、御議論を待ちたいというふうに思っております。 ○水島委員 入院から地域へという場合に、核となるのがこの通院医療ということになるわけですから、そこのハードルを上げておいて、入院から地域に誘導していますと言われても、それはやはり筋が通らない話になるわけです。 先ほど申しました点も含めまして、この精神医療の医療費の問題についてはまだまだ検討しなければいけないことが余りにもたくさんありまして、それが全く整理されていない段階で、上の方から高額のレセプトをつまんでみたら、その中にこの三つの疾患が多かったからこの三つが重度かつ継続ですなんという、そんな乱暴なやり方は本当にあり得ないと思いますので、これは、尾辻大臣の名誉にかけてもこんなことを許さないようにしていただきたいと思うわけでございます。 きょうの私の説明で足りないようでしたら、改めて大臣に御説明に伺いたいとも思いますので、ぜひお声をかけていただければ光栄でございます。 実際には、そうやって詰めなければいけないこともたくさんありますし、その一方では、もちろん私は、現在の三十二条が全く非の打ちどころがないと思っているわけではございません。 三十二条の適正な運用というのは確かに必要でございまして、現在も一部に不適切な三十二条の悪用といいますか乱用といいますか、そのようなものがあるということも十分に承知をしております。 そういう意味では、本当は今回、何か改正されるのであれば、そういうむだをこういう形でなくします、善意のない医療についてはこういう形で認められません、それがわかるような仕組みを組み込んでいただかなければ、結局これからも、今回財源がなくなったからといって五%を一割にした、でも結局それがまた膨れ上がっていって、今度はでは一割を二割にするんですか、そういう日が必ず来てしまうと思いますので、そういう有効な仕組みをちゃんと今回組み込むというのが厚生労働省の責任であったはずだと思います。 お金がなくなったから自己負担を倍にして受けられる対象疾患を減らしたなどというのは、こんなの厚生労働省じゃなくたって、だれだって考えられます。 厚生労働行政の専門家なんですから、もっと気のきいたことをちゃんと頭を使って考えてほしいと思うわけでございます。 十月施行などと何か無理なことをおっしゃっているようですけれども、一度これは現状のように全部を対象にしておいて、そこから明らかにこれはこの制度にはなじまないですねということを説得力のある形で除いていっていただくネガティブリスト方式がこの際一番妥当だと思います。 くれぐれもこれは、疾患単位で考えるなどという変なことをしてしまいますと、先ほど言ったデイケアを使っている、使っていないということで公平性ががらりと変わってしまうというようなおかしなことになりますので、こういった問題提起もされていることを踏まえて、この検討会に御議論をいただくのもいいと思いますけれども、ぜひきちんとこれは腰を据えて御議論をいただきたいです。 今まで厚生労働省は、今回聞きましたところ、どういう形で三十二条が乱用されてきたかということをきちんとデータをとっておられない。 調査できない仕組みなんですとおっしゃるわけですけれども、まず現状がどういうふうに運用されているのかを見てから制度を考えるというのが当たり前のことではないかと思います。 これは、厚生労働科学研究の形を使っても何でも結構ですけれども、現在三十二条がどのように使われているのか、その中で本来の公費負担制度の趣旨と合わない部分はどこなのかということ、それをきちんとこちらに報告をいただいてから、それを手当てするためにこういう新しい制度をつくりましたと言っていただくのが常識中の常識だと思いますので、今回みたいに、箱の中からレセプトをつまんでみたら高いところにはこれが多かったなどというような非科学的な政策立案をこれからもくれぐれもしないでいただきたいということを改めてお願いを申し上げたいと思います。 また、この前傍聴いたしました会議の中でも、お金にあらわれない大変さをどう酌み取るかというような課題が大きく浮かび上がっておりましたけれども、先ほどの育成医療についてもそうですが、精神医療についても、額面の医療費ということ以外の要素というのがかなりございますので、その辺もトータルに見ていただいて、説得力のある形で出し直していただきたいと思っております。 そして、最後に言わせていただきますと、そして大臣のそれに対しての御意見を伺いたいんですけれども、そもそも、七万二千人の社会的入院を十年間でゼロにしますということを、二年前に坂口前厚生労働大臣がはっきりと国会の場において約束をされたわけでございます。 もう既に二年過ぎてきたわけですけれども、私は、この七万二千人の社会的入院の問題を解決するまでは三十二条を今のまま据え置くべきだというふうに思いますし、それが厚生労働省としてのこの二年前にした約束の果たし方ではないかと思います。 先ほど言いましたように、今回ハードルを高くしてそれをみずから阻害しているというようなこと、その構造にぜひお気づきいただきたいと思いますけれども、最後の私の提案に関しまして大臣がどう思われているかということを最後にお伺いしたいと思います。 ○尾辻国務大臣 今回の改革におきましては、何回も申し上げておりますように、現在の通院公費負担医療制度を安定的で持続可能なものにするために、低所得の方々には月額の負担に上限を設定するなど配慮を行った上で、原則として一割の定率負担をお願いするものでございます。 こうしたものでございますので、実施を凍結するということは極めて困難なことでございます。 いろいろ申し上げておりますけれども、そしてまた御議論もあるようではございますが、今回の改革といいますのは、全体としては、精神障害者の社会復帰、地域生活の支援の拡充を図るため必要不可欠なものだと考えておりますので、ぜひ御理解を賜りたいと存じます。 ○水島委員 尾辻大臣は必ず考え直していただけると信じまして、もう一言お願いをいたしまして、質問を終わらせていただきます。 ありがとうございました。 |