厚生労働委員会
(2005年5月18日)



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障害者自立支援法案



○水島委員
   民主党の水島広子でございます。
 今回の自立支援法案については、そもそもの財源の確保の仕方、また、 それに伴って発生した応益負担という世にもおかしな仕組み、そこに最大 の問題があることは既に指摘をされてきたことでございますけれども、た だ、これらの問題については、本来は、政権の意思決定の最高責任者であ る小泉総理大臣に問うべきだと私は思っております。厚生労働省にこれだ けの予算しか渡さないということを決めたのは、財務大臣、そして最終的 には小泉総理大臣でございます。
 ぜひ、この委員会に、小泉総理大臣、そして財務大臣を呼んでいただき ますように、委員長、お願いいたします。

○大村委員長代理
   理事会で前からも議論になっておりますが、また引き続き御相談をさせ ていただきます。

○水島委員
   それをお願いした上で、本日は、厚生労働大臣の権限の中で十分対応で きる点に絞りまして、主に精神障害者についての質問をさせていただきた いと思います。かなりの覚悟で来ておりますので、ぜひ、きっちりと御答 弁をいただけますようにお願いいたします。

   精神保健福祉法の三十二条というのは、今まで精神障害者を大きく支え てまいりました。また、私自身、精神科医として、三十二条という制度が なければ治療を継続できなかったと思われるケースを多数経験しておりま す。治療を継続することによって、生活の質が保たれただけではなく、命 を救えたと思えるケースもございます。
 この三十二条に手がつけられるのではないかといううわさが流れ始めて おりましたけれども、幾ら何でもそこまではという思いでおりました。厚 生労働省がここまで精神障害のことを理解していないのかと、今回本当に 驚いているところでございます。今回の三十二条廃止に向けての手続の乱 暴さは、昨日、参考人の方も指摘されていました。
 財源の問題が言われておりますけれども、これも例によって一部の乱用 ケースの問題でございます。そもそも、三十二条の通院公費負担制度を利 用している人の数は、精神科外来患者の中で決して多いとは言えません。
 やはり、精神障害に対する差別に満ちたこの社会にあって、精神障害者と いう烙印を押されることを恐れて使わないのです。余裕のある層は、烙印 を押されるよりはと、制度を使わずに自力で医療を受けています。この精 神障害に特有の特性を忘れてはならないと思います。

   その中でも、現在三十二条を使っている方というのは、使わなければ医 療を受けられない人と言ってよいと思います。もともと三十二条がなけれ ば医療を受けられない人に対して、さらなる負担を求めるのが今回の法改 正ということになるわけです。

   また、精神障害者で福祉サービスを受けている人は、ほぼすべてが医療 を受けているという現実がございます。
福祉と医療の二重負担が常につき まとうという特性も忘れてはなりません。
多くの精神障害者にとって、福 祉と医療の両方がそろってやっと病状が安定して、地域に居場所ができる ということも重要なポイントでございます。
 今申し上げてまいりました、精神障害者が置かれているこの三十二条を 取り巻く現状について、大臣は了解されているでしょうか。

○尾辻国務大臣
   御質問の趣旨を、まず、今、精神通院医療制度を利用されている方が、 本当に必要な医療を受けていただくためにその制度を使っておられるのか、 その辺をきっちり理解しておるのかという御質問で一点はあろうかという ふうに理解いたしましてお答えをいたしますと、それはそのとおりである と思いますということを申し上げたいと思います。
 それから、これは何でも、こうした私どもの社会保障全般について言え ることでありますけれども、そうしたことが、両方のサービスが必要な方 について言うと、医療と福祉サービスの両方相まってサービスが成り立っ ておる部分は極めて大きいというふうに考えております。

○水島委員
   そしてまた重要なのは、精神障害者の場合、家族が病気や治療の必要性 を理解していないことが多いという現実でございます。服薬を続けなけれ ば病状の安定が失われてしまうのに、いつまでも薬に頼らないでと服薬を やめさせようとする家族も少なくありません。これは、どれほど病気の経 過が長くても同じことです。家族が皆治療に協力的なわけではないわけで す。家族として当たり前の愛情を持ち、生計を一にしているということと、 治療に協力的であるということは決してイコールではございません。
 そんな中、経済的な負担がふえれば、受診を抑制しようとする家族は必 ずあらわれます。本人に病識、つまり、自分が病気であるという自覚がな いというケースもございまして、そういう場合には事態はさらに絶望的に なってくると思います。

   まず、大臣、家族が必ずしも治療に前向きではないという現実を了解し ておられるでしょうか。

○尾辻国務大臣
   今言われました、家族の皆さんが治療に前向きでないという、そこまで しっかり理解しておるといいますか、現実を知っておるかと言われますと、 私も正直申し上げて、そこまできっちり理解をしておるものではございま せん。
 ただ、例えば平成十五年の精神障害者社会復帰サービスニーズ等調査事 業報告書、これによりますと、「地域での生活で困っていること」として、 外来患者の方の一五・九%が、ほとんど一六%の方が「家族とのつきあい」 を上げておられるというようなこともございますから、そうした中に今お 話しのようなことも含まれておるのかな、こういうふうには認識をいたし ております。

○水島委員
   大臣、本当に尾辻大臣らしく率直にお認めくださいまして、ありがとう ございます。
 家族としては、当然愛情は十分にあるし、御本人のためになることをし たいという気持ちは家族としては十分に持っていらっしゃるけれども、や はり、精神障害を持っている、病気を持っているということに関してずっ と認めたがらない方、そして、薬というものに関して非常に強い偏見を持 っておられて、これなくしてやっていけて初めてこの子の自立なんだとい うふうに思っていらっしゃる方、そういう方が実は多いわけでございまし て、精神科の臨床の場というのは、実は、そういう御家族との闘いと言う と言葉が悪いですけれども、本当に御家族とのやりとりの場であるという ことも現実には多いわけでございます。

 大臣、今率直にお認めくださいましたので、ぜひ、この三十二条のこと を考えていく上で、また今回の精神障害者の自立ということを考えていた だく上で、この御家族と御本人との関係が精神障害者ゆえに特殊な要素が あるのだということをちょっと新たに頭に入れていただいて、また御検討 いただけますようにお願いいたします。

 また、精神障害者の特性ということでいいますと、御本人の罪悪感とい うのも実は大きな問題です。精神障害者の多くが、病気になった自分、病 気を治すことができない自分に関して罪の意識を持っておられます。そし て、家族に負担をかけているという負い目を持っています。

 これはもちろん御本人の責任では全くないわけであって、私たちは一生 懸命それを説明するわけです。これは病気なんだということを説明するわ けですけれども、それでも精神の病というのは、どうしても目に見えない もので、多くの人がいまだに精神力で何とかなるというふうに誤解をして いるところがありますので、この病気を克服できないのは自分の意志の力 が足りないんだというふうに思い込んでいる方が非常に多いわけです。こ れは、そうではない、理屈をわかっているような方であっても、心の底で はそういうふうに思っていることが多くて、ちょっとした刺激によってそ れがすぐにぶり返してしまうという特徴がございますので、これも絶対に 忘れてはいけないわけです。

 もちろん、こんな罪悪感を持っていただくということはストレスをふや しますので、病気の治療上決してプラスにはならないわけでございますか ら、私たちは常にそんなことはないのだと説得を試みているわけですけれ ども、幾ら医療者が口をそろえてそのように言おうとも、実際には、生活 上、有形無形のプレッシャーを周囲から受けているわけであって、また、 病気の特徴として罪悪感を持ちやすいということも、これは病気の性質を 問わずにございますので、本当にこれを修正していくということは非常に 難しいものでございます。

 この精神障害者は罪悪感を持ちやすいという特徴があるということを、 大臣は了解しておられたでしょうか。

○尾辻国務大臣
   これも、正直に申し上げますと、今お話しいただいたような形で、で はおまえがわかっていたかと言われますと、そこまで理解していたとは 申し上げることはできません。

○水島委員
   本当に私は尾辻大臣はすばらしい大臣だと思っておりますけれども、 今またその思いを新たにしたところでございます。率直に認めてくださ ってありがとうございます。ぜひ、また先ほどと同じでございますけれ ども、新たにそういう情報を頭に入れていただいて、制度の組み立て直 しをしていただきたいとお願い申し上げるところでございます。
 本当にこれは理屈で割り切れることではございませんし、心の病とい うのは決して精神力で乗り越えられるものじゃないんだ、病気であって 治療が必要なんだということを、もちろん大臣御自身もアピールしてい ただくことが必要ですけれども、大臣のようなすばらしい方がおっしゃ っても、すべての人がそうですかと納得する問題ではないほどに、本当 に社会の奥深くにしみついている偏見でございますので、ぜひこれはし っかりと、制度を考える上で必ず考慮に入れていただきたいと思います。
 そんな状況で、これ以上経済的な負担がかかるということになります と、自分は家族にとって、そして社会にとって迷惑な存在だという気持 ちが強まり、自殺すら考えるケースが出てもおかしくない、このことは 既にほかの委員も指摘をしてきていることでございます。

 また、既に現在三十二条を利用している方たちは不安の渦中に陥れら れておりまして、不安から病状が悪化している方もいます。また、自分 たちは生きていることすら許されないのかと言っておられる方もいます。 そのように今回の改正が受けとめられているというわけでございまして、 これは、精神障害者の特徴、そして現在置かれている特殊な背景を考え れば、私は決して大げさな反応ではないと思います。

 また、現在三十二条を利用していない方であっても、いざとなったと きの安心がなくなることへの不安を訴えておられます。
 精神障害者にとって、治療が継続できる環境をつくるということは歴 史的に大きなテーマでございます。そして、地域の福祉サービスを利用 して、地域で孤立しない仕組みをつくることが本人にとっても大きなプ ラスになりますし、同時に、地域の人々にとっても、精神障害者とのコ ミュニケーションを確保して安心して共存していくための大きな目標で ございました。

 きれいごとを言うのは簡単ですけれども、実際に地域に暮らしている 方たちが精神障害者に対して偏見を持っていないなどとはとても言い切 れません。やはり未知のものに対する不安感というものはございます。 精神障害者が地域の一員として、そして、できるだけ病状を安定させて、 もしも病状が不安定になったときも必ずここに行けばまた対処してもら えるのだということがわかっているような中で共存していくということ が、もうすべてのきれいごとを抜きにして、本当に精神障害者が地域の 一員となっていくために必要なことだと思っております。その方向に沿 って厚生労働省の施策も進められてきたはずだと私は自分なりに理解を しておりました。

 現在、心神喪失者医療観察法の施行を前にして大変な問題が起こって おりまして、これについても私は厚生労働省に今度日を改めてしっかり といろいろと質問をさせていただきたいと思っているんですけれども、 このひどい法案の審議のときでさえ、二年前でございましたでしょうか、 精神障害者の治療を中断させないことの重要性を厚生労働省も再三再四 訴えておられたわけです。今回、こんな改正を提案して、それが治療の 中断をふやすということを考えていないとしたら、やはりおかしいと思 うんですけれども、これらの疑問に対して納得できる答弁がございまし たら、大臣、お願いいたします。

○尾辻国務大臣
   今お話しいただいたことと私どもが目指すもの、これは同じ方向だと 思っております。
 そして、制度をいじりますと、やはり制度をいじることによるプラス の面だとか、あるいは、マイナスと言ったらよくない表現かもしれませ んが、ややそういったような面も出てくる、これは私どもが制度をいじ るときにやはり出てくる問題だと思っております。

 あえてそういうことをまず申し上げますのは、現在の制度におきまし ても一律五%でございますから、高額の医療費になった場合は、それで も五%ということになりますと、それは大変高額になるケースもござい ます。そうした皆さんの場合で、それが低所得者であった場合には、こ れは大変厳しい状況にあるだろうなと思うわけでございまして、現実の、 今の制度の中でもやはりそうした問題はある。そうしたものもできるだ け私どもとしては解消しながら制度を変えていきたいと思っておるとい うことを申し上げたところでございます。

 したがって、これから先はこれまでずっと申し上げてきたことであり ますけれども、全体の整合性の中で、まず一割という負担をしていただ く、ただ、低所得の方だとか、そうした方々に対して無理のない負担に なるようにということできめ細かく配慮していきたい、そういう制度に していくということで、よりよい制度にしたいということを今私どもは 申し上げているところでございます。
    
〔大村委員長代理退席、委員長着席〕

○水島委員
   今まで一律五%とはおっしゃいますが、自治体によって、独自の制度 を持っていて、実際には自己負担をゼロにしているところもあるわけで ございます。

 私も、今回このやりとりを厚生労働省の方としていて、そうはいった って五%が一〇%になるだけじゃないですかというような言い方が非常 に気になっていまして、これはかなり大きな違いですし、また、これか ら申しますけれども、今度、その対象から外れて三割になるという方も 出てくるわけでございまして、五%が三割といったら、これは本当に大 きな、全くけた違いの話です。
 また、五%が一〇%になるというのも、お金持ちの方から見れば大し たことないじゃないかと思われるかもしれないけれども、今までの精神 科の患者さんの感覚というのは、ゼロ%でない方の場合であっても、お 財布をあけてお札が一枚、お札というのはもちろん千円札ですよ、お札 が一枚入っていればきょうは病院に行けるかな、それが精神障害者の方 の感覚で、お財布をあけると本当にお札が一枚しか入っていないような、 そんな感覚ですので、その五%が一〇%になるという皮膚感覚、それを 本当に御理解いただきたいと思うわけです。二度と、そうはいったって 今まで五%だったんですからというような言い方をされずに、五%が一 〇%になるということはどういう感覚なのかというふうな観点からこれ からは御答弁をいただきたいと思うわけです。

 そして、今結局、大臣から納得のいく答弁があればということで、納 得のいく御答弁をいただければ私の質問はそれで終わったんですけれど も、もちろん納得できませんので、質問を続けさせていただきたいんで す。

 本当に、先ほども申しましたけれども、精神障害者への偏見を減らす ことなくしては、地域での、また職場での精神障害者の居場所はふやし ていけないわけです。これは大臣も十分御承知だと思います。

 今回、そのプラスとマイナスということの中、私は最大のマイナスと いうのは治療が中断するリスクというものを考えているわけですけれど も、治療が中断をしてしまうと、当然病状が悪化をいたします。そうな ったときに、病状が悪化すると、患者さんというのは非常にパニックに なりやすくなる。パニックになって、不安とか恐怖心とかを通常の環境 の中でも持ちやすくなってしまう。そうなってパニックになった方が、 例えば不適切な場所で興奮してしまったりとか、いろいろな形があると 思いますけれども、他人を傷つけるようなことをしてしまったりとか、 そんなような事態を起こしてしまったら、ますます精神障害者への偏見 が増してしまうわけでございます。

 私のような精神科医であれば、多少興奮されているのを見ても、これ は病気で一時的に興奮しているだけだから大丈夫ですよ、周りの人が怖 がらせなければということで見ていられるわけですが、やはり精神障害 者の方について詳しい知識を持っていない方たちから見ますと、それは もう即偏見を上積みしていくということになるわけです。そんな悪循環 を断つということが厚生労働省の重要な役割であるはずですし、それは 大臣も認識されているはずだと私は思っております。

 このように、治療中断によって病状が悪化して、御本人が自殺された りとか、あるいは他害行為などに至ってしまったら、そんな最悪のケー スになってしまったら、本当にだれがどういう形で責任をとってくださ るのか。これは既に質問した方もいますけれども、本当に大臣、どなた が責任をとってくださるんでしょうか。
 また、どういう形で責任をとっ てくださるんでしょうか。

○塩田政府参考人
   精神障害者の方の問題を解決する上では、一人一人が精神障害者の方 々への理解をするということが不可欠だと思います。
そのためにも、実 際に地域で精神障害の方がきちんと生活し、あるいは働いているような ことを、子供のころから体感として一人一人が身につけることが必要だ と思います。

 そういう意味で、精神公費医療が果たしている役割が非常に重要だと いうことは十分認識しておりますし、今度の利用料負担の見直しで治療 が中断するようなことがあってはいけないと思っておりますし、そうい うことがないような仕組みをどうつくるかということで、それなりに私 たちは配慮したつもりでございます。
 そして、精神障害者がいろいろな問題を起こすこともありますけれど も、そのためには、医療の、例えば身近なところの精神科医のアドバイ スや投薬を受けるということも必要ですが、家族とか地域でのサポート が必要だということだと思います。今度の法案では、利用料負担の見直 しも織り込んでおりますが、市町村に精神障害者の方々のサポートをや ってもらう上でのいろいろな施策も盛り込んだつもりですので、私たち は全体の精神保健福祉の底上げをするということで責任を果たしていき たいと思っております。

○水島委員
 当然答えになっていないんですけれども、多分、今大臣と指名したの に部長が出てこられたということは、やはり最終的な責任者は大臣だか ら、かばって出てこられたのかなとちょっと思ったんです。

 恐らく、今の時点で、だれがどういう形で責任をとるのかということ は幾ら聞いても答弁できないんだと思うんですけれども、ただ、本当に この前からの審議を聞いていまして、こんなに重大な法改正に当たって、 私たちの懸念と厚生労働省の楽観の間には余りにも大きな開きがあると いうふうに感じております。今も、地域だ何だ、底上げだということを 部長が答弁されるわけなんですけれども、子供のころから身近でと、も ちろん、それは大きな話としてはもう当たり前のことですし、すばらし いことです。

 でも、今私たちは、今現在治療を受けている方たちのあしたからの治 療がどうなるかという、本当に目先のことを論じているわけなんです。 そこで何か事件が起こったら、それはこの広い日本の中では一つの自殺 のケースかもしれない、あるいは一つの何か地域での人間関係が悪くな ったということかもしれない。でも、その人にとってはもう人生のおし まいなわけですから、そのケースがどうか、全体の話と個別のケースに どう取り組むかということは本当に別の次元の問題として考えなければ いけないわけで、多分、私たちがこれほど危機感を持っているのは個々 の患者さんに目が向いているからであって、厚労省がそれだけ楽観的な のはそちらから目を背けているからではないかというふうに思っており ます。

 いずれにしても、この認識の余りに大きな違いを目の前にいたしまし て、私はこの法案がこのままの形で成立することには絶対に反対ですけ れども、万々が一、何らかの形でこの法案が成立したときのために、そ うなったとき、法改正がどういう効果があったか、プラスの効果、マイ ナスの効果、それを検証することがどうしても必要だと思いますけれど も、今現在、どのようにしてこの法改正の効果の検証をしていこうと思 われているんでしょうか。

○塩田政府参考人
   この法案が仮に成立させていただいたときの検証をするということは、 実に大事なことだと思います。
 これまでの精神保健福祉は責任の所在がはっきりしなかったというこ とで、今回は明確に市町村にその責任があって、市町村は計画をつくっ て、精神障害者の社会復帰に関しても、数値目標を含めていろいろなこ とをちゃんとやるということを織り込んだつもりでございます。
したが いまして、市町村が立てた目標に対してどういう結果になるかについて は、今度はこれまでとは違って、かなりきっちりとした検証ができる基 礎ができるのではないかと思っております。

 かなり大きな改革をしますので、どういう形で検証するかはこれから 検討させていただきたいと思いますが、行政のみならず、関係の方々、 有識者、いろいろな方の知恵をかりて、今度の改正案の施行を見てしっ かりと検証した上で、また次のステップの改革を目指したいと思ってお ります。

○水島委員
   市町村、市町村とさっきからおっしゃっていますが、市町村に本当に それができるのかということを後で質問させていただきたいんです。
 一つだけ部長についでにお答えいただきたいんですけれども、シミュ レーションとして、三十二条が廃止されて、かつ、今厚労省が言ってお られる重度かつ継続というところからも漏れた、例えばうつ病の患者さ んでもだれでもいいんですけれども、自分はそういう制度から外れるよ うな者だし医療費もかかるのでもう治療は結構ですと言って治療を中断 されたというようなことを精神科医である主治医が気がついたというと き、本人に幾ら説得をしても、いや、もうそういう制度の対象外でした ら結構ですというふうに言われたときに、私はどういうふうにしたらい いんでしょうか、精神科医は。どこに連絡をするとだれが来てくれて、 だれがその患者さんのところに行ってくださるんでしょうか。

○塩田政府参考人
   お一人お一人置かれている状況が異なると思いますので、どういうケ ースを念頭に置いてお話し申し上げていいかわかりませんけれども、う つで一週間に一度とか二週間に一度通院されているとすれば、一番頼り にされるのは主治医でしょうし、その主治医の方のアドバイスに従って いただくということだと思います。
 認めていただけないかもしれませんが、今度のものは、うつについて の負担は確かに五%から一割ということになりますが、御負担できる経 済的な範囲内におさまっていると思っておりますので、これによって直 ちに医療機関に行くのを抑えるとかそういうことは私はないと思ってお りますが、いずれにしても、コミュニケーションが大事なので、地域の 人がサポートするとか、主治医がやられるのは当然ですけれども、いろ いろな形のサポートを社会としてどうつくるかということだろうと思い ます。

○水島委員
   今の答弁が議事録に残るということにもきっと意味があるんだと思い ますが。
 今部長がくしくもおっしゃったように、一番信頼されているのは主治 医でしょうというのは、多分そうなんだろうと思いますが、その主治医 をもってしても患者さんを説得できないというときにどうするのかとい うことですから、当然お答えはなかったわけでございます。きのう、質 問の事前通告をしましたときには、もっといろいろな資源を利用して、 例えば病院が嫌だったらデイケアというのもありますしと、ちょっと支 離滅裂なことをおっしゃっていましたけれども、いずれにしても、それ が中断されたときにどうするかということについての明確な処方せんを 持っておられないということは今確認できたと思います。
 もう一つ、それが本当に御本人にとって負担可能な範囲内なのかとい うことを、これについては後で確認をしっかりとさせていただきたいと 思いますが、私は今の時点で必ずしもそのように思ってはおりませんの で、後ほど質問させていただきます。

 今回の三十二条問題の一つは、五%の自己負担が一〇%になるという ことでございますけれども、同時に大きな問題であるのは、対象となる 状態が現在とは激変するということ、もう一つは世帯所得による制限が できるということでございます。政省令にゆだねられている事項でござ いますけれども、これがある意味ではこの法改正の根幹とも言える部分 だと思いますので、ここからまたしっかりと御答弁いただきたいと思い ます。

 まず、対象となる状態は、重度かつ継続ということ、このような状態 ということになっているわけですけれども、何とそれを病名で限定をし ているわけでございます。今のところ、その重度かつ継続に当たる病気 というのは、統合失調症、狭義の躁うつ病、難治性てんかんの三つに限 定をされております。これは、きのう厚労省から手元にいただきました 政省令についてというような冊子の中でもけさ確認しましたけれども、 相変わらずこの三つが並んでおりました。
 まず、部長にお伺いしますけれども、狭義の躁うつ病というのはどう いう定義ですか。

○塩田政府参考人
   躁の状態とうつの状態を両方繰り返す疾患だと承知しております。

○水島委員
   アメリカ精神医学会のDSMでいいますと、双極1型障害、いわゆる バイポーラー1だけを含むのか、それとも軽躁病エピソードと大うつ病 エピソードを繰り返す双極2型障害、いわゆるバイポーラー2も含むん でしょうか。
 どちらでしょうか。

○塩田政府参考人
   含みます。

○水島委員
   当然、最初の答弁ですと、含むということになると思います。
 いずれの場合であっても、例えばバイポーラー1の場合、つまり本当 の、本当のというか、本当の躁病エピソードと大うつ病エピソードを繰 り返すというようなものであっても、例えばその分類の中には単一躁病 エピソードというものもございます。つまり、これまでに大うつ病のエ ピソードがなくて一回のみの躁病エピソードが出てきたという時点で、 これはバイポーラー1の双極性気分障害というふうに診断されるわけで ございます。これも、繰り返すということでいきますと、繰り返しでは なくて一回だけ躁病が出てきているということなんですが、診断基準で いきますと、当然この時点でバイポーラー1と診断されますので、これ も狭義の躁うつ病に含まれるという理解でよろしいんでしょうか。

○塩田政府参考人
   そのとおりです。

○水島委員
   バイポーラー1にしろバイポーラー2にしろ、初回エピソードが大う つ病エピソードから入る人と躁病エピソードから入る人というのが両方 いるわけでございます。
 つまり、委員の皆様はほとんど何か話がわからないようですので簡単 に言いますと、躁うつ病と平たく言いましても、躁病とうつ病を繰り返 すということなんですが、それが、最初から躁で入って、躁病、うつ病 というふうに行く人もいれば、うつ病から入って、うつ病、躁病と行く 人もいるし、場合によっては、うつ病、うつ病と二回ぐらい繰り返して、 三回目に初めて躁病になる人もいるということで、これらをみんな含め て躁うつ病と呼ぶ、それで今回の重度かつ継続の対象になるということ を今部長が答弁されていたわけなんです。
 それで、理解をしていただいた上でいきますと、最初が、うつから入 る人と躁から入る人がいるんですが、躁から入る人の場合には、一回目 の躁病エピソードでこれは重度かつ継続というふうに診断されますので、 この特別な枠に入ってくる。ところが、うつ、うつ、躁と行くような人 の場合には、躁までたどり着くのに、それこそ人によっては十年とかか かることもありますけれども、十年間一般のうつ病としてみなされてき て、十年目に、振り返ってみればこの人は躁うつ病だったということに なるわけです。
 同じ病気にかかっていながら、最初が躁から出るか、うつから出るか でこんなにも待遇が違うというのは、ちょっと、ばくちでもございませ んし、厚労省が考える政策としておかしいんじゃないかと思うんですけ れども、この医療費負担の格差というのは、こんなのは許されるんでし ょうか、部長。

○塩田政府参考人
   今度の自立支援法案での自立支援医療のまず枠組みから、まず委員の 方々の御理解も深める意味で御説明した上で、先生の質問にお答えいた します。

 生活保護世帯とか市町村民税非課税世帯については、これまでどおり 対象疾病も同じで、生活保護世帯は対象疾病も同じで負担額はゼロでご ざいます。それから、市町村民税非課税世帯一だと毎月の上限額は二千 五百円、市町村民税の非課税世帯の第二グループは毎月の負担上限額が 五千円ということでございます。
 それから、議論になっていますうつ病、単なるうつ病で普通の所得の 方の世帯を想定しますと、その方は一割原則になるということで御提案 しております。

 重度かつ継続の疾病、私どもの現在の提案では、統合失調症と狭義の 躁うつ病、難治性てんかんについては重度かつ継続に該当するというこ とで、この疾病に該当することをもって、一割負担ですけれども、毎月 の負担上限額を五千円と一万円のグループに分けているということであ りまして、重度かつ継続の疾病に該当するかしないかは、先生御指摘の ように、大変当事者の方にとって大きな問題だろうと思います。

 御指摘がありましたように、狭義の躁うつ病については、お医者さん が狭義の躁うつ病だと診断されるまでの間にかなりの期間を要すること がある、医学的にもそうだということでございます。私は医者ではあり ませんが、そういう場合に、認定がされるまでの間どうするんだという ような問題があるということでございまして、問題の所在はきちんと認 識をいたしました。

 これまでの私どもの法案提案までの議論の過程で、いろいろな議論を いたしました。とりあえず、重度かつ継続で医療費のかなり高いという 実証的データが集まっている疾病として、統合失調症と躁うつ病と難治 性てんかんを上げたということでありますが、御指摘のようないろいろ な問題があるということも事実でありますので、これについては、専門 家の方に集まっていただきまして、実証データも集めまして、解決すべ き課題は解決をするべく検討したいと思っております。

○水島委員
   ちょっともう一度、今さらりと流されたところをもう一度伺いたいん ですけれども、そもそも、どうしてこれらの三つの病名に限られたのか というところをきちんと御説明いただきたいのと、あと、専門家に集ま ってもらって何とかしますといっても、これは十月が施行で提案されて いて、十月までにそれをやっていただけるということでよろしいのか、 それをもう一度確認させてください。

○塩田政府参考人
   重度かつ継続の対象疾病の検討に当たりましては、レセプトなどを収 集いたしまして、医療費が大変高くて御本人の負担が大変重いというも のを、データが比較的そろっているものとして三疾病を上げたというこ とでございます。
 したがいまして、まだ実証データが必ずしも十分蓄積されていないも のについて、なるべく早く専門家の方を集めて検討したいということで ありまして、この検討については直ちに着手したいと思っておりまして、 原則として施行までの間を目標に努力するということは当然のことだと 思います。

○水島委員
   今、レセプトを収集したというのは、私はきょう初めて聞きましたの で、そこから導き出された、この根拠となっているデータを資料として 見せていただきたいんですけれども、委員長、そのようにお願いできま すでしょうか。

○鴨下委員長
   後刻理事会で協議をさせていただきます。

○水島委員
   では、それを見せていただいた上で、ただ、今答弁していただいたよ うに、施行に間に合うように対象の見直しをしていただけるということ でございますので、ぜひ、きょう、私はこれからこういうふうに見直し たらいいんじゃないかということを提案させていただきたいと思うんで すけれども、それも踏まえて、しっかりとお願いをしたいと思います。

 それから、私、ちなみに、今回、この統合失調症、狭義の躁うつ病、 難治性てんかんという病名を見たときに、昔に戻ったような気がいたし ました。
 というのが、この三つの病名というのは、内因性精神疾患という、今 では過去のものとなった疾病概念に縛られた発想でございまして、たし か私が大学に入ったころの教科書に、内因性精神疾患、心因性精神疾患 とかいって、精神病を内因性のものと心因性のものに分けるような、そ んなことが書いてあったような、医学部の教育をそれで受けたような気 がいたしますけれども、実際には、今、国際的な二大診断基準でござい ますアメリカ精神医学会のDSMも、また国際疾病分類ICDでも、内 因性、心因性という概念は使わなくなってきているわけです。
 なぜかというと、今まで内因性と言われていたものであっても、その 発症に当たってはかなりのストレス要因があるものであって、外因性な のか内因性なのかということを区別することに一体何の意味があるのか ということが学問的にも大きな議論となりましたので、今では、それを 分けることなく、そのときの状態像できちんと診断をしていこうという ことになっております。

 今回、こんなもので決めてしまいますと、厚生労働省、一体いつの時 代の教科書を使っているんだということになってしまいますので、くれ ぐれも日本の恥にならないように、国際的な常識から大きくおくれをと らないように、検討をし直していただきたいと思います。
 それで、このときに、きょうは多分質問すると、今の感じからいって 答弁がもう予想されるんですが、単極性の気分障害、つまり、いわゆる うつ病というのはなぜ外されたんでしょうか。

○塩田政府参考人
   先ほどから御答弁を申し上げましたように、実証的データがある程度 蓄積されたものとして、三疾患を現時点で考えていることで御提案して いるということでありまして、これからいろいろなデータが集まって、 必要性があるものについては、先ほど申し上げました検討の場で専門家 の方に、先ほどの御意見も含めて検討していただいて、その結論を待っ て対応したいと思っております。

○水島委員
   実証的なデータがうつ病についてないとはとても思えないんです。
 きょう、お手元の資料で参考資料一というのをちょっと見ていただき たいんですけれども、これは、まず百余りの疾患、これは身体疾患も含 んでなんですが、その百余りの疾患を対象としたクリス・マレーらのW HO研究というのがございまして、それの結果が上にあるんですけれど も、「生活上の機能障害を引き起こす十大疾患」、このトップがうつ病 でございます。これは単極性でございますので、先ほどの狭義の躁うつ 病からは外れているものです。これはWHO研究ですね。
 それからその下に、今度は「疾患の社会への影響」、これは、ハーバ ード大学、WHO、世界銀行、それらが一緒になってやったものでござ いますけれども、これで見ましても、この単極性うつ病というのが、社 会への影響、これはいろいろな観点からの社会への影響ということでご ざいますが、これで見ても、単極性うつ病というのはこうやってベスト ファイブに入ってくる。
 ちなみに、「予測二〇二〇」という方は単極性大うつ病は二位になっ ておりますが、これは、先進諸国で見ますと、トップに躍り出るわけで ございます。

 このWHO報告書は、厚生労働省も把握しているというふうに私は思 っておりましたけれども、これも、単極性のうつ病、単極性の気分障害 によって実際にその患者さんへの負担がどれほど大きいかということを 示す一つの実証的なデータだと思います。
 なお、うつ病が双極性でないからといって一律に外すということは大 問題だというふうに考えます。
 また、百歩譲って、重度かつ継続というようなそこの条件で考えまし ても、例えば難治性うつ病、反復性うつ病というのは、重度かつ継続を 満たすと思います。
 うつ病といっても、これもまた一昔前に比べますと大分病気の理解が 変わってきまして、昔は、私が学生のころ習ったときには、うつ病とい うのは、一回なって治療しなくても適当に治ってという、非常に、そう いう病気であるというふうに習ったんですが、実際には、今、いつまで も治らない難治性うつ病の方、また、実際に何度も繰り返されている反 復性うつ病の方というのは、臨床現場においてもやはり深刻な問題でご ざいますので、これについても、うつ病なんて簡単に治る病気だからと いうことで簡単に外されたのだとしたら、それは大問題、認識の間違い だと思います。

 そして、うつ病というのは、自殺との関連が、もうだれでもこの領域 に携わる人であれば、うつ病の一つの症状として希死念慮というものが ある、自殺願望というものがあるというのはもうわかっていることであ って、うつ病のことをないがしろにしてしまいますとこれは自殺がふえ るというのは、もう当たり前の結果ということになるわけです。
 また、今回の通院公費負担制度の見直しによって、受診率は確実に下 がると思います。
先ほど治療の中断という観点からはお話をしましたけ れども、この受診率という観点も非常に重要で、今、厚生労働省、小泉 政権と言っていいのかもしれませんが、自殺予防とか心の健康というこ とを一方ではうたいながら、受診を困難にするような施策をするという のは大きな問題だと思います。
 厚生労働省の地域大規模疫学研究というもの、これは吉川班、竹島班、 川上班とありますけれども、厚生労働省の研究ですけれども、それでも、 うつ病、神経症性障害、アルコール依存症の患者の受診率が三割強にす ぎないという調査結果が既に出ているわけです。この受診率をいかに上 げるかということを考えなければならないというときであるのに、通院 公費負担が切り下げられますと、ますます受診率が下がる可能性も高い と思っております。

 今回、デイケアの負担も五から十倍にふえるというふうに計算されま すけれども、そうしますと通所率も下がってきますので、社会復帰が困 難になってくるわけです。
 うつ病の方に社会復帰していただいて税金を納めていただくのと、目 先の費用削減のために命を奪ったり社会復帰を困難にしたりするのと、 これは財政的に見てもどちらが効果があるのかというような計算をちゃ んとされたんでしょうか。

 私、精神科の患者さんのことをこうやってお金のことで引き合いに出 すのは大変申しわけないと思いながら今質問をしているんですけれども、 今回の原点が財源ということであるのであれば、そして財務省がそれを 認めなかったというのであれば、これはもっと社会全体のトータルな経 済効果としてもう一度計算をし直していただく必要があると思っており ますけれども、ここの部分の影響をどのように試算されてうつ病を外さ れたんでしょうか。

○塩田政府参考人
   うつ病対策とかそういう医療費に対する投資が、人々がいろいろな社 会参加ができることによってより大きな経済効果があるというのはその とおりだと思いますが、そういう試算はしたことがございません。
 いずれにいたしましても、今度の制度で、重度かつ継続に限られた財 源を重点的にということにしておりますが、その重度かつ継続の範囲と か、これは、早急に専門家の方に集まっていただきまして、御指摘も踏 まえまして、なるべく早く、一つ一つ、対象にすべきは対象にすべくと いう形で対応させていただきたいと思います。

○水島委員
   その作業、どの病気を入れる入れないという作業は、結果として不毛 に終わると思いますので、今のうちに警鐘を鳴らしておきたいと思うん です。

 例えば、今うつ病のことを言いましたが、それ以外にも重度かつ継続 を満たすと思われる状態には、極めて重症な強迫性障害とか、生活制限 の著しいパニック障害とか、また器質性精神障害、ほかにも、例えば発 作が頻発するような解離性障害もそうだと思いますけれども、病名でい くと幾らでもどんどん出てくるわけで、すべてがまさに重度かつ継続と いう状態だと思います。

 ですから、実際には、精神科領域において病名で限っていくというの は全く現実的ではないわけで、このような事実を踏まえて、現在の三十 二条には病名制限はなく、状態像による基準となっているわけです。
 また、精神障害者通院医療費公費負担の適正化のあり方に関する検討 会の報告書でも、「精神障害においては、疾病名が必ずしも重症度や医 療の必要性を反映するものではない。また、対象疾病名を限定すること により、当該疾病への差別・偏見が助長されるおそれもある。このため、 疾病名による対象の限定ではなく、状態像により判定を行う現在の方法 を継続するのが適当である。」そのように報告書でもされているわけで す。
 やはり考え直すべきであって、今回、一部の医療機関がこの制度を乱 用したために三十二条の見直しにつながったのであれば、まずはその問 題を整理するのが先でございます。

 心理的、社会的、職業的機能にどれほどの影響を与えるかということ を数値化するために広く使われております機能の全体的評価尺度、一般 的にGAFと呼ばれているものですが、きょう、お手元の資料の二とし て配らせていただいておりますけれども、例えば、どれほどの機能障害 があるかということをこのGAFで判定していく、これでGAFが何ポ イント以下というような形でその機能障害をきちんと判定していくとい う方法が、私は現時点では一番現実的だと思っておりますし、この手続 をきちんと踏まえるというのであれば、乱用がかなりの程度防げるので はないかと思います。

 それでも心配だというのであれば、さらに精神保健指定医がこのGA Fで判定をするという条件までつければ、まず現在の、私も目に余る乱 用ぶりがあるということは知っていますけれども、そのようなものも淘 汰されるのではないかというふうに考えておりますので、そのような条 件つきで三十二条を現在のまま残すということを私は提案申し上げたい と思いますけれども、いかがでしょうか。

○塩田政府参考人
   委員の御指摘は、疾病名だけではなくて状態像で客観的な物差しがあ るのではないかという御指摘だと思います。
 これについてはそのとおりだと、疾病だけではなくて状態像も、両方 できちんとチェックするというのは当然望ましい方向だと思っておりま す。疾病だけでやるには限界があるので、状態像のGAFをどのように 活用できるかも含めまして、それは検討させていただきます。

 私どももGAFでやるというのを検討の過程では念頭に置いたことも ございますが、現時点で医療機関の中で必ずしもみんながみんなそれが 使いこなせるとかいう状態ではないというような御意見もありましたの で、最終的に現在提案している疾病名で提案したということであります が、きょういろいろな御指摘をいただきましたので、GAFの活用も含 めまして、それも専門家に検討していただきたいと思っております。

○水島委員
   GAFが一般の医療機関で使いこなせないとおっしゃいましたけれど も、GAFの判定もできないようであれば、やはり三十二条の申請をす る者としては私はふさわしくないと思いますので、GAFが使いこなせ ないような人が今三十二条の申請をしてしまっているから乱用されてい るんじゃないんですか。

○塩田政府参考人
   そういう面があるかどうか、私、必ずしもその分野について、突然の 御質問で、残念ながら法学部出身なので、そこはよく調べた上できちん と回答させていただきます。

○水島委員
   GAFが外されるとして、先ほどの部長のような理由であるとしたら、 それは断じて納得できませんので、また、逆に、そんなことだけが理由 だったんだとしたら十分GAFでやっていけると思いますので、ぜひそ ういう落ちつきどころに向けて三十二条を残していただけますように。
 これは本当に、そうでなければとてもちょっと納得できませんし、きょ うも、多分、大臣、そこで聞いておられて、うん、そういうやり方もあ るかなと今きっと思っておられるんじゃないかと思いますので、最初に 申し上げてきた精神障害者の特徴というのを頭に入れた新しい頭でちょ っとリフレッシュしていただいて、では今度はGAFで、そして精神保 健指定医がやると。
 どういう人がこのGAFをきちんと使えるかどうかということを、ま たその背景を調べていただきたいと思いますけれども、今、精神科関係 で唯一目に見える資格としてございますのは精神保健指定医、これは一 定期間の臨床経験も当然問われて、厚生労働省からいただいている資格 でございますので、これを持っている人がGAFをもって、そしてその 数値でちゃんとこの三十二条の対象になるかどうかということを切って いく。それでやっていけば、私は、財源問題は恐らく解消される。
 今回のようなおかしな、自立支援医療の中にこれを組み込んでしまっ て、通院が中断したりとか受診率が下がったりとか、それに伴って社会 的に大きな損失、これは財政的にも損失になるわけですけれども、それ につながるよりははるかに経済効果が高いと思いますので、ぜひ新しい 頭でもう一度御検討いただけますように、これは心からお願いいたしま す。

 大臣、ちょっとこの時点で一言、いかがでしょうか。

○尾辻国務大臣
   お話を伺いながら、ああ、そういうやり方があるのかなというふうに 思って聞いておりました。
事務的にはどういう判断をするのかなと思い ましたら、部長も答弁をいたしたとおりでございますから、これは部長 が答弁いたしましたように、前向きに検討させていただきたいと存じま す。

○水島委員
   私も、もし自殺する方が出たらだれが責任とるんだなんという、そん な質問をもうしたくないので、みんなでここで議論を尽くして、これな らやっていけそうですねというような、そういう結論に達することがで きますように、大臣のさらなる御尽力をお願いしたいと思います。

 そして、きょうは一時間半いただいたので幾らでも質問ができるかと 思ったら、例によって時間がなくなってくるんですけれども、先ほど申 しましたように、精神障害者は家族に負い目を感じていることが多く、 家族は病気を必ずしもよく理解しているわけではございませんので、そ んな状況を踏まえれば、所得に着目した利用者負担の見直しについては、 世帯単位の所得ではなく、障害者本人の所得によることが必要であると いうこと。これは、既に多くの方が指摘をされておりますし、厚生労働 省も、いろいろなあり方を検討したいとやや前向きな御答弁を下さって いると思いますので、これは、今答弁は時間がないので結構ですけれど も、ぜひ私からも改めてお願いしたいところでございます。
 そして、精神障害者の家族は、精神保健福祉法上の保護者規定により まして、経済的、心理的、社会的な有形無形の負担を日ごろから抱えて おりまして、これに新たな経済的負担が加わるというのが今回の改正の 意味するところであるということを、大臣にもしっかりと頭に入れてい ただきたいと思います。

 社会保障審議会障害者部会で福島智委員が提出をしました意見書には、 「これは、障害者のニーズを社会全体で支援しようという発想ではなく、 「本来家族でめんどうをみるべきもの。それを社会が一部手伝うのだか ら、その見返りに家族が費用を負担せよ。それが障害者を家族に持って しまったあなたがたの運命だ」と言っていることと同じであり、家族の 連帯意識や愛情を逆手にとった財政削減の巧妙なしかけに思える。」そ のようにこの意見書に書かれていて、私も全く同感でございます。
 家族の連帯意識や愛情を逆手にとった仕組みというのが何をもたらす か、これはちょっと考えてみればわかることだと思います。何といって も、家族との関係をゆがめてしまいます。追い詰められた家族は無理心 中にすら至るということもありますし、また、虐待が発生するというこ とはよく知られております。精神障害者の場合、家族が病気をいつまで も認めたがらないというケースもございまして、怠けているという嫌み を日ごろから家族から言われている人も少なくないわけですけれども、 医療者が幾ら説明しても、先ほど申しましたように、家族の理解には限 界がございます。

 家族の経済的負担が強まると、その関係のゆがみがますます悪化する のではないかということを私は非常に心配しているわけなんですけれど も、この懸念に対して、大臣、何か大丈夫ですよという答弁がございま したらいただきたいんですけれども、いかがでしょうか。

○尾辻国務大臣
   今度の制度改正に当たりまして、本人の負担については、これは利用 者本人の負担ということをまず明確に私どもは打ち出しました。これは そのとおりなんですが、ただ、いろいろな配慮、特に所得の低い方に対 する配慮をしてくる中で、世帯というのをどうとらえるかという議論が 出てきたわけでございます。

 そういたしますと、この議論を始めますと、夫婦ならやはり同一世帯 だろうとか、ではそれをどこまで広げるのかとか議論が出てまいります し、また一方から、医療保険制度等において被扶養者などとして経済的 な恩恵を受けているという場合に、恩恵を受けるときには家族と言い世 帯と言い、では都合が悪くなるとまたそれは違うよと言うのかとか、い ろいろな議論が出てくる中での議論を今私どももいたしておるというこ とでございます。
 生計を一にする世帯の範囲につきましては、今後、具体的な検討を進 めることとしておりますけれども、その際には、今回の利用者負担の見 直しの趣旨でありますとか、こうしたいろいろな先生方の御意見を踏ま えながら、具体的に基準をお示ししたい、こういうふうに考えておると ころでございます。

○水島委員
   ぜひ、先ほど私が申しました心配が解消できますような、そんな結論 を出していただきたいと思います。
 そして、これは本人負担というふうにした場合であっても、個別の利 用者の経済状況に応じた負担軽減措置もさらなる検討が必要であると私 は考えております。

 働き盛りの人で家族を扶養している立場の人がうつ病になったケース などを考えてみるとわかりやすいんですけれども、こういう人は、往々 にして所得税三十万円以上というのに当たると思います。でも、それは あくまでも前年の所得に基づくものであって、現在の経済状態を見てい るものではございません。病気になったことをきっかけにリストラされ るなど、前年の所得と現在の経済状態に全く関係がないということも少 なくないわけでございます。所得税三十万円以上であっても、妻が専業 主婦、私立の高校や大学に通う子供が二人などというよくある家庭では、 経済的なゆとりが決してあるわけではございません。
 また、その男性のみが家計を支えているため、病気で収入がなくなっ たときの危機感は大きく、さらに医療費負担ということになりますと、 患者さんの罪悪感を限りなく刺激することになるわけです。
 ただでさえ稼ぎ手がうつ病で働けなくなると罪悪感を非常に強く感じるもので、自 殺にすらつながることがあるというのはよく知られた事実でございます。

 現在の経済状態を評価して自己負担に反映させる仕組みがつくれない ものでしょうか。低所得者への配慮をきめ細かくともう何度も何度も答 弁されているので、当然そのくらいやっていただけると思うのですけれ ども、いかがでしょうか。

○尾辻国務大臣
   今お話しいただきましたように、基本的には前年度の所得に応じて軽 減を行うということになります。しかしながら、やむを得ない事情によ り経済的な状況が大幅に変わる場合、これは当然起こり得ることであり ますから、そうした場合など、一定所得以下に相当すると市町村等が個 別に認定した場合には、負担を軽減することといたしております。その 具体的な条件等は、今お話もいただいておりますし、こうした御指摘を 踏まえて検討してまいります。

○水島委員
   それはぜひ必ずしっかりとお願いいたします。

 そして次に、応益負担について、本来、応益負担という仕組みそのも のについて尾辻大臣に伺うつもりは余りなかったんですけれども、全体 の考え方として確認しておきたいこともございますので、少々伺わせて いただきます。

 先ほど御紹介いたしました社会保障審議会障害者部会での福島智委員 の意見書には、本当にほかにもいろいろとすばらしいことが書いてある んですけれども、この応益負担については、障害者だけが特別に扱われ るべきではないという意見に賛同するとしながらも、例えば、重度障害 者が働く作業所などでは最低賃金法が適用されていないこと、障害者の 失業率は国民全体の失業率よりもはるかに高いことなど、厳然と残る差 別を指摘されております。これは本当にそのとおりだと思います。

 先日、全国にも報道されたので、御存じの方も多いと思いますけれど も、私の選挙区である宇都宮市で、知的障害者の誤認逮捕、誤認起訴事 件が起こりました。きょう、お手元の参考資料の三と四に、その新聞記 事、これは私の地元の下野新聞の記事でございますけれども、下野新聞 の記事も資料として配らせていただいております。
 この事件、どういうことだったのかというと、具体性に乏しい本人の 自白以外に証拠もなく、逮捕どころか起訴までしてしまった。そして、 本当の容疑者が逮捕されて供述をしたために、こちらの方が冤罪である ということが発覚したという事件で、とんでもない事件であるわけでご ざいます。

 きょうは、そのために、警察庁と法務省の方にもいらしていただいて いるんですけれども、まず、この知的障害者であるということに対して、 取り調べ段階でどのような配慮をされたのでしょうか。警察庁、法務省、 それぞれからお答えいただきたいと思います。

○岡田政府参考人
   お尋ねの具体的な事件に関しましては、個々の犯罪捜査にかかわるこ とでもございますし、また、御案内のとおり、かなり高度なプライバシ ーにかかわっている問題でございますので、一般的な答弁になって恐縮 でございますが、一般論として申し上げますと、私ども、知的障害を有 する人の取り調べに当たりましては、相手方に十分理解してもらえるよ うな平易な言葉を用いたり、あるいは暗示を与えることのないよう配慮 するなど、その供述の信用性について特段の配慮をすべく指導を行って いるところでありますし、その裏づけ捜査についても十分配慮するよう に指導しているところであります。

 しかしながら、残念ながら結果として今回のような事案が発生したわ けでございますので、今後ともより一層指導を徹底してまいりたいと考 えております。

○大林政府参考人
   今回、誤認起訴された方が知的障害者であったか否かにつきましては、 個人のプライバシーにかかわる事柄ですので、お答えを差し控えさせて いただきたいと思います。
 あくまで一般論としてお答えをいたしますと、検察当局においても、 年少者や知的障害者など、一般に誘導を受けやすいと言われている方々 の取り調べに当たっては、その特性に配慮した適正な発言を行うよう配 慮しており、必要がある場合には、取り調べを行う上で保護者などを立 ち会わせるなど、適宜適切に対処をしているものと承知しております。

 なお、お尋ねの問題に関しましては、宇都宮地検において検証を行い、 過日、その結果を記者会見で明らかにしたものと承知しております。自 白内容の合理性の検証や裏づけが不十分であったとのことであり、今回 の検証結果も踏まえ、検察として再発防止に万全を期する必要があると 考えております。

○水島委員
   ちょっと驚きましたというか、すごいですねという感じなんですが、 お手元の参考資料四には、その検証結果の要旨、これは新聞からとった ものなんですけれども、載っております。右側が宇都宮地検の検証結果、 左側が栃木県警の検証結果でございます。左側は、わかりやすいように 線を引かせていただきましたけれども、これは県警の方が記者発表でマ イクで読み上げられたものでございます。一段目にしっかりと「知的障 害を持つ男性の特性を理解し、」とか、今プライバシー、プライバシー といってお答えにならなかったことが、ここでしっかりと語られている わけでございます。

 何かこういうことを目にしてしまいますと、本当に信頼感というもの がなくなっていってしまいますので、一体どうなっているのかというこ とを、ちょっときょうはそのことを聞くためにこの質問をしているわけ ではないので、また場所を改めて、この件についてはいろいろ伺いたい と思うんですけれども。

 とにかく、これを読みますと、県警でも、取り調べを担当した警察官 は、この方が知的障害者であるということを理解した上で何かいろいろ と頑張っていたというようなことが書かれている。この事件の非常にた ちが悪いと私が思っておりますところは、本人が知的障害者であるとい うことを警察も検察も承知をしていたわけでございます。ところが、そ のために取り調べで配慮をするというのではなくて、知的障害者だから、 その証言と事実との矛盾に目をつぶって起訴にまで踏み切ってしまった という構造であるというところが、非常にたちが悪いと思うんです。
 この左側の県警の検証要旨の真ん中辺に今度棒が引いてあるところな んですけれども、こちらを読ませていただきます。「供述が被害状況の 一部と矛盾したり、必ずしも十分な物証が得られない問題があったもの の、男性は記憶力や理解力が十分でなく徹底した追及を行うことが困難 であり、捜査幹部もこのような矛盾が残ることも仕方ないと判断した。」 それで起訴をしているわけです。

 これは、ちょっと、本当に二重の意味でひどいことであります。知的 障害者であるということを知っていたのだから、まず取り調べ段階でき ちんとその特性に配慮した取り調べをすべきだった、それをしていなか った。それが一つですけれども、もっとひどいのはこちらです。その内 容のあいまいさが知的障害者だからしようがないということで、起訴に まで踏み切ってしまっているということ。これは、県警の検証のこれを 読みましたけれども、とても、これだけのひどい人権侵害をしておきな がら、全くそういう自覚が私はここから読み取れませんでした。

 これは本当に大問題だと思っておりますし、私の地元紙ですからこれ だけいっぱい載ったんですけれども、全国紙にはそんなに大きく載らな かったかもしれませんので、きょうここにいらっしゃる委員の皆様に、 こういう事件があったということ、このひどさを本当にぜひきちんと頭 に入れていただきたいというふうに思うわけでございます。

 本人が知的障害者である可能性がある場合には、警察が最初から弁護 士会に連絡して弁護士をつけてもらうようにルール化すべきだと、私は ますますこの件を見て思ったわけです。実は、今回の事件でも、警察は 本人に弁護士は要るかと聞いてくださったらしいのですが、本人は簡単 に断ってしまった、そのために呼ばなかったらしいということです。そ れが本人にとってどのようなメリットにつながるのか、本人にもわかる ようなかみ砕いた説明もなかったようでございますし、知的障害者の方 を相手に、本人が希望しなかったから呼ばなかったというのは、私は言 いわけにもならないと思っております。
 知的障害者の場合には弁護士をまず呼ぶということをルールにすべき だと思いますけれども、警察庁はいかがですか。

○岡田政府参考人
   知的障害のある人に対して、弁護人選任の告知をするということに際 しましては、相手方に十分理解してもらえるよう平易な言葉を用いると いった配慮はしているところでございます。その上でさらに、被疑者の 弁護人選任の意思の有無にかかわらず警察が独自に弁護士の選任に関与 するというのは、現行の刑事訴訟法では必ずしも予定しておらないと思 いますし、私どもとしても慎重であるべきではないかと思っております。

○水島委員
   予定をしていないといっても、禁止をされているわけではない、法律 内で可能なことであるわけでございますので、これだけの事件を犯して おきながら、今の答弁というのは、全くもってみずからが犯した罪の重 さを自覚していないと申し上げざるを得ないと思います。

 もちろん、厚生労働委員会ですし、刑事局長がいらっしゃって、急に 今までの方針を転換するようなことを簡単に答弁できないというお立場 も理解しておりますので、これはぜひ、この障害者の自立支援ともかか わってこういう指摘があったということ、これを真摯に受けとめて、ぜ ひ警察庁で御検討いただきたいと思っております。

 また、取り調べの実際がどうだったのかということを検証するために は、取り調べの可視化が不可欠だと思います。可視化を導入すれば、取 り調べの適正化効果も期待できると思います。この取り調べの可視化と いう議論、可視化といってまたわからない方が多いかもしれませんけれ ども、ビデオなどで録画をして、取り調べのシーンを後で再現できるよ うにするというのが可視化であるわけです。この議論は以前からあるわ けですけれども、幾ら何でもそろそろ実現していただけるんでしょうか。
 これは、警察庁、法務省ともにお願いいたします。

○岡田政府参考人
   取り調べの具体的な状況に対する検証につきましては、取り調べ状況 の報告書ですとか、あるいは留置場への入出場記録等、客観的な調査手 段もございます。それに加えて、今、可視化でさまざまな議論がなされ ておりますが、そうした中のうち、録音、録画ということにつきまして は、これを義務化した場合には、取り調べの機能が大きく阻害されるこ とになって、犯罪の検挙に支障を来す場合もあろうかと思います。その ことがひいては我が国の治安に重大な影響を生じることになるというこ ともあるのだろうと考えております。
 そうしたことから、取り調べ時のビデオ撮影等を義務化することにつ いては困難であると考えております。

○大林政府参考人
   取り調べの状況の録音、録画等につきましては、司法制度改革審議会 意見においても、刑事手続における被疑者の取り調べの役割との関係で 慎重な配慮が必要であり、将来的な検討課題とされております。
 したがって、法務省といたしましても、この問題につきましては、刑 事司法制度のあり方全体の中で慎重に検討することが必要である、この ように考えております。

○水島委員
   法務省の方がちょっとはわかっているかなという答弁でしたけれども、 何か録画とか録音をされて困るような取り調べを警察ではされているの かと思って、今、私、ちょっと背筋が寒くなる思いがいたしました。当 然、公務としてしっかりと仕事をされているわけですから、誇りを持っ て仕事をされているわけですから、それを録音、録画されたら困ると、 そんなお仕事をまさかされているわけではないと思いますので、ぜひ、 先ほどのような答弁のままにしないでいただきたい。
 ちょっとこの件については、本当に幾らでも議論をさせていただきた いんですけれども、まだこちらの自立支援法関係でも質問しなければい けないこともございますので、きょうはその御答弁を伺うにとどめると いうことにさせていただきたいと思います。

 ぜひ、これは私、やはり録音、録画という可視化以外の方法で同じだ けの機能を補完することは絶対にできないと思います。何かほかにそう いう道具があるのなら教えていただきたいくらいなんですけれども、も しもほかに必ず可視化のかわりにこういう方法で何とかできますという のが警察庁、法務省どちらかでおありになれば、今御答弁いただきたい んです。

 くれぐれも、そのときの取り調べの記録を後で見ればいいですといっ ても、これは本当に知的障害者の方のそのときの雰囲気、顔つきなども 含めて、どういう中でその証言が誘導されてきたのかというようなこと は文字の記録を読むだけでは絶対にわからないと思いますので、だから こそ、司法制度改革全体の中でこの可視化というものが今までずっと議 論があったわけでございますから、これはよくわかっていらっしゃるは ずのことなんですけれども、もしもこれ以外の手段で今すぐお答えをい ただけることがありましたらいただきたいと思いますけれども、ござい ますでしょうか。

○岡田政府参考人
   いささか僣越かもしれませんけれども、取り調べの状況というのは大 変千差万別ですし、相手もさまざまでございます。取り調べの内容とい うのも大変プライバシーにもかかわることもございますし、あるいは共 犯者の関係、あるいは組織絡みの事件もございます。恐らく、弁護士さ んの接見状況を可視化しろとか、あるいはお医者さん方が患者さんとい ろいろな相談に応じるときに可視化した方がいい部分もあるんだろうと 思いますし、すべてが可視化できない部分もある。

 余計なことを申し上げると議論が混乱いたしますので、そうしますけ れども、私どもとしては、真実を追求するという観点と、そのほか、さ まざまな社会的な利益を比較考量した上で現在のようなやり方をしてい るというつもりでございます。

○水島委員
   何も取り調べの状況をテレビで実況中継しろと言っているわけではな いのですから、録画、録音しておいて、こういう問題が起こったときに、 きちんとした手続に基づいて弁護人が見られるようにというようなこと で言っているわけで、また裁判の証拠にするというようなことで言って いるわけであって、それは今の取り調べの調書ですか、そういうものも 同じ扱いだと思うんですね。それが紙だったらよくて、ビデオだったら いけないという理屈は全くないと思いますので、これは、今うなずいて いただいていますから、私もそんなに間違ったことを言っていないと思 うんですけれども、これはきちんと御検討をいただきたいと思います。

 そして、もちろん、今のやり方で何も問題がないんだったらこんなこ と申しません。これだけ重大な事件が起こっているわけですから、これ はだれが聞いても重大だと思います、この事件は。もしも真犯人が別の ところで逮捕されなかったら、この事件は多分埋もれたままだったと思 いますから、絶対にこんなことを繰り返してはいけないわけですから、 それだけの問題を踏まえて、私は、ここで可視化に向けて大きく一歩を 踏み出していただくぐらいのことをしていただかないと、とても気持ち がおさまりませんので、しっかりと警察庁、法務省ともによろしくお願 いいたします。

 また、私は以前、アメリカの警察官で知的障害の方の取り調べを専門 とする方が来日されたときにお会いしたことがございます。知的障害の 方が被疑者の場合であれ、あるいは目撃者の場合であれ、面接をするに は専門的な技法が必要であって、専門的な技法に基づいて面接を行えば、 十分に有用な情報を引き出すことができるということでございました。 障害者差別禁止法であるADAがあるアメリカでは、知的障害を持って いるという理由で取り調べにおいて不利益を受けたということであれば、 障害者差別として政府が訴えられることになりますから、専門技法を持 つ警察官を養成する必要があるということでございました。

 日本の警察庁では、知的障害者の特性を踏まえてきちんと取り調べが できるような警察官の養成はしておられるんでしょうか。

○岡田政府参考人
   知的障害を専門とするという取り調べ官の養成は格別に行っておりま せん。ただ、知的障害を含め、体を病まれたり、あるいは心を病んでい る人たちの取り調べ、その他、さまざまな特性がございますので、そう した特性に応じて調べをするように、そして、私どもの仕事は時にやは り失敗することもありますし、そうしたことの反省なども踏まえまして やってまいりたいと思います。

○水島委員
   私は精神科医でございまして、精神障害者の方との話というのは割と うまい方だと思いますし、いろいろな病的体験を聞き出すのも割と得意 な方なんですけれども、そんな私でも、知的障害者の方から証言を引き 出せるかというと、全く自信がございません。それほどやはり特殊なト レーニングというのは必要なんだと思いますので、障害一般に配慮をし てとか、そういうレベルのこととは違うトレーニングをこのアメリカの 警察官の方は受けておられましたので、ぜひ日本の警察庁もアメリカに でも勉強に行っていただいて、ぜひ日本にもそういう警察官を養成して いただきたいと思います。

 ただ、そういう方たちが全国に配置されるまでにはまだまだ時間もか かるでしょうから、今すぐできること、すぐに弁護士に連絡をして、必 ず知的障害者の方には最初から弁護士をつけるということ、そして取り 調べ過程を可視化するということ、これはすぐにでもできることでござ いますので、すぐに手をつけていただけますように改めてお願いを申し 上げまして、警察庁と法務省の方はこれで結構でございますので、どう ぞお忙しいでしょうからお帰りください。

 今、厚生労働大臣、このやりとりを聞いていて、そんな事件がと驚い ていらっしゃるんじゃないかと思います。大臣にこれを聞いていただき たいというのも、きょうここでこれを取り上げました一つの大きな動機 でございますので、本当にきちんと驚いて聞いていただきたかったなと 思っております。

 今、応益負担というものを正当化する方たちは、障害者だからサービ スはただというのでは特別扱いであって障害者に失礼だというようなこ とをよくおっしゃっているようなんですけれども、障害者を特別扱いす ることは失礼だということをお金の面で論じるよりも前に、こういった ところでの特別扱いからまずなくしていくべきではないかというふうに 私は常々思っております。なぜ経済的な負担を増すという話だけが、そ れだけが平等主義でスムーズに進んでいくのかというのは、本当におか しいことでございます。

 今、きょうは警察庁と法務省に来ていただいたわけですけれども、障 害者の自立支援を論じるのであれば、これは当然厚生労働省だけの話で はございませんが、今回、この自立支援法案というところにかなり政策 のかじを切りかえるに当たりまして、他省庁との関係というのはどのよ うになっているんでしょうか。

○塩田政府参考人
   今回の自立支援法案自身は福祉分野、医療分野の法案ということで、 専ら厚生労働省において立案いたしましたが、この問題に限らず、例え ば発達障害者の法案づくりから相談や教育についてどうあるべきかとか、 いろいろな角度でいろいろな分野のことについて常日ごろから各省とも 連携しております。特に、今度、公営住宅で知的障害者、精神障害者の 単身入居を認めてもらうということになっていますが、これも、今度の 自立支援法案で市町村が二十四時間サポート事業をやるということが前 提になっております。いろいろな角度で各省とは協議しながら進めてき たつもりでございます。

○水島委員
   大体思ったとおりの答弁だったんですけれども。
 尾辻大臣、私、先日、刑務所に入ってこられた山本譲司さんからお話 を聞く機会がございまして、私も改めて驚いたんですけれども、やはり 日本の行刑施設の中における知的障害者の方の割合の高さというのは、 私が思っていた以上のものでございました。そういうところで障害者の 方が、実際に何か罪を犯しているのかもしれませんけれども、実際にそ こでどういうふうに適切な扱いを受けているのか。

 また、特に障害者年金が刑務所に入ると一度切れてしまって、そこか ら出た後に、その障害者年金の手続を家族でもいてやってくれればつな がるけれども、そういう人が身近にいない場合にはそのまま経済的基盤 がなくなってしまって、それこそまた再犯でも犯さなければ生きていけ ないという状態になっているという事実がかなりあるようでございます ので、実は司法と福祉の連携というのはそんなところにも必要です。

 今一つだけ指摘させていただきましたけれども、この点ちょっと、刑 務所を出た後の障害者年金のこと、きょうは全然通告していないので御 答弁は結構なんですが、この点についてちょっと御確認いただいて、ち ょっとしたことでつなげられると思いますので、これはきちんと取り扱 っていただきたいと思っております。

 また、今の取り調べのことについても、そのように知的障害者の方が 警察のお世話になるということはかなり多いようでございます。そのと きの取り調べでどういう配慮が必要なのかということについては、これ は警察庁だけに任せておくというのは、私、今の答弁を聞いても大変心 配になりましたので、障害者の自立についての一番のエキスパートであ る厚生労働省の支援なくしてはできないことだと思っておりますので、 ぜひその点も問題意識として持っていただいて、連携を深めていただけ ますようにお願いいたします。

 また、私、きょう応益負担というテーマでこの件を取り上げましたの は、応益負担の矛盾についてちょっとわかっていただきたかったという こともございます。この一件からもその矛盾は明らかなんですが、知的 障害を持つ方が冤罪から逃れるためには、特別な警察官とか特別な弁護 士の配置が必要になります。こういった当たり前のことまで益と考える のかということでございます。

 まさか小泉政権はそんな費用まで定率負担させるつもりではないだろ うと思うんですけれども、つまり、冤罪から逃れるために特別な配慮が 必要で、それも一割負担してくださいというようなことをまさか考えら れないですよね。何か御答弁いただくのも申しわけないような質問なん ですけれども、こんな質問をなぜするのかというと、障害者が地域で人 間らしく暮らしていくということは、冤罪から逃れるというのと同じく らい当たり前のことだというふうに私は思っております。そんな人間と して当たり前の権利だと思っているから、今あえてこんなことを申し上 げたわけです。
 それを益と呼ぶ発想というのは、私にはいつまでも理解できません。
 今の冤罪のこと一つ考えてみれば、本当にこれを益と呼んで応益負担さ せるようなことなのかといえば、みんな、それはおかしい、幾ら何でも 与党の方でもそういうふうにおっしゃると思います。実は今回の政策全 体を貫く考え方に今の問題というのは重要に関係していると思いますの で、ぜひこのことについても小泉総理大臣に質問をさせていただく機会 をつくっていただきたいと委員長には改めてお願いを申し上げておきた いと思っております。

 さて、精神障害者のことに戻って、こんなにまだたくさん聞くことが あるんですけれども、時間もなくなってきましたので、少し絞って説明 をさせていただきたいと思います。
残りのわずかな時間で、精神保健福 祉法の改正案について質問をさせていただきたいと思います。

 実は、お気づきでない方もいらっしゃるかもしれないんですけれども、 今回、自立支援法案の陰に隠れて目立たない形で精神保健福祉法の改正 案が提案されております。前回の精神保健福祉法改正時に五年後の見直 しという附帯決議がつけられておりますけれども、基本的に今回の改正 はそれに基づく定期の改正というふうに考えてよろしいんでしょうか。

○尾辻国務大臣
   今般の精神保健福祉法の改正は、御指摘のとおり、前回の平成十一年 改正の見直し規定などを踏まえて取りまとめたものでございます。

○水島委員
   一九九五年だったと思いますが、私が駆け出しの精神科医だった時代 に精神保健法が改正されて精神保健福祉法になりました。まだ精神保健 指定医でもなかった駆け出しの医者にとって、法改正というのは大変な 重みを持っていたということを記憶しております。そして、医者にとっ て以上に、患者さんにとって重みを持っているのがこの法律でございま す。
 法改正に対応するのは、その内容がどれほど前向きなものであっても、 現場では実際にいろいろな苦労を伴うものでございます。だからこそ、 一つ一つの改正を、とりあえずという形で消化するのではなくて、真摯 な議論を経て、その時点で考え得る最善のものにしてほしいというのが、 患者さん、そして現場の医療者の切なる思いです。

 精神保健福祉の現場のすべてを規定していると言ってもよい精神保健 福祉法ですけれども、当然、その法改正をする際には、あらゆる角度か ら現実を検証し、いろいろな方の意見を聞いて法改正が行われるものだ と一精神科医としては思っておりました。ところが、今回の改正は、主 として障害者自立支援法との整合性を保つために行われたものであって、 前回改正の附帯決議に基づいて、各界の意見を幅広く集めて検討された ものとは言いがたいと思います。
 また、この審議の中でも、こうやってきちんと取り上げて質問をして いるのは私が初めてではないかなと思うんですけれども、こんなに議論 の多い自立支援法案の中に入れ込んで提出しているのだから、なかなか こちらに議論が来ないというのもいたし方ないことではないかと思いま す。

 かねてから精神保健福祉法上の重要課題とされてきた保護者規定の見 直しとか、医療保護入院の廃止であるとか、精神医療審査会の独立であ るとか、手帳制度の他の障害との統合などについては、今回全く触れら れずに見送られているわけでございます。これらを含めた抜本的改革が 実はこの五年後の見直しに問われていたのではないかと思うんですが、 これらについての意見集約をされてきたのか。また、今現在どういう作 業が行われていて、こういう本当の抜本的改革というのはいつ行われる のか。
そのあたりを御答弁いただけますでしょうか。

○塩田政府参考人
   今回の障害者自立支援法案の取りまとめにさかのぼって、大臣が本部 長をしております精神障害者の対策本部がありますけれども、そこでグ ランドデザインをまとめました。それに先立っていろいろな検討会を開 いたわけでありまして、精神医療の見直しの検討会、国民の啓発の検討 会、地域の受け皿づくりの検討会、そういう中でいろいろな御意見を伺 い、かつ、御批判はありますが社会保障審議会の障害者部会など、いろ いろな御意見を伺って今回の法案を取りまとめたつもりでございます。

 まだまだ残された課題が山積していることはおっしゃるとおりであり ますし、これについては今回の法案でも三年後に見直すということを規 定に入れておりますし、三年後に自立支援法についても施行状況を見な がら見直しが必要でありますので、その際に、精神保健福祉法について も残された課題を含めてさらに引き続き検討して、必要があれば改正を していくというつもりでございます。

○水島委員
   また三年後ということで、今回のが本当にとりあえず改正だったのか なという感じを今また感想として持っているところなんです。
 やはり、この法律にすべてが支配されている世界におりました、また 今も少しおります立場としては、この法案が審議されているんだという ことを余り多くの国会議員に認識されることもなくこうして法改正が行 われていってしまうという事実が本当に非常に悲しいですので、ぜひこ れは単体できちんと出していただいて、もう今、精神保健福祉の現場は たくさんの問題がございます、先ほどその主なテーマを上げさせていた だきましたけれども、それらについてすべての委員の方が質問をしてい ただくような形で審議がされるべきだと思いますので、今回の法案の出 し方については、この場で改めて抗議を申し上げておきたいと思ってお ります。

 その中でも、精神分裂病が統合失調症という病名に変えられたのは、 精神神経学会を中心とする専門家が時間をかけて議論を積み重ねてきた 結果に基づくものであって、前向きに評価できるものでございます。
き ょうは老健局の方はお呼びしていないわけですけれども、介護保険法改 正案で、なぜか認知症という言葉が突如として出てまいりまして、これ は学術的にはとても受け入れがたい用語であって、その認知症という言 葉に比べれば、この統合失調症という言葉は格段の違いがあって、非常 に受け入れやすいものでございます。
 ちなみに、認知症という用語は、老年精神医学を専門とする方たちの 間では大変に評判が悪いだけではなく、既に認知療法は認知症の治療法 だと勘違いしている医師もいると聞いておりまして、認知療法を一つの 専門としている私としても大変問題だと思っているんです。

 ぜひこれは法律になってしまう前に、参議院を通過する前に、厚生労 働省として、きょうは老健局の方はいらしていないのでこれは大臣にお 願いするしかないんですけれども、この病名についてもう少し考え直し ていただけないかなということを、医学的にも決して正しい言葉ではあ りませんので、ちょっとこれに関連して指摘させていただきたいと思っ ております。

 きょう、残りの時間で一つだけ確認させていただきたいのは、この精 神保健福祉法の中での緊急入院時の特例措置に関する部分でございます。
 今回の法改正で実質的に最も大きな改正は、一定の要件を満たす医療 機関における医療保護入院、応急入院につき、緊急その他やむを得ない 場合において、精神保健指定医以外の一定の要件を満たす医師(特定医 師)の診察により、その適否を判断し、一定時間を限り入院等をさせる ことができるものとするとの規定が新設されるということだと思います。
任意入院患者の十二時間の退院制限も特定医師の診察で可能になります。
 これを見て、精神衛生法時代への、あの暗い時代への逆戻りではない かと心配する人もたくさんいるわけなんですけれども、一定の要件を満 たす医療機関の詳細は政省令でということになりますが、どういうもの を考えられているんでしょうか。

○塩田政府参考人
   具体的な要件については関係者の意見を聞いて決めるということです が、例えば行動制限についてちゃんとした検討会をつくっている医療機 関とか、外部の意見をちゃんと受け入れるようになっている病院とか、 具体的内容についてはこれから関係者の意見を聞いて検討していきたい と思います。

○水島委員
   本当は私、その具体的な内容が決まって初めてこういう法改正が可能 になると思うんですけれども、これはやはり精神衛生法から精神保健法 へ切りかえてきたかなり根本的な部分にかかわりますので、絶対にそう いう緩みが出ないのかということを、どれほどの病院がそれに当たるの かというようなことをちゃんと検証してから、こういう法改正を提案し ていただくべき筋合いのものだと思います。

 それでも私の意見をぜひそこに入れていただきたいので申し上げてお きますけれども、この政省令には、必ずその病院の、医療機関の要件と して、精神科救急を中心的に行っているということ、また行動制限最小 化委員会が法の趣旨にのっとり運用されているということ、また事後の 客観的な検証が可能であることなどが絶対に必要な要件だと思っていま すので、これを法改正の前に検討していなかったということをもしも反 省されるのであれば、きちんとこれらを入れていただきたいと思ってお ります。
本当に、くれぐれも精神衛生法時代への逆戻りにならないよう に、その点は徹底していただきたいと思っております。

 このほかにも、実は障害児の入所施設の見直しのことなどについて質 問させていただきたいと思っていたんですけれども、三年間で見直すと いうことなんですが、子供の施設ということでいえば、児童養護施設が 依然として大きな問題として残っております。
また、単に障害がある、 ないということではなく、虐待の被害に遭った子供や、不法滞在の外国 人との間に生まれたなどの理由で完全なネグレクトの状態に放置された 子供が多くなっておりまして、どのようにしてそれぞれの子供の特性や 事情を踏まえた配慮を健康な成長と自立のために確保していけるかとい うことが問われている時代でございます。

 担当部局の狭い枠ではなく、子供の施設のあり方全体を、子供の特性 にきめ細かい配慮ができるように、そしてできる限りの家庭的環境で愛 着関係を育てながらという大原則に基づいて、抜本的に見直すべき時期 が来ていると思いますけれども、最後にその点について大臣のお考えだ け伺って、質問を終わりたいと思います。

○尾辻国務大臣
   委員の御指摘のとおり、障害児施設の見直しに当たりましては、児童 の虐待問題など、児童特有の問題に適切に対応できるようにしていくこ とが重要であると考えております。
 そのため、現在都道府県が行っております障害児施設の事務を市町村 へ移譲することについては、市町村における虐待等に関する体制の整備 等も踏まえて、今、検討を進めておるところでございます。
 あわせて、障害を理由として虐待を受けたり、虐待を受けた結果とし て障害を有するに至った児童等に適切な対応ができるように、施設にお ける支援のあり方についても、関係者の御意見も伺いながら、そしてま た、きょう先生の御意見なども伺っておりますので、こうした御意見を 伺いながら、今後の検討をさせていただきます。

○水島委員
   ぜひよろしくお願いいたします。
 施設の子供であっても、当然、障害を持つ子も持たない子もともに育 ち合っていく環境がここでも必要だと思いますので、ぜひ大きな視点か らきちんとこの見直しをしていただけますようにお願いいたします。
 ありがとうございました。











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