厚生労働委員会
(2003年6月06日)




質問バックナンバー|HOME

次世代育成支援対策推進法案と児童福祉法改正案について@






○中山委員長
 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。
水島広子君。

○水島委員
 民主党の水島広子でございます。
 本日、この次世代育成支援対策推進法案、そして児童福祉法の一部改正案に関して質問をしに来たわけでございますけれども、私にとってこの法案は、非常にキツネにつままれたような法案でございまして、何度読んでも、これによって何が変わるんだろうかというのがよくわからない。
 そんな気持ちでやってまいったところ、今、一時八分でございます。
これほど与党の方たちも集まりが悪かったということは、やはりこの法案のできにも関係があるのかなと思っているところでございます。
それでも時間がもったいないですので、それでは早速、質問に入らせていただきたいと思います。
 まず冒頭に、先日、新聞で大きく報道されました小児医療の問題について一言触れさせていただきたいと思います。
 こちらは朝日新聞でございますけれども、先日、健康であった五歳の男の子、豊田理貴ちゃんが、絞扼性のイレウス、腸閉塞を起こしまして、そして病院には行ったけれども放置をされ、本当に苦しみながらも最後まで我慢強く痛みを耐えながら、本当に半日という短い間で亡くなってしまったというような悲惨な事件が新聞に載っておりました。
 こちらに理貴ちゃんの、本当にかわいらしい、亡くなる前日の写真が載っているわけでございますけれども、私、この記事を読みまして、本当に心臓がとまるような思いがいたしました。
私にも五歳の子供がおりまして、とても他人事ではない事件でございます。
これこそまさに日本の次世代育成支援の貧困さを象徴した事件のようにも思っておりますけれども、まず、この事件はなぜ起こって、そしてどうすれば防ぐことができたのか。
そして、こうやって五歳のお子さん、本当に大切に育ててこられたと思います、その親御さんがこんなことで瞬く間にお子さんを亡くしてしまった、そのことをこれからどのように扱っていくべきだと思われますでしょうか。
まず大臣の御意見を伺いたいと思います。

○坂口国務大臣
 葛飾の東部地域病院というのでしょうか、私も新聞を拝見いたしまして、大変残念な事件だというふうに思った次第でございます。
 この記事を読ませていただいて、私、二つのことがあるというふうに率直にそのときに思った次第です。
一つは、患者さんに対する病院あるいは医師の対応の仕方、これは診療以前の問題としての問題だというふうに思いますが、その問題が一つ、そして今度は、診察をした後の診断の適否、これはあるんだろうというふうに思います。
 私も、かつて小児科におりましたときに、小さい男の子が急に泣きじゃくるときには腸閉塞と思えということを言われたことがございまして、先輩の非常にテクニックを心得ている人たちは、夜中でありましても、レントゲン透視をしながらおなかを上から押さえて、嵌頓に達しておりますのを治すと、それで十分手術をせずに治ったというケースを何例か私も見てまいりました。
 したがいまして、心得た小児科医師がおれば、それは最もあり得べき病気でございますし、よく診断ができたのではないかという気もするわけでございます。
そうした意味で、多く発生する病気は何か、そのときにはどうすればいいのかという非常に基礎的なことを身につけているかいないかということになるのではないかという気もするわけでございます。
 今後、こうした事故を防いでいきますためには、一つは、患者さんが参りましたときに、その最初の対応の仕方をやはり病院というもの、そしてまた医師というものは気をつけていかなければならないということが一つ。
そして診断につきましては、やはり安易に考えるというのではなくて、すべての症状、またお母さんから聞きましたような内容も十分に考慮して対応すれば、こうしたことが繰り返されることなく行えるのではないかというふうに思った次第でございまして、そうしたことをこれから各病院がどのように真剣に取り組んでいくかということになるのであろうというふうに思っている次第でございます。

○水島委員
 今、大臣はむしろ患者さんの見方という観点からお話をくださったと思うわけですけれども、もちろん私自身も、かなりやぶ医者の方だとは思いますが、おなかの痛い子を見たら、きちんとおなかの聴診はするでしょうし、またレントゲン写真を見て、少なくとも絞扼性イレウスのような所見があったらきっと私でも気がつくのじゃないかなと思いますので、この医師の医師としての資質の問題というのは大きいと思いますし、その医師がどのような医学教育を受けてきたのかということも問題にしなければいけないとは思うのですけれども、私がこの記事を読みまして真っ先に思ったことというのは、小児医療現場における人員の少なさ、そして人員が少ない中でその効果を最大限に発揮していくためには、やはりきちんと相互にチェックしていけるような仕組みがなければいけないと思うわけです。
 この場合も、何度も看護師の方はこの危険性に気がついて医師に診察を求めたけれども、医師は応じなかったというようなこと。
だれかが気がついてはいたわけですので、それがきちんと伝達されていないということに非常に大きな問題を感じました。
 また、もしもこのとき当直の小児科医が複数名いれば、一人こんな資質の医者がもしも紛れ込んでいたとしても、もう一人の人が気がついて対応できたのではないかとか、そのように考えてまいりますと、この一件からも、きちんと学んで政策面に反映させなければいけないことというのは本当にたくさんあると思っております。
 こうやって失われた命、五歳になるまで本当に大切に育ててきた、また将来を本当に楽しみにしていたこの親御さんの気持ちを考えますと、これは悪い医者に当たって残念だったねというようなレベルの話ではないと思うのですけれども、改めましてもう一度大臣いかがでしょうか。

○坂口国務大臣
 先ほども申しましたとおり、患者さんが参りましたときの病院の対応の仕方、もちろん、今御指摘になりましたように、内部の連携の問題もあるというふうに思います。
そうした問題をやはりふだんからこういう連携のもとにやるんだということをきちっとしておいて、医師というものはいかなる場合であっても謙虚でなければならないということを私はあの記事を見まして思いました。
 看護師の方がこういうふうな状況ではないかということを言えば、それは、最終的な診断は自分がするにいたしましても、すぐに疑って、そしてすぐに対応するというのがやはり医師としての役割ではないかというふうに思った次第でございます。
 もちろん、人数も多いにこしたことはございませんけれども、いつも人数はたくさんいるわけではありませんし、たとえ少人数でありましても、その連係プレーと、そして的確な対応というものが求められているというふうに思っている次第でございます。

○水島委員
 まだ少し認識がずれているような気がするのですが、いずれにしましても、この事件、大きく報道されました。
これは子育て中の親にとっても本当に衝撃的な事件でございますし、これから安心して自分はこの国で子供を生み育てていけるんだという気持ちには到底なれない、悲しい事件でございます。
 今、全国のいろいろな親たち、あるいはこれから親になろうとしている人たちが、このような記事によってかなり心を傷つけられていると思っておりますので、こんなことが起きたんだから、これをむだにしないために、厚生労働省はきちんとこれを打ち出しましたというようなことがわかるようなメッセージを近いうちに必ず発していただきたいと思っております。
 今回も、この次世代育成支援の項目の中には、小児医療の充実というのが極めて当たり前のように書かれているわけでございます。
今まで、いかに小児科の医療の現場が貧困であるか、どれほど苦しい仕事の中で大変なことをやっているか、そのようなことを私もこの委員会の中でも訴えてきたわけでございますけれども、そのようなことにきちんと手当てをしてきていれば、またそれがきちんとしたスピードでできていれば、このような事件は防がれたのではないかと思っておりますので、ぜひ、この医者がおかしかったとか、ここの病院は変だったとか、そのレベルの話ではなく、本当にすべての親が安心して子供を、何かがあっても必ず病院で診てもらえるんだというような、そして病院というのは行けばちゃんと安全な医療を提供してくれるんだというような常識的な安心感が持てるような、そんなメッセージをぜひ厚生労働省から打ち出していただきたいとお願いを申し上げます。
 さて次に、今回の法案について質問をさせていただきます。
 今回の次世代育成支援対策推進法案そして児童福祉法の改正案、これは少子化対策プラスワンに基づくものであると言われておりまして、この少子化対策プラスワンというのがそもそもなぜ出されてきたのかというのを聞きますと、二〇〇二年の一月に出された新しい将来推計人口の中に、少子化の原因は、晩婚化だけではなく、夫婦が持つ子供の数が減った、夫婦の出生力の低下ということが初めて認識されたからだというふうに私は今まで説明を受けました。
 これを最初に聞いたときに、私は非常に意外な気がいたしました。
といいますのは、日本の子供の育てにくさということはかねてから指摘されてきたことでもございますし、私も五年前に最初の子供を産みましたけれども、子供を自分自身が産む前から、日本というのは子供が育てにくい国なんだなということを深刻に感じておりました。
また、自分が希望している数の子供よりも実際に産む子供の数の方が少ないということもかなり前から指摘をされてきたわけでございまして、現場ではいろいろな方たちが、日本は子供を育てにくい、本当はこれだけ欲しいんだけれども、実際にそれだけ産めないんだということは、多くの人たちが言っていたわけでございますけれども、そのことに関して政府が二〇〇二年の一月に初めて気がついたというのは、ちょっと遅過ぎるのではないかと私は思うんですけれども、これはどういうことなんでしょうか。

○坂口国務大臣
 産みたいという人数とそれから現実に生まれております人数とに、〇・三ぐらいでございますか、格差があるということは前からわかっていたわけでございますが、結婚をした人たちの間で生まれます人数というもの、その人数が今までよりも減ってきたということが明確にわかったのは、この平成十四年一月の推計人口でございまして、それまでは、統計上は明確な数字が出てこなかったということだろうというふうに思っております。
いわゆる産みたい数と実際に生まれている数というものとの差があるということは、前からわかっていたことだというふうに思いますが、統計上きちっと出てきたのはこの時期だということだと思います。

○水島委員
 済みません、確認をさせていただきたいんですが、そうしますと、今回のこの法案の内容というもの、名称は次世代育成支援対策推進法案ということなんですが、今のお話を伺っていますと、次世代を育成することの困難さは今までわかっていたけれども、実際に数が減ってきて初めてこれに取り組んだというように聞こえたんですが、そうだとすれば、これは子育て支援なんじゃなくて、子供の数をふやすための政策というふうに理解してよろしいんでしょうか。

○坂口国務大臣
 午前中にもお答えを申し上げたところでございますが、少子化対策と言わずに次世代の育成対策というふうに言っておりますのは、現在生まれておりますお子さん方をどのようにして育てていくか、あるいはまた子供さんがみずから育っていくようにするかというところを取り組むことによって、そして全体としては少子化対策になっていくということを我々は願っているわけでありまして、少子化対策というふうに言いましたときには、非常に範囲も広い範囲のことになりますし、そしてまた、いろいろな考え方もそこには入ってくるわけでございますから、あえて少子化対策というふうに言わずに、次世代育成という言葉を使ったということでございます。

○水島委員
 またちょっと確認させていただくんですが、今回の法案でしようとしていることは、とにかく、今、次世代を育成することに困難を感じている方たちの困難を減じて、結果として子供の数もふえたらよろしいだろう、そのようなことであって、少子化対策と言った場合には、私もこの前内閣委員会でも言ってきたんですけれども、外国人労働者の問題をどう考えるかとか、あるいは年金制度のあり方をどう考えるかとか、全部あわせて少子化対策ということであると私は思っておりますけれども、そういうようなことを今おっしゃったというふうに理解してよろしいんでしょうか。

○坂口国務大臣
 そのように理解していただいて結構でございます。

○水島委員
 確かに、今まで厚生労働省は、少子化対策臨時特例交付金とか少子化対策推進基本方針とか少子化対策プラスワン、少子化対策推進関係閣僚会議等々と、少子化対策という言葉を使ってきたわけでございますけれども、今回あえて次世代育成という表現を使われたということは、私は、それは正しい御見識であると評価をしているところであるわけでございます。
 そうであればあるほど、最初に大臣が御答弁くださいました、実際に子供の数が数として減ってきたことに初めて気がついて今回のこの施策を打ち出してくるというのは、何となくまだ論理矛盾があるように思うんです、明らかな数値として出てきたということでおっしゃるのであれば、ちょっとそこはあえて今追及しないでおきますが。
 もう一つ確認をさせていただきたいんですが、この法案と、現在内閣委員会できょうも審議をされております少子化社会対策基本法案との関係はどのようになっているんでしょうか。
こちらの法案の名前は少子化社会対策でございます。
これは同じ目的のものなんでしょうか。
私は、何か両方の法案を見まして、本当はあちらが次世代育成支援基本法案と呼ぶべきものであって、こちらは行動計画策定法案とでも言うべきではないかなと考えているんですけれども、いかがなんでしょうか。

○坂口国務大臣
 今、内閣委員会の方に出ております方の法案は、議員の皆さん方が中心になっておつくりをいただきました議員立法として出されたものだというふうに記憶いたしておりますが、こちらの方をつくりましたときと申しますか、かなり前に、いろいろと皆さん、各党がお寄りになって議論をされておつくりになったというふうに思っております。
 私も、最初のころ参加をさせていただいたことがございまして、各党からいろいろの御意見があったというふうに記憶をいたしておりますが、最も基本的なところをやろうということで、あの法案をつくるということが最初進んだように記憶をいたしております。
 最終的な案、私、どういうふうになったかということを十分に存じ上げておりませんけれども、最初のころは、そうしたことであの法案というものをつくるという皆さんの合意のもとに進められたというふうに思っております。

○水島委員
 済みません、どのようにつくられてきたかという経緯は私もある程度知っているつもりではいるんですけれども、今回、多分時を同じくしてたまたま議論をされているわけでございますが、片や少子化社会対策という名前を冠した法案でございまして、こちらは次世代育成支援ということで、少子化対策という言葉を使わないで、あえて今回は次世代育成支援という言葉を使われたということであるわけですが、その二つの法案が今ほとんど同時に審議をされていて、成立するのであればほとんど同時に成立をしていく。
そのような中で、法律となったときに、この二つの法案の関係はどうなんでしょうか。
同じ方向を向いて運用されていくものなんでしょうか。

○岩田政府参考人
 そのとおりだと思います。
 基本法の方は、政策の基本的な理念でありますとかその方向を示すものですけれども、この次世代育成推進法の方は、各自治体あるいは各企業で次世代育成のための具体的な取り組みをする、それを促進するためのいわば体制をつくるための法律というふうに理解しておりますので、相互補完的といいましょうか、整合性がとれているというふうに考えております。

○水島委員
 先ほど大臣の、少子化対策と言った場合にはもっと広いものを意味するのではないかといった御認識、そして今の基本的な理念をあちらでは定めているというような御説明を両方聞きますと、やはり私、内閣委員会でも申し上げてきたんですけれども、あちらの本当の名称は次世代育成支援基本法案であるべきではないかな、大臣がお考えになっているような、それ以外の少子化対策という要素は入っていないんじゃないかなと思いますので、ぜひこれは議員の皆様にも、その法案の位置づけ、今細かいことを話しているようではあるんですけれども、日本がこの少子化対策というのを、少子化社会対策というものをどう考えるのかというその基本の部分を論じているわけでございますので、ここの点にぜひ皆様にも御関心を持っていただきたいと思っているんですが、今の局長の答弁を伺いましても、本当は向こうが次世代育成支援基本法案で、こちらは行動計画策定法案という名前にしても全く構わないんじゃないかなと今御答弁を伺ったわけでございます。
 もう一つ本質的な点に触れさせていただきますと、今回のこの法案を十年間の時限立法にした理由というのはどうなっているんでしょうか。

○岩田政府参考人
 少子化対策の進行が極めて深刻な状態にあるというふうに思っておりますので、本当に待ったなしの状況かというふうに考えております。
 そこで、国も地方自治体も企業も、今何ができるかということについて総力を結集していただいて、自治体は住民とよく対話をし、企業は労使でよくお話し合いになって行動計画をつくる、そして集中的に十年間でどこまで行けるかということで取り組もう、こういう枠組みを決めたものでございまして、そういうことで、とりあえず十年間はやってみようということの趣旨でございます。

○水島委員
 その場合、十年間やってみた効果というのはどういったところでごらんになるんでしょうか。

○岩田政府参考人
 具体的にどういう形で評価をするかということについては、またそのときにしっかり議論していただければと思いますけれども、今回の法案の中心になっておりますのは、子供を生み育てたいという気持ちを持っておられる方にとって、さまざまな障害が今世の中にありますので、その障害を除去して生み育てやすい社会をつくるということが中心になっていようかというふうに思いますので、そういった目的といいましょうか、それに照らして、現状がどう変わっていくのか、あるいは施策の展開がどこまで推進できたかというようなことで判断するのではないかというふうに思います。

○水島委員
 ということは、今回の施策を考えるきっかけになったのが、夫婦の出生力の低下ということでございましたので、これは十年後に評価をするときには、この夫婦の出生力が向上するかどうかというようなところをごらんになるというふうに考えてよろしいんでしょうか。

○岩田政府参考人
 夫婦の出生力の低下というのは、五年に一回人口の将来推計を出しておりますけれども、過去何回か、私どもが少子化の原因であるというふうにその将来推計から理解しておりましたのは、晩婚化、非婚化ということであったわけですが、今回は、もちろん引き続き晩婚化、非婚化の要因は大きいわけでございますけれども、それにつけ加えて、従来は見えなかった、しかしながら一九六〇年代以降に生まれた方の問題として、結婚したカップルの間の出生力が低下しているんではないかという、新しいそういう現象を見て検討したということでございます。
特に、夫婦の出生力の低下というのは、やはり子供を生み育てにくい、生み育てる環境が必ずしも十分ではないということの問題をその数字が示しているということではないかということで、今回の検討の端緒になったわけでございます。
 もとより、従来から、少子化対策基本方針ですとか、それに基づいたエンゼルプラン、新エンゼルプランということで次世代支援対策は取り組んできていたということだと思いますけれども、従来の対策にさらにつけ加えてもう一段の対策ということで、従来はどちらかというと保育所対策などが中心だったのにさらに追加をして、すべての御家庭の子育て支援対策をどういうふうに強化するかとか、働き方の問題がどうも子供の育て方の問題と密接であるから、働き方の問題をどういうふうに変えていくか、あるいは子供が大人になる過程、子供の育成過程というのは次の世代の親づくりでもあるという観点から、子供の自立対策という分野も強化をしたいとか、社会保障制度の中で次世代の仕組みをどういう形でビルトインできるかといった、従来、比較的取り組みが弱かった分野にまで広げて対策を講じようということを考えたわけでございます。

○水島委員
 私は、この晩婚化も非婚化も夫婦の出生力の低下も、みんな同じ線上にある話だろうなと思ってはおりまして、それが今までは晩婚化、非婚化という形でしかデータとしてとらえられなかったのが、いよいよ夫婦の出生力も低下してきた、もういよいよ深刻になってきたというふうにとらえるべきなのかもしれないと思っております。
 いずれにしましても、これを十年の時限立法にしてとりあえずやってみようということなんですが、十年間たって、ある程度子供の数というものがふえてくる、あるいはその低下が頭打ちになってきた、そのようなことになりましたら、次世代育成支援というのは必要がなくなるというふうなお考えなんでしょうか。

○岩田政府参考人
 冒頭申し上げたかと思いますけれども、この法律のねらいとするところは、子供を生み育てやすい社会づくりをどうしようかということでございます。
子供の数の問題だけではございませんで、むしろ子供が育つ社会の質といいましょうか、それを問題にしているということだと思いますので、その時点で、十年後の子供を生み育てる環境の状況がどの程度改善しているかといったことが大変大きな判断の要素の一つになると思います。

○水島委員
 その場合、十年間ということなんですけれども、これは、十年間やってみて効果が十分でなかったら、また次の十年もやるというものなのか、あるいはこの十年間でとにかく政府を挙げてできるだけのことは全部やろうという意気込みなのか。
後者であるのであれば、きちんとした数値目標を掲げて、毎年の達成目標を掲げて十年間やらないと、とても間に合わないと思うんですけれども、どちらなんでしょうか。

○岩田政府参考人
 先生がおっしゃった後者の方だと思います。

○水島委員
 ということは、きちんと数値目標を掲げられて、十年間でここまでやるんだというふうに意気込まれていらっしゃるのかなと、ちょっと今それを前提として伺いまして、これから個別の質問に入らせていただきたいと思います。
 ちょっとその前に、もう一つ確認をさせていただきたいんですけれども、今回、こういったものを出してこられるに当たって、これは午前中の審議の中でも多少触れられていたんですけれども、そもそも、今までの政府の次世代育成支援施策の総括というのはどのようにされていらっしゃるのか。
例えば、待機児童ゼロ作戦ということを小泉首相がおっしゃって、多くの親たちを喜ばせたわけでございますけれども、あんなのは今どうなっているんでしょうか。

○岩田政府参考人
 閣議決定をいたしました待機児童ゼロ作戦は、保育所の待機児童を減らすということを目的にいたしまして、具体的には、毎年受け入れ児童を全国で五万人ずつふやしていく、そういう計画でございます。
 十四年度が初年度で、三年間の取り組みということになっております。
ですから、十六年度、三年間たった後で最終的に評価をしていただくことかと思いますけれども、始まって一年ちょっとたった時点での今の状況でございますが、一年に五万人受け入れをふやすということについては、ほぼ予定どおり推進できているというふうに思いますし、地方自治体の理解、協力をいただければ、十六年度までそれは実現できるんではないかというふうに見通しを持っております。
 一方、それが具体的に待機児童の減少につながるかどうかということについては、ここはなかなか、さまざまな要素で、確実に待機児童が大幅に減少することになるかどうかということについては、若干言い切れない面もあるというふうに思います。
保育所の整備が進めば進むほど、いわば、それまでは潜在的には保育所の利用の要望のあった方がまだ顕在化せず、したがって待機児童のリストには載っていなかったような方、そういう方が保育所の整備に伴って顕在化するということもありますので、このところは、どういうふうにそれを見通して計画を立てるかというのは大変難しいところでございます。
 しかしながら、目に見える形で、やはり保育所は使いやすくなった、利用しやすくなったというような形に近づけることができますように、引き続き十六年度末までの計画を頑張って実施していきたいというふうに思います。

○水島委員
 本来はそういった説明があって、今までこういった施策を講じて、それに関してはここまで達成されているけれども、この点が不足であることがわかったので、今回はここの部分に新たな施策を講じるとか、そういうふうに最初から御説明をいただきたかったところなんですけれども、今回、本当に最初から将来推計人口の問題が出てきて、これでいよいよ夫婦の出生力が低下したから、だから今まで保育に偏っていた施策を専業主婦家庭にもというような理屈で今まで説明をされてこられていましたので、非常に表面的な印象を受けてまいりましたし、今までの次世代育成支援の施策の総括をきちんといただいて、それを目に見える形にしていただかないと、普通に暮らしている立場の人間には、どんどん日本がよくなってきているから、これからは自分も安心して子供を産めるかなという気持ちにはなかなかさせられないのではないかと思います。
 また、次世代育成支援の必要性について、先ほど将来推計人口のことは御説明をいただきましたけれども、それ以外にどんなデータを持った上で施策を講じていらっしゃるのか、教えていただけますでしょうか。

○岩田政府参考人
 人口関係のデータはもとよりでございますけれども、それ以外に、子育て中の父親、母親のニーズについてですとか、職場での仕事と子育ての両立のしやすさを助けることができるような制度の普及状況ですとか、例えば晩婚化の理由など、結婚に関する国民の意識がどういうふうになっているかということですとか、先ほども大臣とのお話の中で出ておりましたけれども、理想の数の子供とそれが持てない原因は何だろうかといったような関連するテーマについて、相当数の意識調査、アンケート調査をやっておりますので、それらの調査を丁寧に勉強しながら政策立案をしてきたつもりでございます。

○水島委員
 私もちょっと事前に少しその資料は見せていただいたんです。
あくまでも、現行の制度がどれだけ役に立っているかとか、あるいは厚生労働省側が用意した選択肢に対して答える、それで、その他というようなところがある、そんなものを幾つか見せていただいたんですけれども、例えば現実にいろいろな方とお話をしていますと、本質的にこれはもうだめだと思う瞬間というのは、例えば夫が単身赴任になって、自分が仕事と家庭の両立をしていけなくなるとか、あるいは育児休業はあっても、妊娠中につわりがひどい、あるいは大きなおなかを抱えて満員電車で非常に長距離通勤をして、もうこれはだめだと思ったとか、割と非常に身近なところにいろいろと困難があるわけでございます。
 私が少なくとも事前に見せていただいたデータの中には、そういった夫の単身赴任だとか、そういったことというのは当然選択肢として入っていなくて、何やら大変なのはわかるんだけれども、それが現実のニーズを本当に正確に反映させているのかどうかというものは、ちゃんとある一面はとらえているんだと思いますけれども、これから講ずべき施策の選択肢として本当に必要十分なものなのかというものは、少し疑問を持ちました。
 そういった意味では、本当に当事者本人からの聞き取りをして選択肢もつくっていかなければいけないと思っておりますけれども、そういった選択肢をつくるときに、当事者からの数多くのヒアリングをするですとか、そういったことはされていますでしょうか。

○岩田政府参考人
 調査の設計をするその具体的な作業の中で、それでは今子育ての中にある方の個別のヒアリングを必ずしているかというと、むしろしていないということの方が一般的かというふうには思います。
しかしながら、いろいろな機会をとらえて、まさに子育て中の父親、母親のニーズの把握には努めているところでございます。
 例えば、今回、昨年から少子化対策プラスワンの立案から始まりまして、一連の作業がございました。
それに先立って、少子化社会を考える懇談会を大臣が招集されましたけれども、各界の有志を集めると、どうしても五十代、六十代の男性が中心になりがちでございますけれども、これは大臣の御指示でなるべく若い方を、それも女性を入れようということで、三十代、四十代が中心のそういった方たちから意見をちょうだいする機会なども設けて、現に子育て中の方の御意見に耳を傾けるように努力はしているつもりでございます。

○水島委員
 ぜひその御努力をもっと今まで以上にしていただいて、そして次にこういう意識調査をしたり現状の把握をしたりするときには、その選択肢のつくり方から当事者の意見を踏まえて、今度はもう少し新しいものをつくっていただけますようにお願いを申し上げたいと思います。
 また、次世代育成支援の必要性を示すデータとして、今おっしゃったような観点とはまた別に、どういう状態の親が子供を育てるとどうなるかというようなことが出てくるわけでございますけれども、親がうつであると子供の発育に悪影響が及ぶということは、そういうデータは知られておりますけれども、これは厚生労働省としては御存じでしょうか。

○岩田政府参考人
 今、社会保障審議会児童部会で、これからの対策のあり方について議論していただいておりますけれども、そこで出てきている大きな論点の一つに、産後のうつの問題がございまして、産後のうつがやはり子供の養育に深刻な問題を投げかけているんではないか。
例えば、それが養育放棄になったり、子供としっかりコミュニケーションができないという問題になったり、夫との関係がまずくなって、そういった家族の関係の悪さがまた子供の発育に影響したりという議論がなされておりますので、大変関心を持っているところの一つでございます。
 また、日本そしてアメリカなどでこういった専門家の調査結果もあるようでございまして、私はサマリーしか読んでおりませんけれども、それなりには私どもの局、スタッフ、勉強させていただいております。

○水島委員
 今おっしゃった産後うつ病という狭い範囲のことだけではなくて、例えば非常に夫婦の関係が貧困になってしまって、その悩みからうつになって、実際にそれが子供に影響を与えていく。
私は、ネグレクトと言われる虐待の背後には、多くの場合うつがあるんじゃないかと思っておりますけれども、いずれにしましても、全般的に、親がうつ状態であると、子供に本当に温かく余裕のある関心を向けてあげられなくなるということは、これは症状として仕方のないところもございまして、やはり親をいかにうつ状態にしないかということは非常に重要なことだと思っております。
それは、局長が今まで読まれたサマリーからも読み取れることであると思います。
 そういった視点で見ますと、今回厚生労働省がこの法案を出されるに当たって示されているデータで、子育て負担を大きく感じている人が専業主婦家庭では四五・三%もいるということ、これは、四五・三%がみんなうつなのかといえば、そういうことではないとは思いますけれども、負担を大きく感じているということは、うつに関して非常にリスクが高いということになりますので、これが四五・三%、半分近いということは、子供の心の成長を考える上で非常に深刻な事態だと私は思っております。
 このデータによりますと、専業主婦家庭の方が共働き家庭の母親に比べて負担を強く感じているという結果になっているわけですけれども、この理由をどういうふうに考えていらっしゃるでしょうか。

○岩田政府参考人
 アンケート調査などを分析して、幾つかのことがあると思うんですが、一つ考えられますことは、専業主婦の場合は、二十四時間育児だけに、そしてそれを多くの場合ひとりで向き合っているわけでございますから、それからくる閉塞感といいましょうかストレスといいましょうか、それが一つ原因があるというふうに思います。
 それから二つ目には、専業主婦家庭の場合に、夫と妻の役割分担がはっきりしていて、夫は仕事、育児は妻だけという形になりがちでございまして、夫は夜遅くまで仕事だけをする、育児にかかわらないといったような、父親の育児参加が少ないということからくる負担感、不安というものもあるというふうに思います。
 さらに三つ目として考えられますのは、共働き家庭の場合は、保育所にお子さんを預けるケースが多いというふうに思いますので、朝晩、保育士さん、あるいは同じように子育て中のお父さん、お母さんと話をする機会があるわけですから、そういった人たちから情報を得たりアドバイスをするといったような中で、不安や問題を解決していっている。
そういう機会が専業主婦の方には少ない、こういうことが原因ではないかというふうに考えております。

○水島委員
 今まで、今でもかもしれませんが、多くの方たちがとらわれてきたものに、いわゆる三歳児神話というものがございまして、母親が二十四時間子供のそばにいないと子供の発育に悪影響が及ぶ、大ざっぱに言うとそんなような内容の神話であると思いますけれども、今、このデータを見ても、また局長がおっしゃったことを伺いましても、現実には、三歳児神話によって子供たちが守られているというよりは、三歳児神話がかえって子育てをゆがめてしまっているような、そんな結果が読み取れるのではないかと思います。
 二十四時間親が子のそばにいた方が子供がよく育つ、そういうことが昔は、昔といってもここ最近の短い昔ですけれども、信じられていたものが、今は逆に、二十四時間育児だけをしていると閉塞感がもたらされてしまうとか、あるいは、むしろ保育園で人的交流があった方がいいとか、そういったことで、三歳児神話にとらわれている人ほど子育てに非常に負担がかかっているんじゃないかというようなふうにも思えるわけでございます。
 この三歳児神話そのものは、学説としては否定されていると言っていいと思いますし、先日内閣府の方から有識者懇談会の報告書というのを出していただきましたが、その中でも明らかに否定している。
むしろ共働き家庭の方が、そういう意味では育児負担が少ないところもあるというところまで踏み込んで書かれているわけでございますけれども、厚生労働省として、三歳児神話が日本の現状で親たちにどういう影響を与えているのかということをここで改めて総括していただきたいんです。

○鴨下副大臣
 神話という意味でいいますと、往々にして神話の中には事実も含まれているわけでありますから、先生おっしゃるような点からいいますと、ある意味で、過度に三歳児神話にとらわれるというようなことによって、お母様方が大変なプレッシャーの中で育児をせざるを得ない、こういうようなことは事実なんだろうというふうに思います。
 また、平成十年版の厚生白書においては、こういう記載がございます。
「少なくとも合理的な根拠は認められない。
」云々、こういうような趣旨の記述はあるわけでありまして、いわゆる誤解も含めてなんですが、三歳まで母親が二十四時間密着して育児をすべしというようなことについては、これはそうではないんだろう、かように思うわけであります。
 ただ、先生もお考えの中にそういうようなことがあるというふうに私は拝察しているわけでありますけれども、例えば育児過程において、生育過程において、ある意味でのアタッチメントの質だとかそれから愛着形成と言われるようなこととか、ある意味で保護者に対しての基本的な信頼関係を形成していく、こういうような意味においては、だれかがメーンになってそのお子さんに接していく、こういうようなことにおいては、私は、三歳児神話ということではないかもわかりませんけれども、反面、極めて重要な点だろうと思っておりますし、さらに、それの多くは、一般的には家庭の中、それから今までの社会通念の中では母親が担ってきたということも事実なんだろう、こういうふうに思っておりまして、先生がおっしゃっているような過度な負担をある意味で母親に与えるというようなことにおいては、これは慎むべきだろうと考えております。

○水島委員
 今、副大臣がいい話をしてくださいましたので、通告の順番とすっかりひっくり返ってしまって申しわけないんですけれども、ちょっとそれに関連した質問をさせていただきたいと思います。
 今、愛着の重要性ということをおっしゃって、愛着、アタッチメントと言われているものですけれども、その重要性ということで御指摘をくださいましたので、まさにその点からひとつ質問をさせていただきたいと思うんですが、愛着の形成、それも人生の極めて早い時期での愛着の形成の必要性というのは、何も家庭に恵まれた子供だけにあるものではなくて、家庭に恵まれない子供にとっても、愛着というのは人格形成の上で非常に重要なものであるわけでございます。
 現状でそれをもう一度その目から現在のシステム、この児童福祉法の世界を見てみますと、非常に問題を感じますのが、例えば親から引き離されて、それは親を失ったとかあるいは虐待を受けて親から引き離されたでも、何でもその理由はあるわけですけれども、親から引き離されて親との間に愛着関係を築けずに乳児院に入った子供が、二歳くらいになると、現行法上、児童養護施設に措置されるという形になっております。
親から引き離されて、乳児院側の努力で、なるべく一対一の養育をしようとしていただいて、やっとある人に懐いてきたかなというところで、今度また全然知らない児童養護施設に移されてしまう。
ここで子供は、もう生まれてから二度にわたって、愛着の破綻といいますか、それを経験することになるわけです。
生まれてから数年の間に二度も大きな裏切りを体験するということになるわけですけれども、これがどれほど子供の心にとって深刻なダメージを与えるかということは、もう十分に御推察いただけることだと思います。
 子供にとっての愛着の重要性というのをそうやって御答弁くださった以上は、その愛着というものを軸にこの制度をつくりかえる必要があると思うんですけれども、いかがでございましょうか。

○鴨下副大臣
 私も同感であります。
 そして、特に乳児院の入所児童について、二歳になりますと児童養護施設に移される、こういうようなことで、それこそアタッチメントの質というような意味においては、そこで分断されるわけでありますから、多くは、そういうようなことで傷ついた心というのは、いずれのところでまた本人を苦しめることにもなりかねません。
 そういう意味では、特に乳児の場合は、保健医療面で、言ってみれば手厚い対応が必要である、こういうことはもう言うまでもないわけであります。
ただ、現行制度の中ではおっしゃるようなところがあるわけでありますので、この点はぜひ是正していかなければいけないというふうに思っております。
 そして、ある意味で、乳児院の中には例えば看護師さんが必要だとか、児童養護施設とは多少人員配置等が変わるわけでありますけれども、そのことよりも、むしろお子さんがそういう意味で連続的に、ある種信頼関係を持った方に養育してもらう、こういうようなことの方がはるかに重要なことなんだろうと思っておりますので、そのことを含めて制度を見直して、すくすくとお子さんが育てるようなシステムにつくっていきたいと考えております。

○水島委員
 今、はっきりと、もう制度を変えていただけるという御答弁をいただきまして、これは副大臣の御答弁でございましたが、大臣もそれでよろしいでしょうか。
――ここで大臣うなずいていただきましたので、これは本当に早急に変えていただきたいと思います。
 児童虐待防止法の見直しというのは、青少年問題特別委員会で今作業に入っているわけではございますけれども、児童福祉法のここの部分というのは非常に重要な点で、これはこれで厚生労働省が現在の中できちんと変えていただかなければならない部分だと思います。
こうしている間にも、乳児院から本当に泣きながら、あるいはもう人間なんて絶対に信頼できないという思いで児童養護施設の方に措置されている子供がいるわけでございますので、これはもう近日中に制度を変えていただけるように、何らかの形で、こういうふうに変わりましたということを示していただけますように、改めてお願いをしたいと思います。
 もちろん、親がちょっと短期間、次の子供を産むとか、何だか短期間、ちゃんと終わりがあるとわかっている子供を乳児院で一時的にケアするというのはいいことだと思いますけれども、やはりこれからもずっとそうやって育っていかなければいけない子供に対して、連続した養育の必要性ということは十分御理解いただけると思いますので、ぜひ現行のおかしな点を本当に早急に改善していただけますようにお願いいたします。
 また、家庭的な養育を重視する、一対一の愛着というものを重視するというような意味では、里親ですとか養子縁組ですとかそういったこと、これは日本ではまだまだ主流ではないシステムでございまして、里親を引き受けてくださる方というのもまだまだ少ないわけでございますけれども、こういったことを活性化させていく必要があると思っておりますけれども、それをどのように進めていけるのか、その施策のお考えについてお聞かせいただきたいと思います。

○鴨下副大臣
 先ほどからの議論の引き続きになるわけでありますけれども、安定的な愛着形成ができていくような、そういうような保護者、養育者という意味では、里親あるいは養子縁組というのは極めて有効な方法なんだろうというふうに思います。
そういう意味におきましては、里親さんもしくは養子縁組を社会的にもっと知っていただかなければいけないわけでありますし、また、現実には、里親になられる方も大変な御苦労があるわけでありますから、そういうような方々のさまざまな活動を支える仕組みもつくらなければいけません。
 今回、平成十四年度から、特に被虐待児等に対する専門里親制度の創設というのが一つございますけれども、それと同時に、児童養護施設等と連携して行う一時的な休息のための援助などを里親に対しましてしていくというような事業をつくってきたわけでありますけれども、厚生労働省の中では、これは本年の五月に、社会保障審議会の児童部会の中に、社会的養護のあり方に関する専門委員会というようなものを設置しまして、里親制度の充実や、それから多くの方々に知っていただく、こういうような目的で、いかに何をするべきか、こういうようなことも検討していくことになっているわけであります。
 先生がおっしゃっているように、里親の方々が、不幸にも保護者等から別れざるを得なかったようなお子さんたちをお引き受けくださって、そしてお育ていただけるようなことを今度は社会が、多くの方々が認知して、重要な役割を演じていただいているんだということを私たちも皆さんにわかっていただくための努力をしてまいりたいというふうに思っております。

○水島委員
 ぜひそうしていただきたいと思いますし、不妊の問題など、よく国会でこのごろ議論に上がるようになってはきたんですけれども、そういうときの選択肢の一つに養子縁組というものもあるんだというようなことをぜひ御答弁の中などでも意識して触れていただくことで、意識というのはつくられてくるのではないかと思っておりますので、よろしくお願い申し上げます。
 よくこのごろ、何やら国会では中絶に関する議論が、きょうの午前中もですか、少々行われていたようでございますけれども、生まれた子供をちゃんと育てられる環境をつくるということが政治の最大の責任でございますので、中絶がいい悪いという話をする前に、こういった生まれてきた子供たちを、仮にそれが親に恵まれなかった場合であっても、どうやって育てられるかということにぜひ全力を注いでいただきたいと思っております。
 また、今回、この児童福祉法の改正の趣旨で「すべての子育て家庭における児童の養育を支援するため、」ということになっておりまして、このすべての家庭という中で、母子家庭ですとか、あるいは障害児を持つ家庭のことについては午前中の審議の中でも触れられておりました。
ここで私がさらに触れたいのは、障害者を親に持つ子供の家庭というのも、このすべての家庭に含まれますでしょうか。

○岩田政府参考人
 そういう家庭のことも念頭に置いた対策であるべきであると考えます。

○水島委員
 障害者を親に持つ家庭においては、特にどういう支援を必要だと認識されて整備していこうとされているでしょうか。
 例えば、私自身も相談を受けたことがございますけれども、聴覚障害者の親の方が健聴の子供をお産みになるというケースはかなりございます。
そういった場合、子育ての上で本当に特殊な配慮が必要になってくるわけですが、こういった方はどうやって支援してもらえるんでしょうか。

○岩田政府参考人
 雇用均等・児童家庭局ではない他の部局で所管をしておりますので、事前の通告もございませんでしたので……(水島委員「しました」と呼ぶ)それは申しわけございませんでした。
答弁の準備ができておりません。
申しわけございません。

○水島委員
 これはきちんと私は通告していますので……(発言する者あり)与党の筆頭理事がやらせろと言っておりますが、余り御準備いただいていない答弁をいただいてもあれですので、また来週質問させていただくと思いますから、そのときに、きちんとその方御本人に私がお返事できるような答弁を御用意いただきたいと、それは違う部局であってもお願いを申し上げます。
 そして、もう時間がなくなってまいりましたけれども、今回、そうやって今まで要保護児童とか保育に欠ける児童への子育て支援に偏り過ぎていたというようなことも文章に書かれておりますけれども、私も、これはかねてからずっと言っていることなんですが、保育に欠ける条項というものこそ、もうこの際なくすべきではないかと思います。
地域における子育て力というものが低下していることは事実ですので、ある意味では、すべての子供が今保育に欠けていると考えてもいいんじゃないかと思っておりますけれども、そんな中で、もうこの縦割り行政から子供たちを解放して、子供の目から見て一日の生活がどうなっているかということを考えなければいけない。
 午前中も幼稚園と保育園の問題というのは少々議論になりましたけれども、私、これは先日、内閣委員会の方に厚生労働政務官の方に来ていただきまして、幼稚園と保育園というこの縦割りから子供を解放して、子供の一日がどうなっているか、ちゃんと安心できる人と落ちついた環境で生活できているかどうかということを考え直さなければいけないのではないかということで質問を申し上げましたところ、余り要領を得ない御答弁をいただきましたので、きょうは大臣からもう一度お答えをいただきたいと思うんですが、くれぐれも、幼稚園は教育で保育園は保育だとか、そういう当たり前の答えをしないでいただきたいんです。
 私は幼稚園に行っておりました。
それで、今自分の子供は保育園に行っておりますけれども、そんなに生活が違っているとはどうしても思えませんし、うちの娘も、保育園でお茶も習うし、コンピューターも習うし、体操教室もあると、非常にいい教育を受けてきております。
 小さな子供にとって、これは教育だ、これは保育だというようなものではないという現実ぐらい、大臣も十分御存じだと思った上での御答弁をいただきたいと思います。

○坂口国務大臣
 そこまで御理解をいただいておりましたら、もう私が答える必要はないというふうに思いますけれども、厚生労働省の方が今までやってまいりましたこの保育というのは、やはり保育に欠ける子ということを中心にしてやってきたわけでありますが、欠けるという意味も、以前と違いまして随分幅広く解釈をして、そして御家庭でいろいろとお仕事をなさっている方も、あるいはまたお仕事を探している方も、すべてを入れて保育に欠けるという中に今入れているわけでございますが、それとは別に、子供を中心にして考えました場合に、保育所というものと幼稚園というものと別々であっていいのかという話があるわけでございまして、それはそれなりの理由があると私も率直に思っているわけでございます。
 それで、できる限り保育所と幼稚園の垣根を取り払おうというので随分努力をしてまいりましたし、千代田区におきましては、ゼロ歳から三歳までは一応形の上では保育園、そして三歳を超えまして小学校に入りますまでは幼稚園、そして小学校という形の上の割り方をしながら、半ば一貫をした教育なり保育をしておみえになるというようなところが出てまいりまして、拝見させていただいても、非常にすばらしい行き方だというふうに思っているわけでございます。
そうした行き方もこれから取り入れていくということを私たちも念頭に置いてやっていかなければならないというふうに思っている次第でございます。

○水島委員
 またぜひ来週も質問させていただきたいと思いますが、最後の大臣の御発言、これはバリアフリーとユニバーサルデザインの考え方に似ていまして、垣根というものを常に想定した上で、それをどうやって行き来を楽にしていこうかという考えではなくて、最初から子供のためにユニバーサルデザインの子供の居場所というものをつくってあげればいいわけですから、何でそうやって自分でつくった垣根にいつまでもとらわれているんだろうかということをいつも私本当に率直に疑問に思っております。
大臣のことですからよくおわかりいただけていると思いますので、ぜひ前向きに、自分がつくってしまった心の垣根をなくしていけるように、ぜひ大臣の御努力をいただけますようにお願いを申し上げまして、本日の質問を終わらせていただきます。
ありがとうございました。





質問バックナンバー|HOME