厚生労働委員会
(2004年6月8日)



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児童手当法改正案



○水島委員
   民主党の水島広子でございます。
 坂口大臣、本日もどうぞよろしくお願いいたします。
 歴史は繰り返すといいますけれども、たしか、年金の法案が衆議院で強 行採決された後も、私、何だかその後ここで質問に立たせていただいて、 何やら腑に落ちないと、そのようなことを言った記憶が、今、突然よみが えってまいりました。
 今回もまた、こうして法案が採決されてしまった後にこういう形で質疑 をするというのは、何度同じことを繰り返したら与党の方たちは気が済む のだろうかと思っているところでございます。

   六月四日、強行採決されましたときのこの委員会については、本会議が 終わった後に、自民党の、また与党の皆様が委員会室に走る姿を多くの皆 様が目撃されているわけですけれども、与党の方たちが委員会室に走って いる一方で、私たちには委員会が開かれるという御連絡もいただいていな かったわけでございます。
 こんな手続によって勝手に委員会を開いて、勝手に法案の採決をしてお いて、そして、悪かったから、きょうもう一度やり直せということでござ います。
そんなわけで、私、先ほど突然、きょう質問をするようにという 御指示をいただきましたので、質問の準備が十分でないところ、行き届か ない点もあると思いますけれども、ぜひ大臣には、いつもどおりの誠実な 御答弁をいただけますようにお願い申し上げます。
 また、年金の質疑を振り返ってみますと、私がこの衆議院の厚生労働委 員会で質問をいたしましたときの御答弁の内容が、参議院の委員会に行き ましてからひっくり返されるというようなことがあったようでございます。
この点については、後ほどきちんとした見解を出していただく必要がある と思っておりますけれども、大臣の御答弁というのは本当に重いものであ るのは、大臣御自身がだれよりもよく御存じだと思いますので、二度とそ ういうことのないように、よろしくお願い申し上げます。
 さて、本日、この児童手当法改正案についての質疑のやり直しをさせて いただけるということでございますけれども、法案についての質疑に入ら せていただきます前に、今の小泉内閣の基本的な姿勢、そして厚生労働省 という役所の基本的な姿勢に関する質問を幾つかさせていただきたいと思 っております。

   まずは、小泉内閣の姿勢でございます。
 もう皆様も御承知だと思いますけれども、例の井上防災担当大臣の暴言 問題でございます。
 このたび、長崎県の佐世保市の小学校で起こりました事件につきまして は、本当に、私も含めまして多くの人たちが衝撃を受け、また、深く傷つ けられているわけでございます。
けさの新聞にも、亡くなったお子さんの お父様の手記が載っていました。
多分、皆様、涙なくしては読めないよう な手記だった、そんなふうに思います。
 これほどまだこの事件の傷跡が生々しいときに、井上防災担当大臣は、 その傷に塩をすり込むどころか、塩などというものではない、もう、さら に残虐な暴力を私はそこに加えられたように思っております。

   この井上防災担当大臣の発言につきましては、もう既に坂口厚生労働大 臣も御存じだと思いますけれども、このような発言、つまり、今回のよう な本当に日本じゅうに衝撃を与える事件、突然命を絶たれたお子さんの貴 重なその存在、その御家族、そして関係するすべての人たちにこれだけ多 くの衝撃を与えた事件に対する大臣としてのコメントというものとして、 元気な女性が多くなってきたということですかなと、そんなことを発言し たこの井上防災担当大臣について、まず坂口大臣の御所見といいますか御 意見をお聞かせいただきたいと思います。


○坂口国務大臣
   佐世保で起きました今回の事件はまことに痛ましい事件でありまして、 何と御家族にお慰めを申し上げていいのかわからない、そんな気持ちで私 もあのニュースを拝見したところでございます。
とりわけ、娘を持つ父親 の立場、そのお父さんの心境いかばかりかと私も御同情を申し上げている ところでございます。
 井上大臣の御発言、真意、私もよく存じ上げておりません。
どういう御 趣旨であったのかということを存じ上げておりませんし、直接お聞きをし たわけではございません。
また、ほかの何らかの言葉の一つとしておっし ゃったのかもしれませんし、私はその十分な御意思というものをお聞きい たしておりませんので、私がここでコメントをすることは差し控えさせて いただきたいというふうに思います。
 いずれにいたしましても、こうした事故を防がなければいけない、こう いう事故が再び起こらないようにするためにどうするかということで、こ れは内閣を挙げて取り組まなければならない課題であると私は思っており ます。


○水島委員
   よく御存じないということですので、読ませていただきます。
加害者の 方のことについてだと思いますけれども、この井上大臣の発言。

   『女ですからな。女の子だからね。これは従来の考え方をある意味で多少 覆すことじゃないですか。男がむちゃやって、なんかしでかす、というこ とはかつてはあったかもわからんが、女の子がやったというのは初めてじ ゃないですか。今までありましたかね。男、女の差がなくなってきたんだ ね。元気な女性が多くなってきたということですかな、総じて。どこの社 会も。』

 これが発言の全容でございます。
 私はもう、大臣を辞任するどころか、国会議員もやめていただきたいと 思っておりますけれども、改めて、大臣、よろしくお願いいたします。


○坂口国務大臣
   先ほど申し上げましたとおり、そうした御発言があったといたしまして も、その背景としてどういうことを思い描いておっしゃったのかというこ と、私、十分に存じ上げておりませんから、私としてこれ以上申し上げる ことは差し控えさせていただきたいと思います。


○水島委員
   それでは、坂口大臣のお嬢さんあるいはお孫さんが、考えたくないこと ですけれども、突然こんな事件に巻き込まれて被害者となられたとき……
(発言する者あり)
 これは自分のことに当てはめてもいいと思いますけれども、そのときに、 時の大臣がこんなようなコメントをしたとして、それをどのような気持ち でお聞きになりますでしょうか。
傷つきませんでしょうか。


○坂口国務大臣
   先ほど申しましたように、私も娘を持つ親でございますし、また孫も、 女の子の孫を持ちます祖父でもございます。
同じぐらいの年齢でございま す。
それだけに、あのニュースを聞きましたときに、本当にいたたまれな い気持ちと申しますか、どう表現したらいいのかわからないような気持ち になったわけであります。
 そうした意味では、本当にこういうことを繰り返さないために何が必要 なのか。
仲のいいお子さん同士であったというお話を聞くにつけまして、 どういうふうにそれでは子供たちのつき合いというものを進めていけばい いのか、それを大人はどう見守っていけばいいのか。
非常に胸の痛むとい いますか、どうしていいか、なかなかその処方せんがわからないという、 そんな思いで実は聞いたところでございまして、そうした意味で、これは 全力を挙げてこうしたことをよく解明し、そして再発しないように取り組 んでいかなければならないことだというふうに思っております。


○水島委員
   今、坂口大臣の御答弁、この事件のことについてということであれば、 本当に私もその大臣のお気持ちは痛いほどわかりますし、大臣がそういう コメントをしてくださるということは、これは大臣として私はふさわしい 発言だと思います。

   私が今この質問をしましたときに、与党の皆さん、なぜかこぞって、水 島さん、その質問は失礼だ、坂口大臣に失礼だと、何やら元気づいてそう いうやじを飛ばされておりました。
 ただ、私は、やはり何か事件が起こったとき、そのときには常にそれを 自分の我が身に重ね合わせて考える、それが共感というものの原点だと思 っております。
こんなことがもしも自分の子供に起こったらどうだろうか、 そういうことを常に考えていかなければ、政治というものにきちんと取り 組んでいけないと思っておりますので、相変わらずそういうやじを飛ばさ れる与党の皆様の感覚というのは、やはり日本の政治にこれほど共感がな くなってしまうのは、そうやっていつも自分を一段違うところからこうい う事件を見ているからなんだな、そんな方たちにこういう問題をきちんと 解決できるわけがないし、そういう方たちの中から選ばれている防災担当 大臣だからあんなことを平気でしれっと言ってしまうのかなと、今改めて 感じました。
 この点については……
 (発言する者あり)
 また、それでもまだ、違うよとやじっている方がいらっしゃるようです けれども、坂口大臣といたしまして、本当は私、この井上さんのような方 と同じ内閣の中で仕事をしたくない、そこまで言っていただけるかなと思 っておりましたけれども、そのような御意向はございませんでしょうか。


○坂口国務大臣
   それぞれ担当してやっているわけでございますし、とりわけ、私は厚生 労働という、本当に、お子さんの健康の問題やら、あるいはまた子育ての 問題やら、そうした問題を担当させていただいている大臣でございますか ら、特別に今後のことにつきましては十分配慮をしていかなければならな いというふうに思いますし、そうしたことは、閣内におきましても、他の 大臣の皆さん方にもお訴えをしていかなければならない立場だと考えてお ります。


○水島委員
 防災担当大臣が子供の人権に鈍感でいていい立場だとはとても思えませ んし、防災というのはそういう仕事じゃないかと思いますし、有事法制に 関しましても、基本的に、社会で暮らす一つ一つの本当に小さな命にまで も目を向けていく敏感さこそむしろ必要ではないかと思いますけれども、 その点について、今の御答弁ですと、厚生労働大臣は子供の人権に豊かな 知識を持っていなければいけないけれども、防災担当大臣というのはちょ っと部署が違うんだ、そういう御答弁ということでよろしかったんでしょ うか。


○坂口国務大臣
   私は、私の立場と申しますか、厚生労働省としての立場を申し上げたわ けでありまして、いずれの立場の大臣であったといたしましても、やはり この問題に対しましては、なぜこうしたことが起こるのかということにつ いて、真剣な取り組み、真剣な対応というのが必要なことは申し上げるま でもございません。

   そうしたことを念頭に置いた上で、しかし、厚生労働省でありますとか あるいは文部科学省でありますとか、直接の担当をいたしておりますとこ ろの大臣としては、一層にこのことについての、今後の問題点としての努 力というものが要求されるということを申し上げたわけでございます。


○水島委員
   ぜひ大臣には、内閣の中でしっかりと発言していただきたいと思います。
 今回のこの井上大臣の件につきましては、例えば、こういう大臣がその ままやめないで続けてくれた方が、民主党にとっては選挙が有利じゃない かなんて言ってくださる方もいるわけですけれども、私はこの問題をそう いうふうに党利党略では絶対に考えたくないと思っています。
 坂口大臣がどれほどいいことをここでおっしゃっても、閣僚が一人こう いう発言をするだけで、政治不信、政治家にもうあきれて顔も見たくない という気持ちは強まっていくわけです。
特に今回の事件というのは、子供 たち、そして子供を持つ親たち、そして関係するすべての人たちにこれだ け大きな衝撃を与えている本当に特別な事件でございますので、その事件 の社会に与える影響の重さを考えれば、また例の失言が出たというような レベルで済まされることではないと思っております。

 政治不信をこれ以上強めないためにも、しっかりとこれは内閣としての 御決断をいただきますように、坂口大臣は、特に子供の健康に関する、本 当にそこを一番よくわかって仕事をされている方であるわけですので、こ れは内閣の中でしっかりと存在感を出して、こんな人は大臣をやめるべき だということをしっかりと発言していただきたいと重ねてお願いを申し上 げたいと思っております。
 特に、私のところに来ますメールを見ますと、今回の発言に対しては、 怒りを通り越してもうあきれてしまった、もう政治なんて見たくもない、 怒る気にもならない、そんなメールが来るというのは大変末期的な症状だ と思っておりますので、よろしくお願いいたします。

 さて、この件はしっかりと坂口大臣に今後内閣の中で頑張っていただく ことといたしまして、次にもう一つ、厚生労働省、今度は完全に大臣が責 任を持たれている役所でございますけれども、この厚生労働省の基本的な 姿勢について首をかしげなければならないようなことがございましたので、 質問をさせていただきたいと思います。

 先日、たしか年金の質疑のときに、大臣への質問の中で私がちらりとD Vの問題について、恋人からのDVを受けていた方が、事実婚状態にはな かったにもかかわらず、男性が家に泊まっていたという理由で児童扶養手 当を返せということを言われた、そういうようなことをちらりとここで触 れましたところ、これは御丁寧な大臣のことでございますので、その後、 早速指示をしてくださいまして、担当の方がどういうものかというのを調 べて報告に来てくださったわけでございます。
報告に来てくださったとこ ろまではよかったんですけれども、その報告の仕方、またその内容、その ときに私の方から質問をしましたときの対応、これはDVということをわ かっているんだろうかと、本当にちょっとこちらが目をみはってしまうよ うな、そんな対応をされたわけでございます。

 詳しくは、その具体的な一件につきましては、今当事者の方が県への異 議申し立て手続に入られるということでございますので、事実関係につい てはそちらできちんと明らかにしていただきたいと思っているわけですけ れども、そもそも、ちょっとここで基本的なことを質問させていただきた いと思うんです。
 確かに、事実婚状態、つまり、本人たちは結婚する意思があって、結婚 しているというような気持ちになって家庭生活を営んでいて、でも婚姻届 は出していない、そういうのを事実婚というふうに呼んでいるんだと思い ますけれども、これはこういう理解でよろしいでしょうか、大臣。


○坂口国務大臣
   私もそんなに詳しく法律的にきちっと押さえておるわけではございませ んが、おっしゃったとおりだと私も思います。


○水島委員
   そういう事実婚状態にあって、そこにお子さんがいらっしゃって、その 事実婚の方たちが親としての責任を果たしてお子さんを養育しているとい うことであれば、これは本来の児童扶養手当の枠組みから外れるというこ とは、それは私も理解しているつもりでございます。
それは婚姻届が出て いるか、出ていないかという違いであるわけでございますけれども。
 ですから、事実婚が児童扶養手当の支給対象から外されているというこ とそのものはそうだと思うんですけれども、ただ、このときに、事実婚の 認定というのはかなり難しいものがあるわけですが、例えば、女性の側は、 相手が暴力を振るうような男性だからもううちからは出ていってほしい、 この関係を解消したいと思っていて、出ていってくれと言ったのに、男性 が、自分を追い出すんだったら暴力を振るう、あるいは子供にも暴力を振 るう、そう言って出ていってくれないで居座っているような状態は、それ は事実婚というふうに呼ぶんでしょうか。


○坂口国務大臣
   私にそんな難しいことを聞かれてもなかなかわからないわけでございま すが、事実婚という限りは、やはり双方の思いが通じていて、正式には入 籍していないけれども、しかし思いは通じている、一つの家庭を形成して いこうというふうに思っておみえになる御家庭というのが一般的ではない かというふうに思います。
 その間に意思の疎通がなくなって、そしてそこに暴力ざたが起こり、も うこうした関係は、実際に夫婦ではないけれども、お互いの気持ちが通じ 合った仲ということで暮らしてはきたが、そこも非常に難しいということ になったときに、それはいわゆる法律で縛られていた御家庭とは、縛られ ていたと言ったらちょっとおかしいですね、法律上の御家庭というのとは また違って、そこは非常に、心の中の変化に伴って解消もまた自由になる ような関係ではないかというふうに私は思いますけれども、ちょっと余り 詳しくはわかりません。


○水島委員
   例えば、ある女性が、私が母子家庭の母親だといたしまして、ある男性 と知り合って、知り合った当初はよさそうに見えるということはよくある ことでございます。
それで、その男性の住まいは遠くの地方で、時々仕事 でこっちの方に来て、来れば、それは人情もありますし、最初は恋心もあ るでしょうから、うちにどうぞ泊まってください、そういうこともあるで しょう。
ところが、そのうちに男性の方が仕事をだんだんしなくなってし まって、完全に無職の状態になって転がり込んできてしまって、出ていっ てくれなくなってしまった。
そして、出ていってくれと言ったら、殴るけ るの暴行を加えられる、何か人に言ったら殺すぞと言われる。
 そんな状態で家に転がり込んできて、子供を全く扶養ももちろんしない、 子供に暴力すら振るっている、そういう人が家にいるというときに、これ は事実婚状態になっているのだから、つまり一つ屋根の下に暮らしている。
最初はこの人はいいなと思って結婚も考えましたと。
それは、人を家に泊 めるとき結婚を考えて泊めるというのは、そういうふうに言う方は多いと 思います。
そういうふうに当初結婚を考えていました、そういう人が家に 泊まるようになりました、そのうち仕事もしなくなって、暴力を振るうよ うになって、帰ってくれと言っても帰ってくれなくなりました。
それでも、 もともと好き合った同士が一つ屋根の下で暮らしている、そこには子供も いる、外形的に見ればこれは事実婚状態だから、その間の児童扶養手当を 返せ、こういうことを厚生労働省は指導されているんでしょうか。


○坂口国務大臣
   具体的な例でどうなのかということを、私、ここで明確にお答えするこ とはなかなかちょっと難しいと思うんですが、今少し所管から聞いた話も 総合して言えば、その人、その女性の方が過去において違う男性との間の 関係があった、そしてまた現在その暴力云々の男性との間の関係ができた、 そうしたことで、過去との継続の中で考えていることと、新しい男性との 間で考えていることとは、少し違うんだと思うんですね。
 私、具体的なことを十分に存じ上げませんのでわかりませんけれども、 過去に例えば結婚をしておみえになったといったようなときには、その男 性が例えば亡くなられたとか、おみえにならなくなったといったときに児 童扶養手当というのは出るんだろうというふうに思いますけれども、その 方が新しく結婚されるとか、あるいはまた事実婚であった場合にどうなっ ていくのかということでしょうか。


○水島委員
   それは、新しく結婚されるときはまた対象外になるということぐらいは 存じているんですけれども、今、要するに質問の趣旨は、外から見たとき に、単に男女が同じ屋根の下で暮らしていて、それは、同じ屋根の下に暮 らしている、最初のうちは結婚の約束もあったようだ、そんなような関係 の男女が一つ屋根の下に暮らしているからといって、それだけをもってそ の家庭がどういう家庭であるかということは判断できないんじゃないかと いうことなんです。
 実際にはその女性は早く関係を解消したがっているけれども、相手側の 暴力が怖くて結局追い出すことができずにいる、恐怖におびえて同じ屋根 の下にいなければならない、これは決して少なくないケースだと思います けれども、こういう場合にも、その後、ようやくそれを申し立てることが できて、何とか晴れて暴力から自由になって、それでもまだ心の傷に苦し んでいる方から、その間は事実婚状態だったんだから、児童扶養手当をそ の分は返せ、そういう話になるんでしょうか。


○坂口国務大臣
   ここは自治体の判断も入ってくるんだろうと思うんですね。
そこを事実 婚というふうに考えるかどうかということなんだろうというふうに思いま すので、そこは、具体的な例で、なかなか一律にお答えをしにくいわけで ございますが、事実婚でないということであるならば、それは、お話はそ の前の状態の継続というふうに考える方がいいと思いますけれども。


○水島委員
   事実婚であるかないか、最初のころの大臣の御答弁と総合してみれば、 今の御答弁で十分かなという感じもいたしますけれども。
つまり、暴力に よって一方的に居座られてしまっているような関係は事実婚とは呼ばない だろうと大臣最初に御答弁くださっていましたので、少なくとも、最初は、 仲がよかった時期は事実婚状態と呼んでいいかもしれなけれども、その後、 出ていってほしいのに出てくれなくなった、暴力の中で苦しめられていた、 そういう時期まで事実婚状態にあったというふうに一方的に判断するのは、 やはりおかしいんじゃないだろうかと私も思います。

 そのあたりはぜひ、これは結局、DVの被害に遭っている、暴力の被害 に遭ってかなり傷つかれている状態の方に対して争われることになります ので、本人に何か書類を書かせたりするときにも、相手がどういう精神状 態にあって、どれほどその説明が頭に入っているんだろうかというような ことは当然配慮しながらそういう説明をしなければいけないと思いますけ れども、このあたりについて、この件といいますか、全体的に、暴力の被 害に遭っている方たちに対して、いろいろと何か手続を進める場合ですと か、あるいは何かの説明をする場合、あるいは事情を聞く場合、特段の配 慮が必要になるのだというようなことを改めて徹底していただくことはお 願いできますでしょうか。


○坂口国務大臣
   さまざまな例があるというふうに思いますから、それぞれの例に対応し ていかなければならないわけでありますので、一律に割り切って、これは こうだ、ああだというふうに決めることのできない、大変さまざまな判断 のでき得る境界線上のお話になるのではないかと思います。
その境界線上 のお話は、それぞれのケースというものをよく見定めて、そして判断をす るようにということだろうと思いますから、そこは徹底したいと思います。


○水島委員
   ぜひお願いいたします。
 特に、本当に境界線上の事例が多いと思います。
そういう中で、例えば この前御報告に来てくださった方との対話の中でも、私が、例えばこうい う見方もできるんじゃないんでしょうか、これはこういう立場だったから こういうふうに発言したんじゃないんでしょうかと、いろいろと私なりに 想像をめぐらせて、いろいろな角度から光を当ててみようとしても、いや、 そんなことないんです、この人はこういう人なんです、この人は何とかな んです、だってこう言っているでしょうと。
 そういう態度でやられてしまうと、私が仮にDVの被害者だったとして、 役所の窓口の人にそういう態度でやられてしまいましたら、本当に恐ろし くて、それ以上、自分が何かできるかなというような気持ちはもうなくな ってしまうと思います。
その点については本当に特段の配慮が必要なんだ ということを改めて、今大臣約束してくださいましたので、お願いを申し 上げたいと思います。

 どうしてもまだ世間全般に、残念ながら、例えば母子家庭の方たち、児 童扶養手当をもらうような方たち、そういう方たちに対しての偏見がある なと、今回この一例を通じて感じました。
また、DVに巻き込まれてしま うような方たちにもやはり偏見があるなということを感じたわけでござい ますけれども、もともと、ほうっておけば多くの人が偏見を今まで持ちが ちであった領域でございますので、その辺については本当に特段の配慮を、 大臣の方から重ねて自治体の方たちにも御通知をいただけますようにお願 い申し上げます。

   残り時間が少なくなってまいりましたけれども、ようやくこの児童手当 法の改正案についての質問に入らせていただきます。
 児童手当、民主党ではこれを子供手当と呼んでおりますけれども、この 子供手当については、民主党でももちろん、子育て支援、次世代育成支援 の一つの柱として考えておりますし、民主党の場合は、これを抜本的に拡 充いたしまして、基本的には義務教育が終わる年齢まで、そして食費、被 服費を賄える水準、そのように計算をしております。
そして、民主党では、 これを、扶養控除と配偶者控除を切りかえるというような形で、この額を きちんと確保できるように計算も済ませているわけでございます。
 子育てに関する経済的な負担ということを考えますと、こうやって食べ ること、着ることについては子供手当で基本的に賄っていく、そして、学 校については、教育費の負担もかなり大きいですから、これは奨学金をも っと使い勝手がいいように、働きながら本人が返せるような仕組みという のをきちんと確立していくことによって、子育てに関する経済的な負担と いうのは随分解決していくのではないかと思っております。
 そして、そのような民主党の子供手当に関する案からいたしますと、今 回の政府案、何でこんな中途半端な改正をするんだろうかと、非常に疑問 に思うような内容だと思っております。

   まず、基本的な認識として伺いたいと思いますけれども、そもそも、坂 口大臣は、児童手当というのはどのような制度が望ましいというふうに考 えておられますでしょうか。


○坂口国務大臣
   少子高齢社会の中でどういう政策が最も望ましいかということにつきま しては、先日も少し申し上げたんですが、私は、もう少し科学的なデータ の積み上げというものが大事だというふうに思っております。
 何を、どういう政策を掲げたら最もこれは望ましいかということも考え ていかなければならないというふうに思っておりますが、その中で、アン ケート調査等で見ました場合に、やはり経済的な理由というものがかなり な分野を占めていることだけは紛れもない事実でございます。
 したがいまして、子育てをするために、働きやすい環境でありますとか いろいろなことがございますけれども、その大きな三つか四つの柱の中の 一つは、やはり経済問題というものが、若い御夫婦と申しますか、お父さ ん、お母さんの気持ちの中にあることだけは事実でございます。
それだけ に、すべてではありませんけれども、この皆さん方のお手伝いをしていく、 そして子育てのための努力をされるその一助にしていくということが大事 ではないかというふうに思っております。

   そうした意味では、小学校に入るまで今までやってまいりましたけれど も、あるいは小学校を卒業するところまで、いろいろの考え方はあるわけ であります。
少なくとも中学校を卒業するまではという御意見もあるわけ でございます。
しかし、いろいろ財政上の厳しい制限もあるわけでござい ますので、そうした中で、小学校の中でも特に低学年というのは、両親に とりましては経済的な負担も大きい、いろいろのことを心配もしなければ ならない年齢であるといったようなことで、何はともあれ小学校の低学年 のところまではまず一度達成をして、そしてまた次のステップを考えよう、 こういうことでございます。


○水島委員
   ちょっと全体的なことも伺いたいんですが、今の御答弁の中で、小学校 の低学年の方が高学年よりも経済的な負担が大きいというようなデータが あるんでしょうか。


○坂口国務大臣
 経済的な負担が大きいといいますよりも、やはり小学校低学年の方が、 例えば小学校から帰ってくる子供を家庭にすぐ一人戻しておくというわけ にもいかない。
そうした意味で、いろいろの心配をしなきゃならない年齢 層であることだけは間違いないというふうに思うんですね。
ですから、そ うした心配をしなければならない年齢層に対して、やはり家庭としても気 を使っていかなければならない、私はそういうことだと思うんですね。
 そうした意味で、私は、小学校低学年というのは高学年の皆さん方とは 少し違うというふうに思っております。


○水島委員
   どうも厚生労働省は、学童保育のことについても何か小学校低学年とい う考え方で、まるで小学校の高学年になれば子供は放課後一人でいていい んだというような考え方をとっているのかなと、前からちょっと腑に落ち ないんですけれども、そういう考え方なんでしょうか、本当に。


○坂口国務大臣
   高学年になったらほうっておいてもいいということを申し上げているわ けではなくて、高学年は高学年でそれは気をつけていかなきゃならないで すけれども、やはり高学年よりも小学校の低学年のときにはより一層の注 意が必要ではないかということを申し上げているわけであります。


○水島委員
   高学年であっても、それこそ子供でございますので、むしろ、放課後子 供が一人でいるようなコミュニティーじゃないようにしていかなければい けないということの努力は、これは高学年に関してもしていただかなけれ ばいけないと思っているわけでございますので、そこはきちんと御認識い ただきたいと思うんです。

 いずれにいたしましても、先ほど大臣は、財政的な問題もあり、そのよ うにおっしゃったわけですが、民主党と同じようにやれば、今の政府のよ うな中途半端な額ではなく、本当に食費、被服費を賄える水準を義務教育 年齢まできちんと出すことができるというふうな民主党の計算なんですけ れども、なぜ同じようになさらないんでしょうか。


○坂口国務大臣
 民主党の計算方法をじっくりと一遍聞かせてもらわなければいけません が、それはあれでしょうか、扶養控除のところの税制改正をして、それを 児童手当に変えるという案……
(水島委員「はい、扶養控除と配偶者控除です」と呼ぶ)
配偶者控除、それは一つの考え方だというふうに思っております。


○水島委員
   一つの考え方とおっしゃったんですけれども、そもそも大臣の頭の中で は、児童手当と扶養控除の関係というのはどういうふうになっているんで しょうか。

○坂口国務大臣
 やはり、扶養控除といいますときには、これは、所得の多いところの人 により多くのメリットが行く。
しかし、児童手当ということになりますと、 所得の多い少ないはなくなって、同様の、経済的平等性と申しますか、同 じように行く。
 高所得者のところにも同じように児童手当を出すか出さないかという問 題もございますけれども、もう全員出すということであるならば、それは 平等に行くということになりますし、扶養控除の場合にはそうした違いが あるというふうに思っております。


○水島委員
   残念ながら時間になってしまったので、もっともっとこの点を議論させ ていただきたかったんですけれども、今大臣がおっしゃった問題点という のは、民主党案であれば実はすべて解消をされております。
 今おっしゃったように、確かに、扶養控除という控除という仕組みはあ くまでも所得がある程度ある人にしか適用されないものでありますから、 だから、それなら現物給付でという、児童手当を支給していくということ は、民主党の税制全体の考え方でもあります、控除から手当へというふう に、すべてそのように考えているわけですけれども、その場合に、今大臣 は、控除だとそちらばっかりだから不公平だから手当でということなんで すが、ただ、政府の場合には、今度は児童手当に関しては所得制限がある わけでございますので、何だか非常に連続性のない、変な二つの制度が同 居をしてしまっているという形になっていると思います。

 民主党案であれば、十分な額、十分といっても着ることと食べることの 必要十分な額ですけれども、その額を所得制限なしで支給して、そのかわ り、当然高所得の方に関しては、それをきちんと課税対象とすることによ って払い過ぎた分を返していただく、そういう形をとっていますから、民 主党案の方が連続して、すべての方たちに対しての必要なサポートを提供 しているものと思っております。
 また、子供の立場から考えても、それであれば、子供であればすべての 子供がもらえるという意味で、子供一人一人に対して平等な仕組みという ことになるわけでございますし、また、この制度そのものが、児童手当と いうと、何か児童手当をもらっていない世帯の方が所得が多いんだとかど うなんだというような、そういうものではなく、本当に、子供であればみ んながもらえる手当であって、そして、高所得者の場合にはそれをきちん と税金としてまた払っていくという制度にした方が、制度としての中立性 も、また子供に対するメッセージとしても、はるかによい、すぐれた仕組 みではないかと私は思っております。
 ぜひ、この民主党案、後ほど大臣のお手元に届くようにしたいと思いま すので、御検討をいただきまして、ぜひ政府案として採用していただけれ ば、つくりました本人といたしましても大変光栄でございますので、どう ぞよろしくお願い申し上げます。
 ありがとうございました。




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