厚生労働委員会
(2002年4月17日)



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子どもの臓器移植、摂食障害




○野田(聖)委員長代理
 次に、水島広子さん。

○水島委員
 民主党の水島広子でございます。
 臓器移植法が施行されてきのうでちょうど四年半が経過いたしました。この法律には、施行三年後の見直し規定が盛り込まれておりますけれども、まず、この規定に基づく見直しの現状を教えてください。

○下田政府参考人
 厚生労働省といたしましては、厚生科学審議会の中にございます臓器移植委員会というのがございますが、その場におきまして適正な臓器配分ルールの確立等、制度の運用面におきます改善に取り組んできたところでございます。
 また、臓器移植法につきましては、現在、いろいろな団体からいろいろな御要望がございます。例えば、十五歳未満の臓器提供を可能としてほしい、あるいは、脳死下での臓器提供に際しまして、本人の提供の意思をどこまで認めるのか、より活用する仕組みがとれないのか、そういった要望がなされているところでございます。
 臓器移植につきましては、生命倫理観に深くかかわる問題でございまして、十五歳未満の子供からの臓器提供の可否など、制度の根幹にかかわる問題につきましてはさまざまに見解が分かれているところでございます。今後、臓器移植に係りますこうした諸課題につきましては、広く国民的議論を行うことが必要であるというふうに考えているところでございます。

○水島委員
 今の御答弁にもございましたように、子供がドナーとなる移植については積み残された課題になっており、臓器移植推進連絡会を初め幾つもの団体から法改正の要望が出されています。脳死状態の人がドナーとなる臓器移植については、常に脳死は人の死か否かという問題がつきまとってきましたし、だからこそ、さまざまな方の生命観や価値観に抵触してきたのだと思います。
 お子さんが脳死になった方の実際の経験談からも、身近な人の脳死をどう受けとめるかは人それぞれであって、その受けとめ方は限りなく尊重されなければならないと私は思っております。その一方で、臓器提供を受けなければ生き延びることのできない子供たちの問題も切実でございます。
 脳死状態からの臓器提供を希望する人がいて、それを待っている人がいる場合に、法律がそれを阻むというのが、十五歳未満の子供たちにとっての今の法律の構造でございますけれども、脳死の受けとめ方の多様性を尊重するという観点から、これはやはり、あらゆる受けとめ方を尊重していることにはならないのではないかと考えております。そして、そんな状況の中、それぞれの人の生命観、価値観を侵害することなく、この問題をどう冷静に議論するかという姿勢が問われているのではないかと思っております。
 また、この臓器移植という問題に関しましては、臓器移植というその医療そのものの問題と、また日本における医療不信の問題と、この二つが複雑に絡み合って論じられてきたというような経過もございました。私は、医療不信は医療不信として、きちんとした手当てをして解決していかなければいけない問題であると思っておりますけれども、医療不信に引っ張られる形で、臓器移植がなるべく行われないようにというような枠組みをつくるというのは本来の趣旨とは反するのではないか。その二つをきちんと分けて、冷静に、どのようにすれば理想的な医療が実現するのかというようなことを考えていかなければいけないと思っております。
 本日は、そのような観点から質問をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 まず、脳死臓器移植は日本では新しい技術でありまして、まだ確立された医療とは言えないわけでございます。ですから、透明性が確保された中でデータを収集し、その結果を冷静に分析し、日本で行う医療技術として、どの程度、有効性、安全性があるものなのかを検証する必要があると思います。そういう意味では、まだ臨床研究の段階にあると思いますけれども、大臣は、どう思われますでしょうか。

○坂口国務大臣
 臓器移植の法律ができましてから、今お話ございましたように、四年半という日時がたったわけでございます。この法律ができますときに、本当に、議員の皆さんもさまざまな御意見をお持ちになっていたというふうに記憶いたしておりますし、それぞれが党議拘束を外して初めて投票をしたという経験を踏んだわけでございます。それから、十九名の方の臓器移植が行われまして、八十三名にそれが移植をされたということでございます。
 さて、この現在の段階をどう評価するか。一定の医療技術というものが確立をされて、そして今日を迎えているというふうに見るのか。それとも、今委員が御指摘になりましたように、これは医療研究の段階であるというふうに見るのか。これも人それぞれ見方によって違うのではないかというふうに思いますし、ここを断定的にこうだというのもなかなか難しいなというふうに思いながら、今聞かせていただいたわけでございます。しかし、水島委員がお話しになりますように、この医療に対する不信とそしてこの臓器移植という問題が一つに絡んで話がなっていることもまた事実でございまして、ここは私も分離をして考えていただきたいなというふうに思ってまいりました一人でございます。
 小児の臓器移植の問題につきましても、私個人は、いろいろの難しい問題はありますけれども、何とかここを乗り切ることができないかというふうに思っております一人でございます。これは、厚生労働大臣と申しますよりも、坂口個人としてそう思っているということでございまして、これからひとつ、この先どういうふうにこれを進めていくか、大変手順も大事だというふうに思いますが、次の段階にいよいよ議論を進めるべきときを迎えているというふうに思っておりますから、今、きょうこういう御質問をいただいたのは、タイミングとしても非常にいいタイミングで御質問をいただいたというふうに思っている次第でございます。

○水島委員
 では、質問をいたしました臨床研究の段階にあるかどうかということの御答弁は最初の方にいただきまして、大臣はそれは人それぞれの考え方によるのではないかとおっしゃいましたけれども、ただ、やはり日本でまだ二十例、この法律ができてから二十例でございます。それをもって日本で既にその効果、安全性とも確立された医療であると言うには、私は、まだ時期は早いのではないか、そのような意味ではまだ臨床研究の段階にある、少なくとも一般の医療技術に照らし合わせてみればそのような段階にあると思っております。
 さて、子供の臓器移植については主に二つの観点からの特殊性があり、そのために臓器移植法に積み残されたわけでございます。その一つがみずからの意思を表明する能力、もう一つが子供の脳死判定基準でございました。脳死判定基準については、その後、厚生科学研究で子供用の基準がつくられております。残された意思表示の問題ですけれども、例えば医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令では、子供の治験の場合、代諾者の同意によって参加が可能となると規定されております。
 脳死臓器移植を遺言と考えるか臨床研究と考えるかによって、扱いは変わってくると思います。私は、脳死臓器移植が新しい、日本ではまだ未確立な医療であることからも、また移植の議論の根底にある医療不信を払拭するためにも、臨床研究として位置づけて、透明性のある体制を確保する必要があると考えております。
 脳死臓器移植をドナーとレシピエントの双方の参加による臨床研究であると位置づければ、ドナーが子供の場合であっても親がその意思表示を代行できると考えられますでしょうか。
 〔野田(聖)委員長代理退席、委員長着席〕

○下田政府参考人
 一般医療におきまして、十五歳未満の小児の臨床研究を行う場合、親権者などの代理権者の承諾のもとで臨床研究を実施することが可能であるという扱いがなされておりますことは承知をいたしております。
 しかしながら、先ほど申し上げましたけれども、十五歳未満の小児の移植につきましては、法案審議の国会におきましても非常に大きな論点となった部分でございまして、その議論を踏まえて、民法上の遺言可能年齢、こうしたものも考慮し、これらの小児からの臓器提供は運用上認められないというふうな扱いになっているところでございます。
 大臣からも申し上げましたけれども、本質的に、移植医療はドナーの死亡を待って臓器を提供いただいて行われるといったことから、御指摘の臨床研究とは同列には考えにくいものというふうに考えておりますけれども、仮に御指摘のように臓器移植を臨床研究と位置づけたといたしましても、特段の規制がかからない一般医療とは異なっておるということでございますから、そのことをもって、代理権者の承認をもって十五歳未満の小児の臓器提供を可能とするということを認めることにはならないというふうに考えておるところでございます。

○水島委員
 もちろん、今は法律の見直しに向けての話をしているわけでございますので、臓器移植法の枠組みを変えるというような前提での質問というふうに御理解をいただいて、もう一度御答弁をいただきたいんですが。
 脳死臓器移植を臨床研究として位置づけ直す必要があると私は考えておりまして、法律そのものをそのような枠組みに変えるのであれば、子供の場合でも代諾によって臓器提供が可能になると思われますけれども、これについてちょっともう一度御答弁いただけますでしょうか。

○下田政府参考人
 臓器移植法につきましては、提供者の意思の扱い方、こういった問題につきましてさまざまな意見があるところでございます。委員御指摘の、脳死下での臓器移植を臨床研究と位置づけて、十五歳未満の小児の臓器提供を可能とするように改正すべきという御指摘も含めまして、幅広く国民的議論を行っていく必要があるというふうに考えております。

○水島委員
 今までお話ししてまいりましたような考え方に基づいて、臨床研究として脳死臓器移植を位置づけ直し、臨床研究としての透明性、手続をきちんと守ることを条件に、希望する人に限って子供もドナーとなれる道筋をつくるべきだと思いますけれども、先ほど大臣は個人としては何とかお子さんの臓器提供をということでおっしゃっておりましたけれども、このような考え方についてはどのようにお考えになりますでしょうか。

○坂口国務大臣
 今水島委員が御指摘のように、臨床研究という立場に立ってやれればすべてがうまくこれでもう割り切れるかといえば、そこは、私は正直なところは、委員ほど心の中がすっきりと割り切れておりませんで、まだ何かそこには、そういう割り切り方をすれば本当にそれで、それだけで議論が尽くせるかなという気持ちが若干残っておりますことをひとつお許しいただきたいと思います。
 一つの考え方であろうというふうに思いますし、なるほどそういう考え方があるかというふうにも思った次第でありますけれども、今局長からも答弁いたしましたように、そういう考え方であるにいたしましても、なおそれらを中心にしていろいろの議論をひとつもう少し整理をしなければならないんだろうというふうに思いますから、貴重な御意見としながらも、しかしそれらを中心にしてもう少し議論をさせていただきたい、そういうふうに思います。

○水島委員
 ありがとうございます。
 臓器提供に関しては、家族への配慮が重要であるのは言うまでもございません。子供の場合には、特に子供を失う親の気持ちに対しては、慎重の上に慎重に配慮する必要があると思っております。
 臓器移植、特に脳死臓器移植は実際にはごくわずかの人にしかかかわりのない問題でございます。私は、先ほども申しましたけれども、人の死は脳死か心臓死かという生命観や価値観を押しつけ合うというような構造に陥ることなく、多様な価値観、多様な生命観が尊重されるようなそんな状況の中、また一般の医療不信が臓器移植という問題と複雑に絡み合うことなく、希望する人にはこの新しい技術に参加できる中立的なシステムをつくっておくことが今の日本においてとるべき道ではないかと思っております。
 自分自身も、子供がもしも脳死状態になったときに臓器提供を申し出る気持ちになれるかどうかはわかりません。でも、透明性がきちんと確保され、臓器提供を拒否しても不利益をこうむらない環境が保障されることを条件に、子供のドナーからの脳死臓器移植が可能になるよう法律の枠組みを変えることは必要なことであると考えております。脳死臓器移植にかかわるさまざまな人の気持ちに十分な配慮をした上で、ぜひこの問題を前向きに御検討されることを大臣に改めてお願いを申し上げたいと思います。
 次に、摂食障害について質問をさせていただきます。
 昨年の五月十八日の厚生労働委員会でも、私は摂食障害について質問をさせていただきました。また先日の新聞でも報道されましたけれども、中学卒業から高校三年まで、女子学生を追跡した昨年度の厚生科学研究の結果、神経性無食欲症に該当する極度の体重減少が見られたのは二十人に一人ということで、また四人に一人はその予備軍だったということでございます。この結果からも、摂食障害が極めて緊急で集中的な取り組みを必要とする問題であるということがおわかりになると思います。
 昨年の質問では、私は、専門的な治療機関をつくることの必要性、診療報酬面での配慮の必要性、メディアの問題、国際的な治療ガイドラインに基づいて日本でも検証することの必要性などについて取り上げさせていただきました。その後、約一年が経過しようとしておりますけれども、私が質問した項目について、特に摂食障害に対してということで、何か検討していただけましたでしょうか。

○高原政府参考人
 摂食障害につきましては、委員御指摘のとおり、早急に行政的にも手段を講ずるべき領域であると考えております。
 まず、専門家の養成でございますが、昨年度から医師、看護師、精神保健福祉士などを対象に思春期精神保健対策専門研修会を実施しておりまして、現在のところ合計四百三十一名が研修を終了しております。また、これを民間で担っていただいております日本児童青年精神医学会におかれましては、会員が二千三百九十八名というふうに承知しておりますし、特に児童、青年の精神科医療を担っていらっしゃいます通称全児研会員病院数、現在十七施設というふうに承知しております。
 それから、診療報酬についてでございますが、従来より摂食障害の患者に対する精神治療につきましては通院精神療法等として評価されているところでございまして、今回の診療報酬改定におきまして、精神科専門療法の質の向上を図る観点から、初診時における評価の充実及び児童、思春期の患者に対する評価の充実が行われた。また、入院医療につきましては、精神疾患患者への入院医療の提供の充実を図る観点から、児童・思春期精神科入院医療管理加算が新設されたわけでございます。
 それから、委員お尋ねの、国際的なガイドライン等をどういうふうに生かすかということでございますが、私ども、ちょっとインターネットで検索したところ、約二十四のイーティング・ディスオーダーに関するガイドラインが出されております。また、専門誌といたしましては、インターナショナル・ジャーナル・オブ・イーティング・ディスオーダーとか、イーティング・アンド・ウエート・ディスオーダーズなどというものが出ているということは承知しておりますが、ちょっと、私どもの力では完全にフォローはできておりません。しかしながら、MEDLINEとかMEDLINEプラス、あるいはイギリスのナショナル・エレクトロニック・ライブラリー・オブ・ヘルスなどのデータベースを適宜利用いたしまして、国際的な行政水準、そういったものにおくれないように摂食障害につきましても努力してまいりたいと考えております。
 以上でございます。

○水島委員
 今の御答弁をまとめますと、つまり、思春期精神保健に関しては外に見える形で幾つか進歩をしていただいた、けれども、事摂食障害ということに限っていえば、これから努力されるところである、そのように理解をいたしました。
 また、私は先日、健康増進法案に関して厚生労働省から資料をいただいたわけでございますけれども、その資料の中にも含まれておりましたが、ボディー・マス・インデックスが一八・五未満のやせの人の割合は二十代、三十代の女性では二十年前からふえ続けており、それ以上の年代の女性また男性全般と比較してかなり異様な変化となっております。二十代の女性に至っては、四人に一人がやせということになっているわけでございます。
 こうやって見ますと、若い女性のやせというのは深刻な社会現象であると思います。なぜこのようにやせている若い女性がふえてきたと分析していらっしゃるでしょうか。

○下田政府参考人
 先生御指摘のように、国民栄養調査を見ていきますと、BMI、ボディー・マス・インデックスで分類をいたしておりますが、やせに該当する女性がこの二十年間で倍増しておるといったことで、四人に一人、二十代の場合はやせの方がおられるということは事実でございます。
 その背景でございますが、平成十年の栄養調査の結果を分析いたしてみますと、客観的な指標ではやせに該当する女性、これはBMIでは一八・五未満でございますが、こういうやせておられるにもかかわらず自分自身では普通ないし太っているというふうに自己認識をしておられる方が、二十歳代の女性では五〇・八%、三十代の女性では三三・三%というふうに、思っておられるわけでございます。
 また、なぜ体重コントロールを心がけているかと聞きましたところ、きれいでありたいからと回答した人が、二十歳代では五一%、三十歳代女性では二三・一%。つまり、やせイコールきれいというような認識がその背景にあるというふうに考えられるわけでございます。
 このような状況を踏まえまして、健康日本21、厚生労働省では実施しておるわけでございますが、適正体重の維持といった観点から、女性のやせの割合を減らすことを目標として種々の啓発活動を行っておるところでございます。

○水島委員
 今いろいろと御説明を伺ってまいりましたけれども、啓発活動という言葉も出てまいりました。
 そもそも厚生労働省としては、このやせ願望というもの、また摂食障害という病気をどのように理解されているのでしょうか。正しい理解がなければ、施策を講ずることもできませんし、啓発活動においてもピントの外れた啓発活動ということになってしまうと思います。
 昨年伺いましたときには、大臣にとってはかなり耳新しい話題であったようでございますけれども、その後一年近くが経過いたしました。現時点での御理解はどのようになっておりますでしょうか。

○坂口国務大臣
 昨年も御質問をいただいて、水島委員がお書きになりました本もちょうだいをいたしました。ちょうだいをいたしました割には勉強が進んでおりませんけれども、しかし、昨年よりは進んできたというふうに思っております。
 きょうは、何か口頭試問を受けているような感じでございますけれども、摂食障害、思春期でありますとか青年期に発症することの多い病気でありますから、代表的なものは、精神性無食欲症それから精神性大食症であるというふうに思います。これは先生の本にも書いてございました。特徴的な症状は、やはり拒食、大食という食行動の異常でありますが、問題は、その食行動の異常が何によって起こるかということの、その原因のところが一番大事なんだろうというふうに思っています。
 ですから、これを病気と言っていいのか異常行動と言っていいのかわかりませんが、このことがどういう病名で語られるかということよりも、その原因が何によって起こるかということに着目をしながらこういう状況を克服していくということが今大変大事になっているのではないかというふうに思っています。
 これは、単に身体的なもの、精神的なものという言葉では割り切れない、もう少し幅の広い、社会的なさまざまな環境もあるのでしょうし、あるいはまた社会、文化的な要素もそこにはあるのであろうというふうに思っておりまして、わかったようなわからぬような答弁でございますけれども、このぐらいで御勘弁をいただきたいと存じます。

○水島委員
 ありがとうございます。少なくともことしの大臣の御答弁からは、これは身体的な問題また精神的な問題だけではなく社会的な要因もあるのではないかと、いろいろな角度からお答えをいただいたわけでございます。
 私自身は、精神科医としてこの病気を一番の専門にしておりまして、そのときに、本当に行政が、このような病気の現状、このような病気で苦しんでいらっしゃる方たちの現状、そして、それを医療の中で特殊な扱いをしていくことの必要性というものを本当に理解していないな、そのようなことを強く感じたことも、私自身が政治の世界に参加をさせていただいた一つの動機であったわけでございます。
 昨年、ことしと、このように委員会で取り上げさせていただきまして、確かに今までなかなか御理解をいただいていなかったのではないかということをまた改めて感じているところでございますけれども、先ほどの御答弁で、思春期精神保健に関してはこの一年間で多少の進歩はあったけれども、摂食障害そのものについてはまだまだだということを、私自身が要求をしております、また求めております医療のレベルというものに比べますと、本当にまだまだおくれているのではないかと思っております。
 先ほど御答弁の中で、国際的な雑誌にも目を通されているというようなことでございましたけれども、それにしては、随分と施策がおくれているのではないかと思わざるを得ないところがございます。ぜひ、主要な雑誌に掲載されます論文に関してはしっかりとお目通しをいただきまして、それを行政の中に生かしていただきたいと思っております。
 また、昨年も申し上げましたけれども、イギリスの政府がボディーイメージサミットを二〇〇〇年に開き、多様な体型のモデルを起用するようメディアに自主的な取り組みを要求したりというようなことが行われておりまして、これは明らかに日本の政府よりは先を行っていると言えると思います。
 今の日本では、忙しい精神科臨床の片手間では、摂食障害の患者さんに十分な手間や時間を割けない。また、専門的なノウハウを持った治療者が少ない。患者側から見れば、どこに行ったら摂食障害の治療が受けられるかわからない。研究という観点から見ても、極めて貧困な環境でございます。例えばアメリカのコロンビア大学には、摂食障害の専門ユニットがあって、入院患者さんは、臨床研究に参加することを条件に治療費を免除される。また、同じような患者さんが集まるので、良質な研究を効率的に行うことができるというようなメリットがあるわけでございます。
 私は、日本にも摂食障害の専門センターをつくって、治療、研究、教育をするとともに、やせ願望全般についても啓発活動を行っていく必要があると思っております。昨年もそのように申し上げましたけれども、やはりこのたびの厚生科学研究の結果を見ましても、これはかなり緊急の課題ではないかと思っておりますので、思春期精神保健全般に取り組んでいただくことはありがたいことですけれども、事この病気に関して、やはり専門のセンターが必要ではないかと思いますけれども、大臣のお考えはいかがでしょうか。

○坂口国務大臣
 行動異常の人たちが非常にふえているということは先がた御指摘をいただいたとおりでございますが、それを真正面から受けて立つ、そうした医療機関というのはいまだないというふうに私も思っております。ただ、国立精神・神経センターにおきましてこの問題を取り上げておりますのと、それから、今回できました成育医療センター、ここにおきましても、こうした問題も取り上げていただくことにいたしております。
 一つの国立病院をそっくりそのまま、拒食症とかこうしたものだけを取り扱うようにするということは、あらゆることを考えますとなかなか難しいというふうに思いますが、しかし、どこかの国立病院に一つ、かなりそこを専門的に取り扱う分野というものをつくり上げていくということは十分可能なことだろうというふうに思っておりますので、例えば今まで精神・神経センター等でおやりをいただいているということになれば、そうした分野をもう少し今後拡充をしていくというのも一つの考え方でございましょうし、あるいはまた、他の分野でそういうところをつくるというのも恐らく不可能ではないというふうに思います。
 何かそうした形でどこかに、あそこを訪れたら相談に乗っていただけるという場所がやはり大事なんだろうというふうに思いますので、そこはもう少し心がけていきたいというふうに思います。

○水島委員
 ぜひ力を入れて御検討いただきたいと思います。
 やせが及ぼす影響というのは、実は想像を上回るものがあると思います。もちろん生命の危険性に直結することもございますし、また、それほどのものでなくても、骨に対して深刻なダメージを与えていく、それはもう限りなく長期に及ぶというような問題もございます。ぜひこの緊急性を御理解いただいて、きちんとした専門の分野をつくっていただけますようにお願いいたします。
 また、やせ願望の根底にございますのは、実は男女共同参画問題でございます。女性は中身よりも外見というような価値観がある限り、女性が容姿によって振り回されるというような構造は変わらないわけでございますので、施策をお講じになるときには、縦割り行政の枠組みにとらわれず、自分は男女共同参画担当ではないとおっしゃらずに、ぜひ本質的な議論をしていただけますようにお願いを申し上げまして、質問を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。






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