厚生労働委員会
(2001年10月31日)



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保育施策、障害児保育、児童扶養手当




○鈴木委員長
 水島広子君。

○水島委員
 民主党の水島広子でございます。
 昨年の神奈川県のスマイルマムにおける虐待死事件や、ことし東京都のちびっこ園で一つのベビーベッドに二人の乳児が寝かされていたことによる窒息死事件など、悪質な認可外保育施設における事件が相次いで起こり、貴重な幼い命が失われております。
私も子供を保育所に預ける親の一人であり、起こってはならないこのような事件をなくすための法整備の必要性を痛感しております。
 また、これらの施設の非常識ぶりは目に余るものですが、一部の悪質な施設のためにすべての認可外保育施設が同様に悪質なものとして扱われてしまうことは懸念すべきです。
私自身、娘がゼロ歳から一歳の半ばまで認可外保育所で本当にすばらしい保育をしていただきました。
また、この十月から部分的に保育をお願いしている文部科学省の職場内保育所、かすみがせき保育室も認可外の保育施設であります。
これら質のよい認可外保育所の名誉を守るためにも、法改正の必要性を感じております。
 スマイルマムやちびっこ園などの事件が、制度のさまざまなひずみの中で起こったことは言うまでもありません。
たまたま悪い保育所に当たったというような結論に終わらせてはならず、どの保育所でも保育の質と安全性が確保されるよう、十分な調査検討に基づいて制度を充実させることが必要です。
 私たちは、さきの通常国会に、認可外保育施設の届け出を義務づけた児童福祉法一部改正案を提出いたしました。
現行法では、都道府県知事に認可外保育施設の立入調査や事業停止、施設閉鎖命令の権限を与えておきながら、肝心の認可外保育施設の開設時届け出が義務づけられていないため、行政側がその存在を把握することが困難となり、結果として責任の所在があいまいになるという事態を招いてきました。
届け出制の創設だけですべてが解決するとはもちろん思っておりませんが、緊急に行うべき措置として提案いたしました。
その後、与党の皆様が本法案の中でその必要性を追認してくださったということに敬意を表します。
 さて、与党案は民主党案とは異なり、第五十九条そのものに届け出の義務を課すのではなく、第五十九条の二を新たに置いて届け出義務を課しております。
その際、届け出義務の対象となる施設について、与党案は「第三十九条第一項に規定する業務を目的とする施設」、つまり、保育を目的とする施設であって「第三十五条第四項の認可を受けていないもの」としていますが、その際、除外規定があって、「少数の乳児又は幼児を対象とするものその他の厚生労働省令で定めるものを除く。
」とされています。
 まず、ここで除かれるのは具体的にどのようなものであるのかをお尋ねいたします。

○根本議員
 ここで除かれる施設は具体的には厚生省令でこれから決まっていくことになりますが、基本的な考え方としては、例えば自分の家で少人数を集めて保育しているいわゆる保育ママと言われる形態がありますが、そういう少人数のところは除くべきではないか。
つまり、認可外保育所で今回届け出の対象にしているのは、要は日々継続的に子供を業として預かる、そういうものをやはり対象とすべきではないかということで、保育ママ的な、二、三人預かっているようなところは、これは過度の義務づけになりますから、そういうところは除外すべきではないか。
 それからもう一つ、先生もおっしゃられましたけれども、職場内保育所というお話がありました。
 今、事業所内保育施設、随分ありますが、これは、例えば病院の看護婦さんのための、病院の中に併設されるような保育所、これは要は、一般に開放されているのではなくて、施設運営主体たる事業所と安定的な関係が期待されますから、そういうものは除いていいのではないかということで、届け出をさせる対象としては日々継続して業として営むものを基本的に対象とすべきではないか、こう考えております。

○水島委員
 今のお答えの中で、少人数あるいは事業所内の場合には預ける方と預かる側との関係性が密であるというようなお答えでございましたけれども、今後、この法律の施行状況を見ていきまして、実際に、ここで除いたものであってもいろいろと問題が起こってくるような事実を把握された場合には、当然、それは省令を改めて、除外されるものをまた変更していくということは考えていらっしゃるのでしょうか。

○根本議員
 考え方としては、届け出というのは、行政側が現況を把握する、こういう考え方が一つ届け出制の大きなねらいですよね。
今回はその届け出制について、届け出制の内容を一般の方にもよくわかるように情報提供して、利用者の便にも資しましょうということも加えています。
 今ちょっと私も答弁を省略して、誤解があったかもしれませんが、実は、届け出対象外の施設であっても都道府県知事の指導監督権限の対象、これにはなりますから、おかしなものがあればこれは指導監督する、これは適用されますので、そこのところのバランスという中で考えていくべき話ではないか、こう思います。

○水島委員
 済みません、また繰り返しのお尋ねになりますけれども、指導監督の対象になるけれども、なかなかその存在を把握しにくいために届け出を義務づけるというのが私たちの考えであり、また今回の、皆様も同じような考えに基づいて届け出制度を創設されたのだと思いますけれども。
 ですから、今の御答弁、指導監督の対象にはなるけれども、事業所内にあるものであったりここで除外されているものであっても、なかなか把握が難しくて、結果として指導や監督がしにくくなる場合には、当然届け出制の対象となってき得るでしょうか。

○根本議員
 これは届け出制ですから、基本的には届け出制というのは義務づけですよね。
そういう義務づけをする場合には、その義務づけをする場合の保護法益と義務づけされる方の制約、このバランスを考えるべきだと私は思うのですね。
ですから、極めて小規模なものについては外した方がいいのではないか。
ですから、もちろん、日々継続してと言いましたが、では週三日やっているものはどうかとか週二日営んでいるものはどうか、ここのところの細かい運用は残りますが、そこはこれから省令で具体的に決めていくべきだと私は思います、その辺の限界の部分は。
 それからもう一つは、事業所内保育施設の場合には、要は事業所に勤めている方の保育施設だから、一般に開放されていませんよね。
それは事業所内との安定的な雇用関係の中での対応ですから、ここは届け出制をさせて、悪いところが、つまり悪質な施設ではないかというようなところは、多分私はここはクリアされるのだと思うのですね、その会社の、事業所内の保育施設だから。
 だから、これはどこまで届け出の対象とするかというところは、保護すべき法益と義務づけとのバランスで考えるべきだ、こう思います。

○水島委員
 そろそろ次に参りますけれども、事業所内であって、もちろん良心的な運営が期待されて、当然そうであるべきものでありますけれども、結局、そこにあるのはやはり保育施設でございますので、預けられる子供から見れば、その環境というのはあくまでも自分の保育環境でございますので、余り楽観的でまたいろいろなすき間ができてしまわないように、すべての子供たちが安心して保育を受けられる環境を提供していただけますように、省令を考えられます際にぜひくれぐれも御検討いただきたいと思います。
 さて、その第五十九条でございますけれども、立入調査、勧告、公表、業務停止、施設閉鎖命令がいずれも「することができる。
」とされているわけですけれども、これらは、行わない合理的な理由がない限り、行う義務がある、そのように解釈してよろしいのでしょうか。

○根本議員
 今回の規定は「できる」という規定で、都道府県知事に要は国民の権利を制約する権限を付与しているのですね。
ですから、例えば改善勧告に従わない者は公表するという権限を知事に与えたので、したがって、その行政処分は知事ができるという法律の立て方になっているのですね。
ですから、知事がどういう処分をするかどうかは、それは当然合理的な判断のもとで、必要な処分を知事がするということでありますから、これは知事の合理的な判断に求められるということであります。

○水島委員
 知事の合理的な判断ということでございますけれども、つまり、問題のある認可外保育施設に対して、立入調査、勧告、公表、業務停止、施設閉鎖命令などがなされていなかった場合に、なされていなかったことを説明する合理的な理由がない限り、都道府県知事には責任があるとみなされると解釈してよろしいのでしょうか。

○根本議員
 ちょっと、その議論の立て方が非常に答弁しにくいのですよね。
 要はこれは知事が立入調査をして、内容を見て、これは非常に悪質だから、だから改善しなさいという判断で改善勧告するわけですね。
ですから、そこは知事がどう判断をするかで、そこの基準の問題だと思うのですね。
指導監督基準というのを用意しておりますが、著しく不適切なものは行政処分の対象にするわけですから。
ですから、そこのところはあくまで知事がどういう合理的判断をするかというところが問われるということだと思います。
 ちょっと議論が、多分かみ合わないのかもしれませんが。

○水島委員
 確かにかみ合っていないようなのですが。
 つまり、合理的な判断は合理的な判断でいいのですけれども、知事の判断の合理性、これから届け出制度になるわけですし、届け出られて、知事はその存在を把握していて、どうもそこで問題があるらしい。
それで、立入調査をしたところ、児童の福祉の観点から非常に問題があるということになった場合に、そこでしかるべき勧告なり公表なり業務停止命令などをしていなかったとしたら、そしてそのしていなかったことについて合理的な説明ができないのであれば、それは都道府県知事の責任として判断されるのかということをお伺いしたいわけです。
 それを判断する上で、例えばスモン訴訟の判例で、することができるでも、しなければならないというような判決が出されているわけでございますけれども、この「することができる。
」というのも同じように考えてよいのかどうかということをお伺いしたいのです。

○根本議員
 この種の規定は、「できる」という規定で知事にそういう処分権限を与えるのが通常の立法例なのですね。
 要は、通常、「ねばならない」というふうに書く場合はどういうケースかというと、例えばいろいろな許認可の申請をして、許認可をします。
そのときに、客観的に法律にこういう条件を満たさなければなりませんよ、そういうような立法、そういうような仕組みの場合には、覊束裁量で「許可しなければならない」というような規定が一般的だと思います。
こういう、行政側の判断によって処分するというような、相手にある種の行為を求めるような規定の場合には、「できる」という規定が法制度上の一般的な規定のしぶりだと思います。
 ですから、今水島委員がおっしゃったようなことは、行政怠慢だった、こういう話ですよね。
ですから、不当であったと。
いや、仮に。
私はそういうことはないと思いますよ。
きちんと指導監督基準もあるわけですから、通常の行政でそういうことをしないということは、私はこういう形のケースの場合にはあり得ないと思いますが、もしそれを怠っていた、完璧に怠っていたということがあれば、それは行政怠慢のそしりは免れないと思います。
ただし、そういうケースは、私は想定できないと思います。

○水島委員
 ということは、行政怠慢というお答えをいただけましたので、合理的な理由がない限り、行わなければそれは行政怠慢ということで、ようやく質疑と答弁がかみ合ったというところで次に行かせていただきたいのですけれども、次に、これらの指導の根拠となっていく最低基準及び指導監督基準についてお尋ねしたいと思います。
 児童福祉施設最低基準第三十三条第二項によると、「保育士の数は、乳児おおむね三人につき一人以上、」などというように、おおむねと書かれております。
また、認可外保育施設指導監督基準は、「主たる保育時間である十一時間については、概ね児童福祉施設最低基準第三十三条第二項に定める数以上であること。
」とされています。
それぞれのおおむねの意味及びそのおおむねの幅というものをお答えいただきたいのです。

○岩田政府参考人
 児童福祉施設最低基準におきましては、今議員がおっしゃいましたように、人員配置についてはおおむねと規定されておりますけれども、その事情でございますが、年度途中に子供の出入りがございます。
その場合、わずかな入所児童数の変動によりまして配置すべき保育士の数がふえたり減ったりということは、実際上なかなか対応が難しいだろうということがございますので、そういう不都合を回避するためにおおむねという表現を使っております。
 これは、認可外保育施設の場合の指導監督基準のおおむねも同様の事情でございます。

○水島委員
 今、認可外保育施設の指導監督基準のおおむねも同じだというお答えだったのですけれども、そもそも、そういうふうに変動があるから最低基準の方におおむねがついているわけですから、もしそのような理屈立てでいくと、次のおおむねは要らないのじゃないでしょうか。

○岩田政府参考人
 議員の質問が正確に理解をできていなければお許しいただきたいのですが、職員数、保育士の配置基準につきましては、認可外保育士、認可外保育施設につきましても、認可施設と同様、子供の年齢に応じて、何人の子供に対して保育士何人という基準になっております。
 認可と認可外の違いは、その場合に、認可施設の場合には全員が有資格者でなければいけないということに対しまして、認可外の場合には有資格者が三分の一程度でもいたし方ないというようなところ、そこの違いでございまして、配置すべき保育士の数の数え方については認可も認可外も同じでございます。
そういう意味で、両方におおむねがついた基準になっております。

○水島委員
 ということは、指導監督基準に書かれているおおむね最低基準に定める数以上であることというおおむねは数にかかる、三人につき一人というような。
結局、それをまた繰り返しそこで言っているという意味に今受け取りましたけれども、そういうことでよろしいわけですね。
 うなずいていただきましたので、そうだということで次に行かせていただきたいのですが、そうしますと、有資格者であるかどうかだけが違いであって、その数は同じである、そのようなことでございますが、きのうも、ちびっこ園の事件の初公判が行われました。
その冒頭陳述の中で、ちびっこ園では、通常総収入の約八割を占める人件費を三一%以下に抑えようとしていたという驚くべき実態が明らかになりました。
職員が十分に配置されているということは保育の質を確保する上での命綱であるわけですけれども、悪質な施設が営利を追求しようとする場合に、人件費は最も簡単に削減され得るものであるとも思います。
 今、保育施設の基準としましては、認可保育園の最低基準、また認可外保育施設の指導監督基準、その他東京都が独自に導入している認証保育所のような基準と、現実に複数の基準が適用されているのが現状でございます。
 そんな中、今の認可外保育施設の人員配置につきましては、人数は最低基準と同じであるとはいいながらも、その指導をしていくときに、著しく少ないであるとか、そのような指導監督基準になっておりまして、その結果として、このような、ちびっこ園のように慢性的に人件費が非常に低く抑えられて、そして常に人員が足りないような、そういった保育所も今現在は生き延びてしまっているということであるわけですけれども、いろいろな基準があるのが今の現状であるということを受け入れるとしましても、せめて人員配置だけはきちんとした基準をすべての保育室についてそろえるべきではないか、それを厳格に適用していくべきではないかとも思いますけれども、そのあたりは大臣のお考えはいかがでしょうか。

○坂口国務大臣
 今御指摘になりますように、人員配置というのは大変大事な問題だというふうに思っています。
 それぞれの施設にお邪魔をいたしましても、よくそれぞれの施設で、乳幼児の年齢によって、例えばゼロ歳の方だと何人、一歳から三歳だと何人というふうに決まっておりますけれども、特に一歳から三歳のあたりのところは非常に厳しいというようなお声がございましたり、いろいろのお声が出ておりますこともよく承知をいたしております。
 こうした状況を克服いたしていきますために、主任保育士の制度を導入いたしまして、そしてその至らざるところをそこで配置をしてもらおうというようなことを今やってきているところでございます。
これも初めは、乳幼児の数が九十一名以上とスタートしたときには大変多かったわけでございますが、だんだんと少なくしてまいっておりますしいたしまして、できる限り保育所におきます人員配置というものを適正にしていきたいというふうに思っているところでございます。
 かなり努力はしているというふうに思っておりますけれども、まだしかし、現場の皆さん方から見れば大変厳しいというふうに御指摘をいただきますこともよく存じております。
これからまた、ひとつ努力をしていきたいと思っております。

○水島委員
 この最低基準につきましては、単位時間当たりの職員配置ではなく、定員によって保育士の配置が決められているということでございますけれども、人件費を安く上げるためには、悪質な保育施設では、人件費が安くて済む時間帯に職員を集中させるということも考えられます。
また、今後保育がさらに多様化していくことを考えましても、単位時間当たりの人員配置という考え方が必要なのではないかと思いますけれども、これはいかがでしょうか。

○岩田政府参考人
 先生おっしゃいましたように、配置すべき保育士の人数につきましては、子供の年齢ごとの児童数に応じて定められておりますけれども、その中で職員が早出をしたり遅番になったりというようなローテーションを組むということも含めまして、児童数が時間によって密度が高いところ、低いところが出てまいりますけれども、それに柔軟な勤務体制をとっていただくように各保育所で努力をいただいているというふうに思います。
 そういうことを考えますと、保育所の実情に応じて柔軟に対応していただくということも相当程度配慮する必要があるというふうに思いますので、保育所の最低基準として細かく時間単位ごとの職員配置の基準を設けるというのは、少しリジッドに過ぎるのではないかというふうに思っております。
 配置基準は最低限守っていただく。
先ほど先生の御質問の中にも認可外施設のお話がございましたが、監督指導するときにも保育士が何人配置されているかということは非常にわかるメルクマールでございますから、何を監督するよりも、まず適正に保育者が配置できているかどうか、そのあたりは十分最優先で監督すべき項目であるというふうには考えております。

○水島委員
 先ほど大臣からも人員配置についてはできるだけ努力をしているという御答弁でございましたけれども、現在、質のよい保育施設におきましては最低基準を超えて人員配置をしているところも多くございまして、待機児童ゼロ作戦の一環として、加配をしているところでは最低基準ぎりぎりまで子供を受け入れるという手段が行われると聞いてもおります。
ところが、保育の現場では、現在の最低基準ではとても余裕のある保育ができないと指摘されております。
私が地元で子供を預けております認可保育園でも、現場の良心と犠牲の上にどうにか質のよい保育が成り立っているという状態でございます。
そもそも加配のところがこれだけ多いということは最低基準の人員配置をもっと厚くする必要性を示唆しているとも考えられますし、また、雇用の創出という観点からも、子供の命や人権に直接かかわる重要な領域であります保育にはもっと人材を投入してもよいのではないかと思っております。
 ぜひ今後、最低基準の見直しの必要性も含めまして、また、今の御答弁では単位時間当たりという考え方はリジッドに過ぎるのではないかということでございましたけれども、やはりこれからいろいろな保育が出てくる場合に、どうしても単位時間当たりという考え方は今後私は採用していかざるを得ないのではないかと思っておりますので、そのあたりの運用も含めまして、ぜひ、ある時間帯非常に職員配置が薄くなってしまって子供たちが事故に遭う危険性が高くなったりしないような現実的な配置を考えていただきたいと思います。
 さて、認可保育園といいますのは、今保育時間は十一時間を前提にして成り立っておりますけれども、まずこの十一時間ということの根拠をお答えいただきたいと思います。

○岩田政府参考人
 保育時間八時間というのと開所時間十一時間というレベルがございまして、それをどういうふうに理解するかということにもつながると思いますが、まず、児童福祉施設最低基準におきましては、保育所の保育時間は一日につき八時間を原則としまして、その地域の状況に応じて保育所長が定めるということになっております。
一方、開所時間についてでございますが、現在、開所時間十一時間というのを原則として取り扱っておりますけれども、これは、原則八時間の保育時間と申しましても、学校や幼稚園と違いまして子供たちが一斉に登園してきて一斉に降園するということでもございませんので、保育時間の前後にそういった登園、皆さんばらばら、親御さんの御都合、家族の都合で登園、降園がありますので、その時間を前後に余裕を見まして開所時間は原則十一時間にするということにいたしております。
 これは昭和五十六年だったというふうに思いますけれども、延長保育制度が新しく入りましたときに、十一時間を超える、その当時は朝の七時から夕方の六時という決め方でございまして、必ずしも十一時間という時間数ではなかったんですが、朝の七時から夕方の六時、その時間を超えてお子さんを見る、その場合に延長保育という特別の仕組みとして特別の助成金を出す、そういうような考え方から、十一時間の開所時間というのはその時期にできたものと理解しております。

○水島委員
 ことしの三月の局長通知によりますと、「保育に従事する者の数は、主たる保育時間である十一時間については、概ね児童福祉施設最低基準第三十三条第二項に定める数以上であること。
ただし、二人を下回ってはならないこと。
また、十一時間を超える時間帯については、常時二人以上配置すること。
」それが認可外保育施設の指導監督指針とされております。
これは、例えば二十四時間保育を実施している施設においては、十一時間については最低基準に準ずるけれども、それ以外の十三時間については二人以上であれば何人でもよいという意味に解釈してよろしいのでしょうか。

○岩田政府参考人
 認可外保育施設の保育従事者の配置につきましては、従前は、開所時間の長さあるいは時間帯に全く関係しませんで、定員である子供の数、年齢に応じて、配置すべきというのか雇用すべき保育士、保育従事者の数が定められていたわけでございます。
最低基準に定める定数以上ということであったわけでございます。
 そして、この認可外保育施設の指導監督指針を、専門家の御意見も伺った上で本年の四月に見直し、改正強化をいたしたわけでございますが、そのときに、例えば緊急事態が起きたというようなときに保育士が一人であるという場合には対応ができないということがございますので、従来の基準に加えまして、どの時間帯でも最低限複数体制にするということを今回つけ加えて決めたわけでございます。

○水島委員
 済みません、その十一時間を超える時間帯についてはその最低基準が適用されないというふうに理解してよろしいんでしょうか。

○岩田政府参考人
 認可外保育所の場合には、開所時間に限らず、先ほど申し上げましたような子供の年齢と数に応じて雇用すべき保育士の数は決められておりまして、例えば夜間、そのうち何人を配しないといけないというような基準は従来ございませんでした。

○水島委員
 そうしますと、子供が起きている時間は十一時間というわけではなく、十一時間で区切ってこれが書かれているわけですけれども、結果として手のかかる時間に十分な人員が確保できないという事態も生じまして、事故が発生する原因ともなりかねないと思います。
 十一時間といいますと、例えば朝七時から夜六時です。
夜六時以降に夕食という保育所も多く、夕食時に職員配置が薄くなってしまうと事故への配慮も不十分になってしまいます。
ですから、この十一時間という保育時間が今の実情に合っているのかということと、やはりここでまた先ほどの単位時間当たりという考え方がどうしても必要になってくるのではないかと思うんですけれども、このあたりはいかがでしょうか。

○岩田政府参考人
 保育の質、特に子供の安全を考えますと、先生がおっしゃることも大変重要な問題の指摘であるというふうに思います。
一方、認可外保育施設によりましては、大変大きな問題を抱えて改善すべき課題を持っております認可外保育所の現状もございます。
そういう中でどこまで何をルールとして改善していけるかということの判断ではないかというふうに思います。
 時間当たりの問題についても将来的には勉強してみたいというふうに思いますが、当面は今の基準で認可外保育所の監督指導を精いっぱいやらせていただきたいと思っております。

○水島委員
 ぜひ、今の質問の趣旨を踏まえまして、今後の検討の中で前向きにお考えいただきたいと思います。
 さて、悪質な保育所のために子供を失う親の悲しみははかり知れませんけれども、さらに保育施設の責任逃れという次なる苦しみが待っていることも多くございます。
今回のちびっこ園事件でも、施設側は当初は乳幼児突然死症候群、SIDSとして言い逃れようとしていました。
保育施設の責任を論ずる際に、SIDSか窒息かというのは最も争われる点でございます。
本当は保育施設の責任で子供が亡くなったのに子供の健康問題として処理されて、親が泣き寝入りをさせられる事件をなくさなければなりません。
 SIDSではないということを親側が立証することは証拠に恵まれない限り実質上不可能であり、実際には窒息死であってもSIDSとして処理されているケースが多いと推測されております。
ちびっこ園でも一九七九年六月からの間に合計二十一名の乳幼児が死亡しており、そのうち実に十四名が死因不明またはSIDSと診断されています。
これらのケースが事件性のあるものとしてもっと早く明るみに出されていれば、その後の不幸な事件が起こらずに済んだのではないかと思います。
 SIDSについてはうつ伏せ寝との関係が疫学的に明らかになっており、局長通知でも、寝返りの打てない子供はあおむけに寝かせることと書かれています。
そうはいっても、子供が泣きやまないときにうつ伏せに寝かすという習慣のある保育施設はいまだに少なくないと聞いております。
 今回のちびっこ園の事件では、発見されたときの状況が決め手になって窒息死であると確定されました。
SIDSという診断は、死亡時の状況や解剖の結果から他の死因の可能性が否定されて初めてつけられるものであるはずですが、解剖も行わずに安易にSIDSと診断され、外因死の隠れみのになっているケースが多いということが指摘されています。
また、死亡が全く予測されていなかった突然死の症例は、すべて異状死体として医師法第二十一条に基づいて警察に届け出る必要があるはずですが、現状は必ずしもそうなっていません。
 これらの問題が十分に認識され、対応が考えられなければ、問題のある保育施設を見つけ出すこともできず、幾ら法改正をしても意味がないということにもなりかねませんが、厚生労働省としてはどのように考え、どのように取り組まれておられるでしょうか。

○岩田政府参考人
 先生今引用なさいました保育所保育指針、これは保育所のサービスといいましょうか、ソフトの面の基準でございますけれども、その中でも、SIDSの予防のため、かなり具体的な記述をいたしております。
寝返りを打てない幼児についてはあおむけに寝かす、あるいは睡眠中の児童の顔色や呼吸の状態はきめ細かく観察する、こういうようなことを保育士に徹底をいたしているところでございます。
 また、本年四月から改正強化されました認可外保育施設に対する指導監督指針におきましては、その施設の中で死亡事故、重傷事故、食中毒など、そういった重大な事案が発生した場合には都道府県に報告をお願いするようになっておりますし、そういった事件が発生した場合には随時特別に立入調査をやるということで、現にやっていただいているところでございます。
 そういう保育所の中におきます子供の安全確保、事故が起きた後の適切な対応につきましては、引き続き都道府県にもお話をしてまいりたいというふうに思っておりますし、保育従事者に対するさまざまな研修を国も都道府県もあるいは保育者の団体もやっておりますから、そういう中でもこの問題は徹底してまいりたいというふうに思っております。

○水島委員
 本当にこの問題は、まずそのような死亡状況をつくらないようにするために指導を徹底していくということも必要ですし、また、実際に不幸な事件が起こってしまったときに現場をきちんと見ておいて確認するということが必要ですし、何といいましても、先ほど申しましたように、突然死というのはすべて異状死体として警察が介入してくる必要があるはずでございますので、そのあたりの指導をさらに徹底していただきたいと思っております。
 くれぐれも本当に、子供を失った、もうそれだけでも親の悲しみというものは大変大きいものでございますけれども、失った側に自分たちに過失がなかったことを立証する責任を押しつけたりしないように、本当に施設側が、例えば自分たちに責任がなかったことを主張するのであれば自分たちできちんとそれを証明していけるように、そういうふうに指導していっていただかないと、施設側がきちんとその状況を保存しておいたりですとか、必要な情報を提供したりですとか、そういうことをしなくなってしまうのではないかとも思いますので、ぜひこの点は、医学的な問題も含め、また法律の問題も含めまして、きちんと御指導をいただきたいと思っております。
 さて、残りの時間でまたお伺いしたいんですが、仕事と家庭の両立を考える上で忘れてはならないのが障害児保育でございます。
障害児を持つ親、特に母親にとりましては、仕事との両立どころではないというのがまだまだ大部分の現状です。
今回のこの委員会の質疑の中でも、もちろん、法案上にそれが盛り込まれていなかったのもあるんですけれども、この障害児保育という観点からの御質問も今のところなかったと理解しておりますし、それほどある意味では忘れられている領域ではないかと思います。
 その中でも、特に立ちおくれてきた障害児の学童保育については、本年度から障害児受入促進試行事業が開始されております。
まず、現時点での感触はいかがかということと、また、来年度予算に向けてどのように評価検討されているかということをお答えいただきたいと思います。

○岩田政府参考人
 放課後児童健全育成事業、放課後児童クラブを実施している事業でございますが、ここで障害児の受け入れを促進したいということで、今年度から初めてでございますけれども、障害児を受け入れていただいた場合の補助金の加算ということをやっております。
その中で、現在、放課後児童クラブにおける障害児の受け入れの実態の把握を進めているところでございます。
 そういう状況でございますので、障害児加算については十四年度予算要求は十三年度と同額で要求しておりますけれども、十三年度の事業の実績、実施状況なども見まして、将来的には、また対応すべきことがあればこれはぜひ前向きに検討してまいりたいというふうに思っております。
 あわせて、本年度、児童環境づくり等総合調査研究事業という調査研究事業の枠組みがあるんですけれども、その中で、放課後児童クラブにおける障害児受け入れに関する調査研究という特別のテーマで研究を実施していただいております。
その研究会からの提言も受けて、障害児を放課後児童クラブにもっと受け入れを促進できるように努力をしてまいりたいと思います。

○水島委員
 来年度の要求が本年度と同じというのが、私の聞き違いでなければそうお答えになったと思うんですけれども、そもそも本年度の予算というのは、一クラブ当たり年額七十一万円を加算ということになっておりまして、これを単に人件費に換算してまいりますと、本当に、学生アルバイトも雇えないのではないかという金額でございます。
 こんなことで何ができるのかというのが現場から声が上がっておりまして、それでも、ことしはあくまでも試行事業であるから来年度に希望をつなごうということで、ことし一年しのいできているわけでございますけれども、そのような中で来年度も同額ということになりますと、本当に、今現場でいろいろな努力をされている方たちがどれほど失望されるかということを考えますと、それは想像に余りあるものがございます。
 ぜひ早急に御検討をいただきまして、来年度の予算が今年度と同額というようなことのないように、もっと本当に、実際に障害児を受け入れやすくなるような予算をきちんと確保していただくことが必要だと思いますので、ぜひ、くれぐれも前向きに御検討いただけますようにお願い申し上げます。
 その問題を考える上で重要であると思いますけれども、例えば母子家庭で子供が障害児の場合にどの程度が生活保護世帯となっているか、そのようなデータを厚生労働省では把握していらっしゃるでしょうか。

○岩田政府参考人
 先生が今お尋ねになりました、母子家庭であり、障害児の子供を抱え、そして生活保護を受けている、この三つの条件に合う人たちがどのくらいいるかという、そのものをとらえる統計はございません。
 そういうことで、断片的な情報かとも思いますけれども、一つ御紹介したいと思いますのは、障害児を抱える母子家庭につきましては、通常の母子家庭ですと子供が十八歳になった年度末まで児童扶養手当が支給されているわけでございますが、障害児の場合については、十八歳を超えても二十になるまで児童扶養手当を支給しております。
そういうことで、平成十一年三月三十一日現在の数値でございますけれども、十八歳を超えて二十になるまでの障害児でそのお母さんが児童扶養手当を支給されている、その人数はわかりまして、一万一千九百二十二人でございます。
 また、特別児童扶養手当という制度がございます。
これは、精神や身体に障害のある二十歳未満の児童を養育するもの、これは母子家庭も含まれますし、父子家庭も含まれますし、また両親がそろっている家庭も含まれます。
その場合に特別児童扶養手当が支給されておりますけれども、その対象児童数は、平成十二年三月三十一日現在、ですからこれは母子家庭の児童だけを取り出すことができなくて全体の数字でございますが、十三万九千四百八十二人ということになっております。

○水島委員
 今実数でお答えいただいておりますけれども、結局のところ、母子家庭で子供が障害児の場合、どの程度の割合が生活保護世帯とならざるを得ないかということは把握されていないというふうに了解いたしましたけれども、実際にはかなり多くいらっしゃると思います。
幾ら児童扶養手当がもらえても、実際に保育が整っていないために、それ以上の収入を得ることができないわけですから、生活保護世帯となってしまっている例も私の知る限りでもかなりございます。
 ですから、ぜひ、その実態を把握していただいた上で早急に障害児保育を進めていただきたい。
その際には、ぜひ学童保育も含めていただかないと、養護学校というのはかなり早い時間に終わってしまいますので、親が就労するということが現実的に不可能に近くなってしまいます。
ぜひ、くれぐれも早急に整備を進めていただきたいと思います。
 その児童扶養手当でございますけれども、先日の新聞報道によりますと、来年度より児童扶養手当の削減が検討されているということでございますけれども、これは本当でしょうか。

○岩田政府参考人
 児童扶養手当のあり方につきましては、福祉から自立支援という大きな方向で転換させるべき今内部の検討を進めております。
子育てや生活の支援、就労支援、あるいは別れた父親からの養育費の確保、そして経済的な支援など、生活のさまざまの面から総合的に、母子家庭の母がなるべく早くしっかり自立していただけるように、それをどういう形で支援することができるかということを今総合的に見直しをしているところでございます。
 政府部内での検討とあわせて、与党におかれましても議論が始まったところでございますので、年末に向けて、なるべく関係者から幅広く御意見を聞きつつ成案を取りまとめてまいりたいと思っております。

○水島委員
 母子家庭の就労支援などしていただくのは大変結構なことでございますけれども、くれぐれも、初めに児童扶養手当の削減ありきという議論だけはしないでいただきたいと思います。
 これは就労支援という観点に逆行するものでございまして、今、多くの母子家庭では、この児童扶養手当と勤労収入と合わせてどうにか生活しているというのが現状でございまして、これがカットされてしまうと生活保護世帯にならざるを得ないわけでございます。
そうなりますと、私は、結果として国庫負担もふえていくと思いますし、財政が苦しいからといって児童扶養手当を削減するということは間違った政策誘導であると私は思います。
 そういう実態を本当によくよく把握された上で、この母子家庭の就労支援問題を考えていただきたいと思いますし、絶対に、本当に社会的な弱者でございますこの母子家庭を直撃するような児童扶養手当の削減というものを、削減のための議論ということをしないでいただけますように心よりお願いを申し上げておきたいと思います。
 本日、保育を含めましていろいろな領域で質問をさせていただきましたけれども、少子化が進む中、子供の数も少なければ身近な大人の数も少ないという環境のもと、親も子も硬直した閉塞的な親子関係に陥りがちとなっております。
従来からの保育に欠ける子供たちのための施策という考え方を脱して、少子化時代の子供たちの居場所としての保育を積極的に考えるべきだと思います。
私たちも引き続き、よりよい保育のあり方を検討してまいりたいと思っておりますので、大臣の御協力をお願い申し上げたいと思います。
 最後に一言、今後の保育政策の方向性というものも含めまして、今の少子化時代、すべての子供たちのための保育ということで、大臣の決意表明を一言だけお伺いして、質問を終わらせていただきたいと思います。

○坂口国務大臣
 今ずっと委員の御主張を聞かせていただいておりまして、我々が今一番注意をしなければならないのは、待機児童ゼロ作戦を展開いたしておりますけれども、この待機児童ゼロ作戦を行うことによって待機児童をゼロにするということはある程度進んだけれども、そのことによって保育所が非常に多くの人をそこに詰め込むというようなことになって、育児の質を落とすようなことがあってはならない。
そのことに非常に注意をしながら進めなければならないなということを感じながら、今聞かせていただいていたところでございます。

○水島委員
 ありがとうございました。



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