厚生労働委員会
(2002年11月6日)



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「母子寡婦福祉法等の改正案」「里親へのサポート体制」に関して




○坂井委員長
 次に、水島広子君。

○水島委員
 水島広子でございます。
 坂口大臣におかれましては、続投されますということ、本当にお疲れさまでございます。ぜひ、優しい大臣の個性がしっかりと伝わってくるような温かい厚生労働行政に尽力していただければと思っております。
 そして、その最初の法案がこの母子寡婦福祉法等の改正案ということでございます。まさに象徴的な領域だと思いますので、ぜひ大臣の総力を尽くして、母子家庭の方たちが安心して生活していけるような体制づくりに努めていただけますように、それがわかるような審議にしていただけますように、心よりお願い申し上げます。
 まず、法案の審議に先立ちまして、同じく子供が安心して育つ権利ということで、ちょっと別件ではございますけれども、一つ里親のことについてお伺いをしたいと思います。
 去る十一月三日に、私の地元でございます宇都宮で、里親の女性が三歳のお子さんを殴って殺すという痛ましい事件が起こりました。事件についての詳細はもちろんまだわからないわけですけれども、かねてから里親に対するサポート体制の不備を感じていた私から見ますと、ついにこんな事件が起こったというような印象を持っております。
 里親家庭に来る子供はほとんどが精神的な傷を負っております。特に最近は親から虐待されていた子がふえているわけです。初めて安心できる場所を与えられて、赤ちゃん返りをしたり、さまざまな問題行動を起こしたりいたします。かなり独特な行動パターンがそこにあるわけです。専門家による心のケアが必要なことも少なくはありません。それなのに、里親をサポートする体制は余りにも乏しいと思っております。
 まず、現状でのサポート体制はどうなっているのかを教えていただければと思います。

○岩田政府参考人
 先生御指摘のように、里親をサポートする体制は必ずしも十分でなかったというふうに思っております。
 今年度から取り組んでおりますのは、一つは研修でございます。おっしゃったような心に傷を負った子供たちを引き受けるということですから、専門的な研修も含めて、里親全員が一年に一回は研修を受けられるように、そして二つ目には、里親自身もなれない子育てに疲れるということもありますので、一時期休息できるように、レスパイトケアと言っておりますが、一時期施設に預けるとか、ほかの里親に少し肩がわりしていただくとか、そういったレスパイトケアの制度も導入をしつつございます。
 もちろんですけれども、児童相談所や児童養護施設や地域の主任児童委員などとよくネットワークをつくって、こういう方たちに常に相談に乗っていただけるような相談体制の整備も重要な課題であるというふうに思っております。

○水島委員
 ようやくその必要性を認識して、これから取り組んでいただけるということでございますけれども、ことしから始められておりますその研修にしましても、これは里親自身が、もちろん専門知識を持つことも重要ですけれども、専門知識があれば一人ですべてやっていけるということはないわけで、常にサポートしてもらえる体制というものが必要だと思っております。
 また、これは一般の子育て支援の枠の中でくくられがちですけれども、やはり虐待を受けた子供たちというのはかなり独特な特徴がありますので、そういったことに対する特別な専門性のある支援体制が必要だと思っております。
 また、精神科医を受診しろと言われても、精神科医を受診してみても、それは専門の精神科医でなければわからない。普通の精神科医は、虐待をされた子供たちに対してどうしたらいいかということをみんなが知っているわけではありませんので、そういうところに相談をして、精神科医に失望をして、もうすべて一人で背負い込んでいくしかないというふうに思い詰めていらっしゃる里親の方にも私も先日お会いいたしました。これは特に地方に行けば行くほど、どこを訪ねたらいいかわからないというようなことは、その傾向は大きくなると思います。私は、きちんとした専門的な、あそこに行けば相談が受けられるというセンターをつくっていくことが必要だと思っておりますので、そのような機能を含めてぜひ前向きに御検討いただければと思っております。
 欧米先進国では、ノーマライゼーションの考え方に基づいて、子供の養育を施設から里親や少人数のグループホームへと積極的に転換をしていると聞いております。子供の虐待の問題を考える上でも、虐待を防止するというようなところにはようやく人々の目が向くようになってはきましたけれども、虐待を受けた子供たちがその後どうなっているのかというところについては、私はまだまだ世論の目は向いていないと思っております。
 その問題を考える上でも、やはり里親が安心して子供を育てられる体制をつくることが重要だと思っております。この点につきまして、大臣のお考えと心意気をお聞かせいただければと思います。

○坂口国務大臣
 確かに痛ましい事故でありまして、私も先日、ニュースを拝見いたしまして、本当に心の痛む思いがいたしました。
 それで、今局長からも答弁ありましたが、でき得ることは何かということをそのときも考えたわけでございますが、一人の里親だけに任せておくということは大変難しいことですから、それは児童相談所なりあるいは児童委員なり、そうした皆さん方ができるだけ連係プレーをしながらいかなければならないのではないかというふうにそのときも思ったわけでございますけれども、今先生からお話のございますとおり、最近の里親に出るお子さんの方が、今までの里親に出るお子さんよりも中が少し質的に違ってきている面もある。
 いろいろの虐待を受けた、そういう経験のあるお子さんが里親に出るときに、やはりそれなりの心構えといいますか、あるいは教育姿勢といいますか、あるいはその能力といいますか、そうしたものを持ったところに里子として出された場合はいいですけれども、そういうことを全然考えない、ただ子供を預かればいいという形で預かるというようなことになりますとそこに問題が生ずることになるわけでありますので、やはり里親制度の中身につきましても、あるいはまたその能力につきましてもこれから問われてくる時代になりますので、十分その点を配慮しながらやっていきたい。
 ただ、里親が非常に日本は少ないものですから、やはり里親制度そのものもこれから拡大をしていかなければならない。質、量ともにこれは前進をさせなければならない時代に来ている、そんなふうに今も思わせていただいた次第でございます。

○水島委員
 ここに、私の地元の下野新聞という新聞の記事がございますけれども、この中で、「かわいがるはずの里親が子どもを虐待するなんて」と困惑する市民の声が載っております。私も本当にそう思います。本来かわいがろうと思って引き取った里子を虐待しなければならないほど追い詰められた人。まあこの事件についてはまだ詳しいことはわかりませんけれども、やはりこれは、里親にしましても、また一般の親にいたしましても、子供をかわいがって育てようという気持ちは比較的多くの人が持っているわけですけれども、サポート体制が余りにも不十分なためにどんどん精神的に追い詰められていくというような現状を改善していくということが子育て全般の政策の根底に求められていると思っておりますので、ぜひ、これから進めてまいります法案審議に関しましても、母子家庭のお母さんを追い詰めないような、そういった姿勢での御答弁をいただきたいと思っております。
 それでは、法案の方に入らせていただきます。
 まず、今回の一連の法改正の目的をここで改めて大臣にお伺いしたいと思います。

○坂口国務大臣
 先ほど三井議員にもお答えをさせていただきましたが、全体といたしまして非常に厳しい時代を迎えております。人口減少時代でございまして、その中で少子高齢化が進んでまいります。そうした中で、高齢者なり、障害者なり、あるいは母子家庭の皆さんなり、慢性の疾病を持った人なり等々、そうした人たちをどのようにこれから守っていくか、もう一度これは問い直されているときが来ているというふうに思っております。
 今までは財政的な支援を中心にして考えてまいりましたけれども、それも私は大事ではあるというふうに思いますが、しかし、それだけではなかなか、弱い立場の皆さん方がこの世の中を生きていくことができない。もう少しトータルな対策というものが必要であり、そしてその皆さん方にはやはり自立をしていただくための支援を全体としてどうつくり上げていくかということが一番大事ではないかというふうに思っている次第でございます。そうした中で生まれました法律でございまして、ぜひともそういう全体の、トータルの中でどうやっていくかということが非常に大事だというふうに思っております。
 先ほどもこの五年間という議論がございましたが、この五年間の間にどうそれを確立できるかということが最大の課題であると思っている次第でございます。

○水島委員
 基本的にはこの法改正の目的はトータルな自立支援というふうに今伺ったわけでございますけれども、それでは、まず来年度の予算、今概算要求をされているところですが、来年度の予算ではこの児童扶養手当の削減分はそっくりそのまま自立支援施策に振りかえられているのでしょうか。

○岩田政府参考人
 十五年度の母子家庭関連の予算の概算要求額ですが、トータルではほぼ前年度と同額になっております。この中で就業支援策などにつきましては、前年と比べまして大幅に拡充をしたいということで、対前年比で約二倍強の百三十四億円を自立支援のための予算として要求しているところでございます。

○水島委員
 それでは、厚生労働省は、来年度の母子家庭の増加をどのくらいと見込まれているのでしょうか。そのうち児童扶養手当受給世帯の増加はどのくらいであると見込まれているのでしょうか。

○岩田政府参考人
 平成十年に全国母子世帯調査をやりましたが、これは五年ごとに実施をしている調査でございます、九十五万世帯でありました。五年前と比較いたしますと、約二割の増加でございました。
 また、離婚の状況ですけれども、母子家庭の増加の大きな原因がこの離婚の増加にあるわけですけれども、平成十三年の離婚件数は二十九万件となっております。この中で未婚の子供さんがいる離婚が全体の六割、そして、お子さんがいる離婚で母親の方が子供の親権者になるケースが八割ということでありますので、六割掛ける八割ということで、全体の離婚の中で約半数の十五万件が母子家庭となっております。
 また、児童扶養手当の支給状況を見ておりますと、こういった離婚の増加などを反映いたしまして、平成十一年度末には六十六万人、十二年度末には七十一万人、十三年度末には七十六万人ということで、近年約五万人程度増加をいたしております。
 そういう傾向を踏まえて、来年度予算は、人数についてはこういった増加に対応できるように見込んでいるところでございます。

○水島委員
 増加に対応できるように見込んでいるということなんですが、今のお話を伺いますと、来年も児童扶養手当が必要な母子家庭のお母さんが五万人ぐらいはふえるんじゃないか、このところそういう傾向だということなんですけれども、ところが、母子家庭福祉対策関係予算は、先ほども御答弁いただいたように、今年度も来年度もほぼ全体としては同額ということを要求されているわけです。
 ということは、対象者の増加を考えますと、その分予算が削減されたということになると思いますけれども、なぜ最も弱い立場で本当に苦労されている母子家庭の福祉対策関係予算からまずこうやって削減していかれるんでしょうか。これは大臣に御答弁いただきたいと思います。

○坂口国務大臣
 これは、先ほど局長から答弁がありましたとおり、額はそういうことでありまして、ことしと来年度、変わっていない。それは、扶養手当等の問題等もあって、そしてその中の値が少し変わったんだというふうに思いますが、これからはだんだんとふえていくだろうというふうに思います。ふやさざるを得ない状況にある。
 離婚がふえるということがいいことか悪いことか、これは考え方によって違うというふうに思いますが、そうした皆さん方の中で、今も話ありましたように、半数はやはり母子家庭として何らかの御支援を申し上げなければいけない立場になられるわけでありますので、それは財政的な問題も含めてでございますけれども、財政的な問題だけではなくて、社会システムそのものをどう変えていくかということが今最も問われているというふうに私は認識している次第でございます。

○水島委員
 何か誠実な坂口大臣としては、今ちゃんと御答弁いただけなかったような気がするんですけれども、これからはふやすということを御答弁くださって、ことしはふやせなかったということなのかなと思いますけれども、ちょっともう一度、来年度の要求額について、これは大臣としては削減されたつもりなのかそうではないのかというところをちょっとお答えいただけますでしょうか。

○坂口国務大臣
 ことしはたまたま制度の改正等を行いましたから同額になりましたけれども、これからまた母子家庭がふえていくということを前提にして考えれば、これは当然、総額におきましてはふえざるを得ない状況にあることは事実でございますから、それは自然増にならざるを得ないということだというふうに思います。

○水島委員
 ということは、ことしはたまたまシステムが変わったので前年度と同額ということにはなるけれども、その内容としては、来年また五万人児童扶養手当が必要な方がふえることを見込んで、十分な予算であるというふうに考えられているということでよろしいんでしょうか。

○坂口国務大臣
 来年のことは来年考えなきゃなりませんけれども、しかし、来年はそういうことでまたふえるということになれば、それに対応をしなきゃならないということを言っているわけでありまして、ことしの予算は来年使うわけでありますから、いわゆる再来年の話を言っているわけでありまして、来年はことしの予算でいく、そのために組んでいる予算でありますから、ことしの予算で来年はいかざるを得ない、そういうことです。

○水島委員
 以前にもこのことで大臣に伺っていて、今のように何だか大臣にしては歯切れの悪い答弁が続いたことがございまして、大臣にとって非常に答えにくいところなのかなとそのときも思ったんですけれども、これをやっていても仕方がありませんので先に進ませていただきますが、ということは、金額としては児童扶養手当を支給する場合と同じであっても、自立支援にその金額を使えばもっと効果が上がるというふうに考えての政策転換というふうに、今のを好意的に解釈するとそういうふうに受け取れるわけでございますが、それが実際にどれほど有効な自立支援策になっているのかということは、ちょっときょうの今後の質疑の中でお伺いをしていきたいと思っております。
 その前に、ちょっと、ことしの八月の政令改正についてここで総括をしていただきたいと思っているんですけれども、この八月に政令改正がされまして、児童扶養手当が削減されました。そもそも、今回こうやって母子寡婦福祉法等の改正案が国会できちんと審議されることがわかっていたのに、それに先立って、国会に気がつかれないような形でなぜ八月に政令改正を行ったんでしょうか。大臣にお答えいただきたいと思います。

○坂口国務大臣
 これは、相前後したことは間違いのない事実でございまして、率直に認めなければいけないというふうに思いますが、ことしの三月に母子家庭等自立支援対策大綱を取りまとめておりまして、予定されておったと申しますか、スケジュールに乗っていたわけでございます。前国会でこの法案を提出をさせていただいたところでございますが、諸般の事情によりまして御審議をいただく期間がなかった、そして、この国会にこの法案はずれ込んだということでございまして、そうした意味では少し前後いたしましたけれども、大勢に影響はないと考えております。

○水島委員
 おかしい説明だなと思いましたけれども、これが、一連の政策の中での政令改正と今回の法案審議がちょっと前後してしまったという御説明でよろしいんでしょうか。
 そうしますと、この政令を改正するに当たって、厚生労働省は、児童扶養手当の受給額について、五一%の方は変化なし、四六%が減額、三%は増額というふうに説明されていたと記憶しておりますけれども、つまり、多くの人にとっては減額ということであるわけです。この政令改正だけが先行しまして、そして今回、今こうやって法案が国会で審議されているわけですが、これがちゃんと法律として成立することによって自立支援策が充実することとセットでなければこの児童扶養手当の減額ということは語れないはずだと思うんですけれども、法案が国会で審議もされないうちに、それとセットである政令改正だけ先行させるというのは、私はちょっと国会軽視ではないかなと思うんですけれども、いかがなんでしょうか。

○岩田政府参考人
 母子家庭対策のあり方については昨年度からいろいろ議論してまいりまして、そして、子育て支援、就労支援なども含めた総合的な支援のあり方について、厚生労働省としては本年三月に、母子家庭等自立支援対策大綱という形で、これからの対策のあり方といいましょうか、取り組むべき課題をまとめたところでございます。
 この大綱に沿いまして、十四年度の予算で対応できるもの、あるいは十五年度の概算要求をすべきもの、法律改正が必要なもの、政令改正で対応できるもの、いろいろレベルがございましたけれども、二年にわたりますので時間差があるということは御指摘のとおりですけれども、この大綱に沿って総合的な自立支援に向けての政策のシフトといいましょうか、財源のシフトをしつつ、対策を前進させていきたい、そういうことで、そのうちの一部はことしの八月から政令レベルで対応させていただいたわけでございます。
 もちろん、この政令の改正によります児童扶養手当のあり方は、予算に直結いたしておりますので、平成十四年度の予算審議の中で国会でも幾つか御意見をちょうだいしたところでございます。ですから、国会軽視ということはございませんで、全体の中で対応しているということ、そして予算審議という形ではございましたけれども、国会でもしっかりそれを見ていただいたという経緯がございました。

○水島委員
 余り納得はできないんですけれども、いずれにしても、自立支援策が充実したから手当を減らすという順番がだれが考えても妥当な順番であるわけですけれども、こうやって政令改正で最初に児童扶養手当だけを削減しておいて、後から法案の審議をするという順番を一つ見ても、どうも今回私たちがこの法改正に関して感じている疑念というものがますます強まるわけでございます。この点はきちんと指摘をしておきたいと思っておりますけれども。
 このときに児童扶養手当の全額支給の年収上限が下げられまして、百三十万円とされたわけですけれども、この百三十万円という金額はどこから出てきたのか、その根拠をお聞きしたいと思います。

○岩田政府参考人
 二つございまして、一つは、大変限られた財源の中で、ふえ続ける母子家庭に対して、この児童扶養手当制度を制度として安定的に将来に向けて維持できるような仕組みをどういうふうに再構築するかという観点でございました。
 もう一つは、いかに就労促進型の児童扶養手当にしていくかという観点でございまして、従来はこの児童扶養手当の金額が二種類ということでございましたので、所得がある一定水準を超えますと、就労による収入と児童扶養手当と合わせて合算した全体の収入が逆に減少するという逆転現象も見られたところでございます。
 そこで、就労による収入が増加するに従って児童扶養手当の金額をきめ細かく逓減させていって、総収入額がなだらかに増加するように、そういう仕組みに今回改めさせていただいたわけでございます。
 それでは、なぜそのスタート時点が百三十万円かということについてでございますけれども、これは母一人子一人で、この母子家庭の母が給与所得を得ているケースですけれども、百三十万を超えると、所得がふえるに従って手当の金額が逓減するようになっております。これは、母子家庭の平均的な所得水準を考慮いたしまして、それ以下の方には全額支給をいたしまして、それを超える収入のある方については、収入がふえるに従って逓減させていくというふうにしたわけでございます。
 ちなみに、平成十三年度に、この母子家庭対策の見直しのために日本労働研究機構で母子家庭の現状の調査をしてもらいましたけれども、パート、アルバイトで収入を得ている場合の年間の平均の収入が約百三十万程度、そしてこれに手当額、児童扶養手当ですが、満額の場合には五十一万円に年間なりますけれども、それを加えた額、これが百八十万円程度になりますけれども、お子さん一人のケースですけれども、離別した母子家庭の年収の中央値がそのくらいにあるという状況を踏まえまして、この百三十万円という水準を設定したわけでございます。

○水島委員
 済みません、ちょっと確認させていただきたいんですが、まず、アルバイトの平均年収が百三十万円という、これは、母子家庭ということではなくてアルバイト全般なんでしょうか。また、母子家庭に関しては、この百三十万円というのは中央値というふうに今伺いましたが、その理解で正しいんでしょうか。

○岩田政府参考人
 先ほど申し上げました十三年度の日本労働研究機構の調査は母子家庭だけを対象とした調査でございますので、この調査によりまして、パート、アルバイトで勤務なさっておられる方の収入の平均値、年収ですが、百三十三万円というふうになっております。
 それと、別の調査を用いて御説明したので御理解がいただきにくかったかもしれませんけれども、全国母子家庭調査という調査がございますが、それによりますと、離別の母子家庭でお子さん一人のケースですけれども、年収が百八十万になっております。これが、さっき申し上げましたパート、アルバイトの年間の百三十万程度の収入と、児童扶養手当、これは年間の金額に直しますと五十一万円になりますけれども、それを足した金額にもまた見合っている。
 そういう二通りの御説明でわかりにくかったかもしれませんが、そういうことで百三十万円という水準にいたしております。

○水島委員
 済みません、何かくどいようで申しわけないんですが、後者の方の離別母子家庭の百八十万というのは、今は、今度は平均とおっしゃったんですけれども、これは平均値ですか、中央値ですか。

○岩田政府参考人
 済みません、正確に申し上げますと中央値です。

○水島委員
 たしか、この平均値はもうちょっと高かったように思うんですけれども、今お持ちでしたら教えていただけますか。

○岩田政府参考人
 母子家庭全体の年収の平均値は二百二十九万でございますが、先ほど申し上げました数字は、母一人子一人のケースについて、そしてその母子家庭になった事由が離婚であったというケース、そういう代表的なケースについて見たものでございまして、その場合に中央値が百八十万になっております。

○水島委員
 まだちょっと答弁にずれがあるんですけれども、今ここで申し上げたいのは、平均値と中央値の使い方が随分厚生労働省はばらばらだなと思っているんです。
 例えばことしの二月二十七日の厚生労働委員会で、私は、この児童扶養手当の削減がなぜ五年後なのかという、この五の根拠を大臣に伺いましたら、大臣は、これは母子家庭が児童扶養手当を離脱するまでの期間の平均値だというふうにおっしゃったわけです。今は、今度、パート、アルバイトの収入の方は平均百三十三万円と平均できたわけですが、今度これが離別の母子家庭になると中央値でくるというのは、何かそれは理由があるんでしょうか。

○岩田政府参考人
 今議論しておりますこの問題については、特段の理由はございませんで、利用している統計の制約から平均値でしかとれないというようなこともありますので、日本労働研究機構の調査結果は平均値でしかとりませんでしたけれども、本来であれば中央値を利用したいというところではございます。

○水島委員
 私が使っております安い統計ソフトでも、中央値も平均値も両方とも計算できますので、それがどちらかしかできないなんていうデータがあるようだったら、それをこちらでかわりに計算してもいいくらいだと思いますけれども。
 いずれにしても、こういうことを中央値とか平均値とかを基準に決めていらっしゃるということは、つまり、これから母子家庭の全体の貧困度が高まって所得が全体に落ちてくると、またこの児童扶養手当の全額支給の年収の上限も下がってくるということになるんですけれども、そういう理解でいいんでしょうか。

○岩田政府参考人
 将来の収入の動向あるいは一方では母子家庭のお母さんたちの自立の状況、そのあたりを考えて、将来的にはどういう制度設計にするかということでございますが、自動的に、今申し上げましたような数値に連動して、この百三十万という水準を上げたり下げたりということを機械的にやろうということを考えているわけではございませんで、また状況が変わりましたら総合的に判断をしたいというふうに思います。

○水島委員
 やはり、かなり苦しい答弁なんじゃないかなと思います。本当に平均値や中央値で決めることが正しいと思われているんだったら、それは、私は、そのときの時代の流れに応じて自動的に変えていくべきだと思います。
 ただ、このことについてはやはり中央値や平均値で考えるべきではないと思うので、そういうふうに自動的に動かすのはおかしいと思うんですけれども、今回そういうことを採用しておきながら、自動的に動かすつもりはない、その状況に応じて考えるというのは、ちょっと余りにも一貫性がないというか、こちらから見て政策の全貌がわからないんですけれども。

○岩田政府参考人
 母子家庭は生計を維持しないといけないわけですけれども、その生計を維持するに当たって、基本的には御自分の就労による収入があるというふうに思いますし、また、別れた夫から養育費を確実に確保することもあるというふうに思います。
 そういうことで、足りない場合について、いかに国が一般財源の中からそれを支援していくか、そういう総合的な視野の中で支援対策というのは考えるべきであるというふうに思いますので、今回の、ことしの八月の児童扶養手当制度の所得制限の基準のつくり方については今申し上げましたような御説明をいたしましたけれども、それ以外の要素も当然背景としてはあるということはぜひ御理解いただきたいと思います。

○水島委員
 余り納得はできないんですが、とにかく、これから母子家庭全体の所得が下がったらこの上限も下がるわけではないということだけは確認させていただきたいと思いますし、やはり年収の上限、百三十万円というのはかなり厳しい金額ではございますので、これから伺ってまいります就労支援、本当に実のあるものにしていただかなければいけないと思います。
 もう一つ、この八月の政令改正に当たって、現況届が母子家庭のプライバシーを侵害するおそれについて、私たちは当事者の方たちとともに抗議行動をしました。その結果、米や野菜までもらったことを書かせる家計の収支欄が撤回される通知が出されたわけです。これが撤回されたというのは正しい判断であったと思いますけれども、ところが、この撤回決定が七月末であったため、現況届の八月一日発送に向けて印刷は既に各自治体で終了しておりまして、自治体では混乱が生じました。養育費欄のみで収支欄を削除した用紙に刷り直した自治体、収支欄にバツをつけて発送した自治体、国の撤回に気づかずそのまま送ってしまった自治体と、対応に差が出たわけでございます。
 自治体もこのように国に振り回されたわけですけれども、そんな中で、さらに振り回されて不安を喚起された母子家庭のお母さんたちのことはどうお考えになっているのか。この混乱全体を大臣はどういうふうに総括されているかをここでお聞かせいただきたいと思います。

○坂口国務大臣
 先生から御質問をいただくまで、私、具体的なことを知りませんで、初めて具体的に聞いたわけでございますが、大変混乱をさせたことは申しわけなかったというふうに率直にそう思っております。
 具体的なことを、国の財源を使います以上、ある程度は御家庭のことにつきましても知らなければいけない、しかしそこを余り聞き過ぎてはそこに弊害が出る、そこは大変難しいところだというふうに思いますけれども、きょう私も聞きまして、最初の案は非常に聞き過ぎているということだろうというふうに思いまして、そこは率直に私たちも認めながら、再度、大阪府等で御提示をいただいたいろいろの案もございまして、そうしたことを参考にさせていただいたということでございます。

○水島委員
 反省をされているという御答弁でございましたので、ぜひこれを今後の施策にきちんと結びつけていただきたいと思っております。
 それでは、母子寡婦福祉法の改正案についてまずお伺いをいたしますけれども、第十一条で、厚生労働大臣は、母子家庭及び寡婦の生活の安定と向上のための措置に関する基本方針を定めるとございますが、この基本方針には具体的にどういうことが盛り込まれるのでしょうか。

○岩田政府参考人
 厚生労働大臣が定めることとなる基本方針には、まず母子家庭等の家庭生活や職業生活の動向に関する事項、現状をしっかり正確に把握するということがまず一点目です。そして二つ目には、母子家庭の生活の安定と向上のために講じようとする施策の基本となるべき事項ということで、施策の基本的な方向性ですとか目標を盛り込むことになると思います。また、国と地方公共団体との役割分担、連携などについて、あるいは福祉と雇用の連携について、そういった視点も盛り込みたいというふうに考えております。
 扱う領域は、まさにきょう議論しております総合的な母子家庭対策でございまして、子育て支援、住宅支援、就労支援、養育費の確保対策、児童扶養手当、母子寡婦福祉貸付金などの経済的な支援、そしてその総合的な相談支援、こういったようなことを総合的に盛り込みたいというふうに考えております。

○水島委員
 第十二条によりますと、基本方針に基づいて都道府県等の母子家庭及び寡婦自立促進計画の策定をする際には、当事者の意見を反映させるということになっているわけですけれども、これは必ず担保されると考えてよいのでしょうかということと、あとは、なぜ、都道府県は当事者の意見を聞かなければならないのに、国は基本方針を定めるときに当事者の意見を聞かなくてよいという仕組みになっているのでしょうか。

○岩田政府参考人
 改正法案では、都道府県、市などについて、自立促進計画を策定するときには、母子福祉団体その他の関係者の意見を反映させるということが規定されております。母子福祉団体やNPOを初めといたしまして、母子家庭対策に関係しておられる方、広く意見を聞いていただくように地方自治体に対して徹底をしてまいりたいというふうに考えております。
 国が基本方針を策定するときにも、当然、母子福祉団体、その他関係者の意見を広く聞いた上で策定をしたいというふうに考えております。

○水島委員
 何だかちょっとよく、国は広くその意見を聞くというふうに答弁していただいたと聞こえたんですけれども、よろしかったんでしょうか。なぜそれが条文上には、計画の方には書かれていて基本方針の方には書かれていないのかというのはどうなっているんでしょうか。

○岩田政府参考人
 精神においては、やはり国が基本方針を策定するときも、母子福祉団体、関係のNPO、広く意見を聞くべきだというふうに思いますし、そういうふうにすることをここでお誓いしたいというふうに思いますが、法律でなぜ国はそのことについて書いていないのかということでございますけれども、国が定める基本方針は、政策のあり方についてのまさに基本的な方向を定めるということ、そして一方、自治体が定める自立促進計画は、具体的にここの地域ではどういうサービスが要るといったような関係者の具体的なニーズをくみ上げてそれを計画に盛り込むということ、そういう、方針と計画は連動するものではありますけれども若干その性格が違うということで、法律上そういうふうに区分けをしているというふうに考えております。

○水島委員
 余り関係がないような気はするんですけれども。
 何でこういうことを伺っているのかといいますと、やはり、今回のこの法改正、また全体の政策転換ということは、私は、当事者のコンセンサスというのは全く得られていないなということを当事者の方たちとの話し合いの中で感じておりまして、なぜこんな大きなことを決めるときにきちんと当事者の方たちの意見を聞いていただけないんだろうかというふうに感じております。それをこの国会審議の場で、もちろんあしたも参考人の質疑が行われるということでございますけれども、本当に今ごろになって聞いてどこが変えられるんだろうかというのをちょっと疑問に思っております。
 非常に、本当に、ここのところのこの政府の政策について、当事者ともども、私も本当に不満に思っておりますので、ぜひこの気持ちを受けとめていただいて、きちんとした施策にしていっていただければと思っております。

○岩田政府参考人
 恐縮です、一言だけつけ加えたいと思うんですが、今回の改正案を検討するに当たりましては、私どもとしても精いっぱい関係者の意見は聞いてまいりました。
 全国レベルでもお話を伺いましたし、地方レベル、ブロックレベルなどには職員を派遣いたしまして、そこで関係団体としっかり意見交換をさせていただいたつもりでございます。不十分なことがあったとすればそれは反省しないといけないと思いますけれども、我々としては、時間と気持ちを十分割いて関係者の御意見を聞いて改正案をまとめたつもりでございます。

○水島委員
 関係者の大部分が児童扶養手当の五年後の一部打ち切りというものを納得しているとは、またそれを望んだとは到底思えないわけですので、恐らく聞き方にむらがあって、自立支援のところはよく聞いたけれども、児童扶養手当の方はもう最初から決まっていた、そのような現状だったのではないかなと今お話を伺って思っております。
 また、このような都道府県の自立促進計画に関しては当事者の意見を反映させていただけるということなんですけれども、こういった計画をつくるときには、メニューを示すだけではなく、計画の達成度を評価する仕組みも一緒に考えなければいけないと思いますけれども、この点はどうでしょうか。

○岩田政府参考人
 国は国として、厚生労働省も行政評価の仕組みを持っておりますし、地方自治体もそれぞれ行政評価の仕組みを持っておられて、それにのっとって政策の評価を進めていくというふうに思っております。
 都道府県など地方公共団体がつくっていただく自立促進計画については、厚生労働省としても、そこで何が策定され、どういう効果を上げているかということについては大変関心を持つべきことであるというふうに思っておりますので、地方自治体から、その計画の内容に盛り込んだもの、そしてその進捗状況など十分お話を伺う機会をつくって、そういう形で進捗状況の把握をしてまいりたいというふうに考えます。

○水島委員
 次に、母子家庭の雇用の促進についてお伺いをしたいと思います。
 第二十九条には公共的施設における雇い入れの促進ということが書かれているわけですけれども、これは具体的にはどのようなことでしょうか。

○岩田政府参考人
 現行の母子寡婦福祉法では、国、地方公共団体が母子家庭の母などの雇用の促進を図るために必要な措置を講ずるように努めるということを規定しておりまして、その例として、職業訓練の実施、そして就職のあっせんが挙げられております。今回の改正案におきましては、それに追加をいたしまして、事業主その他国民一般の理解を高めるということと公共的施設における雇い入れの促進ということを追加したわけでございます。
 事業主その他国民一般の理解を高めるというのは、母子家庭については、例えばお子さんがいらっしゃるので休みがちであるとかというような誤解、偏見が一部にありますので、事業主などに対しまして、母子家庭の雇用促進に向けて広報、啓発活動をやっていきたいということでございます。
 もう一方の公共的施設における雇い入れの促進とは、国や地方自治体や特殊法人などが公共的施設を設置している場合について、そういう施設で母子家庭の母などの雇用促進をすること、またそういうことができるように関係方面に国としては働きかけてまいりたいというふうに考えます。

○水島委員
 今の御答弁の、母子家庭のお母さんは仕事を休むというような、偏見とおっしゃったんですけれども、これは偏見というより現実的な側面もございまして、ここで必要とされているのは、偏見解消ではなくて、病児保育などの充実ではないかと思っておりますので、ちょっと今の御答弁は少し納得できないところがございました。
 また、こちらが本当に伺いました公共的施設における雇い入れの促進ということなんですけれども、具体的にどういう手段で促進をしていくというふうに考えられているんでしょうか。

○岩田政府参考人
 それは自治体によってまちまちかと思いますけれども、先ほど議論になりました、自治体が作成いたします自立促進計画の中に例えば盛り込んでいただくというようなことで取り組んでいただきたいというふうに思っております。
 これまでも事例はいろいろございまして、例えば福祉関係施設ですとか、そういうところで採用されている、そのことを促進するような対策をとっておられる自治体もございますので、好事例を収集いたしましてほかの自治体にそういうことを周知するということもこの問題の促進に力になるんではないかというふうに思います。基本的には、それぞれの自治体が計画を立てて、計画の中で盛り込んでいただければというふうに考えております。

○水島委員
 そうしますと、自治体任せということになるんだと思いますけれども、以前から、国や地方公共団体など公共機関等において母子家庭の母等の一定の雇用率の義務づけですとか、また母子家庭の母に対する事業の優先発注を義務づけるというような議員立法案があるということでございますけれども、この議員立法について大臣はどのようにお考えになっていらっしゃるでしょうか。

○坂口国務大臣
 十分に存じ上げておりませんが、私もかつて、母子寡婦雇用促進法というのを議員立法で出したことがございまして、かなり前になりますけれども、そうしたことに私も重大な関心を持っております一人でございます。
 現在の問題につきましても、先日も、これは職業安定局でございますけれども、とにかくこの法案が出る以上、まずやはり厚生労働省が一体母子家庭のお母さん方をどういうふうにして雇えるのか、まず自分たちがどうするのかということを一遍明確にして、そして手本を示すべきだということを申しまして、今煮詰めをしてもらっているところでございます。やはり、省庁、国の方はどういうふうにするのかというようなことを示しながら、そして地方に対してもお願いをするということをしなければ実効性が薄いというふうに思っておりまして、まずどういうふうにするかということをやはり示さなければいけないというふうに思っている次第でございます。

○水島委員
 当然厚生労働省として御検討をいただくのも大変結構でございますけれども、厚生労働省という枠にとどまらずに、やはり公的機関等においての全面的な取り組みが必要ではないかと思いますけれども、今の、そのような母子家庭の母に対する事業の優先発注の義務づけですとか、そういったことを規定した法案を提出したとしたら、大臣は御賛成いただけますでしょうか。

○坂口国務大臣
 それは法律で決めるべきことなのか、それともこれは行政上行うべきことなのか、その辺の判断はあるというふうに思いますけれども、内容そのものにつきましては、ぜひそういうふうにありたいというふうに思っておりますし、しなければならないと思っている次第でございます。

○水島委員
 ぜひそのように前向きに取り組んでいただけますようにお願いいたします。
 また、この法律の中で規定されております母子福祉団体なんですけれども、この母子福祉団体にはNPO法人は含まれているでしょうか。

○鴨下副大臣
 母子寡婦法の第五条に規定されております母子福祉団体の定義の中にNPO団体が含まれるかどうか、こういうようなお話でございますが、母子寡婦福祉法における母子福祉団体とは、社会福祉法人及び公益法人と規定されておりまして、各都道府県、指定都市に一つの団体、こういうようなことでございます。
 したがって、NPO法人は母子寡婦福祉法における母子福祉団体とはされておりませんが、NPO団体が近年非常に増加しておりますし、本事業に対しても非常に御理解のあるNPO団体も多いわけでございますから、そういう中で、母子家庭対策において一定の役割を果たしていただくというようなことを期待しているところであります。
 今回の改正案における都道府県等が実施する子育て支援事業の実施に当たっても、NPO団体の活用について検討してまいりたい、このように考えております。

○水島委員
 この法律が制定されてから三十九年でございます。その後、NPO法も成立しているわけですから、やはり母子福祉団体についても法改正する必要があるのではないかと私は思っております。それも、特に各都道府県に一つだけを指定するというような形が健全に当事者の声、また当事者の受け皿となっていく仕組みとはとても思えませんので、本当に自由に、活発に、当事者の立場で活動しているNPO法人が母子福祉団体に含まれるように法改正する必要があると思いますけれども、いかがでしょうか。

○鴨下副大臣
 それぞれ関係の団体もございますので、よく意見を伺わせていただきたい、このように思っております。

○水島委員
 関係というのは何を意味するのかちょっとよくわかりませんでしたけれども、これは本当に党利党略ではなく、きちんとした、もう健全な市民活動ができるように、この法改正はしっかり前向きに御検討いただきたいと思います。
 今関係の方たちの意見を伺って検討したいという御答弁をいただきましたので、これは近い将来、法改正していただけるのではないかなと期待しておりますので、できましたら、ぜひ今回まとめてお願いできればと思います。
 次に、時間が限られてまいりましたけれども、もう一つ、母子寡婦福祉法に関連いたしまして、今回、母子相談員が母子自立支援員に改まるようでございます。この母子相談員の利用率は約一割というデータがあるわけですけれども、余りにも利用されていないなと思っておりますが、今回、母子自立支援員に改まることを機に、増員を考えられているんでしょうか。また、増員される場合、こういうところにこそ当事者の雇い入れを優先的にすべきだと思いますけれども、そのように考えていらっしゃるでしょうか。

○岩田政府参考人
 平成十三年度末の母子相談員の総数は千二百二人でございまして、その内訳は、常勤が三百六十七人、非常勤職員が八百三十五人ということでございます。
 母子相談員は、現在は、都道府県、指定都市、中核市に配置されておりますけれども、今回の改正案では、名称を母子自立支援員として改正いたしまして、一つには、その役割を、日常生活の相談に乗るということばかりではなくて、経済的な自立そのものを支援するということもやっていただくということ、そして配置の場所も、さっき申し上げましたような中核市までにとどまっていたのを、福祉事務所を設置している市等にも拡大をするということでございます。
 この母子相談員については、その人件費が交付税で措置されておりますので、地方交付税で増員について対応できるよう総務省の方にお願いしているところでございまして、今後、総務省と十分協議をしてまいりたいというふうに考えているところでございます。
 この母子相談員に母子家庭の母自身を優先雇用するということについてどうかということでございますけれども、母子家庭のお母様の中で、こういう相談にしっかり乗れる、自立支援の支援ができるという方がおられましたら、もちろんそういう方はぜひ母子相談員として活躍していただきたいというふうに考えております。

○水島委員
 当事者のことは当事者が一番よくわかるわけでございますので、おられましたらというよりも、いらっしゃいますので、ぜひよろしくお願いいたします。
 それから、今回新設されました母子家庭自立支援給付金についてもいろいろ伺いたいんですが、時間が限られておりますので、常用雇用転換奨励金についてちょっとお伺いしたいんです。
 これについては、私も以前この委員会でも質問させていただきましたけれども、三十万円ごときで、母子家庭の母をパート雇用からOJTを実施後に常用雇用に転換するなどということは実現性が低いのではないかという指摘がいろいろなところからされているわけでございますけれども、こうして今回堂々と概算要求されているということは、きちんと利用される見通しが立てられたのでしょうか。

○岩田政府参考人
 母子家庭のお母さんたちの八五%は就労されておりますけれども、四割はパートや臨時職員として働いておられまして、そういうことが、やはり生活の安定性という観点から見ますと必ずしも十分ではないということだというふうに思います。したがいまして、できるだけ常用雇用といいましょうか、いわゆる正社員で雇用機会を得ていただきたい、そのことを支援したいというふうに思っているところでございます。
 平成十二年の雇用動向調査を見ますと、女性が転職をするときに、パートから常用雇用に転換するというケースも少なからずあるということがわかります。ですから、一般的にそういうことは可能であるわけですけれども、母子家庭についてその転換をさらに促進しようということで、今回、常用雇用転換奨励金を設けたわけです。
 これは、雇う側に、やはりパートとして雇う場合と正社員として雇う場合には期待の水準が大きく違うということが通常でございますので、まず、パートとして雇っていただいて、働きぶりを見て、そしてその間オン・ザ・ジョブ・トレーニングもしていただいて、そして常用雇用に転換していただくというのは、母子家庭のお母さんたちを正社員の機会に結びつけるための一つの有効なやり方ではないかというふうに考えております。
 そういうことで、来年の概算要求にこの奨励金を盛り込ませていただいております。

○水島委員
 絵にかいたもちになるのではないかといろいろな方が言っているわけでございますけれども、これは、きちんと実行された後に、またその成果を検証させていただきたいと思っております。
 次に、児童扶養手当法の方に行かせていただきます。
 今回、この第二条に「児童扶養手当の支給を受けた母は、自ら進んでその自立を図り、家庭の生活の安定と向上に努めなければならない。」という項目が新たに加わっているわけですけれども、これをあえて加えたのはなぜなんでしょうか。

○坂口国務大臣
 局長の方が詳しく答えられるかもしれませんが、先生が御指摘になった御趣旨、十分に私ちょっとわかっておりませんけれども、「自ら進んでその自立を図り、」というふうに規定しましたのは、これは、現在の母子寡婦福祉法に設けられております規定と同様の規定を設けたものでございます。もちろん、国の方が自立ということを中心にして努力をしなければならないのは当然でございますが、御自身もやはり自立を図るために御努力をいただかなければならないというふうに思っております。
 さらにつけ加えるとしましたら、国と地方自治体が一体となりまして経済的な支援を行うこの児童扶養手当法と、それから、就業支援策及び子育て支援策、それから国、地方公共団体の責務を規定しております母子寡婦福祉法の両法が一体となって、子育て支援、就業支援、教育費の確保、児童扶養手当も含めました経済的な支援策を講じていかなければならないというふうに思っております。
 その「自ら進んでその自立を図り、」というのは、先ほど申しましたように、やはり御自身もそういう自立を図るということに御努力をいただくというところがなければならないというふうに思いますし、それに対して、これは国としてはこたえていかなければならないということは当然でございます。

○水島委員
 母子寡婦福祉法と横並びでという御説明は、それはそれでいいんですけれども、そうしますと、今回あえて加わったということは、今までは法の不備だったということなんでしょうか。それとも、母子家庭の母の努力や自立心が足りないので、今回あえて加えてみたということなんでしょうか。

○岩田政府参考人
 大臣から御答弁がありましたとおり、現行の母子寡婦福祉法に「母子家庭の母及び寡婦は、自らすすんでその自立を図り、家庭生活の安定と向上に努めなければならない。」という自立への努力を規定しております。そして、児童扶養手当の仕組み自体も、従来からもちろん自立を促進するという精神においては変わらないということでございますけれども、今回さらに、母子家庭対策全体を、従来の児童扶養手当という金銭給付を支給するということを中心とした対策から、自立支援の方に重点をさらに置くという対策に見直すということの関係から、この児童扶養手当についても、母子寡婦福祉法と同様に、自立への努力の規定を設けさせていただいたものでございます。

○水島委員
 第一条の目的というのは変わっていないわけですけれども、今の御答弁だと、何だか政策転換があって法律の趣旨が変わったかのようにも聞こえるんですが、そういうことではないはずだと思うんですけれども。
 先ほど私が伺いましたのは、今回わざわざ加えたのは、別に加えなくてもちゃんと機能していたはずの法律だったんですけれども、わざわざ加えたということは、今までこれが足りなかったというような、法の不備ということなんでしょうか。それとも、わざわざ加えなければならないほど母子家庭の自立心がないというふうに厚生労働省が判断しているということなんでしょうか。

○岩田政府参考人
 母子家庭対策は、子育て支援ですとか就業支援ですとか、養育費の確保対策などと合わせて、トータルでその自立を促進していくというのが対策全体を通じた基本的な方向であるというふうに思います。そういった考え方に基づきまして、児童扶養手当自体も、自立促進型の児童手当であるべきであるということでございますので、そのことを入念的にといいましょうか、そういうことで、今回、書かせていただいております。
 その考え方は、例えば、あるいはこの後御議論になるのかもしれませんが、受給開始後五年までに自立支援策を集中的にさせていただいて、なるべくその期間に自立をしていただくというような政策をこの児童扶養手当の仕組みの中にも設けたいというふうに思っておりますので、そういうことから、当然のことではありますが、入念的に、今回、書いたわけでございます。

○水島委員
 まだ答えになっていないんですが、それでは、ちょっと別の聞き方で大臣に伺いたいんです。
 大臣は、母子家庭のお母さんたちが自立心がないから児童扶養手当を必要としているというふうに考えていらっしゃるのか、あるいは、本当に苦労して自立をしようとしているけれども、就労上のハンディですとかいろいろなことがあって児童扶養手当を必要としているというふうに認識していらっしゃるのか、そこだけ、きちんと確認させていただきたいんですけれども。

○坂口国務大臣
 それは、今御指摘になりました後者の方だと思います。

○水島委員
 極めて明快にお答えいただけたので、そうであれば、わざわざ、義務として書く必要があるんでしょうか。これはちょっと大臣のお力で、ここの部分を、「自ら進んでその自立を図り、」というところを削除していただくことはできないんでしょうか。

○坂口国務大臣
 みずから進んでその自立のために努力をするということが、それほど私は問題になるというふうには今考えておりません。そのとおり、そこはそういうふうにぜひしていただきたいというふうに思うわけです。
 当然、国の方もやらなければなりませんし、そして今回そのウエートを、いわゆる財政的な支援というものからもう少しトータルの自立へのことにウエートを移しているわけでございますので、それは、御自身もやはりそうした御努力をいただきたいというのがそんなに問題になるとは私は今思っておりません。

○水島委員
 例えば、よく、うつ病の人に頑張れと励ましてはいけないと言われます。なぜそう言われるのか。大臣はお医者さんですからよく御存じだと思いますけれども、本人はもう頑張り過ぎて、燃え尽きてうつ病になっているのに、そこにさらに頑張れと声をかけることがその人を追い詰めることもある、そういうことがだんだんと常識になってきているわけです。
 今、既にもう本当に頑張って、限界で暮らしている母子家庭の方たち、私もいろいろな手紙を読ませていただいておりますけれども、こんなに頑張っていて、それでも児童扶養手当をもらって何とか食べていっている方たちがこういうふうに書かれるということは、これが、世間の人、何も知らない人から見たらどう感じるかというと、ああ、やはり離婚しているような母親というのは自立心がないのかな、だから今回、わざわざ法改正でこれが書き加わったのかなという目で見ますので、これは、私は偏見をあおる以外の何物でもないと思いますけれども、大臣はそういうふうにお考えにならないですか。

○坂口国務大臣
 物は見方でございますから、見る角度によっては、いろいろなとり方も、それはあるだろうというふうに思います。
 母子家庭のほとんどの皆さん方は大変な自立への努力をされていることを私もよく存じております。しかし、どの分野にもそうでない人も中には含まれるわけでありまして、そうしたことを考えましたときに、やはりこうした項目を入れておくということは大変大事なことではないかというふうに私は思います。
 そのことが、決して、現在多くの母子家庭のお母さん方が努力をしておみえにならないということを言っているわけではありません。大変な努力をされているということを十分に承知をした上で、しかし全体としてそうしていかなければならないということを言っているわけでございます。
 どの法律におきましても、ほとんどの人はそんな悪いことをするわけではありませんし、善行を重ねているわけでありますけれども、しかし、一部にそれに反する人がありますと、やはりそのことを書かなければならないということがあるわけであります。今回のこの場合にも、私は、母子家庭のお母さん方のことは十分にわかりながら、しかし、この項目が入っているということが、御努力をいただいているお母さん方の心をそんなに傷つけることではないというふうに私は思います。

○水島委員
 坂口大臣らしからぬ御答弁だなと思います。今回、わざわざ書き込むわけですから、これが母子寡婦福祉法の中に入っているということまで否定するものではございませんけれども、わざわざ書き込むということ、これが、私は先ほど、偏見をあおる以外の何物でもないと申しました。
 さっき局長が、母子家庭のお母さんは仕事を休むという偏見というふうにおっしゃったときに、私は、それは偏見じゃなくて現実だというふうに申し上げましたけれども、母子家庭のお母さんというのは、児童扶養手当をもらって、余り自立心もなくて、もらうだけもらっているということこそ偏見であって、この偏見を解消していく責任というのは、やはり厚生労働省にもあると思っております。
 こういう法律を改正するときも、一つ一つ、一挙手一投足に注意をしていただいて、偏見を解消していく努力というものが各分野において必要だと思っておりますけれども、大臣はそういうふうにお考えにならないでしょうか。

○坂口国務大臣
 偏見を除去していくということは大変大事なことでありますし、そうしなければならないというふうに思います。しかし、自立という、ここに書いてありますこのことによって偏見を助長するというふうには私は思わないということを申し上げているわけです。

○水島委員
 大臣がそうお感じにならないというのが、大臣が本当にそう思っていらっしゃるのかなというのはかなり疑問でございますけれども、そうお感じにならないのはもしかしたら大臣だけかもしれない、そんなふうにも思うわけでございます。
 本当に、こういうところ、きちんと配慮をしていただきたいと思いますし、ここを削除することぐらい、大臣がやれと言えばできるのではないかと思いますので、これはぜひ御検討いただきたいと思っております。
 また、この第二条に対応するような形で、今回、第十四条に、「受給資格者(母に限る。)が、正当な理由がなくて、求職活動その他厚生労働省令で定める自立を図るための活動をしなかつたとき。」というのが入っておりますけれども、ここで言う「求職活動その他厚生労働省令で定める自立を図るための活動」というのは、省令で定められるものは、一体、具体的に何を考えていらっしゃるんでしょうか。

○岩田政府参考人
 改正法が成立しました後に省令で定めることになりますが、自立を図る活動とは、就職に結びつくような活動でございまして、例えば、就職活動、能力を高めるための職業訓練の受講などを想定しておりますが、具体的な内容についてはさらに検討してまいりたいというふうに思います。
 いずれにいたしましても、十四条の第四号の規定というのは、本人にその能力がありながら、そしてそれが可能でありながら、そういった活動を一切しないといったような、ケースとしては非常にまれであるというふうには思われます。例えば、収入はないけれども資産はあるという、こういう方もこの児童扶養手当を受給されるということもあるわけでございますが、そういった形で、能力もチャンスもあるけれども全く努力をなさらないというような方が仮におられたとすれば、ここに該当するということでございまして、児童扶養手当の全部あるいは一部の支給をとめることがある、そういった制度の仕組みを考えているわけではあります。

○水島委員
 この活動しなかったときというのは、どうやってチェックされるんでしょうか。

○岩田政府参考人
 日常的には、必要に応じて母子相談員が相談に乗っておりますし、また一年に一度、児童扶養手当のいわば更新のために、現況届というのを役所に出していただくことになります。これは、いろいろ状況をお話しする、お話を伺う大変いい機会であるというふうに思いますので、そういう中で状況をお伺いしていくということになると思います。

○水島委員
 現況届のときにということでございますけれども、これはちょっと後ほどまた、まとめて伺いたいと思います。
 先に進ませていただきますけれども、養育費の所得算入割合が八割というふうにされているわけですけれども、この八割という数字の根拠はどうなっているんでしょうか。

○岩田政府参考人
 養育費を獲得されるために、やはりコストがかかるということもあろうかと思います。最も本格的なケースですと、裁判所で手続をとってということになろうかと思いますけれども、そういう養育費を確保するためのコストということで約二割は差し引いて、その残りを所得として考えたいということでございます。

○水島委員
 コストが二割というのがどのようなデータに基づいているのか、また詳しく教えていただきたいと思いますけれども、例えば、裁判をしたときの経費が大体このくらいだというふうにも伺いました。ところが、裁判所に足を運ぶことでその日の賃金が失われるわけですので、その裁判の経費だけ、その二割だけというのはちょっとおかしいんじゃないかなというふうにも思っております。ここについても、もっときちんと、どのくらいが経費となるのかということを、今後もきちんと見ていっていただいて、この八割という数値が本当に妥当であるのかどうかは今後チェックしていっていただきたいと思っておりますので、ぜひそのあたりも当事者の声をきちんと反映させていただけますようにお願いいたします。
 さて、この養育費なんですけれども、養育費の強制執行について、法制審の現在の審議状況について、きょう法務省に来ていただいておりますので、簡単に教えていただけますでしょうか。

○房村政府参考人
 養育費の問題につきましては、強制執行する場合、大体月ごとに決まっておりますので、そうすると、その都度、強制執行の申し立てをしなければいけない、非常に使い勝手が悪いという御指摘がございます。
 そういうことを念頭に置きまして、現在、法務省で担保・執行制度の見直しをしているわけですが、その中で、この養育費の履行確保につきまして、そういう、支払い日がまだ到来していない将来分も含めて、養育費に基づいて、一括して債務者の継続的な給付、例えば給与でございますが、こういったものを差し押さえる。そういたしますと、差し押さえられた給与の月給日が来ますと、その都度、支払いを受けられるということになりますので、そのような制度を実現できないかということで検討しているところでございます。現在、鋭意検討を進めておりまして、来年、平成十五年の通常国会には法案として提出したいと考えているところでございます。

○水島委員
 それでは、肝心の児童扶養手当の見直しについてお伺いしますけれども、「この措置は、法施行後五年後を目途に適用するものとし、関係政令については、子育てや生活支援策、就労支援策、養育費確保策等の進展及び離婚の状況などを踏まえ、かつ、五年後の適用に当たり十分な時間的余裕をもって制定するものとする。」とございますけれども、この状況の評価というのはどのような基準で行われるつもりでしょうか。

○岩田政府参考人
 法律施行後の子育てや生活支援策、就労支援策、養育費の確保策、経済的な支援策、こういう政策がどのくらい効果を上げて母子家庭の現状が改善するかということであろうというふうに思います。
 何を具体的な判断基準にするかということについてはこれから検討していきたいというふうに思いますが、例えばですが、母子家庭の収入の状況ですとか、就労の状況、何%のお母さんが働いておられて、そのうちでパートタイマーとフルタイマーがどういう割合になっているかということですとか、何%の方が養育費を別れた夫から確保して、その金額がどのくらいになっているかとか、そういうような状況を見ながら、五年後の削減率については、施行の前の周知期間も要るでしょうから、周知期間を十分とれるようなタイミングで判断をして政令を策定させていただきたいと思っております。

○水島委員
 そうしますと、全体的な状況を見て削減率を決める、その削減率は一律、一つの削減率というような理解でよろしいんでしょうか。

○岩田政府参考人
 現在のところは、削減率は一律のものを考えております。

○水島委員
 このようなことを考えますときには、やはり全体的な視野と同時に、個々のケースに着目する必要もあると思っておりますけれども、個々のケースについてはどのような配慮をしていただけるんでしょうか。

○岩田政府参考人
 まず、お子さんが小さいときにはなかなか仕事と子育ての両立が大変であるという現状がございますので、例えば、今法律案の中でも明らかにしておりますけれども、お子さんが三歳になるまではこの五年ルールをカウントし始めない、一番小さい、下のお子さんが三歳になったときからこの五年というのを計算を始めるということが一つございます。
 また、状況に応じて、やはりどうしても自立が困難であろうかというふうに思われるケースもあると思いますので、例えばそれは、母子家庭のお母さん御自身が障害があったり、重い病気だったり、あるいはお子さんやお年寄りにそういう問題があったりというような状況であれば考慮する必要があるんではないかというふうに考えておりまして、どういう場合に配慮を要するかということについての基準も、法律の施行後に検討してまいりたいというふうに考えております。

○水島委員
 そうしますと、個々のケース、きちんと見ていただけるということなんですけれども、先ほどの自立を図るための活動をしていなかったときのチェックですとか、今回の個々の自立困難度のチェックというんでしょうか、こういったことについて、一体どうやって生活状況をチェックしていくのか。大臣が、ことしの現況届の混乱の総括のところで、きちんと聞かなければいけないけれども、細かく聞き過ぎるのもよくないというふうに、大ざっぱな御答弁を先ほどされていたわけでございますけれども、これを、どうやってプライバシーの侵害について歯どめをかけていくのか。
 きちんと情報を収集して、その方に合った配慮をしていくとともに、プライバシーの侵害につながらないように一体何が考えられるのかということを大臣に御答弁いただけますでしょうか。

○坂口国務大臣
 それはなかなか一口で言いがたい難しい問いかけだというふうに思いますが、はっきりとした数字でわかるもの、例えば養育費ならば養育費をきちんともらっておみえになる、それがちゃんとわかるとか、そうした問題はわかりやすい問題でありますから、自主申告をしていただければそれはわかることだというふうに思います。
 しかし、非常に精神的なものでありますとか、そうしたものはなかなか物差しにはなりにくいわけでありまして、やはり数字できちっと出すことのできるものであればそれは尺度になり得る。ただし、それを調べさせていただきますときに、それを聞くことが甚だプライバシーにかかわるというような問題につきましてはなかなか難しいですから、それは除外をしなければならぬのではないかというふうに思っています。

○水島委員
 今の自主申告というところなんですけれども、例えばことしの現況届のときも、基本的には自主申告なんですけれども、申告にもしも虚偽の記載があったらということを見つけるために、米や野菜をもらったとか、そんなことまで書かせるんだというような説明を当初厚生労働省の担当の方はされていたわけでございます。自主申告、そういうやり方をとる限り、どうやってその正確さを確保するかというようなことは、必ずこれは役所であれば考えられると思いますので、ある程度プライバシーに配慮するきちんとした歯どめを形としてかけるべきではないかと思っております。
 母子家庭の生活状況を丸裸にするような運用をされてしまいますと、就労意欲、生活意欲、また人間的な誇りが奪われてしまうというような、そんなこともございまして、これは、母子家庭の自立という今回目標とされていることに全く逆行する結果になっていってしまいます。
 何か、このようなチェックをしていくときの歯どめのかけ方について、大臣にお考えがあればお聞かせいただければと思います。

○坂口国務大臣
 今私が具体的に持っているわけではございません。これからその辺は、いろいろの皆さん方の御意見も聞きながら煮詰めていかなければならない問題だというふうに思っております。
 いずれにいたしましても、トータルでいえば、やはり個々の母子家庭のお母さん方のトータルな支援ができるようにしていかなければならないわけでございますし、とりわけその中で、就業ということ、雇用ということに対して最大限やはり配慮をしていかなきゃならないと思っております。

○水島委員
 ぜひきちんと御検討をいただきたいと思っております。
 この母子家庭の方たちに対する役所の窓口の対応などの例をいろいろ聞いておりますと、何だかもう、弱者だから何をしてもいいというような、ずかずかと踏み込むような、そんな対応すら聞いているわけでございまして、そういう役所の窓口の対応一つ一つ、それは地方の問題で厚生労働省の問題ではないとおっしゃるのかもしれないけれども、先ほど指摘しましたように、今回の法改正で自立の義務みたいなものを書き込むことによってまたそういう窓口の対応がゆがんでくるのではないか、そういった心配もしております。
 こんな法改正をされるのであれば、せめてその偏見を解消していくために積極的な施策を講じていただかなければ、今の母子家庭の方たちが置かれている状況というのは本当に目に余るものがあるのではないかと思っております。本当に、私のところにもいろいろなお手紙なんかをいただきますけれども、非常に条件の悪い労働をされていて、手取り十一万五千円、毎日重いブロックを動かして、腰は痛いし手首も痛い、これ以上どう働けばよいのか、こういうような方がこれから児童扶養手当を減額されていくということに直面をしていて、今、本当に大きな不安に見舞われているわけでございます。
 また、これは母子家庭の、子育てをしているそのときだけではなくて、今度は逆に、子育てを終えた方たち、五十代後半ぐらいになりまして、子供を育てるために借金もして、もうすべてを使い果たしてしまった女性がちょうど年代としては一番リストラされやすいようなところに来てしまう。そういった方たちの自立について、そういった方たちが安心して年をとれるように、その施策もこの際きちんと強化をしていただきたいと思っております。
 これは本当に全体的な、大切な領域だと思っておりますので、最後に一言だけ大臣の、今回、続投に当たってぜひ温かい施策をと最初に御要望申し上げましたけれども、その温かみが伝わるような一言だけいただいて、質問を終わらせていただきたいと思います。

○坂口国務大臣
 今回のこの法案を御審議いただだくにつきましていろいろの難しい点があるというふうに思っておりますが、今後、五年間という一つの区切りがあります。この間にやはり一番我々が努力をしなければならないことは、その雇用をいかにして確立していくか、そして、現在一番問題になっているのは何かということをあらゆる角度から見ましたときに、やはり一番問題になるのは、現在の母子家庭の皆さん方の所得というものが非常に低い、このことをどう上げていくか、ここをどう上げるかということが最も大事なことであって、そのことに注目をして、ここを上げるということが、どこまで、目標値というのはなかなか難しいですけれども、ここが上げられる体制をどう確立するかということがこの五年間に課せられた最大の課題であると思っております。

○水島委員
 ありがとうございました。



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