厚生労働委員会
(2002年4月5日)



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C型肝炎薬害、障害者雇用



○森委員長
 次に、水島広子君。

○水島委員
 民主党の水島広子でございます。
 まず、本日、事前に通告をしておりました質問に入ります前に、けさの新聞報道に基づいて一つ質問をさせていただきたいと思います。
 けさの新聞によりますと、非加熱濃縮血液製剤によるC型肝炎感染問題で、旧ミドリ十字が、一九七七年にアメリカで同じ成分の製剤がFDAによって製造禁止になった直後に、その事実を把握していたこと、そして八四年には、旧厚生省に対して、製造を禁止したアメリカの関連資料などを再評価のための準備資料として提出していたということが書かれております。
 しかし、旧厚生省は即座に対応をとらず、再評価を検討した調査会では承認取り消しや使用限定ということにもならず、結果的に三年後、フィブリノゲンが投与された産婦八人が肝炎を発症したことが発覚して、旧ミドリ十字が製剤を自主回収するまで販売が継続されていたということが報道されているわけです。
 なぜ厚生省では繰り返しこういうことが起こるのでしょうか。もう問題は出尽くしたと言っていても、またこうやって新たに同じような構造の問題が出てくるわけでございます。今回の記事の文章を読んだ限りでは、担当の厚生官僚の行政不作為を私は感じます。
 厚生労働省では経緯の調査をするということですけれども、いつまでに調査をされるのか、そしてその結果、当時の担当者の責任を追及していくつもりかどうか。なぜ繰り返しこういう構造の問題が起こるのか、どのようにすれば今後二度と起こらないようにできるのか。冒頭に大臣のお考えをお聞かせください。

○坂口国務大臣
 けさの新聞につきましては私も拝見をしたところでございますが、一九七七年に旧ミドリ十字がアメリカにおきましてフィブリノゲン製剤の使用禁止ということを受けた、そのことについて、先般の新聞におきましても、厚生労働省が知らなかった。そして、きょうの新聞におきましては、一九八四年に旧ミドリ十字から厚生省に報告をしていたけれども、それに対する対応がすぐに打たれなかった、そこに三年間ぐらいの誤差が生じている、こういう話でございまして、きょうも厚生労働省に参りましてから事の次第を聞いたわけでございますが。
 きょう夕方、正式に旧ミドリ十字から、旧ミドリ十字でお許しください、報告が出るようでございます。間もなく出ますので、出ましたら私も早速内容を精査したいというふうに思っておりますが、それだけではありませんで、それが出ました当時、どういうふうに厚生労働省がそれの受け付けを行い、そしてどういう議論をその後その中でしていたのかということにつきましても、至急に調査をしたいというふうに思っております。そして、一九八七年まで対応の変化がなかったのは一体なぜなのかということにつきましても、はっきりとそこで調べたいというふうに思っている次第でございます。
 いずれにいたしましても、今日までいろいろな病気のことにつきまして繰り返してきているように見えるわけでございますが、今までの、HIVでありますとか、あるいはヤコブの問題でございますとか、そうしたいわゆる新しい病気、今まで全く予期せざるものが出てきた場合の対応と、そしてC型肝炎の問題とは、若干違うと私は思っています。
 と申しますのは、C型肝炎というはっきりとしたウイルスが発見をされまして、そしてそれがわかるようになりましたのは一九八八年でございますけれども、その前から、もう戦後間もなくから、いわゆる輸血後肝炎、あるいはまた非A非B肝炎というふうに言われた時期もございましたけれども、輸血や血液製剤によってそういう病気が起こるということは、もう医療従事者の間で周知の事実でございました。しかし、血液を使わないわけにはいかない、そういう副作用があるけれども使わざるを得ないというので、使ってまいりました。そうした経緯がございますので、若干私は違うというふうに思っております。
 ただ、普通の輸血用の血液と、そして血液製剤というものとは、また取り扱いも違うというふうに思っています。一般の輸血用の血液の場合には、一人の人の血液で成り立つわけでございますが、血漿製剤の場合には、多くの人の血液の中からこの製品をつくるということでございますから、多くの人のを使えば危険性というものは非常に高まるわけでございますから、それに対する配慮というものがやはりなされてしかるべきというふうに思っております。そうしたことがどのように今まで扱われてきたかということにつきまして、至急に調査をしたいと思っています。そんなに長い時間がかかるわけではないと思っております。

○水島委員
 一般的なこととして考えまして、再評価制度に基づいて再評価のために提出をした資料の中に、FDAでは既に製造を禁止にしているというような情報が含まれていたにもかかわらず、使用限定ですとか承認取り消しということにならない、全くそれについて問題がなかったというようなことは、一般的に考えられることなんでしょうか。この新聞を読んだ複数の方たちからは、どういうことなのか全くそれが理解できないという声が上がっておりますけれども、大臣のお考えはいかがでしょうか。

○坂口国務大臣
 ですから、そこをよく、報告書を、あるいはまたその当時の対応の仕方を見て私も意見を言いたいというふうに思っておりますが、現在のところ、報告書の内容や、その当時の、一九八四年に出ました報告のその内容に対してどう対応したかということが、今のところ私もちょっとわかりませんので、それを見まして、なぜそうであったかということを知りたいというふうに今思っているところでございます。

○水島委員
 本当に断固とした態度で、一つも、何も情報を隠すことなく、すべて御検討いただいて、御発表いただけるということをお約束いただけますでしょうか。

○坂口国務大臣
 そうしたいというふうに思っております。

○水島委員
 ぜひよろしくお願いいたします。そして、もう本当にこんな同じ構造を二度と繰り返さないように、何も知らない方たちが行政の問題によってこれ以上健康被害に遭わないように、ぜひ本当にこの報道を最後にしていただけるように、全面的な調査をお願いしたいと思います。
 そして、本日の法案の質問に入ります前にもう一点お伺いしたいことがございますが、この四月から全面施行されておりますDV法に関連して、一つお伺いいたします。
 二〇〇〇年に抜本的に改正された社会福祉法は、従来の給付型の福祉から、個人の自立を基本とし、その選択を尊重した制度を確立するとともに、地域での生活を総合的に支援するための地域福祉の充実を理念としております。そして、その理念に沿って、地域福祉計画を今年度中に策定し、来年度から実施することとなっております。
 社会的な援護が必要な人として、私は、DV被害者の女性も含まれると思いますけれども、そうお考えになっておられるでしょうか。そして、市町村の地域福祉計画策定に際しては、DV被害者も含むよう自治体に指導しておられるでしょうか。お伺いいたします。

○狩野副大臣
 市町村地域福祉計画は、地域の実情を踏まえて、住民の方々の参加をいただいて策定することになっております。ですから、厚生労働省といたしましては、今回、市町村が計画を策定する際の参考となるよう、地域福祉計画策定指針を通知いたしました。その中で、これからの地域福祉推進の背景と必要性として、家庭内暴力についても位置づけをしております。
 したがいまして、各市町村における計画の策定に当たっては、委員御指摘のように、配偶者による暴力に関する相談支援体制等を含め、地域福祉のあり方について幅広く検討されることになると思います。

○水島委員
 それでは次に、本日の法案の質疑に入らせていただきたいと思います。
 私は、二〇〇〇年十月の厚生委員会でも、雇用率制度の中に精神障害者を含めていくことができそうであるかという質問をさせていただきました。それに対して当時の労働省から、二〇〇二年度までにできるだけ結論を得たいという趣旨の御答弁をいただきました。ところが、今回の改正でも、結果として雇用率制度の中に精神障害者を含めることはできませんでした。
 先ほど公明党の福島議員の御質問に対しまして、大臣は、次の見直しのときに精神障害者の問題を大きな柱の一つとしていきたいと答弁されておりましたけれども、これはつまり、五年後の次回見直しのときには雇用率制度の中に含まれるということを意味しているのでしょうか。

○坂口国務大臣
 そうではなくて、次の新しい障害者プランができますときに、その中に、障害者の位置づけとして、ただ単に身体障害者や知的障害者の問題だけではなくて、精神障害者を含めた一つの大きな柱にしていかなければならないという決意表明をしたわけでございます。

○水島委員
 それでは改めてお伺いいたしますけれども、では、何年後にこの精神障害者が雇用率制度の中に組み込まれるということが実現するのでしょうか。まずお答えいただきたいと思います。

○坂口国務大臣
 何年後と詰められても、今すぐに答えられないわけでございますが、しかし、この精神障害者の問題は既に検討を開始いたしておりますから、そんなに長い時間がかかるわけではないというふうに思います。今まではなかなか着手できなかったわけですけれども、既にこの問題につきましては着手をいたしております。
 先ほど一例を挙げましたように、精神障害者の皆さん方を雇用しましたときに、それではプライバシー等の問題を一体どうするのかといったようなこと、そして、既にお勤めになっている皆さん方で精神障害者になられた場合に、その人たちをカウントするのかしないのかといったような問題もございますし、その人のプライバシーにこれもかかわってくる問題でございます。あるいは、繰り返しでございますけれども、非常に精神状態が、精神というか病状が不安定な皆さん方を一体どうするのか、安定した人たちを対象にするのかといったようなことについて、もう少し議論を重ねて、そして決定をしたい、そんなふうに今思っているところでございます。

○水島委員
 行政の世界では五年、十年と一言で言いますけれども、十年というと、三十歳の方が四十歳になる、四十歳の方は五十歳になる、それほど本人にとっては非常に長い年月ということになるわけです。ですから、なるべく早くとおっしゃった、そのなるべく早くが五年なのか十年なのかというのは非常に大きな違いであると思いますけれども、大臣は十年もかかるとお考えでしょうか。

○坂口国務大臣
 十年しましたら私もいないんでしょうし、そんなに長い歳月を考えているわけでは決してございません。早いうちに決定したいと思っております。

○水島委員
 今、十年はかからないと言ってくださいましたので、つまり五年後の見直しのときには必ず入れていただけるものと解釈をさせていただきます。
 ぜひ至急御検討を進めていただけますように、そして本当にもう五年も十年も前からずっと、仕事をしたいと思ってこの法改正を待っている障害者の方たちがたくさんいらっしゃいますので、ぜひその方たちのためにも全力で取り組んでいただきたいと思っております。ぜひ進行ぐあいについてまたお聞かせいただければと思っております。
 さて、今回それでもこの雇用義務制度の対象に精神障害を含めるということが決まったわけですけれども、振り返ってみますと、この合意が得られるまでに五年かかったということになるわけです。既に雇用率制度に精神障害者が含まれているドイツやフランスに比べて、日本はなぜこんなにおくれているのでしょうか。

○澤田政府参考人
 精神障害者に対します雇用率制度の適用のおくれにつきましては、いささか古いわけでありますが、平成八年の障害者雇用問題研究会報告におきましていろいろ指摘されております。
 その主な点を申し上げますと、精神障害者の施策が身体障害者や知的障害者の施策と比べると、八年当時の報告でありますが、事実おくれていた。それの背景としては幾つかございまして、一つは、対象とすべき精神障害者の範囲とか実態が明らかでない。二つ目に、適切な雇用管理のあり方、例えば精神障害者の方の職業適性・能力を企業の場でどう把握して引き出していくかとか、医学的管理をどうするかとか、こういうことが必ずしも明らかになっていない。三点目に、障害が安定していないことが多く、雇い入れ後の障害の状況を継続的に把握する体制が企業においてもなかなか不十分である。あるいは、職業リハビリテーション等々の職場定着を図るための社会としての体制が不十分であるというような問題が当時指摘されておりました。
 この点について、この間、私ども問題点を少しでも克服すべくいろいろ政策を打ってまいりましたが、残念ながら、今回の見直しで精神障害者の方を雇用率の対象にする段階まで、社会的、企業の状況等々が至っていないということでございます。

○水島委員
 つまり今のお話というのは、事業主側の精神障害というものに対する理解がおくれているというふうに受け取りましたけれども、これはいろいろなところで指摘されていることでもございますが、大臣は、なぜ事業主側の理解がおくれているとお考えになりますでしょうか。

○坂口国務大臣
 事業者側の考えがおくれているというふうに言いますよりも、私は、一般社会における精神障害者に対する考え方というのが非常におくれていたというふうに思っております。
 現在でも、この精神障害者の仕事場を、仕事を何とかふやさなければいけない、つくらなければいけないというので、新しいそうした仕事のできるところをつくりたいというふうに思いましても、なかなか近所の皆さん方から反対があってできないといったようなことがあるわけでございまして、差別意識というのが非常に強かった。したがいまして、企業の中にもそれが反映をされていたというふうに私は思います。
 ですから、精神障害者に対する温かい思いやりというものが社会全体にできるようにしていくということが一番大事でございまして、そうしたことも念頭に置きながら、この雇用の問題につきましても前に進めていきたいと思っているところでございます。

○水島委員
 おっしゃるとおり、一般社会の差別意識というものはございまして、それについてはまたこの後お伺いしていきたいと思うんですけれども、ただ、雇う側の意識というものは、実際に雇ってみないと理解は進まないという現実がございます。先日、私もアメリカのジョブコーチのビデオを見ましたけれども、その中でやはり事業者の方が、雇ってみて初めてこちらの方がいいんだということに気がついたというようなことをコメントされていました。だからこそ、雇用義務をかけて、とにかく共生をしていくということ、雇用していくということが必要であると私は思っております。
 先ほど、そんなに長くはかけないということで御答弁をいただきましたので、次回の見直しには必ず雇用率制度に入れていただきたいと重ねてお願いを申し上げます。
 さて、その差別の問題でございますけれども、私の知人の視覚障害者の方は職場で、あなたは法律で決められているから雇われているけれども本当に邪魔な存在だと、いつも直属の上司にいじめられているそうです。職場における差別やいじめを防ぐためにはどうするおつもりでしょうか。差別はあっても、もちろん職を失いたくないという意識がございますので、障害者御本人がみずから申し立てるということは現実的には難しいと思います。このような特性を理解した上でどう対応されますでしょうか。

○澤田政府参考人
 障害者の方の職場への適応に向けた適切な支援を行うということで、現在、公共職業安定所の担当官が障害者の就業する場所を訪問して職場適応状況の把握に努めておりますが、今後、今回御提案申し上げております障害者就業・生活支援センターによる相談援助体制を整備するとともに、ジョブコーチによる障害者の職場適応への継続的な支援も進めていきたい、こう思っています。
 実際に職場におきまして差別とかいじめが把握された際には、公共職業安定所が主宰しております障害者雇用連絡会議、ここには地域の障害者にかかわるいろいろな機関、施設が結集しておりまして、そうした会議におきまして、公共職業安定所が中心に、関係機関の協力連携のもとに迅速適切な対応を図るということにいたしております。この障害者雇用連絡会議は定期的に開催しておりますが、急を要する場合には迅速に対応するということで、少しでもいじめ等々の問題に対応できるように努力をいたしているところでございます。

○水島委員
 今、ジョブコーチのお話が出ましたけれども、このジョブコーチが、職場の対人関係のトラブルですとか職場内のいじめですとか、そういったことの解決のためにどのような機能を果たすのか、どのようなことがその職務内容であるのかということは、どちらかに明記されるのでしょうか。

○澤田政府参考人
 ジョブコーチは、障害者の職場適応を図るための支援を継続的に実施するという基本的な使命がありますので、職場適応を図るという中に、いじめとかそういう問題も当然含まれてまいります。
 ジョブコーチの支援は、障害者の方が就業している間すべてではなくて、一定期間でございますので、ジョブコーチによる支援が終了した後も職場において障害者に対する適切な支援が実施されるように、支援の方法等についてジョブコーチが事業所に伝えていくという役割も重要なものとして位置づけられております。
 ジョブコーチが、個々の企業におきますみずからの支援の状況を、ジョブコーチが所属いたします地域障害者職業センターに業務報告をするということになっております。そういう中で、いじめ等が具体的に把握された場合には、障害者職業センターにおいて、公共職業安定所など協力機関、関係機関と連携して、事業所に対する助言などをやるということでございまして、こうしたジョブコーチの仕事は、当然ながら、職務規程という形で明確化することを予定しております。

○水島委員
 それでは、先ほど大臣からもお話がございました精神障害者に対する一般の差別意識について、お伺いしたいと思います。
 この精神障害者に対する差別意識というものは、多分に未知の者に対する偏見という色彩が強いと私は思います。私自身のことを振り返りましても、精神科医になるまでは精神障害者のことをほとんど知りませんでした。このような現状を踏まえまして、精神障害者に対する差別意識を解消していくためには何が必要だと考えられるでしょうか。

○狩野副大臣
 精神障害者に対する誤解とか偏見が、精神障害者の地域での自立や就労、社会復帰施設の整備などに当たって大きな阻害要因となっております。これは、委員は専門家でいらっしゃいますから、よく御存じだと思います。このために、地域住民に対する正しい知識の啓発普及、そしてまた精神障害者と地域住民との交流などを通じて、その解消を図る必要があると思います。
 厚生労働省といたしましては、地方公共団体とともにシンポジウムなどを継続的に開催し、精神障害者に対する誤解、偏見が是正されるよう呼びかけております。また、厚生科学研究において、精神障害者の偏見除去等に関する研究を実施するなど、科学的な観点からも偏見の解消に向けた取り組みを進めております。また、精神障害者社会復帰施設の設置に当たっては、精神障害者への理解と支援を求めるための地域交流スペースを整備するなど、進めております。
 今後とも、あらゆる手段を尽くして、精神障害者に対する誤解や偏見の是正に努めてまいりたいと思っております。

○水島委員
 特性を理解しろしろと講義をしていくよりも、やはりいつも身近に当たり前のように共生しているということ、また、もちろん症状に波がありますので、症状が多少悪くなったときでもきちんと地域でサポートされる体制があるというような安心感が必要なのではないかと思いますけれども、これについては賛成していただけますでしょうか。

○狩野副大臣
 これはもう絶対、賛成というか、ぜひそのように進めていきたいと思っております。障害者と地域の人たちが本当に一緒になってやっていくという環境づくりが大事だと思いますので、それは心がけてやっていきたいと思っております。

○水島委員
 障害者全般に関する意識を根本から変えるためにも、アメリカのADAのような障害者差別禁止法を制定する必要があるのではないかと思いますけれども、大臣は、これについてはどうお考えになりますでしょうか。

○坂口国務大臣
 以前にも同じような御質問をいただいたことがございましたし、その趣旨というものにつきましては私も賛同をしている一人でございます。ただ、進め方というものをどういう形で進めていったらいいのか、日本の国の中の環境によくマッチした形で進めていくにはどういうふうにすべきなのか、その辺のところを十分に議論をして進めなければならないというふうに私は思っております。
 ただ、雇わなければ、あるいは障害者を雇い入れなければすぐ裁判ざたにするといったようなことが果たしていいのかどうか。そういうやり方ではなくて、本当に自然に障害者の皆さん方を社会が受け入れていくような形にどう軟着陸させるかということが大事だというふうに私は思っています。
 先ほどから出ておりますように、障害者に対する差別、偏見というのも、なかなか正直言って根強いものがございまして、これはなかなかそう簡単にはとれないものなんですが、どうすればこれをとっていくことができるのか。
 やはり、精神障害者のその病状、一番厳しいときの病状等をごらんになって、そして、そのことが余りにも現実と違い過ぎるので、そのことに対して非常に恐怖感を持たれるというようなこともあるというふうに私は思うんですが、お互い生きております以上、ある一つの病気になれば、あるいはまた環境によればお互いそういうふうな状況になり得るんだという、お互いの理解みたいなものをもとにして、そして、やはりこの精神障害者の問題につきましては、温かくひとつ見守っていかなければならないし、その皆さん方に対する受け入れの体制をつくり上げていかなければならないというふうに思っております。

○水島委員
 最後にお伺いしたいんですけれども、大臣は、精神障害者の自立・就労支援をしていくことのメリットをどのようにお考えになっていらっしゃるでしょうか。これは、障害者御本人にとって及びその社会にとって、それぞれの観点からお答えをいただきたいと思います。
 また、昨年の大阪池田小学校事件の直後に、小泉首相が偏見に満ちた軽率な発言をしたり、また各地で差別的な事件が相次いだりしたことからも、精神障害者を差別する社会の風潮は決して改善しているとは言えないと思います。
 先ほど副大臣からも御答弁をいただきましたが、差別をなくすための環境づくりに、この雇用の問題を初めとして、行政の果たす役割は非常に大きいと思っております。日本は、精神科の平均在院日数がずば抜けて長いなど、精神障害を取り巻く環境が国際的に見てもかなりゆがんでいると思います。もうこの状況を打開するためには、今のように温かく見守っていただくとともに、やはり大臣のリーダーシップが必要ではないかと思いますけれども、最後に、どのように取り組んでいかれるかという決意表明をお伺いしたいと思います。

○狩野副大臣
 もう委員御指摘で、よく御存じだと思いますけれども、精神障害者の自立・就労支援を図ることによって、障害者の本人にとりましては、社会経済活動への参加意識を持つこととか、それからまた、この機会を持つことによって収入が得られ、自立した生活の可能性も開けること、そして、それによって自信を持つことができるというふうに思っております。そして、それと同時に、生活のリズムが形成され、みずからの生活を律することによって病状への好影響が得られるということで、メリットが期待されるというふうに思っております。
 また、精神障害者が働きながら自立した、生き生きと暮らせる社会ということは、すべての人が生き生きと働ける社会でありますし、我が国社会のすべての人が持てる能力を発揮し、有意義な人生を送っていくことが可能になるというメリットがあるというふうに思っております。

○坂口国務大臣
 この触法精神障害者という言葉が適当なのかどうかも私わかりません、あるいは余り適当な言葉でないのかもしれないというふうに思っているわけですが、精神障害者の中では本当の一握りの人なんですけれども、繰り返し法を犯すという人があることも、これは事実でございまして、その人たちに対して一体どうしていくかということが、今一つは問われているわけでございます。
 その人たちに対しましては、やはり、普通の精神障害者に対する治療だけではなくて、生活指導でありますとか、さまざまな面から手を差し伸べる必要があるのではないかというふうに思います。この人たちのことをそのままにしておく、普通の、一般の精神障害者の皆さん方と同じようにしていくということによって、一般の皆さん方の精神障害者に対して見る目がかなり悪くなるといったことも私はあり得るというふうに思っております。
 したがって、一般の精神障害者に対しまして温かい施策を実行していきますと同時に、一握りの人ではありますけれども、法を犯す、それも一回のみならず何回も犯すというような人に対しましては、特別にやはり指導を行っていくべきだというふうに思います。それを行いながら、そして問題は、地域にあるいは家庭に帰られた後、その人たちに対してだれが温かく手を差し伸べていくのかということが一番大事になるというふうに思いますので、その地域にあるいは家庭に帰られた人に対する対策というものが、これは特に私は大事だというふうに思っております。
 これは、一般の精神障害者の皆さん方に対しましても、ある程度やはりお話し合いの相手になれる人というのが必要な場合があると思います。御家族の中で生活をしておみえになる方はよろしいですけれども、お一人で生活をしておみえになる方もかなりあるわけでございますから、その人たちに対しましては常に手を差し伸べていく。もう少し具体的に言えば、相談相手になっていく、あるいはまた、就職等のことにつきましても相談に乗っていく、そしてまた、治療につきましてもアドバイスをしていくといったようなことがやはり大事になってくるというふうに思っております。

○水島委員
 ありがとうございました。ぜひ、最後の方に大臣がおっしゃっていたことの方が新聞で大きく取り上げられるような、政府としての取り組みをお願いしたいと思います。
 どうもありがとうございました。





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