厚生労働委員会
(2003年6月11日)



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次世代育成支援対策推進法案と児童福祉法改正案についてA





○中山委員長
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。
水島広子君。

○水島委員
 水島広子でございます。
 本日も、また引き続きまして質問をさせていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 前回もいろいろ質問をしてまいったわけでございますけれども、やはり、考えれば考えるほど、読めば読むほどいよいよわからなくなってきたわけでございますので、最初にちょっと整理をしていただきたいんです。
 まず、今回提出されている法案のうち、法律をつくらないとできないというのは一体どの部分になりますでしょうか。
大臣にお答えいただきたいと思います。

○岩田政府参考人
 今回の法案では、国と地方公共団体、企業が一体となって次世代育成支援対策のための取り組みを推進するわけでございますけれども、それによって、全国の四十七の都道府県すべて、約三千二百あります市町村すべてが行動計画の策定が義務づけられます。
また、常用労働者を三百一人以上雇用する企業、これが約一万二千と考えられますけれども、そういった企業で行動計画の策定が義務づけられ、それ以下の規模の事業主には努力義務を課すということになっております。
 これらは、まさに、法律で行動計画の策定を義務づけるということで、初めてできることでございまして、冒頭申し上げましたように、この法律の制定がなければ、こういった国、地方公共団体、企業が一体となった次世代支援対策の取り組みというのは難しいというふうに考えております。

○水島委員
 法律で定めなければできない、あるいは法律で定めればできるというところを余り軽々に考えたくないなと思っているんです。
 と申しますのが、今回、このようにすべての市町村に義務づけをする、そのような法案を出されるに当たって、厚生労働省の方が今まで説明をされていたのは、市町村版のエンゼルプランというのが既にあるわけですけれども、それをちゃんと策定しているのは全体の三分の一にすぎないという、そのことを根拠として、法律で定めて義務づけていかなければ進んでいかないんですというような説明をされているわけでございます。
 実際に市町村版のエンゼルプランを策定しているのがそれほど少ないというのは事実だと思いますけれども、そもそも、できていない自治体ではなぜできていないのかという、その理由をきちんと自治体に調査されましたでしょうか。

○岩田政府参考人
 委員が今言われましたように、地方版のエンゼルプランを策定している市町村の数は千三百七十二でございます。
策定をしていない市町村について、その理由を統計調査的に調査したものはございませんが、その策定状況を見てみますと、市では約八割が策定しておりますのに比べ、町では約三割強、村では二割弱といったようなこととなっておりまして、規模が小さい自治体ほど策定に消極的な傾向が見られます。
 この原因として考えられますのは、これまではこういったプランの策定が法律上義務づけられていなかったということの前提の上でございますけれども、規模の小さい自治体にとっては、プランの策定ということが、やはり事務負担があったのではないかというふうに思われること、そして、これまでの自治体の地方版エンゼルプランを拝見いたしますと、中心になっておりますのは保育所の整備計画でございまして、その保育所の整備計画に限ってみれば、規模の小さい町、村では、一般的に保育所が整備され、十分供給体制が整っているということがございますので、それ以上の対応が必要ないといったような認識だったかというふうに思いますし、保育施策以外の子育て支援対策については、その必要性についての認識が、必ずしもこれまでは十分ではなかったということではないかというふうに考えております。
 今般は、そういうこれまでの経験にかんがみまして、自治体の策定を支援するために、国が指針をつくりますということとあわせまして、マニュアルをつくりましたり、また先行的に五十余りの市町村にお願いしまして行動計画を早目につくっていただき、これらをモデルにして他の自治体が参考にするといったようなことも考えていきたいというふうに考えております。

○水島委員
 今、規模が小さいということでは一つその事情をお話しいただいたわけでございますけれども、自治体の方の話を聞きますと、やはりお金がないということをすぐにおっしゃいます。
いろいろやってあげたいんだけれどもお金がないんですというのが、大体いろいろなところの首長さんとか議員の方なんかが使われる常套文句であるわけでございます。
結局、今回、この法案が成立することによってやらなければいけないデスクワークばかりがまたふえていって、それでお金が来ないということになると、ますます自治体が大変なことになるのではないかというような嫌な予感がしているわけでございます。
 前回の審議の中で、私が、これを十年の時限立法にした理由というのを伺いましたところ、これは十年間で思い切って全部やるんですという、その意気込みで、そのために目標も決めてやるんだというふうに御答弁いただいたと思いますけれども、そうだとすると、この十年間でこれをきちんとやり抜いていくためには、今言ったような自治体の規模の小ささとかあるいは税源のなさとか、そういったことも含めて、きちんと十年間で解決できる見通しがなければ、できるとは言えないと思うんです。
 これは大臣にお伺いしたいんですが、この法案が成立しますと、市町村合併が進んだりあるいは予算が特別についたりあるいは地方への税源の移譲がにわかに進んだり、そのような効果もこの法案は持っているんでしょうか。

○坂口国務大臣
 金のないのは国も地方も同じでございますが、しかし、法律ができるということは非常に大きな意味があって、そして、そこでこの行動計画なりいろいろなものをつくっていただいて進めていく中で、何が必要かということが浮き彫りになってくるというふうに思います。
そういたしましたならば、国としての予算の組み方というものがそれに影響されてくるというふうに思います。
 まず、その前に、国としてどういう予算の組み方をするかということも考えなければいけないというふうに思いますけれども、地方のそうした動きも見ながら、地方からの御要望も聞きながら、国としてできることは何かということもしなければならないというふうに思っています。
 法律なしにやっておりますと、どういうわけか国の予算というのはなかなかつきませんで、法律があるということが非常に大きな支えになることだけは間違いがないというふうに思っている次第でございます。

○水島委員
 それでは、法律があれば予算がついてくるというお答えをいただきまして、その法律の重要性について、これから審議をさせていただきたいと思うんです。
 まず、昨年の九月に少子化対策プラスワンが策定されまして、これは坂口大臣から小泉総理に報告をされていると伺っております。
 これがつくられましたのは、もともと、小泉総理から、これまでの少子化対策を改めて検討して、実効性ある対策を策定すること、めり張りのきいた対策を九月までに策定すること、特に育児休業の取得や看護休暇制度の普及について具体的目標を定め、安心して子供の産み育てられる職場づくりに努力することが指示をされたからと聞いておりますけれども、まず、これで認識としては正しいでしょうか。

○岩田政府参考人
 そのとおりでございまして、平成十四年五月二十一日に、総理から厚生労働大臣に対しましてそのような御指示がございました。

○水島委員
 そして、その少子化対策プラスワンを踏まえまして、ことしの三月に少子化対策推進関係閣僚会議が策定しましたのが、次世代育成支援に関する当面の取り組み方針というものであると理解をしております。
この方針は、少なくとも、基本的な施策が今回の法案よりも明確だなと感じております。
 例えば、基本的な施策として、男性を含めた働き方の見直しとして、事業主の行動計画としては、残業時間の削減、一日当たり一時間、子供が生まれたら父親休暇を五日間、男性の育児休業取得一〇%、看護休暇普及二五%と、かなり明確な数値をもって高い政策目標が掲げられているわけでございますけれども、これらの数値は、今回の法案に基づいて策定をされます指針にそのまま横滑りでその数値が残ると理解してよろしいんでしょうか。

○岩田政府参考人
 次世代育成支援に関する当面の取り組み方針に盛り込みました、今委員が言われましたような育児休業の取得率等の数値目標値でございますが、これは社会全体で達成をしようという社会全体における目標を定めたものでございまして、これが自動的に個々の企業における目標値になるということではございません。
企業の行動計画はどういう目標を掲げるのか、そしてその場合の目標値の水準をどの程度の水準にするかということについては、それぞれの企業がその実情に応じて任意にお決めになることではないかというふうに考えております。
 しかしながら、先ほど申し上げましたように、日本の社会全体としてこういう社会にしようという社会全体の目標を、政府として、当面の取り組み方針としてまとめさせていただいているわけでございますから、そういう条項は事業主の方にもお伝えをして、事業主が自主的に、そういった社会全体の目標も念頭に置いて、個々の企業の育児休業の取得率などの数値目標を定めていただくことが望ましいというふうに考えております。
 こういった考え方は、国がつくります行動計画策定指針やマニュアルやあるいは行動計画のモデル、そういったような中で示してまいりたいというふうに考えております。

○水島委員
 つまり、今御答弁いただきましたことをまとめますと、そもそも、小泉総理から坂口大臣に向けて、育児休業の取得や看護休暇制度の普及について具体的目標を定めという明確な表現をもって指示があって、それに基づいて少子化対策プラスワンが策定され、さらに次世代育成支援に関する当面の取り組み方針まで来たと。
ここまではきちんとした数値目標が定められていて、小泉総理の当初の指示に沿った内容だったと思うんですけれども、最後、今度法案化になりますと、急にそれらの数値目標がぼこっと落ちてしまった。
それまで一生懸命総理の指示に基づいて進めてきたものが、最後のところで急に何か実体を抜かれてしまったというふうに思えるわけです。
 そもそも、今局長が御説明されていたことというのは、もちろん言葉としては理解できるわけですけれども、先ほど大臣も、法律にするということは意味があるんですというふうにおっしゃいました。
また、看護休暇のことですとか育児休業のことですとか、これらは個々の企業が目標値を定めてやっていくものであって、一律に強制できるものではないというような御趣旨のこともおっしゃいました。
 そうであれば、そもそも、いろいろな労働関係の法律というのは、それなりに事業主に何らかの義務づけをしたり、何らかの強制をしながらここまででき上がってきたという歴史もあるわけでございますので、それができないから今回も何もやりませんというのだと、法律というものをつくる意味もなくなってしまうのではないかと思います。
こういう数値目標が抜けてしまったということ、ぜひこれは大臣に改めて総括をしていただきたいんです。
 あわせて申しますと、結局これらは、確かに、今回計画を立てて、数値目標を立ててというようなそういう話をしていると、なかなかこれは前に進んでいかない。
すべての企業に何%という数値を法律の中に盛り込んでやっていくというのが非常に難しいというような御説明であるとすれば、やはりこうしたことは、育児休業、介護休業法の改正という形できちんと義務づけていかなければいけないことだと私は思っております。
 私たち民主党では、二年前になりますけれども、子供の看護休暇の制度化、育児休業分割取得を可能とし、またパパクオータ制の導入による男性の育児休業取得の促進、短時間勤務制を請求権とするというような施策を盛り込みました仕事と家庭の両立支援法案を政府案に対する対案として提出させていただいたわけでございます。
残念ながら、与党の皆様の御賛成が得られなかったために、この法案が成立することはなかったわけですけれども、私は大臣に、子供の看護休暇の制度化は喫緊の課題だということを最後まで食い下がって申し上げていた記憶がまだ新しく残っているわけですけれども、最後まで大臣には御理解をいただけずに、本当に残念な思いをしたということも記憶に新しいところでございます。
 ところが、今回この看護休暇というのがまた出てまいりまして、この取り組み方針を見ますと、看護休暇普及二五%というような、二五%まで普及してくれば、今までの前例から考えてまいりますと、恐らくもう法律で義務化していいくらいの数値に達してきているんじゃないかと思います。
何らかそういうガイドラインがあるわけではないんでしょうけれども、大体今まで、このくらいまで来ると法律になっていたという歴史を見てみますと、二五%という割合は、多分、もう法律事項になってしかるべきところなんだと思うんですけれども、こんなことを片方で打ち上げていながら、実際に育児・介護休業法の改正案も提案されてこない。
 今回、どうせなら、この次世代育成支援対策推進法案と児童福祉法の改正案とセットで育児休業、介護休業法の改正案というのも提案されなければいけなかったのではないでしょうか。
数値目標が落ちてしまったことの総括と、ここの点も含めて大臣にちょっとまとめて御答弁いただけますでしょうか。

○坂口国務大臣
 先生に機関銃のようにぼんぼんぼんぼんと撃たれますと、どうお答えをしていいのかわからなくなってしまいますが、最初の方のお話は、国としての考え方というものは明確に示さなければいけないと思うんです。
こういう数値目標を立てて我々はいこうとしておりますということを各市町村に示さなければならない。
その上で、こういう目標に立ってやっておりますから、皆さん方の方ではそれぞれの行動計画を立ててくださいということをお願いする。
 したがって、国が立てておりますようなそういう目標値、そうしたものをそのままお取り入れをいただくところもあるだろうというふうに思いますし、あるいはまた違った表現でそれが達成できるような方法をどうしたらいいかをお考えいただくところもあるだろうというふうに思っております。
 したがいまして、結果として、国全体でそうした目標値が達成できるようになるということにしなければいけないというふうに思っております。
また、いろいろ、都道府県等から、あるいはまた市町村等から御相談を受けましたときには、そうしたことも私たちは言わなければいけないというふうに思っております。
ただ、国が書いております数値をそのまま書けばいいというふうなことは思っていないということを申し上げたわけでございます。
 それから、後半の方の病児休業の問題でございますが、これは大変大事なことでございまして、この前も御質問をいただいたわけでございますけれども、我々も決して軽視をしておるわけではございませんで、むしろ、お母さん方があるいはお父さん方が一番お困りになりますのは、お子さんが病気になったときのことではないかというふうに思っております。
 そこで、現在のところ、それでは、そういうお子さんをお預かりする、いわゆる病児保育というものがたくさんできてきているのかといえば、全国でまだ四百カ所前後だったというふうに思っておりまして、こちらが予定をいたしております五百カ所にもなかなか及んでいないというのが現状でございます。
 先般、大阪でございましたが、この病児保育をしていただいております病院の先生方のお集まりに出席をさせていただきまして、いろいろと現状につきましてもお聞きをさせていただいたところでございます。
中には、もう戦前からやっているという大変古い歴史をお持ちになったところもございまして、いろいろ御苦労をお聞かせいただいたところでございますが、そういう皆さん方のお話もお伺いをいたしますと、国としても、これから考えてやっていかなければならない点が非常に多いというふうに思います。
 それから、ここまで来ればもう義務化をすべきではないかというお話もございまして、これは、いつの日かはそういうふうにしなきゃいけないんだろうというふうに思いますが、それに向かいまして、着実に一歩一歩前進をしたいと考えているところでございます。

○水島委員
 今、いつの日かというお話がございましたが、実は、近々、民主党では、先日、労働基準法が改正されまして、有期雇用の契約期間の上限が延びましたので、それに伴う若干の修正をいたしまして、仕事と家庭の両立支援法案をまた提出させていただく予定でおりますので、いつの日かとおっしゃらずに、その機会はかなり近いと思いますので、そのときには、与党の皆様にももう全力の御協力をいただいて、大臣の温かい御理解のもと、今度こそ私たちの法案が成立いたしますように、心から希望をするわけでございます。
 また、病児保育も進んでいない。
けれども、幾ら病児保育が進んでいっても、恐らく最後までこの看護休暇というものは必要なんだと思いますし、実際に今、これから幾ら指針にそれが書かれていっても、個別の労働者が子供を予防接種に連れていこうとしたときにも、やはり看護休暇という形でとることが必要になってくるわけでございまして、それがとれないという場合には、結局、今回幾らこういった法案が成立していっても、その個別の労働者にとって何らかの新しい権利が生じるわけではないということは、これは非常に残念なことだと思っております。
 また、看護休暇がいつまでも必要だと思いますのは、病児保育と看護休暇というのは、本当に裏表の関係にあるわけですけれども、仕事によっては、例えば、大臣も、重要な御答弁をされるときには、どうしても仕事を休めないということもあるでしょうし、一方では、このくらいの仕事だったら、きょうはぜひ子供と一緒にいてあげたいというような、そんな仕事のときもあるでしょうし、そんなふうに病児保育と看護休暇、選択の自由をもって両方が存在できるようにしていかないと、どちらか一方だけでは、絶対に足りないのだと思っております。
 今、個別の労働者に対しては何ら新しい権利を与えるものではないということを申し上げさせていただいたわけでございますけれども、ここのところ、国会で、どうも子育てのことが審議されているということは少し知っている方がいらっしゃるわけです。
 次世代育成支援対策推進法ができると聞くと、何だか急に子育てがやりやすくなるんじゃないか、来年あたりもう一人産んでみようかと思う人が多いんじゃないかと思うんですけれども、実際聞いてみると、看護休暇がとれるようになるわけでもない、何にも変わらないというのでは、本当にまた、今さら何をやっているのか、こんなことが必要だというのはもう随分前から指摘されているじゃないですかとがっかりされるのではないかと思いますけれども、そうやってがっかりされる方たちに対して、大臣から一言メッセージをお願いいたします。

○坂口国務大臣
 まあ、子育てあるいはまた子育ちと申しますか、そうしたことが大事なことは言うまでもありませんが、それにはやはり環境整備というものが非常に大事でありまして、一つのことができ上がればそれで前に進むというわけにはなかなかまいりません。
 全体のレベルアップ、一カ所だけが百歩前進するということよりも、全体が一歩ずつ前進をするということが大事でございまして、そういう意味で、やや歩みはのろいように見えますけれども、全体を一歩前進させるという意味がこの法律の趣旨でございまして、どうぞそのように御理解をいただければありがたいと思います。

○水島委員
 まだ余り理解はしていないんです。
といいますのは、やはり、大臣も法律にすることは重要だというふうに認識されていて、私も実際そう思っております。
だから、どこか一つだけでも、看護休暇だけでも法律に盛り込まれることによって、突破口となって、またほかがバランスよく進んでいくということにもなりますので、これはもうできるところから早速手をつけていただきたいと思いますし、全体としてその枠組みを整備していくという、指針を示していくということも、当然国の役割だとは思いますので、その双方、法律で固められるところ、方向性を示すところ、それをきちんと続けていただきたいと改めてお願いを申し上げます。
 さて、今回、この事業主の行動計画なんですけれども、三百人を超えれば適用され、また三百人以下だと努力義務だとしている理由は何なのでしょうか。

○岩田政府参考人
 この法律に基づきまして、事業主に行動計画を策定していただくわけですけれども、理念としては、すべての事業主が行動計画を策定していただくということが求められているというふうに思っております。
しかしながら、事業主の策定負担ということも勘案いたしまして、三百人以下の中小企業については、行動計画の策定や届け出について、一律に義務づけるのではなくて、その実情に応じて、策定、届け出をしていただくよう努力義務といたしたところでございます。
 厚生労働省といたしましては、中小企業にできるだけ策定、届け出をしていただくよう、さまざまな機会を通じて働きかけをしてまいりたいというふうに思っておりますし、また、あわせて、この法案の中に次世代育成支援対策推進センターを指定するということを規定いたしております。
これは中小企業を念頭に置いた仕組みでございまして、事業主の団体を次世代育成支援対策推進センターとして指定いたしまして、このセンターが中小企業に対しまして計画の策定や実施についてさまざまな支援をする、そういうようなことも考えているところでございます。
 こういう形で、三百人を超える企業については法律で一律に義務づけ、それ以下の中小企業についても、なるべく策定していただけるようにさまざまな支援をしてまいりたいというふうに考えております。

○水島委員
 これを必ずやらなければいけない、その計画を必ず達成しなければいけないということであると、中小企業の場合、さまざまな事情があるということは十分に理解できますけれども、計画を策定するというのはメニューを提示するということでございますから、それであれば、恐らくすべての企業に義務づけてもできるのではないかと思います。
 恐らく、水島広子事務所というところもあるんですけれども、そこでも、行動計画だけでも策定しろと言われたら、できるかできないかはわからないけれども、策定ぐらいはできるんじゃないかなと思いますので、こんなに零細のところであっても考えられないでもないことですから、行動計画の策定までは義務づけられて、それを達成するところに関しては、いろいろな配慮があって、できないところはどういう援助が必要なのかということをまた見ていっていただくのがよいのではないかと思いますけれども、もし、それに関してお答えがあればということと、あと、そもそも、この三百人で切るということなんですけれども、これによって、三百人を超える事業所で男女それぞれについて労働者の何%がカバーされる計算になりますでしょうか。

○岩田政府参考人
 お尋ねの前の点についてでございますけれども、やはり行動計画を策定するというそのプロセスを考えますと、従業員のニーズを調査する、そして策定する過程で、従業員あるいはその代表である労働組合と話し合って策定をする、そして場合によっては、行動計画に盛り込む項目にもよりますけれども、就業規則や労働協約を改定するといったような一連の作業があるわけでございまして、そういったことの負担も考慮いたしまして、先ほど申し上げましたような、策定自体を努力義務にいたしたわけでございます。
しかしながら、なるべく多くの事業所で策定していただけるよう働きかけたいということは、申し上げたとおりでございます。
 後の点についてですけれども、従業員の規模で見まして常用労働者がどの程度いるかということについてでございますけれども、十三年の事業所・企業統計調査報告によりますと、総常用労働者に対する三百人以上の規模の企業における労働者の割合を見ますと、約四三%ということになっております。
 この調査では男女別の集計ができませんので具体的な数値を申し上げられませんけれども、また別の調査などいろいろ勘案いたしますと、三百人以上の規模の事業所に雇用されている労働者については、男女労働者の規模別の就業の実態を見ますと、三百人以上の規模に雇用されている労働者の割合は、男性の方が高くて女性の方が低いというのが実態ではないかというふうに考えております。

○水島委員
 今きちんと男女別の数字というのでは挙げていただけなかったんですけれども、恐らく、本当に子育て当事者である特に女性たちは、規模の小さなところで働いている方が、パートの方あるいは有期雇用の方を含めて多いのではないかと思います。
 ですから、全体で見ると、私も最初説明を受けたときに四三%、大体半分というふうに聞いたわけですけれども、これで大体半分の人がカバーされるんですからと、そうやって乱暴におっしゃらないで、実際に本当に必要としている人たちがどこで主に働いているのか、それを見た上で、この三百人という切り方が正しいのかどうかというのをきちんと検証していただかなければいけないと思います。
 これは、パートと有期雇用と、あと派遣労働者の方たちを含めて計算をしていきますと、恐らく三百人以下のところに当事者が一番多く集中しているのではないかなと。
これは私の勘ですけれども、そのような感じがいたしますので、これは改めてきちんと検討していただきたいと思います。
 三百人というのが、行政から見ればこのくらいのところでしょうと線を引かれるんでしょうけれども、その人が働いているところにそれが及ぶか及ばないかというのは、働いている側とすればこれは深刻な事態でございますので、切っているところが適正なのかどうかということを、全体で大体半分ですからという態度ではなくて、きちんと検証していただきたいと思います。
これはぜひ、検証していただいたら、また後日お知らせいただきたいと思います。
 また、今回、国と地方公共団体という特定事業主の行動計画は公表を義務づけているわけですけれども、一般事業主の行動計画に公表が義務づけられていないのはなぜでしょうか。

    〔委員長退席、宮腰委員長代理着席〕

○岩田政府参考人
 国及び地方公共団体は公的な主体でございますので、民間の事業主に対して、いわば率先垂範して取り組みを進めることが求められているのではないかというふうに考えております。
そういうことで、特定事業主行動計画については、策定しました計画自体を公表するということを法律上の規定といたしたところでございます。
 これに対して、一般事業主についてですけれども、個々の企業の労働条件の設定は、労働法規などに反しない限りにおいては、そもそも労使の自治にゆだねられるという性格のものであることとか、どのような計画内容にするかということは企業の人事戦略、企業の雇用管理のノウハウに係る面もございまして、この情報をすべて公開することを義務づけるということは、なじまないのではないかというふうに考えております。
 もちろん、企業によっては、むしろその方が企業戦略に合うということで、率先して公表される企業が出てくるということももちろん期待されるところではありますけれども、法律で公表を義務づけるということは、一般事業主の行動計画の性格から、なじまないというふうに考えております。

○水島委員
 公表しないとしても、その内容を厚生労働省に届け出るとか、そのように内容を知る機会はつくれるんでしょうか。

○岩田政府参考人
 法律案にもございますように、策定した計画は厚生労働省の方に、具体的には地方労働局になろうかと思いますが、そこに届け出をしていただくということになっております。
行動計画自体を届け出していただくということよりも、計画を策定したということが確認できるようなものを考えておりますので、届け出をしていただいたときに、具体的な内容をつぶさに行政として把握するということは考えておりません。
 しかしながら、企業の一般事業主の行動計画に何を盛り込むことが望ましいかということについては、国として指針を定めるということにもいたしておりますので、そういったことを参考にしていただいた行動計画になることを期待いたしているところでございます。

○水島委員
 そうしますと、実際には行動計画を策定していないのに策定しましたと届け出たりとか、あるいは外向けに自分たちの行動計画はこうですと言っていることと実際が違っていたりするような事業主がいた場合に、それをチェックする仕組みというのはあるんでしょうか。

○岩田政府参考人
 この一般事業主の行動計画は、何度か申し上げましたように、企業の実情に応じて、企業が自主的にこういう取り組みをしたいということを従業員やその代表の労働組合と相談しながらつくるものでございますので、その意に反したものを強制されるということではありませんので、行政機関に虚偽の届け出をするとか、つくっていないのにつくったような形で届け出をするということは、一般的には考えにくいというふうに思います。

○水島委員
 一般的には考えにくくても、もしもそのようなことがあった場合にはどうなんでしょうか。
実際にそこで働いている労働者が、うちの企業はひどいと思ったときに、でも、どうも企業は届け出を見るとちゃんとやっているというふうに、届け出ているようだという場合、それはどういうふうにすると解決されるんでしょうか。

○岩田政府参考人
 そういうケースは通常は考えられないというふうに思いますけれども、もしそういうことがございましたら、各都道府県にあります労働局の方に御相談いただきまして、労働局の方が企業の方に事情をお尋ねするということで、必要であれば助言をしていくということではないかと思います。

○水島委員
 なかなかハードルが高そうなんですけれども、これは私も事前にいろいろ伺いましたときに、今回のはそういう趣旨のものではなくて、とにかくいいところはどんどんオープンにしていって、そこにいい人材が集まって、そうやって自由競争の中で社会をよくしていくんだというような御説明も少々いただいたんです。
 これは、景気が非常にいいときで、労働者側が売り手市場というようなときであれば、どんどん企業が自己アピールをしていい人材を集めてとやっていけるかもしれませんけれども、今は、嫌でも、自分が気に入らないところでも働いていかないと職がないというような状況ですから、どこかしら常識では考えられないようなことがあるときにはどう対応できるか、そういうところでもちゃんと子育てしていけるようにするにはどうしたらいいんだろうかというような施策をぜひ考えていただきたいですし、そういう意味では、私はやはり本体の方の育児休業・介護休業法の改正というのはきちんとしていただかなければいけないんじゃないかなと思っております。
 今回、事業主が定めることになっております行動計画という中には、これは当然、有期雇用の方や派遣の方、パート労働者の方というのは含まれるんでしょうか。

○岩田政府参考人
 法律をお読みいただきますと、個々の事業主の行動計画の対象の労働者の範囲をどうするかということについての具体的な規定はございません。
したがいまして、個々の事業主がどの労働者を対象としてどういう対策を講ずるかということは判断していただくことになるというふうに思います。
 しかしながら、次世代育成支援推進対策という対策の理念から考えますと、いわゆる正社員だけではなくて、パートタイム労働者、派遣労働者、契約社員、そういったような方も広く念頭に置いた対策になるということが望ましいというふうに考えております。

○水島委員
 それを何らかの形できちんと指針か何かに書いていただかないと、実際に、子育てをしている当事者の方たちは多分そういった非正規の形で働いていらっしゃる方が多いと思います。
逆に、子育てという事情があるからそういう働き方をされているというケースもあるでしょうし、いろいろあると思いますけれども、そこをきちんと含まないのであれば、幾らつくっていってもほとんど意味がないということにもなってきますので、そこはきちんと強くアピールしていただかないと、事業主の方でも自分で決めていいということになれば、なかなかそんなリスクは冒したくないということになりますから、これはちゃんと決めていってほしいと思います。
それをわかりやすく示していただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 さて、時間も残り少なくなってまいりましたので、先に進ませていただきますけれども、前回、質問させていただいて、ちょっと行き違いがあって御答弁いただけなかったんですけれども、児童福祉法改正案の方なんですが、子育てしているすべての家庭を支援するということで、親が障害者であるような場合にはどうなりますかという質問をさせていただきました。
 これは、非常に重度な身体障害者とか、もう明らかにその親自身もケアが必要なような状態の方の場合には、今でもわかりやすい制度がないわけでもないと思いますけれども、この前挙げました例のように、親が聴覚障害者で自分の生活は何とかできる、子供が健聴者であるというような場合には、かなり子育て上いろいろと独特な悩みも生じますし、いろいろと特別な配慮が必要になるわけですけれども、そういった親はどこでサポートしてもらえますでしょうか。

○岩田政府参考人
 前回は失礼いたしました。
 親が障害を持っている家庭の子育て支援についてですけれども、これまでも例えば身体障害者相談員などが都道府県、指定都市、中核市に配置をされておりまして、この相談員は育児相談などにも応じるということでございます。
 また、支援費制度の中身でございますけれども、ホームヘルパーが派遣されますけれども、ホームヘルパーの仕事として、育児支援の観点から、沐浴とか授乳とかそういう居宅介護サービスを支援費制度の中で実施していただくということもできることとされております。
 また、今回の児童福祉法の改正法案におきましては、市町村が中心になりまして、地域の子育て支援の施策を拡充するということにいたしておりますけれども、その場合にはすべての子育て家庭を視野に入れた対策であるべきであるというふうに考えております。
 したがいまして、親が障害を持つ御家庭の子育て支援についても当然視野に入れるべきであるというふうに考えておりますので、例えばですけれども、市区町村はさまざまなサービスをみずから実施する、あるいはその地域のさまざまな担い手、社会福祉法人ですとかNPOですとか、個人のグループですとか企業ですとか、さまざまなサービスの担い手と利用者をつなぐコーディネートの事業を市区町村に実施を義務づけることといたしております。
 そういう中で、障害を持つ親御さんの子育て支援についても必要なサービスが図られ、どこに行けばそういうサービスにアクセスできるかということについても、このコーディネート事業を構築する中で、市区町村に工夫をしていただければというふうに考えております。
 国といたしましても、自治体の行動計画策定のための指針について、今委員が言われましたように、親が障害を持つケースについてどういう配慮が要るかということについても指針に書き込んでまいりたいというふうに思っております。

○水島委員
 ぜひそこは丁寧にお願いいたします。
 と申しますのは、前回の質問の前に、厚生労働省の方とお話をしましたときに、「すべての子育て家庭」と書いてあるけれども、親が障害を持つ家庭への配慮は一体どこに書いてあるんですかというふうに聞きましたところ、いや、これはすべての家庭を対象とするものですから、そういう特殊な家庭のことじゃないんですよというようなことをさらりとおっしゃいました。
それは多分その方が不勉強でいらっしゃったということなんでしょうけれども。
 そんなふうに、「すべての子育て家庭」と言われたときに、悪気があろうとなかろうと、これは一般家庭への施策であって、そういう特殊なところを見ているものじゃないんだというふうに勘違いしてしまう方というのは多いと思うんです。
これは、すべての市町村において、みんながそうやって一〇〇%正確に理解するわけではない。
やはり、これはすべての家庭用なんだから、特殊な家庭はここには入っていないんですよというふうに勘違いする方は絶対にいると思います。
 厚生労働省の優秀な官僚の方でさえそういう勘違いをされていたわけでございますので、きちんとそこはわかりやすく、すべての家庭というのは平均的な家庭のことではなくて、あらゆる家庭なんだ、それはどんな事情を抱えている家庭だろうと、母子家庭だろうと、お子さんが障害を持っていらっしゃる家庭だろうと、親御さんが障害を持っていらっしゃる家庭だろうと、いろいろな事情がある家庭だろうと、自分の子ではないお子さんを預かって育てていらっしゃる家庭であろうと、すべての家庭がこの対象となるんですということを明確に示していただかないと、これは自治体の方で勘違いした場合に、私は、それは厚生労働省側の伝え方が不十分だったというふうに理解せざるを得ないと思いますけれども、その点、明確にしていただけますように、一言御答弁いただけますでしょうか。

○岩田政府参考人
 今委員が言われましたことはそのとおりだというふうに思いますので、政府として、行動計画策定指針を策定いたしますときに、そのことは十分考慮してまいりたいと思います。

○水島委員
 くれぐれもよろしくお願いいたします。
 さて、今回の児童福祉法の改正案を見ますと、乳児院や児童養護施設などが地域住民の相談に応じるよう努めるという規定がございますけれども、乳児院や児童養護施設の人員が非常に苦しい状況にあるということは現場からも指摘をされていることで、できるだけ中の子と一対一の関係をつくりたいというふうに思っていても、本当に忙しい。
ただでさえ現場があっぷあっぷしていて、これから児童虐待防止法の見直しの中でもこういう関連施設の方たちの人員をもっと充実させていかなければいけないというのは重要なポイントの一つだと私は思っておりますけれども、ただでさえ現場が人員に乏しい中で、一体どうやって地域住民の相談に応じるような人員を確保されるんでしょうか。

○岩田政府参考人
 児童養護施設などの子育て支援の努力義務の規定に関してでございますけれども、児童養護施設などでは、いわば子育てについての非常に専門的な知識経験の集積があるわけでございますから、それをぜひ活用して、地域の子育て支援、例えば育児相談などについてでございますけれども、地域の子育て支援にもその役割を果たしていただきたいということで、そういう規定を今回設けたわけでございます。
 児童養護施設の職員態勢そのものについても大きな問題を抱えているということは認識いたしております。
児童福祉施設の最低基準がございますが、それを確保していただくことのほか、例えば自立支援のための非常勤職員の配置ですとか、心理療法担当職員の配置、あるいは虐待を受けたお子さんに個別に対応することができるような態勢をつくるためのいわゆる個別対応職員の配置、こういう職員配置をしていただいたときに予算を加算するなどで、入所児童の処遇の向上といいましょうか、職員態勢の整備に努めてきたところでございます。
 虐待を受けたお子さんが新たに入所されるお子さんの半分ぐらいになってきておりますので、本当に児童養護施設などの処遇が困難になってきているということは理解をいたしております。
そういうことから、ことしの五月に、社会保障審議会児童部会の中に社会的養護の在り方に関する専門委員会を設置をしたところでございまして、今、精力的に御議論をいただいております。
その中で、児童虐待を受けたお子さんがふえているというようなことを背景として、職員配置の問題も含めて、これから児童養護施設がどういう役割を果たすべきか、入所児童に対して、あるいは地域の子育て家庭に対してどういう役割を果たすことができるかということについて検討したいと考えております。

○水島委員
 今の点について、今度は重ねて大臣にお伺いをしたいんですけれども、今、局長の説明で、このような対応をすると予算をつけるというふうにやってまいりましたというふうに御説明がございました。
そうだと思います。
 ところが、本当に予算というのはつくんだろうかということを疑わせるような記事を読みました。
六月九日の朝日新聞の夕刊でございますけれども、これによりますと、   精神障害者の社会復帰施設の充実を重点施策に掲げる厚生労働省が、都道府県や政令指定都市から出されていた精神障害者の社会復帰施設の新規建設の補助金申請のうち約四分の一しか交付を認めていないことがわかった。
これまではほとんど認められてきただけに、異例の事態だ。
「十年間で社会的入院患者七万二千人の社会復帰」との厚労省の目標が、出だしからつまずくことになる。
  厚労省は「財政難で予算を十分に確保できず、申し訳ない。
「国に、はしごを外された」と思っている自治体もあるだろう。
補正予算や、来年度予算での獲得に努力したい」としている。
と反省の弁が書かれているわけでございます。
 この記事の内容はどうも正しいというように聞いているんです。
こうやって鳴り物入りで去年からずっと審議をしていまして、鳴り物入りの精神障害者施策であっても、実際に自治体が希望しているものの四分の一しか交付できないということになりますと、今回、自治体が頑張れば予算をつけますと今胸を張っておっしゃっているわけですけれども、厚生労働省はちゃんとそれを実現できるんでしょうか。
精神障害者ではできなかったけれども、次世代育成支援だったらできるというような保証は何かあるんでしょうか。
これは大臣にお答えいただきたいと思います。
    〔宮腰委員長代理退席、委員長着席〕
○坂口国務大臣
 予算のつけ方でございますが、今まで悪い習慣がございまして、すべて本当はそういう予算は当初予算で組んでいかなきゃいけないんですが、補正予算でとって、それで込みにして決着をつけるという悪い習慣、ずっとこれは続いてきているんですね。
私は、どこかで断ち切らないといけないと思いますし、当初予算でちゃんと組むべきものは組んでいかなきゃいけないというふうに思っております。
 そんなこともあって、当初予算の中に入っていない、さりとて、現在の段階で補正予算組みますとなかなか言いもならずという難しいところでございまして、そうしたことがございまして、地方自治体の皆さん方にも大変御迷惑をかけているんだろうというふうに思いますが、そこは謙虚に反省いたしまして、来年からはそうしたあり方をひとつ改めて、そして、当初予算の中にちゃんとそれが入るような工夫をしなきゃいけないというふうに思っている次第でございます。
参議院でも同様の御質問をちょうだいいたしまして、お断りを申し上げたところでございます。

○水島委員
 今、大臣から本当に率直に、これは悪い習慣だというふうに御答弁がございました。
 私は、何か従来型の政治家みたいに、大臣には予算をつける力がないじゃないかとか、そういう下品な話をしたいわけではないんです。
厚生労働省がよその省庁より力があるかないかとか、そういうことを言いたいわけではなくて、これはやはり悪い習慣であるわけですし、坂口大臣は厚生労働大臣であるとともに小泉内閣の一員であるわけですから、これはもう小泉内閣の姿勢として、こういう悪い習慣はやめて、財務省に権限ばかりが寄っているような体質を改めて、ちゃんとここに使うんだというのを、これは小泉総理の発言でそもそもが始まったということでありますから、ちゃんとそこで責任をとってもらって、その発言から出てきた最後に、この児童養護施設の人員の拡充というところまで今たどり着いてきたわけでございますから、そこの予算がつかないようでは、もうこれは内閣としての体をなしていないのではないかと。
 そのような点から、坂口大臣、必ず小泉総理大臣に小泉内閣としての姿勢を示すべきだという御提言をいただけるとお約束していただけますでしょうか。

○坂口国務大臣
 もちろん、お話し申し上げます。

○水島委員
 ありがとうございます。
 坂口大臣がいい方であるというのはもう十分わかっているんですが、その温かさが内閣全体にちゃんとしみ渡るような、そういう内閣になっていただかないと、何かいつまでたってもひとり相撲をしているような感じで、こちらもここで審議して、いて大丈夫なんだろうかとだんだん心配になってまいりますので、ぜひそこは、びしっと毅然とした態度で御発言をいただきたいと思っております。
 さて、今回の児童福祉法の改正に当たりまして、施策が今まで保育に欠ける児童に偏ってきたんじゃないかという反省のもとに今回の改正があったというようなことをいろいろおっしゃっているわけですけれども、実際に、いわゆる保育に欠ける児童という子供たちに対しての施策が十分なのかといえば、そちらも全くもって不十分であるわけです。
例えば児童養護施設も、要保護児童のための施設をそうじゃない子供にも広く使っていこうというのが今回の趣旨であるわけですけれども、保育の現場も養護の現場もあっぷあっぷのところで、そういうところの資源も不十分なのに、それ以外の子供に資源が分配できるのかというのは、これはもう素朴な疑問であるわけでございます。
 保育に欠ける児童、私はこの言葉は大変嫌いでございますけれども、この保育に欠ける児童という子供たちに対しての例えば延長保育、夜間保育、休日保育、病児保育などはまだまだ足りていないというのが子育て現場にいての実感でございます。
確かに、厚生労働省からいろいろとデータを見せていただくと、目標値があって、ここまで達成してきましたとか、それなりに数字を見せて説明はしていただくんですけれども、それでも相変わらずで、自分自身も、例えば、急に今晩、夫がどこかに行っているときに自分のぐあいが悪くなって、さあ子供を夜どこかに預かってもらえるかというと、たまたま私は近所の方が預かってくださいますけれども、そうじゃないところに住んでいたらどうなるんだろうかと考えたときに非常に不安になるわけでございます。
 ですから、子育て現場にいるとまだまだ足りていないという現状がありますし、また、雑誌を読めば、相変わらず、保育所難民といって、保育園に入るためにどこかに引っ越してみたり、子供を産む時期を自分でコントロールしてみたりと、そんな記事ばかりが載っていて、こんなことではとても安心して子供を産めないのは当たり前ではないかと思っております。
 やっています、やっていますと言うけれども、一体、何で、現場での欠乏感というのが全然解消されていかないんだろうか、このずれは何なのかというのをお尋ねしたいと思うんです。
 それで、以前、旧厚生省時代に担当の方とお話をさせていただいていましたところ、厚生省側としては多様な保育を進めようとしているんだけれども、自治体側に、子供というのは夜は家に帰るものだとか、日曜日ぐらい親と一緒に過ごすべきだというような考え方が頑固にあるために、なかなか施策が進まないというような話を聞きました。
二十四時間保育などをやってしまうと、親が引き取りに来なくなるんじゃないかということを真剣に心配している自治体の方もいたというふうに聞きました。
 こんなふうにやって保育を組み立ててしまいますと、母子家庭で夜や休日にお母さんが働かざるを得ないという家庭の子供が現実にどこに置かれているかということを考えるとぞっとする話でございまして、夜の保育とか休日の保育が要らないなんということは、子供の人権を考えてももう絶対に言ってはいけないことだと思いますけれども、そんなことだけではなくて、現実に、きょうあすは延長保育、休日保育が必要でないかもしれないけれども、多様な保育にアクセス可能だということは非常に大きな安心感をもたらすものでございます。
 ちなみに、私の子供が今東京で通っております無認可保育所では、必要があれば夜九時まで預かってくれますし、夕食も出してくれます。
私たちは夫婦で何とかやりくりして、ゼロ歳から預けていて、今まで一度も夕食のお世話になったということはないんですけれども、それでも、何かがあったらあそこで夕食も食べさせていただけて九時まで預かっていただけるということは、もう非常に安心して暮らしていける根拠となっているわけでございます。
 もちろん、きょう何時まで預かってもらいたい、これから日曜日に仕事をする、そういうような現実のニーズを満たすのは大前提なんですけれども、ただ、子育てというのは、もう皆様も十分御承知だと思いますけれども、常に予測しないことが起こることが子育ての特徴でもあるわけでして、もしものときに対応できるゆとりというものが必ず必要だと思っております。
今はまだ、現実のニーズを満たすところまでも来ていないというふうに思っておりますけれども、そういうゆとりの部分まで含めますと、まだまだやらなければいけないことというのは本当にたくさんあるのになぜ進まないのかというのを、ちょっと簡単に総括していただけますでしょうか。

○岩田政府参考人
 延長保育、夜間保育、休日保育、病児保育といったような多様な保育サービスのニーズにこたえていくということは、仕事と子育てを両立させていく上で非常に重要な課題であるというふうに思っております。
 これまで政府としましては、御存じのように、新エンゼルプランを策定いたして、それに基づいて実施をしてきたわけでございますけれども、新エンゼルプランの中には、延長保育、休日保育、病児・病後児保育、これらの具体的な数値目標を掲げているところでございます。
このうち、延長保育、休日保育については十六年度の目標値を既に達成して、それを上回る水準で今整備が進んでおります。
病児保育、病後児保育は目標まで到達するためにはもう一段の努力が要るというふうに思いますけれども、これも近年、少し整備に弾みがついているというふうに思っております。
 こういうぐあいに、現在の新エンゼルプランに基づく多様な保育サービスの整備は、エンゼルプランとの比較でいきますと、順調に、着実に整備がされているというふうに思っております。
 しかしながら、現場の切実なニーズとは乖離があるという委員の御指摘でございますが、一つは、私ども、全国の数値を見ておりますけれども、地域格差が相当あって、これらのサービスが提供できている自治体とそうではない自治体の格差があるのかなというふうに考えております。
 今回の推進法を成立させていただきますと、すべての都道府県、すべての市町村が行動計画をつくるわけですけれども、行動計画をつくるに先立って、やはり地域の子育てニーズを調査するというところからしっかりやっていただきたい。
そのための調査の費用なども地方交付税で措置をさせていただいているんですが、そういう中で、本当に、延長保育や休日保育や病児保育や夜間保育、そういったニーズがどのくらいあって、どの程度対応しないといけないかといったようなことをまずは自治体の行動計画に盛り込んでいただくということが重要かというふうに思っております。
 そういった自治体の行動計画を総計して、国として、政府として、新エンゼルプランは十六年度で終わりますけれども、その次のプランをどういう形でつくる必要があるかということを検討していきたいと考えております。

○水島委員
 ぜひお願いいたします。
 また、今、保育の中で無認可保育所というのがやはりかなり大きな役割を果たしているわけですけれども、この無認可保育所の届け出制は、民主党の提案がきっかけとなりまして法制化をされたということは結構なことだったと思います。
 ところが、聞きましたところ、保育士の届け出を行う際に、資格証について、認可園では写しでよいけれども、無認可保育所では現物を出させられるというふうに聞いたんですけれども、これは事実なんでしょうか。
この差別は一体どういうことなんでしょうか。

○岩田政府参考人
 私も、この御質問をいただいて初めて取り扱いを勉強してみたんですけれども、認可保育所と無認可保育所を差別しているということでは必ずしもないわけですけれども、前回の児童福祉法の改正に基づきまして、ことしの十一月二十九日から正式の登録事務がスタートいたすことになっております。
その十一月二十九日よりも前に、今、予備登録というのでしょうか事前登録の事務を進めておりますけれども、その事務の中で、児童福祉施設、ですから認可保育所に勤務している保育士については、日ごろから都道府県が指導監査をしておりまして、保育士資格の保有状況などの確認をしているということがございますし、また、本人の証明だけではなくて、児童福祉施設側の証明もあわせて添付をしていただくという条件で、資格証明書の原本ではなくてコピーでもいいというふうにいたしているところでございます。
これ以外の、無認可保育所で勤務している保育士さんですとか、資格はあるけれども今保育所には勤務なさっておられないような保育士さんについては原本をお出しいただくということになっているようでございます。
 きょう御質問いただきましたこのことも踏まえまして、また各都道府県とも相談し、こういった取り扱いが異なっていることについてどうするかというのは早急に検討したいと考えます。

○水島委員
 変な差別意識を生まないように、ぜひよろしくお願いいたします。
 時間になりましたので終わります。
ありがとうございました。




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