育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する 法律等の一部を改正する法律案
○水島委員
民主党の水島広子でございます。
私たちは、前回の本法改正時である二〇〇一年の六月に、初めて民主党
の仕事と家庭の両立支援法案を提出いたしまして、秋の臨時国会で政府案
とともに審議をしていただきました。 仕事と子育ての両立の仕方は、それ
ぞれの人の事情や価値観によるところが大きく、施策としては多様な枠組
みを提供する必要がございます。 育児休業をしっかりととりたいという方
もいれば、残業さえなければよいという方、勤務時間を少々短縮できれば
よいという方、子供が病気のときだけ休めればよいという方など、さまざ
まな考えの方がいらっしゃいます。
民主党案では、育児休業、時間外労働の制限、勤務時間短縮制度、看護
休暇など、多様なオプションを提供いたしまして、多様なニーズにこたえ
ております。 二〇〇一年秋の国会で、政府案ではなく民主党案を成立させ
ていただいていれば、日本の出生率はもっと希望的な見通しが立ったので
はないかと大変悔しく思っているところでございますので、ぜひ今回の審
議でも本当に実のある審議ができますように、よろしくお願い申し上げま
す。
また、私たちは昨年、労働基準法が改正されたすぐ後に、期間雇用者を
法案対象者とするよう民主党案を修正いたしまして、昨年の七月に衆議院
に提出をさせていただきました。 今回、政府案でも初めて看護休暇制度が
請求権化されまして、期間雇用者も法案対象者となりました。 民主党の仕
事と家庭の両立支援法案を追いかけるような形で改正案を出してくださっ
たことは、一歩前進と評価をしているわけですけれども、でも、その速度
を見ますと、現在の日本で必要とされるものに比べると、まるでウサギと
カメのような違いがございまして、出生率の低下に歯どめをかける効果を
示す気配すらないと思っております。
まず、この質疑の冒頭に、次世代育成支援についての大臣の基本的な考
え方をお伺いしたいと思います。 そして、その大臣のお考えと比べまして、
今までの厚生労働行政をどのように見ていらっしゃるかを、まず総括して
いただきたいと思います。
○尾辻国務大臣
先月発表されました内閣府の世論調査結果におきましても、国民の八割
の方が少子化の進行について危機感を感じておられます。 こうした状況の
中でございますから、お話しの次世代育成支援施策というのは、これは国
の基本政策として取り組まなければならない課題である、まずこういうふ
うに考えます。 そうした中でございますので、昨年成立させていただいた
次世代育成支援対策推進法においては、現在、全国の地方公共団体や企業
において、行動計画の策定が行われておるところでございます。
政府でございますが、本年六月に策定いたしました少子化社会対策大綱
や、これは今年中に策定したいと考えておりますけれども、新しいプラン、
新エンゼルプランのさらに新しいプランでございますが、これに基づきま
して、地方公共団体や企業の行動計画の実現に向けた取り組みを支援いた
しますとともに、国民に、子供を産み育てやすい環境整備が着実に進めら
れているという実感を持つことができるような、効果的な取り組みを進め
てまいりたいと考えております。
要するに、環境整備を何とかして進めなきゃいけない、その環境整備の
具体的な策として民主党もいろいろお出しいただいた、こういうふうに理
解しておりまして、私どもも環境整備を進めていきたい。 ただ、率直に申
し上げて、その環境整備がなかなかうまくいっていないために出生率の低
下にも歯どめがかかっていない、私はそういうふうに考えております。
○水島委員
今、率直な御意見を伺えて大変うれしく思っておりますけれども、今ま
での政府の対応を見ておりますと、一九九〇年に合計特殊出生率が一・五
七と戦後最低になったことを受けまして、九四年にはエンゼルプラン、緊
急保育対策等五カ年事業、九九年には少子化対策推進基本方針、新エンゼ
ルプラン、二〇〇二年には少子化対策プラスワン、二〇〇三年には次世代
育成支援対策推進法、また、これは議員立法ですが、少子化社会対策基本
法等々、この十年間、いわゆる少子化対策というのはいろいろ提示をされ
てきたわけですけれども、それが今大臣がおっしゃったようにきちんとし
た効果を示していないということが、出生率の右肩下がりということから
もわかると思うんですが、まず、厚生労働省として、個々の施策がどのよ
うな効果を上げたかということを検証されたことはございますでしょうか。
○伍藤政府参考人
次世代対策といいますか少子化対策は、いろいろな各般にわたる施策を
進めておりますので、それぞれの政策がどういう効果を与えるかというの
は、これは個別に実証することはなかなか困難でございます。 総合的にい
ろいろな施策を関連づけて進めておるということであります。
しかし、御指摘のように出生率が低下傾向にあるということも事実であ
りますが、こういった背景としては、一つ私ども考えておりますのは、や
はり三十歳代の男性の長時間労働、こういう背景が一つあるのではないか
ということでありますし、それから、そういったことから、職場優先の風
潮といったことがなかなか日本では是正されていないということを考えて
おります。 それから、育児の負担が女性に集中するという中で、地域共同
体の支え合いといったようなことが非常に不十分である、こういったこと
で、専業主婦家庭といいますか、そういった方々の負担感が大きくなって
いるというようなことを認識しております。
そういう認識に基づいて、これからさらに総合的な政策を進めていかな
きゃいかぬというふうに考えております。
○水島委員
私が質問しましたのは、そのような今までとられてきた政策の評価、検
証をされたことがあるかという質問でしたので、今のお答えを伺いますと、
多分されたことがないので推論を述べられたんだろう、そういうふうに理
解をさせていただくわけですが、一日評論家みたいな方はどこにでもいら
っしゃって、推測というのはどこでもされているわけですので、ここで必
要なのは、やはり個々の政策の検証作業、効果の評価ということだと思う
わけです。
そんな中で、総務省が本年の七月に、少子化対策に関する政策評価書と
して、新エンゼルプランを対象に政策の評価を行っております。 その中の
「把握の結果」の部分を、きょうお手元に資料一として配らせていただい
ているので、ごらんいただきたいんですけれども、ここで、「政策効果に
ついて」といたしまして、「仕事と子育ての両立に係る負担感 いまだ十
分とはいえないものの総じて緩和されてきている。 」「子育てそのものの
負担感 必ずしも緩和されているとはいえない。 」「出生数・合計特殊出
生率 いずれも低下の一途」と並んでいますけれども、ここに非常に大げ
さな囲みで、ここの部分なんですけれども、「しかし、低下傾向には、外
部要因も影響」と、さも大発見をしたかのように書いてあるわけでござい
ます。
外部要因とは何なのかと見てみると、「理想の子ども数の減少」とあり
まして、「子どもが欲しい理由として、社会的な規範意識を挙げる者が減
少している等子どもを持つことに対する個人の意識が変化」とあるわけで
ございます。
「社会的な規範意識」という大げさな書きぶりに驚きまして、今度その
根拠を見ますと、国民生活白書からデータをいいかげんに抜き取っている
わけでございます。
この紙の下の「子どもが欲しい理由」というところに書いてありますが、
「子どもをつくるのは自然であるから」が、この六年で三・六%低下、
「社会的に一人前になれるから」が四・七%低下、「つくれと周りがうる
さくなるから」が一一・一%低下しているのですけれども、それをもって
「社会的な規範意識」と言ってしまう感覚にも驚いてしまうわけですが、
引用元の国民生活白書を資料二として、こちらも配らせていただいており
ますけれども、これを見ると、総務省の感覚にもっと驚いてしまうわけで
ございます。
ここには、子供が欲しい理由がずらりと並んでいるわけですけれども、
一九九七年も二〇〇三年も、子供が欲しい理由として、過半数の人は「子
どもがかわいいから」を挙げておりまして、「結婚して子どもを作るのは
人間として自然であるから」が続いております。 それ以外のものは、全体
から見るとせいぜい二割以下でございます。
細かく見てまいりますと、「子どもは夫婦の間をつなぎとめる働きをす
るから」「子どもは老後の面倒をみてくれるから」というような打算的な
ものが、それぞれ八・一%、三・三%減っておりまして、「結婚すると子
どもを作れと周りがうるさくなるから」という、親になることへの主体性
そのものを疑わせるようなものが一一・一%低下をしているということで、
「子どもがかわいいから」は三・八%ふえているのですから、子供の立場
から見ると、むしろ好ましい変化ともとれるのではないかと思っておりま
す。
これを一概に「社会的な規範意識」としてしまうのは、とても客観的な
評価作業とは言えないと思います。 これを、きちんとした評価、そしてそ
こから導き出される推論や考察としてこんなことを書き切ってしまいます
と、多分、今委員長もほほ笑んでいらっしゃるわけですが、学術論文など
では認められないんじゃないかなというふうにも思うわけです。
かなり恣意的な、そして客観的ではない評価が、この総務省の一枚紙で
されておりまして、私は常々思っていますけれども、政治や行政が行うべ
きことは、価値中立的な制度の整備であって、価値観や規範意識をつくる
ことではないはずだと思っています。 価値観や規範意識というのは別の要
素によってつくられるべきものであって、規範意識の形成ということであ
れば、例えば、むしろ政治と金の問題に決着をつけることとか、公約破り
をしないこととか、そういうことの方が、規範意識の形成のためにはずっ
と重要だと考えております。
本来行政としてやるべき仕事が進まず、そのために効果があらわれない
というときに、国民の規範意識などに言いわけを求めるというのは、とて
もよくある責任転嫁の手法だと思っております。 大臣はまさかそんな方で
はないと思いますけれども、御自身がやるべきことは次世代育成支援のた
めの施策を充実することであって、くれぐれも、子供を持って初めて一人
前などとキャンペーンを張ることではないということを、もちろん理解さ
れていらっしゃいますでしょうか。
○尾辻国務大臣
総務省が政策評価をした、しかも、その評価された側の私でありますか
ら、そのことについて何か申し上げるということは難しいことでございま
すので、この際、避けさせていただきたいとは思います。
しかし、少なくとも言えることは、結婚とか出産などの個人の意識や価
値観に関するものは、これはお話のとおりに、当事者の自由な選択にゆだ
ねられるべきものでありまして、これに対して行政が何か言うとかという
ものではない、これはもうそのとおりであるというふうに認識をします。
さっき申し上げたように、その中で私どもが反省すべきは、そうした皆
さんがいろいろお考えになる、ただ、環境整備をするということが、どう
いうふうにその後お考えになるかはまさに個人の自由ですけれども、その
前提になる環境整備をするというのは、これは私どもの行政の仕事だと思
っていまして、その環境整備の部分で至らないところがあった、このこと
は反省すべきだ、こういうふうに思っております。
○水島委員
安心をいたしましたけれども、大臣は、不妊の方ですとか、そういう子
供を持ちたくても持てない方たちのサポートをするというのも厚生労働大
臣の所管事項だと思っておりますので、そういった立場からも、持ちたく
ても持てない方たちを追い詰めるような、そんな施策には絶対に加担をし
ないでいただきたいと思っているところでございます。
私、先ほど、価値観に行政が何か物申すというのはいけないということ
は申し上げまして、私もそう思います。 ただ、全体的な施策が、いかにも
何か子供を持つことを妨げているような、幾ら言っても次世代育成支援が
進んでいかない、社会全体で子供を育てていこうというような、そういう
勢いが全体の施策から感じられない場合には、やはりそれはまた個々人の
価値観に与えていく影響もあると思っておりますので、そういう意味で、
今大臣がおっしゃったような次世代育成支援の環境整備を、本当にそちら
にしっかりと取り組んでいただきたいと思っております。
私が今回総務省の政策評価にあえて触れましたのは、二〇〇四年度中に
策定されることになっております、その後継プランであります新新エンゼ
ルプランに影響を与えるということを大変懸念しているからでございます。
そもそも、厚生労働省としてみずからの政策評価を行って、新新エンゼ
ルプラン作成に着手すべきではないかと考えておりますけれども、その際
の評価は、この総務省のようにかなり恣意的なものではなく、本当に価値
中立的に、客観的な視点から行っていただきたいと思いますけれども、こ
の点、確認させていただいてよろしいでしょうか。
○尾辻国務大臣
先ほど局長が御答弁いたしましたように、一つずつの政策で、なかなか
これが即、少子化対策にどのぐらい役に立ったのかというようなことを評
価するというのは、かなり難しい面もございます。
しかし、私は、これは私として今評価しておるというか反省しておるこ
とでございますが、大きく言いますと、まず、今新エンゼルプランですが、
その前にエンゼルプランがありました。 あのときの反省は、まさに少子化
を全部保育におっかぶせたようなところがあったと思うんです。 あのころ
は、時の厚生省に限らず、もう少子化対策というと、イコールで結んで保
育の充実でした。 私はそのころよく言ったんです、では保育が充実したら
本当に子供が生まれるか、こう言っていたころがあるんですが、まさにあ
のころはもう全体として、いろいろなところに、有識者の皆さんに集まっ
ていただいて御検討いただいても、そんな結論が出てくるというようなこ
ろがありました。 その反省がまずあります。
その反省を踏まえて、新エンゼルプランでは、もっと社会全体で少子化
というのは取り組まないとだめだということでやったつもりでありますが、
先ほど来御指摘のように、これが不十分である。
今度、新新エンゼルプランをつくりますけれども、この反省を踏まえて、
先ほど民主党の御意見も伺わせていただきましたし、そんなことも御意見
をお聞きしながら、もっと効果あるものにしたい、こう考えております。
○水島委員
ぜひよろしくお願いいたします。 そのためには、民主党としてもできる
だけ、できることはさせていただきたいと思っておりますので、よろしく
お願い申し上げます。
さて次に、この法案の内容に入ってまいりますけれども、子供の看護休
暇のことについてまず伺いたいと思います。
今回の政府の改正案では、小学校就学の始期に達するまでの子を養育す
る労働者は、五労働日を限度として子供看護休暇を取得することができる
とございます。 これは、つまり子供が何人いても五日しか休めないという
わけですから、まるで一人っ子誘導策のように聞こえるわけでございます
し、一人一人の子供の視点に立った政策とは思えません。 少子化、少子化
と大騒ぎしている割には、そして、今大臣もよく反省しているとおっしゃ
っている割には、政府は、就学前の子供は一人に抑えろということを言い
たいのでしょうか。
○尾辻国務大臣
率直な表現をさせていただきますと、やはり世の中、理想とする方向に
一歩一歩近づけていきたい、そう申し上げたいわけであります。 したがっ
て、今度のことでは、従来努力義務であったものを義務づけたという、こ
れは一歩前進であることはお認めいただけるんじゃないかというふうに考
えるわけであります。
それじゃ、労働者一人当たりで五日、子供一人当たりじゃないじゃない
かという今のお話になるわけでありますが、どうぞ御理解いただきたいと
いって申し上げたいことは、私どもは最低基準として言っているわけであ
りますから、その後、最低基準は最低基準として、労使のいろいろな話し
合いの中でこれをまたお決めいただければ大変ありがたい。 ただ、法律で
定めますことは、事業主の負担を考えますときに、今それを定めるという
のは、私どもは、困難である、こう判断したわけでございます。
○水島委員
今大臣の御答弁の中、一歩一歩近づけていきたいというのと、今の段階
ではということがございましたので、こちらとしては当然次を期待するわ
けでございます。 民主党案では、子供一人につき年間取得日数を十日とし、
上限を十五日としておりまして、シングルペアレントの場合はその倍とい
うことになるわけですけれども、政府も、何らかの上限は設けるとしても、
子供一人につき五労働日というように、ぜひ、本当は今回の段階で考えて
いただきたいところでございます。
今、事業主の理解というようなこともありましたけれども、今回どうし
ても無理なのかということ、また、今回どうしても無理である場合に、理
想の方向に一歩一歩近づけていく、次の一歩はやはり子供一人当たりとい
うようなカウントになっていくように、さらに見直しを続けていっていた
だけますでしょうか。
○尾辻国務大臣
今の、今度改正をお願いしておる、この中で書きかえろとおっしゃられ
ると、それは率直に、大変難しい、困難であるということはまず申し上げ
たいと思います。
私は一歩一歩と言いましたから、では、次の一歩が一人当たり五日にな
るのかと、ぱっと言われますと、私もそう約束しますとまでは言えません
が、我々の検討の事項の中にはそうしたことも含めて、次のことをまた考
えていきたい、こういうふうに存じます。
〔委員長退席、北川委員長代理着席〕
○水島委員
ぜひ、これは現実的な問題としてきちんと考えていただきたいと思いま
す。
やはり、子供をもう一人持とうかと思うときに、持つと権利がその分半
分になる、子供一人当たりで考えますとそういうことになりますので、こ
れは本当に政府が一人っ子を誘導しているわけではないという立場を明ら
かにするのであれば、本当に必要なことだと思いますし、今回のこの審議
の中で、必ず、それが必要だと思って、そちらの方向に進んでいきたいと
いうことをきちんと何らかの形で残していただくことが必要だと思ってお
りますので、よろしくお願いいたします。
そして、今回のところではそれが無理だという場合に、労働者一人につ
き五労働日ということでございますから、これがお子さんが複数いらっし
ゃったり、あるいは、一人のお子さんが病気をたくさんされたりして実際
に足りなくなるというような場合には、当然これは、今のとっている状況
を見ましても、ずっと男性の方がとっている日数が少ないわけなんですが、
これは当然、父親も足りない場合にはとっていくべきだというふうに、大
臣の方からも一言ちょっと今言っていただけますでしょうか。
○尾辻国務大臣
申しわけありません、今のところ、もう一回お話しいただけますでしょ
うか。
○水島委員
看護休暇の日数が足りなくなってしまうようなときには、現行でも、母
親の方が父親よりも子供の病気のために休んでいる日数が多いんですけれ
ども、足りないときには、ぜひ父親がとって何とか都合をつけてください
ということを、世の中のお父さんに向かって、今、大臣からちょっと言っ
ていただけますでしょうか。
○尾辻国務大臣
私が申し上げてお聞きいただけるのであれば、世の中のお父さん方に、
ぜひそうしてあげてくださいということは申し上げたいと存じます。
○水島委員
ありがとうございます。 大変お父さんたちにとって励みとなったと思
います。
それで、今回この政府案では、看護休暇を取得するために六カ月とい
う勤続要件をかけてあります。 まず、なぜこの勤続要件があるのかとい
うことを御説明いただきたいと思います。
○伍藤政府参考人
看護休暇でございますが、原則として、勤続年数の長短にかかわらず、
すべての労働者を対象とするということでございますが、労使協定を締
結した場合に限り、勤続六カ月未満の労働者を対象から除外できるとい
うことにしております。
その考え方でございますが、休暇に伴う事業主の負担を勘案いたしま
すと、その要件として、一定期間の企業への貢献を求めるということも
やむを得ない場合があるのではないかということで、このあたりは、労
使の関係の御相談にお任せをしておる、こういうことでございます。
○水島委員
労使の関係というところで、ちょっとするりと政府としては答弁を逃
れてしまったかなという感じがするんですけれども。
ただ、考え方といたしまして、例えば、年次有給休暇は確かに六カ月
の勤続要件というのがついております。 これはこれで、今のような事業
主側の負担ということで考えれば、確かにこの勤続要件というのは納得
ができるところだと思うんですけれども、ただ、子供の看護休暇と年次
有給休暇とは根本的に制度が異なっておりまして、子供の看護休暇とい
うのは、突発的な傷病で、しかも、子供の場合には急変することもあり
まして、その点、大人の病気とは異なるわけでございます。 これは、雇
われて一カ月の労働者であっても、あるいは十年勤務している労働者で
あっても、これについては同じことであります。
そして、さらに、勤務が一カ月というような場合では年次有給休暇も
取得できないということになりますと、状況は一層難しくなるわけです
ので、私は、この六カ月という勤続要件は外すべきではないかというふ
うに考えております。
今回看護休暇を五日間とした根拠を伺いますと、親が子供の病気のた
めに過去一年に休んだ日数が、その過半数で五日以内にとどまっている
というデータを厚生労働省として挙げられていると思いますけれども、
実は、この五日以内という日数には、予防接種や乳幼児健診のために休
んだ日が入っていないわけでございます。
大臣は、児童虐待についても所管されていますし、ついこの前まで虐
待についての審議をしていたわけですから、子供がきちんと予防接種や
乳幼児健診を受けられるように配慮をする義務があると思いますけれど
も、勤続が六カ月になるまでは予防接種も健診も受けられないというの
では、余りにもひどいと思います。 看護休暇の勤続要件を外すか、ある
いは、全国のどこでも予防接種や乳幼児健診を休日に受けられるように
するか、何かしていただかないと、これはトータルな政策として困ると
思うわけですけれども、この点についてはいかがでしょうか。
○尾辻国務大臣
これはもう委員御自身がおっしゃいましたように、子の看護休暇とい
うのは、突発的に休まなければならない事態に対応して休む、こういう
建前になっております。 そこで、理屈を言うわけじゃありませんけれど
も、予防接種だったら事前にちゃんと準備ができる、突発的なものでな
い、こういう理屈になるわけでございます。 そういう整理をしておると
いうことを申し上げたところであります。
ただ、予防接種のお話がございましたけれども、日本医師会等と連携
しまして、子ども予防接種週間を設けまして、土曜、日曜にも予防接種
を行うなど、接種機会の拡大は図っておるところでございます。
○水島委員
看護休暇は突発的なものに対応するためで、予防接種なら事前に準備
ができるということなんですが、事前に準備をして、どうやって受けに
行ったらいいということをおっしゃっているんでしょうか。 これは年次
有給休暇をとって行けということになるんでしょうか。
○尾辻国務大臣
ですから、申し上げたことは、看護休暇の方は突発的なものでありま
す、ですから、予防接種は準備ができますね、したがって突発的でない
ので看護休暇の中では考えておりませんというのが、私どもの整理の仕
方でございます。
○水島委員
済みません、確認しますと、看護休暇の枠では考えていらっしゃらな
いと。 本来は年次有給休暇というのはそういう目的のものではないと私
は考えておりますけれども、そうしますと、予防接種というのは休暇を
とって受けに行くべきものではなくて、大臣がおっしゃったような、医
師会との協力もありますけれども、夜間、休日でも、仕事以外の時間で
受けられるようにしていくべき性質のものだという整理でよろしいんで
しょうか。
○伍藤政府参考人
どこまで予防接種の方を受けやすくするかということも、これは社会
の現実を踏まえて考えていかなきゃならぬと思いますが、今言いました
ように、今医師会等と連携をして、少なくとも土曜や日曜には受けられ
るという形で、そういう形での利用の便をできるだけ促進していこうと
いうふうなことで進めております。
○水島委員
済みません、局長にちょっともう一問伺いたいんですけれども、予防
接種についてそういう整備をぜひ進めていただきたいですし、私の住ん
でおります宇都宮市は、まだ乳幼児健診が日曜日には受けられないと思
います。 ですから、まだ全然全国的にきちんと広がっているとは思えな
いんですけれども、あと、慢性疾患を抱えているお子さんで、定期的な
通院が必要なお子さんというのもいらっしゃるので、突発的なものとい
うことでくくってしまうのは少し乱暴な感じもするんですけれども、こ
のあたりはどういうふうに考えていらっしゃるんでしょうか。
○伍藤政府参考人
看護休暇でありますから、やはり子供の病気ということで今回制度化
をするということで、先ほど来言っておりますように、あらかじめある
程度予定されるようなものについては、既存の今までのような制度の枠
組みを、年次休暇でありますとかそのほかのものを活用していただく。
それから、そういうことをやる方の、今言いました乳児健診とか予防接
種、これも、実施する側もそれを受けやすくするような体制を組んでい
く。 この両面からアプローチをしていくしか方法はないのではないかな
というふうに考えております。
○水島委員
今の御答弁は少し整理が必要だとは思いますけれども、いずれにして
も、では、今回の看護休暇の五日間というのは、慢性疾患などをお持ち
でないお子さんが、突発的に病気になられたりけがをされたときのため
の休暇というふうに、とりあえず今のところ理解してよろしいんでしょ
うか。
○伍藤政府参考人
法律上の最低基準としてこういうことを設けたわけですから、企業ご
とにそれぞれほかの柔軟な対応の仕方はまたあるかと思いますが、基本
的には、やはり病気といったような突発的な事態にどう対応するかとい
うことで特別の休暇制度を設けたものというふうに考えております。
○水島委員
とりあえずきょうの御答弁としてはそのように伺っておきますけれど
も、少し疑問が残りますので、またこちらもきちんと検討させていただ
きたいと思います。
時間がありませんので、次に、男性の育児休業について伺わせていた
だきたいんです。
二〇〇二年の育児休業取得率は、女性では六四・〇%、男性では
〇・三三%となっております。 同じように権利を与えられていても、
実際にはこれほど大きな開きがあるわけでございます。 現在の子供たち
が置かれている状況を考えれば、父親と子供とのかかわりの重要性は高
まっております。 その機会を提供するためにも、父親の育児休業取得促
進策は重要だと考えます。 また、日本よりも出生率が低いイタリアでも、
育児休業法を抜本的に見直し、父親が取得すると合計期間が延長される
制度にするなど制度改革に取り組み、出生率は徐々に回復してきており
ます。 出生率だけのことを考えても、父親の育児休業取得促進策という
のは避けては通れない重要なテーマだと思います。
民主党案では、育児休業を分割取得できるようにすることで、現在よ
りも気軽に父親が育児休業をとれるようにしております。 また、いわゆ
るパパクオータ制、つまり育児休業の一カ月を父親に割り当てる制度を
取り入れる内容となっております。 育児休業をとれる期間を小学校に上
がる前までとすることによって、より柔軟に育児休業をとれるようにも
しております。
政府も、少子化対策プラスワンでは、男性の育児休業の取得率一〇%
を目標にしているようですけれども、具体的にこれをどうやって促進し
ていかれるおつもりでしょうか。
○尾辻国務大臣
我が国で男性の育児休業の取得が進まない理由といたしましては、ま
ず、職場の理解不足や仕事量の問題など、男性労働者が育児休業を取得
しやすい職場環境が整っていないという企業側の要因、さらに、法制度
に関する理解不足、育児は女性の役割という意識など労働者側や社会全
体の要因など、これらのものが指摘をされておるところでございます。
こうした状況を踏まえますと、男性の育児休業の取得促進のためには、
まずは現行の法制度の周知、よく知っていただきたいと思いますし、社
会全体の機運の醸成などから取り組んでいくことが重要だ、まずこうし
たことが重要だと考えておるところでございます。 このため、政府とい
たしましては、男女別の育児休業取得率について社会全体の目標値を掲
げ、この達成に向けた取り組みを推進しておるところでございます。 男
性については、社会全体で一〇%という目標を今掲げております。
そして、具体的に、ではどうするんだというお尋ねでございました。
具体的には、次世代育成支援対策推進法における一般事業主行動計画
の策定、実施により、それぞれの企業における環境整備を図ること、特
に、計画を定めた目標の達成、男性の育児休業取得実績等の基準を満た
す企業を認定し、認定マークの使用を可能とすることだとか、ファミリ
ー・フレンドリー企業の一層の普及促進、こうしたことを具体的に考え
ておりまして、男性の育児休業の取得促進を図ってまいりたいと考えて
おります。
○水島委員
ちなみに、厚生労働省の男性職員の方たちの育児休業の取得状況はい
かがでしょうか。
○衛藤副大臣
厚生労働省の職員の取得状況は、平成十五年度には、育児休業を取得
した者は全体で千四百五十人、そのうち男性が十五人で、女性は千四百
三十五人になっております。 男性で一・〇%、女性で九〇・七%となっ
ております。
ちなみに、今、全省庁でいきますと男性が〇・五でありますが、全国
平均は〇・四四でございます。 それから、女性の方は、全国平均が七三
でございます。
それが、厚生労働省本省並びに厚生労働省全体の取得率でございます。
○水島委員
やはり、目標の一〇%には全く届いていないようでございますし、取
得率が平均一〇%になるということは、もっと高いところもなければそ
ういう最終的な結果になりませんから、まず厚生労働省がぐんとそれを
上げていただくように、男性の取得促進を、これは省を挙げてやってい
ただかなければと思うんですけれども、大臣の御決意を、推奨していた
だけるという、ちょっとここで一言いただけますでしょうか。
○尾辻国務大臣
推奨はしたい、こういうふうに思います。
○水島委員
またこれは時々伺っていきたいと思いますので、きちんとチェックを
しておりますので、よろしくお願い申し上げます。
やはり、御自身が育児休業をとられることによって、また新たな問題
が見えてくるというところもございますから、ぜひ、本日お並びの厚生
労働省の男性職員の皆様にも、率先をしてそういう職場環境づくりに取
り組んでいただきたいと思っております。
そして、もう一つお願いしたいのは、与党対策なんですけれども、昨
年十一月の総選挙のときに、私は、自民党の対立候補陣営から、国政は
子育ての片手間ではできないというチラシを大々的にまかれました。 こ
んなチラシを堂々とまいてしまう政権だから出生率がどんどん下がって
いくのだろうと、あきれる思いがいたしました。 お子さんがいらっしゃ
る男性国会議員が多いと思うんですけれども、そういう方たちは父親と
しての責任を果たしていらっしゃらないのかなと、老婆心ながら、大変
心配に思ったわけでございます。
国政だけではなく、いろいろな職種で子育ての片手間ではできないと
いう空気があるということが、先ほど大臣がおっしゃった、職場の理解
ですとか、環境とか、そういう男性の育児休業取得を阻んでいるという
現実があるわけですけれども、仕事と子育ての両立を所管される厚生労
働大臣として、また大臣は自民党の所属の議員でいらっしゃるわけです
から、まずは御自分の党の中から啓発をきちんとしていただけないかと
思うんですけれども、この点はいかがでしょうか。
○尾辻国務大臣
そんなビラをつくって選挙に負けたことが一つの証明でありますから……
(水島委員「勝ったんですよ、彼は。 向こうが勝ったんです」と呼ぶ)
先生がお勝ちになったんじゃないんですか。 それじゃ失礼しました、そ
このところは訂正いたします。
いずれにしても、もうそんなことで選挙をやる御時世ではないという
ふうに考えております。
○水島委員
済みません、伺ったのは、与党の啓発活動ということを何らかの形で
考えていただけないかということなんですけれども、ちょっともう一言
いただけますか。
○尾辻国務大臣
基本的な考え方として、その考え方がおかしいといいますか、今私ど
もが法律改正をお願いしているようなこととは違うものだということだ
けは申し上げたいと思います。
○水島委員
基本的に、国会の多数決の力を持っているのも与党の皆様ですし、ま
た、政府は与党の皆様と一体となって政策をつくっていらっしゃるわけ
でございますから、基本的に与党側の考え方が変わらない限り、日本の
出生率というのは回復することはないだろうと思っておりますので、今
言ったような観点もぜひよろしくお願い申し上げます。
○衛藤副大臣
お言葉でございますけれども、実は、少子化問題等、全然議論ができ
なかった時代に、当初、自社さの中で、私どもは何とかこれをしなけれ
ばいけないといってやってきたわけでございますので、何か自民党は後
ろ向きであるとかなんとかじゃなくて、我々は合意を得ながら必死で進
めてきている。 ただ、その成果が十分に検証できたかというと、まだ足
りないところがあるんではないのか。 それは、私どもは、子育てと仕事
との両立だけではない部分ももっとあるんではないのかというぐあいに
思って、今、新新プランの中で検討しようとしているところでございま
す。
そういう意味では、いわゆる北欧式のやり方もあれば、フランス式の
やり方もあれば、あるいは最近の状況を見ますと、とりわけ東南アジア
においては、日本よりもはるかに合計特殊出生率が低くなってきている。
その状況もちゃんと探りながら、日本においてどうするかということを
今決めようとしているところでございますので、一方的に与党が何とか
というと、私、ちょうどそのときに自民党で責任者をさせていただいて
おりましたので、あえて、政府もそういう方向で賢明に努力していると
いうことだけははっきり申し上げたいと思っています。
○水島委員
とにかくお手並み拝見でございますので、きちんと、またその成果を
見せていただいてから、もう一度副大臣からそういう力強いお言葉をま
たいただきたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。
また、先ほど私がそのような例を申し上げましたのは、やはりそうい
うことが非常に大きな話題となってしまっているということは、非常に、
いろいろな職場で子育てと仕事を両立しようとしている方たちにとって、
足を引っ張るとてもよくない影響があると思っておりますので、これは
ぜひそういった観点をきちんと持っていただきたいと思っております。
そして次に、保育所施策でございますけれども、政府は二〇〇一年か
ら待機児童ゼロ作戦を展開しておりまして、本年四月時点で認可保育園
の入所待ちをしている待機児童の数は約二万四千二百人で、前年より二
千人少ない、都市部では相変わらず待機児がいるというような状況でご
ざいます。
ところで、待機児童ゼロ作戦が始まる前年の二〇〇一年から、待機児
童の定義を変更したということを聞いているわけでございますけれども、
これは本当でしょうか。 東京都の認証保育所や自治体が独自に助成する
無認可施設で待機している子、空き保育所があるけれども、通勤の都合
等で別の保育所のあき待ちをしている子などが除かれているということ
でございますけれども、これは事実でしょうか。 事実であれば、待機児
童の定義が変わった理由をお知らせいただきたいと思います。
○伍藤政府参考人
御指摘のように、平成十三年に待機児童というものについての考え方
を整理して、従来からの考え方と変更したということでございます。
二点ございます。
一つは、今御紹介のありました認証保育所でありますとか、あるいは
横浜は横浜保育室と呼んでおりますが、各自治体が国の認可保育所以外
の形で、単独施策として独自の配置基準等を決めて、あるいは運営費の
負担もしながら運営をしておる、こういうものがありますので、こうい
ったものは単なる無認可保育所とは違い、公共団体が一定の関与をして
保育料の軽減も図られているということから、こういうところに入って
いる子供さんはいわゆる待機児童にカウントしなくてもいいんじゃない
か、こういうことで整理をしたわけでございます。
それからもう一つは、保護者の方の意向で、例えば一定の無理のない
登園の範囲内、時間で保育所に入れるにもかかわらず、保護者の意向と
いいますか希望で、ぜひこちらに入りたいということで、入れるにもか
かわらず認可保育所に入らないで別の形で待機をしておったり、ほかの
保育所に預けておる、こういう方々もおるわけでありまして、こういう
特定の保育所を希望する、しかもそれが保護者の私的な理由であるとい
うようなものについても、一応、いわゆる待機児童というのものの中か
らは除外をさせていただくということで考え方を明確にしたところでご
ざいます。
○水島委員
ちょっとその保護者の私的な理由という方も少し気になるんですけれ
ども、第一の方の理由の方なんですけれども、今おっしゃった御答弁を
伺いますと、政府として、認可保育園と無認可保育所というダブルスタ
ンダードを公的に認めたということになるんでしょうか。 これは今まで
決してお認めにならなかったことなので、かなり大きな政策変更という
ふうに言えると思いますけれども、そういうことでよろしいんでしょう
か。
〔北川委員長代理退席、委員長着席〕
○伍藤政府参考人
待機児童をどうカウントするか、考えるかということにおいてそうい
う考え方をとったということで、いわゆる保育所についてのダブルスタ
ンダードというようなことではないというふうに私ども思っております。
認可保育所で児童を保育すべきである、これは児童福祉法にも明定さ
れておるところでありますし、保育所に入れない場合、やむを得ない場
合には、市町村はその他の適切な保護を行わなければならない、こうい
う形になっておるわけでございます。
ダブルスタンダードというのは、無認可保育所に入っておる子供、こ
れも私ども、今一定の指導基準というのを設けて、行政指導ベースでは
ありますが、無認可保育所であっても少なくともこういう基準は守って
いただきたい、こういう指導もしているところでありまして、認可保育
所ということを基本とするという考え方には変わりはないわけでありま
して、行政を実態に合わせた形で進めていくという必要から、そういっ
た施策を進めておるところであります。 待機児童をどうカウントするか
ということも、こういう厳しい全体の需要と供給の中で、どういったと
ころをまず優先して考えていくべきか、どれだけ本当のニーズがあるか
ということをはっきりつかむために、今言ったような考え方も整理をし
たということでありますので、行政のダブルスタンダードということで
はないのではないかというふうに思っております。
○水島委員
今、ただ局長は、無認可保育所の基準のこともおっしゃいましたけれ
ども、これは我々が議員立法で提案するまで届け出制もなかったわけで
すから、さも両方きちんと見てやってきたというような御答弁をされる
のは、ちょっといかがなものかと思うんですけれども。
いずれにしても、今までその姿勢が変わったわけではない、あくまで
認可保育園を基準に考えていらっしゃるということであるのであれば、
それの是非はまた別といたしましても、そういう姿勢をとられていると
いうことであれば、厚生労働省の考える待機児童というのは、やはり認
可保育園に希望をしているけれども入れていない子供が待機児童という
ことになるんでしょうし、現実に今本当に困っている、無認可保育所に
も入れていないお子さんは、またそれは別の基準でカウントされればい
いことであって、待機児童の定義を変更するというようなこととはちょ
っと違うんじゃないかと思うんですけれども、この辺の政策のねじれに
ついて、大臣はどうお考えになりますでしょうか。
○尾辻国務大臣
そもそも、待機児童の定義は、おっしゃるように、認可保育所に入り
たいといって、そしてそれに入れずに、まさに待機しておる子供の数で
ございます。 ただ、待機児童ゼロ作戦や何かを言いましたために、それ
に合わすためにという、もしそういう御理解もあるのであればちょっと、
この定義を変えた時期はもっと前でありますから、必ずしもそういうこ
とではなかったということは申し上げておきたいと思います。
それから、まずこの辺をどう整理するかはあるんですが、私は、実態
として、特に東京都の認証保育所だとか、あるいは横浜の保育室あたり
に入っている子供たちは待機児童から外すというのは、実態としてはそ
れは、正しいと言ったらちょっと適切な表現でないかもしれませんが、
実態をあらわしている数字としてはいいんじゃないかと思っています。
なぜかといいますと、東京都の認証保育所、今、私も気になりました
ので取り寄せてみたんですが、この基準をずっと比べてみますと、でこ
ぼこはあるんですが、認可保育所の基準とほぼ同等と思っていい。 特に
保育料については、例えば東京都の認証保育所は、自由設定とはしてあ
りますが、ただし、国の徴収基準額が上限と。 ですから、認可保育所の
上限額よりも、そこまでよ、それより下は構わないということでありま
すから、保育料について保護者の皆さんの負担も認可保育所と全く遜色
がないとかということを考えますと、ここに入っている子供たちを待機
児童から外すことというのは、実態をあらわす数字としては決して間違
ってはいないんじゃないかと考えておりますということを申し上げまし
た。
○水島委員
そういうことであると、一つは、この待機、認可保育園に本来は希望
しているけれども認証保育所とか無認可保育所に入っている。 本当にそ
れが満足できる形であれば、逆に、認可保育園への入所を希望して待機
するという必要もなくなってくるわけですので、ちょっとそのあたりは
きちんと実情を見て、そしてそれを待機児童と呼ばないのであれば、こ
れはもうある意味では厚生労働省がお墨つきを与えているということに
もなるわけですから。 厚生労働省が、本来はそこではなくて認可園に入
ってほしいという立場をあくまでもとられるのであれば、お墨つきとは
言わないかもしれないけれども、待機児童から外されているということ
は、厚生労働省としても、このあたりだったらよろしいんじゃないかと
おっしゃっているということを意味すると思いますので、ぜひそれは、
ダブルスタンダードと言うと言葉が激しいかもしれませんけれども、そ
ういう現実を厚生労働省として認めた上でよりよい施策に取り組んでい
かれるというのであれば、私は、それはそれでも一つの考え方だと思い
ますので、そこは一度きちんとしていただきたい。
最初の局長の答弁が、今までの厚生労働省の姿勢を踏襲した中で苦し
い答弁をされたので、あんな答弁になってしまったわけですので、ここ
はぜひ、厚生労働省の方がもう少しすっきりした頭で取り組めるように、
一度きちんと整理をしていただきたいところであると思っております。
それから、保育について、仕事と子育ての両立という意味で、これは
もうかなり伝統的な悩みと言ってもよいのかもしれませんけれども、二
人目以降の子を出産して育児休業をとると、上の子は保育園を退所しな
ければならなくなるというような自治体がまだございます。
でも、育児休業中は、基本的に、上の子の外遊びを一緒にしてあげら
れるような状態ではありませんし、上の子も保育園で自分の友達がいま
すし、その子なりの生活があります。 そこを急にやめさせられるという
ことにもなるわけでございます。 やめさせられて、うちに来てみたけれ
ども、親は赤ちゃんの世話で一生懸命で、とても外で一緒に走って遊ん
でくれる状態ではない。 そういうことだと、子供の生活の質にも問題が
出てくると思うんです。 そして、さらに、復職をしたときにその子がも
との保育園に戻れるという保証もないわけでございます。
そういう意味で大変評判の悪い制度であって、いろいろなところでそ
れを克服するための努力が行われてきているということは了解をしてお
りますけれども、それでも、現実にまだやめなければならないという自
治体があることも事実でございます。
私たちは、そもそも、今の時代に児童福祉法の「保育に欠ける」とい
う条項があるということが問題だと思っておりまして、親が働いていよ
うといまいと、少子化時代の子供たちのコミュニティーとしても保育園
にきちんと入れるようにすべきだと思っておりますけれども、せめて、
そうならなくても、現状であっても、二人目以降の育児休業中に、当事
者が希望する場合には上の子は保育園をやめなくて済むように徹底する
べきではないかと思いますけれども、この点は大臣いかがでしょうか。
○尾辻国務大臣
まさに、お話のとおりに、法律に「保育に欠ける」と書いてあります。
この解釈になるわけでございますけれども、これは、市町村がそれぞれ
に、また市町村のお立場で考えておられるというところでございます。
ただ、厚生労働省といたしましては、次年度に小学校への就学を控え
ているなど、入所児童の環境の変化に留意する必要がある場合、あるい
は、当該児童の発達上、環境の変化が好ましくないと思料される場合な
ど、自治体が必要と認める場合には、地域における保育の実情を踏まえ
た上で、継続入所の取り扱いとして差し支えない旨を、厚生労働省から
通知しておるところでございます。 このような通知も出しまして、柔軟
な対応を市町村にはお願いをしておる、こういうことでございます。
○水島委員
その柔軟な対応の結果として、まだやめなければいけない自治体があ
るわけですので、ここは、柔軟というよりは、むしろ、本人がやめさせ
たくないという場合にはやめさせないというふうに、きちんと徹底して
いただくことが必要なんじゃないかということをもう一度質問申し上げ
たいんですけれども。
○伍藤政府参考人
今、大臣からも御答弁申し上げたとおりに、柔軟な取り扱いをお願い
しておりますが、地域によって非常に待機児童が多いところで、こうい
うお願いをどういうふうに現場でこなしていくかという具体的な問題だ
と思います。 育児休業で休んでおるお子さんを預かっておるために、も
う一人待機児童、入りたい人が今度は入れない、こういう実情にどうこ
たえていくかという具体的な問題でありますから、こちらを優先して、
もう既に入っている人を継続してすべきだとまで一律に指導できるかど
うか、なかなか疑問に思っておりますが、そういう優先度といいますか、
保育をする現場の実情に応じてできるだけ柔軟に扱っていただきたいと
いうことは、これからも徹底していきたいというふうに思っております。
○水島委員
先ほどの看護休暇のときも、私は一人っ子誘導策ではないかと言った
んですが、二人目を産むときに、上の子の保育園をどうするかというの
はかなり現実的な悩みでございますので、これも、今のままのような状
態ですと、やはり一人っ子誘導策ではないかとまた言わざるを得ないと
ころにもなってしまいますので、これは、基本的にはもうこれでお願い
したい。 今の一律な指導をきちんと検討していただきたいんですけれど
も、基本的には、子供は継続して入れるようにするのを基本とする、そ
のような姿勢についてはきちんと、大臣から、今この場で打ち出してい
ただければと思いますけれども。
○尾辻国務大臣
現行法の中で裁量の幅があるのかどうか、それを私が承知しておりま
せんでしたので、あるいは局長なら答えられるかなと思って、局長に答
弁してもらったんですが、どうもその辺は、今の局長の答弁を聞きます
と、やはり私どもの裁量幅の中にはないと、私は答弁を聞きながら理解
しました。 ということは、結局、通知しかない、柔軟にやってください
とお願いするしか今の時点ではないんだろうな、こういうふうに考えま
す。
○水島委員
なかなか、自治体に強制できるかというような話になると、すぐ地方
自治の話になってくるんですが、その一方では、今はとにかく国を挙げ
て次世代育成支援をやっていこうという時代なわけですから、特に、子
供にとっての最善の利益のために子供の場を確保するということは必要
なわけですから、その辺はきちんと、しっかりとした姿勢で取り組んで
いただきたいと思っておりますし、ぜひもう少し、先ほど局長もその中
でというふうにおっしゃったんですけれども、今までよりもさらにそれ
がわかっていただけるような取り組みをしていただきたいと思っており
ます。
そして、だんだん時間がなくなってきましたけれども、先日も児童福
祉法改正案の審議のときに大臣に申し上げましたけれども、子育てがこ
れほど難しくなってしまった大きな要因として、地域の子育て力が低下
したということが挙げられると私は思っております。 よく家庭の子育て
力と言われるんですけれども、それは地域の子育て力と言い直した方が
正確だと私は思います。 出生率も問題であれば、やっと生まれてきた子
供も、虐待を受けたり、十分な人間的かかわりを地域の大人に持っても
らえなかったりという、ひどい環境に置かれているのが日本の現状でご
ざいます。
自分の子供を育てるための法整備がこの育児休業・介護休業法という
ことになるんだと思いますけれども、同時に、地域の子供たちとかかわ
る時間を確保するためにも、子育て中の方でなくても、ワーク・ライフ
・バランス、つまり仕事と私生活のバランスをきちんととっていただく
ことが重要だと思います。
私たちが提出をしておりますパート労働者の均等待遇推進法案を早急
に成立させてワークシェアリングを進めることも含めまして、ワーク・
ライフ・バランスにもっと注目していかないと、日本の社会は崩壊して
しまうと思っておりますけれども、基本的に大臣も同じような認識を持
って施策を考えていただけるというふうに理解してよろしいでしょうか。
○尾辻国務大臣
近年、パートタイム労働者は著しく増加をしております。 その一方で、
その処遇が必ずしも働きに見合ったものになっていない面があること、
こういうことは指摘せざるを得ないと思います。 そういうことから、正
社員とパートタイム労働者との間の公正な処遇を図っていくことが重要
な課題である、このことは認識をいたしております。 こうしたことから、
昨年八月に、パートタイム労働法に基づく指針を改正いたしまして、正
社員とパートタイム労働者との均衡な処遇に向けたルールや考え方を示
したところでございます。
今後とも、この改正指針の浸透、定着を図ることにより、パートタイ
ム労働者の均衡処遇を進めてまいりたいと考えております。
○水島委員
パートの部分だけお答えいただいてしまったんですけれども、基本的
にはワーク・ライフ・バランスというものの重要性は御理解いただけて
いると思っております。
時間がなくなってしまいまして、本当は期間雇用者のことについても
いろいろと確認させていただきたいことがあったんですけれども、ほか
の委員にその質問は譲らせていただくといたしまして、最後に大臣に確
認させていただきたいのです。
少子化は問題だと言われておりますけれども、議論の中身は将来の労
働力や社会保障費用の支払い者が減る点ということが専らでございまし
て、つまり、経済に支障を来す、公共財政の収支バランスが保てなくな
るといった問題意識が先行してしまっているわけです。 こうした発想だ
けが先行してしまうと、産めやふやせやで、子供を持つことができない
女性を追い詰めることにもなりかねないわけです。
多様な生き方を尊重し、子育てが経済的、精神的、物理的に負担を強
いることがないよう、社会全体で子育てに協力するという姿勢が、子供
を産み育てることへの安心感をはぐくんでいくと思います。
ノルウェーでは、男女とも働きながら当たり前に子育てができる社会
を目指して抜本的な取り組みを進めてきておりますけれども、その結果、
一九八三年には一・六六だった合計特殊出生率が、二〇〇三年には一・
八〇まで回復しております。 施策を推進している大きな原動力は子ども
家庭省です。 子供のため、男女共同参画のため、家庭のため、子ども家
庭省が確信犯的に施策を進めてきたことが、出生率の回復に明らかに結
びついております。
次世代育成支援は、厚生労働省の一部局の問題ではございません、ま
た、縦割り行政の中に埋没してよいようなテーマでもございません。 包
括的な施策を推進するためにも、日本にも子ども家庭省が必要だと考え
まして、私たちは民主党のマニフェストに既に載せたわけでございます
けれども、最後に大臣に、一人の政治家といたしまして、日本にも子供
や家庭の問題を包括的に取り扱うことができる子ども家庭省が必要だと
思われませんでしょうかということを質問させていただきたいと思いま
す。
○尾辻国務大臣
厚生省と労働省が一緒になりましたときに、先ほども申し上げました
けれども、まさに一緒になった局が一つだけあった、それが雇用均等・
児童家庭局でございました。 厚生労働省としては、ここがまさに、総合
的に子育てや仕事の両立を図っていったり、また、働いているお母さん
たちの子育てがうまくいくようにという施策を考えたりしておる局でご
ざいます。
こうした局で今のところ進めておるわけでございますから、今の私に
何か言えとおっしゃると、ここが頑張るべきだというふうに申し上げた
いと存じます。
○水島委員
何か、一人の政治家としてのお答えとしてはちょっと小さかったのか
なという感じがしますけれども、ぜひそんなこともきちんと考えていた
だきたいとお願いを申し上げまして、質問を終わらせていただきます。
ありがとうございました。
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