厚生労働委員会
(2002年6月13日)



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宇都宮地方公聴会





   派遣委員の栃木県における意見聴取に関する記録
一、期日
   平成十四年六月十三日(木)
二、場所
   ホテル東日本宇都宮
三、意見を聴取した問題
   健康保険法等の一部を改正する法律案(内閣提出)について
四、出席者
 (1) 派遣委員
      座長 長勢 甚遠君
         鴨下 一郎君   佐藤  勉君   林 省之介君   釘宮  磐君
         水島 広子君   福島  豊君   佐藤 公治君   塩川 鉄也君
           中川 智子君
 (2) 意見陳述者
      足利赤十字病院名誉院長   奈良 昌治君
      栃木県トラック協会会長   関谷 忠泉君
      宇都宮市長         福田 富一君
      耳鼻科医師         金子  達君
      栃木保健医療生活協同組
      合専務理事         柴野 智明君
      医療法人喜望会理事長
      おやま城北クリニック院長  太田 秀樹君
 (3) その他の出席者
      厚生労働省大臣官房参事官  間杉  純君
      厚生労働省保険局保険課長  島崎 謙治君



○水島委員
 民主党の水島広子でございます。
 改めまして、意見陳述者の皆様にお礼を申し上げたいと思います。
 本日は、お忙しいところ、お時間を割いて御意見をいただきまして、この地元の意見を国政に届ける機会に御協力をいただきまして本当にありがとうございます。
限られた十五分という時間の中で、できるだけ皆様にお伺いしたいと思いますので、ぜひ簡潔なお答えをいただけますようにあらかじめお願いを申し上げたいと思います。
 さて、今までも十分な御議論もあったところでございますけれども、やはりこの日本の医療制度を考える上で、私は、今まで、財政の問題と医療提供体制、医療の中身の問題とが常に混同して語られてきたために、それぞれがそれぞれの足を引っ張るというような、そんな不幸な結論になってきているのではないかという感想を持っております。
 医療提供体制に関しましては、本日の御意見にもございましたけれども、日本はまだまだ充実させなければいけないところがある。
医療費全体を見ましても、本当はOECD諸国の中で見ましても日本は決して医療費が高い国ではないわけですけれども、そうは言っても、今この財政の問題はある。
この二つをある程度それぞれの問題として考えていかなければいけないと、本日の御意見を伺いましてまた改めて考えたところでございます。
 ただ、直近の医療を見ますと、財政の問題と医療提供体制の問題は別だといいましても、やはり普通の目で見たときに、これだけいろいろなところにむだがあるのに、財政が苦しいということで自己負担を上げられてしまうということには納得がいかないというのが極めて一般的な目ではないかと思っておりまして、私は、本日いただきました時間の中で、このむだということに関しまして皆様に質問をさせていただきたいと思います。
 まず、金子さんにお伺いいたしますけれども、実際に今開業していらっしゃるわけですが、開業されていて、医療そのもの以外にむだなお金がかかっていると思われる点、つまり医療費の医業外流出という問題でございますけれども、それはどういうところにあるとお感じになっていらっしゃいますでしょうか。


○金子達君
 むだというのはたくさんありますが、むだが必要なことも若干あると思うんですね。
 先ほど来話しているレセプトなんかでも、四月にかなり改正があって、そのたびにコンピューターのデータを変えなくちゃいけないとか、バージョンアップをしていかなくちゃいけないとか。
また、これはむだというか何というんですかね、患者さんへの説明、インフォームド・コンセントのためには、いろいろビデオシステムを入れなくちゃいけない、顕微鏡を入れなくちゃいけない。
総合的に、お金の評価には全然なりませんけれども、患者さんに対して満足していただけるようなことも、かなりむだといえばむだなんです。
 また、先ほど話したように、医療制度改革研究会というのを宇都宮の有志でやっていますが、その中では、例えば機械で、MRIの機械なんかが高い、あるいはメンテナンスが高い、諸外国に比べてメンテナンスが高くて、またメンテナンス自身も統一化されていないようなことをよく言われています。
 そういった、ただ買ったとしても、さっき奈良先生の方でも、実際設備投資するお金も余りもう残っていないような医療改革になっていると。
そしてまた、それに対するメンテナンスに対してもかなり膨大なお金がかかってくる。
こういったことも、うまく政府あるいは国会で監視して、そこら辺のむだを排除するということも非常に重要なことじゃないかなと思います。


○水島委員
 ありがとうございます。
 また、こういう医療費の中のむだの最たるものというのは、いわゆる悪徳医療機関なのかなと私は思うところもあるんですけれども、この医療の質の問題。
例えば、一連の制度改正を見ていても、なかなか制度改正そのものが医療機関の質を峻別していくようなものになっていないために、総枠をかぶせてしまうような形にしてしまいますと、これは悪貨が良貨を駆逐していくというような構造になって、より悪徳のところの方が生き残りやすくなるという構造を生むのではないかと思っておりまして、この医療の質をどうやって見きわめて質のいいところだけを生き残らせていくかということは、かなり重大な課題でありながら、なかなか手がつけられないところではないかと思っております。
 悪質な医療機関を淘汰して良質な医療機関が残っていくためには、金子さんはどうしたらよいとお考えになりますでしょうか。


○金子達君
 非常に難しい質問だと思うんです。
太田先生なんかの方がかえって向いているかもしれませんけれども。
 私が思うに、やはり今患者さんは踊らされている面がかなりあると思うんですね。
 医療機関は、それぞれいろいろな特性を持っています。
医者もいろいろな人がいます。
だから、その個々の医者のレベルに対して、今のところ、だんだん医療法も改正されてきてオープンになってきましたけれども、もっと開示していく、オープンにしていく。
カルテ開示だけじゃなくて、病院自身のいろいろなことに対してもオープンにしていく。
インターネットのホームページを使うのもよろしいですし、いろいろな意味でオープンにしていきます。
 それをまた患者さん側も、やはり自分がかかるんですから多少なりに勉強して、自分がいいところにかかりたいと思ったら、やはり勉強しないといけないと思うんですよね。
それから来て、医者を選ぶのがいいと思います。
 だから、両方とも、医者側も開示する必要がある。
いろいろな意味で開示して、変な意味じゃなくて広報活動をしていく必要があると思います。
そんなことですかね。
それと自然淘汰でいくしかないんじゃないかと思うんですけれども。
医師会でそれを、この医療機関は悪いというのは言えないと思う。
 ただ、余りにも言語道断なことをやっていることは、よく医師会内部の会議でも出てきます。
これは、余り表に出ない内容でも、医師会内部の会議でも出てきます。
それについて、諸外国の医師会では、かなり医師会内部でセルフコントロールをするようなことをしています。
だから、そういうのを積極的に医師会の方に任せるのも、地方の医師会に任せるのも一つの方法ではないかなとは思っています。


○水島委員
 ありがとうございました。
 私も医者の一人でございますけれども、確かに、あれもだめ、これもだめという形で枠をかけていくよりは、本当に一生懸命働こうとする医療者がよりやる気を持っていけるような仕組みが望ましいのかなと思いますけれども、今お話に出ました医師会内の自浄作用というものも、ぜひこれを機会に御検討いただければと思います。
 さて、次に奈良さんにお伺いいたします。
 本日のお話に直接関係ないんですけれども、医療の大先輩でございますので、それに甘えて伺わせていただきますけれども、この医療のむだということでよく話題に出てまいりますのが、いわゆる終末期の医療でございます。
 終末期の医療の迎え方にはもちろんいろいろな形があるわけですけれども、今日本はかなりの割合で一律に非常に高度な機器につながれるような形で、人生の最後の数日間にかかる医療費の多さというものが、データもあるわけでございますけれども、このような終末期医療のあり方について、これをちょっと医療のむだという観点から語るのも一面的であるわけですけれども、この終末期医療のあり方についてのお考えをお聞かせいただけますでしょうか。


○奈良昌治君
 これは非常に難しい問題で、よく私の外来に御高齢の方がお見えになって、私はいつ死んでもいいんだとおっしゃるんですね。
では、何でお見えになりましたかと言うと、いや、今死にたくないんだと。
本当に笑い話のようなことがいっぱいあります。
 それから、よく我々が経験しますことは、これは全くだめだろうと思っていた人が、何日かたって奇跡的に助かるということもあります。
それは本当に、そういうことを言っちゃいけないのかもしれないが、神様じゃないとわからないケースがあるんですね。
ですから、現場のお医者さんはどうしても全力投球をしてしまう。
私は監督者でありますから、もう全力投球やめろということも言えない。
だから、やはり医師の経験がそういうもので一番頼りになるんじゃないかと思います。
 それから、家族の御希望もありますけれども、これは日本ではまだ安楽死問題とかそういうものは出ておりません。
これは非常に難しいので、一概にお答えはできませんけれども、やはりケース・バイ・ケースだろうという言い方でございます。
 それから、医療のむだで私が非常に気がつくのは、これは医療費問題の方になって、中医協問題になってくるんですけれども、今、大きな病院は何科受診しても診察料は一回しか取らないということになりました。
そうすると、「わかさ」とか「健康」とか健康雑誌が非常に今ブームでございますが、ああいうところで、大きな病院に行きなさいよ、ついでにいろいろ診てもらいなさい、年をとるとあっちこっち壊れていますよと。
中には、朝おいでになって、お年寄りの方というのは時間に余裕がありますから、一日ゆっくり時間をかけて、夕方までかかって何科も受診するということがあるわけですね。
これは明らかに私はむだじゃないかと思っています。
だから、そのあたり、やはり診察料の設定や何か、ちょっとボタンのかけ違いがあったかなと思っております。
 ただ、むだだということを言うことは非常に易しいんですけれども、本人の立場に立ってみると、おれはむだな人間かとはなかなか思えないので、だから、それはやはり、我々の世代になるとちょっとそういう気持ちもわかってくるんですけれども、今ばりばりの若い方々が、もうあれだけ年をとって、腰が曲がって、よくあの人生きているなというふうにお考えの方もあるかもしれませんけれども、本人にとっては、やはり人生を全力で生きている人もいるわけですから、これは非常に難しい。
 だから、やはり本人の意思。
結局、本人が、おれに何かあったときには余分なことをしてくれるなと書いてあれば一番よろしい、そういうことでございます。
ぜひ皆さん方も、そういうときにはこうだということをあらかじめ文書にしていただくのが、一番医療のむだを省く方法だと僕は思っております。
 以上です。


○水島委員
 ありがとうございました。
御本人が選択できるだけの基盤をつくるというお話かと承りました。
 次に移らせていただきますけれども、今度は福田市長にお伺いいたします。
 本日のいらっしゃっている中で、唯一国保の運営に当たっているというお立場からお伺いしたいんですけれども、保険者というものは、単にお金を集めてお金を払うというお金を素通りさせるだけの機能ではなくて、当然、保険に加入している方たちの健康を守って、できるだけ医療費を増大させないようにしていくような、また、医療そのものをチェックしていくような、そういった機能も保険者は持っている、あるいは持つべきであると言われているわけでございますけれども、今現在、どのようにその機能が果たされているのか、今の法律の枠組みの中ではこういうことをしようとしてもできないんだというのがどのあたりにあるのか、御意見がございましたら、お伺いしたいと思います。


○福田富一君
 御質問に的確に答えられるかどうか、ちょっと不安なんですけれども、医療費を削減していくためには、どなたも健康であれば一番いいわけであります。
 そういう中にありまして、一つは、小児医療あるいは深夜帯の医療体制の整備、そしてまた、高齢者の福祉サービスの中では生きがい対策づくり、さらには、成人については、さまざまな健診体制があるわけですけれども、受診率のアップ、この三つが今考えられるかなと。
 深夜の小児医療あるいは深夜医療、これらにつきましては、医師会の協力をいただいて、ことしの四月一日から、二十四時間で小児科、内科については診療のシステムができ上がりまして、東京の大学病院からも大勢お医者さんに助けていただいての状況でありますけれども、これによって、小児の医療体制というのは何とか宇都宮では整ったかなと。
我慢をさせなくてもすぐに病院に行って適切な治療が受けられる、こういう仕組みができた。
 それから、健診率のアップにつきましては、なかなか我々の世代は受けない。
何とかこれを、事業所の協力などもいただいて健診率の向上に努めているんですけれども、これまた非常に難しい課題であります。
しかし、これを限りなく一〇〇%に近づけていくことができれば、医療費の削減には当然結びついていくというふうに思っております。
 さらに、高齢者でありますけれども、今までは施設整備を中心に考えて、高齢者を施設に預かってもらう、こういうことを中心に考えてきましたけれども、最も理想とするのは、在宅で介護をしながら生きがいというものもお持ちになって生活ができる、この仕組みが一番いいというふうに思っています。
 今、宇都宮市では、中学校単位に在宅介護支援センターをつくりましたけれども、その中で、地域協議会という、地域の皆さんに大勢参加していただいて、ボランティアで家族の介護の負担を少なくする、こういう仕組みをつくりました。
つくったばかりでございまして、まだまだ十分機能しているとは思っておりませんが、これを充実させていくことが最も重要だ。
 そんな中にありまして、中学校単位で整備は始まったんですが、理想はやはり小学校単位だ。
この方が、地域がよりまとまって、地域内の高齢者の方々のサービスをしやすい。
ですから、小学校単位、より細かくした単位で在宅介護支援センターをつくって、地域の皆さんの協力を得て、介護の負担を少なくしてやる。
そして、お年寄りには生きがいを与えてやることができる。
それは、さまざまな活動、高齢者を引っ張り出していろいろな催し物を持っていくということも一つなんですけれども、それらについてはやはり国の方の協力がないと、自治体だけではなかなか整備が難しい。
こういうふうに思っておりまして、生きがい対策づくり、あるいはそのためのセンターの整備、こういうものについて国にはぜひ御支援をいただきたい、こういうふうに思っています。


○長勢座長
 水島広子君、手短に。


○水島委員
 まだまだ伺いたかったんですけれども、時間が来てしまいました。
 本日、いろいろ申し上げてきたような点に関しましては、太田さんが進めていらっしゃる在宅医療というものが一つの大きなキーワードになると思っておりまして、その御活動に大変敬意を表しておりますということを最後に申し添えまして、本日の質問を終わらせていただきます。
ありがとうございました。




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