厚生労働委員会
(2001年6月20日)


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精神障害者の差別撤廃と治療・環境改善




○水島委員

 民主党の水島広子でございます。
 私は、この欠格事由の適正化について、主に精神障害について質問をさせていただきます。
 精神の機能の障害により相対的欠格事由に該当し得る者に係る判断方法として、診断書を作成した医師から確認した障害の程度、内容を踏まえつつ、厚生労働省の担当者及び厚生労働省が選任した医師等の専門家が個別に判断するということになっているわけです。
 まず、この精神障害の場合に、この判断を行うためのガイドラインというものはつくられるのでしょうか。
どの程度の症状軽快がどの程度の期間持続すればよいかというような基準はあるのでしょうか。

○桝屋副大臣

 これは参議院でも議論になったところでございますが、精神障害者の前に、今回の法律案の内容ですが、障害者の免許取得の可否、これ全体でそのガイドラインをつくっていくということがなかなか困難であるということはずっと議論があったところでありますが、その中でも、きょう委員がテーマとして挙げておられる精神障害者の問題はなお一層難しいテーマでございまして、それは恐らく委員も十分御承知の上、今も御質問がありましたけれども、お尋ねだろうと思います。
 精神障害者の場合は、障害の状態もさまざまでありますし、さらには、障害が業務遂行に与える影響というものはまさに多様な形が考えられるわけでありまして、さらに複雑な内容もあるだろうというふうに思うわけであります。
そういう意味では、今お尋ねがありました具体的な判断基準を定めて取り組んでいくということは困難であるというふうに思っております。
委員からお話がありましたように、個々の障害者の業務遂行能力に応じて資格取得の可否を判断するという、まさに今回の法律の趣旨に照らして個々に判断をしていくことが必要になるだろう。
 ただ、中長期的な課題としては、そうした判断を積み重ねながら、ガイドラインということは検討しなければならぬというふうに考えておるところでございます。

○水島委員

 法律を考えるわけですので、当然諸外国の例も参考にされていると思うんですけれども、諸外国ではこのあたりのガイドラインというのはどのようになっておりますでしょうか。

○桝屋副大臣

 これも、私もきょうお尋ねをいただくということでいろいろと調べさせたんですけれども、諸外国の具体的な判断基準については、そうした基準は今のところ我々も目にしていないわけでありまして、また委員の方、いい情報がありましたら御教示をいただきたいと思います。

○水島委員

 うまい答弁というか、まだ目にしていないということで、実際にどの程度調べられて、どれらの国について調べてどこにはなかったという、ぜひ本当は事実をお答えいただきたかったんですが、きのう事前通告させていただいた段階で、どうも調べていらっしゃらなかったような様子を伺っております。
日本はただでさえ精神障害に関する取り組みが諸外国よりもおくれているのですから、法律をつくるときぐらいしっかりと諸外国のことを勉強していただいて、参考にしていただきたいと思います。
ぜひ早急に、どういう扱いになっているのかを調べていただきたいと思います。
 また、ガイドラインをつくらないのでしたら、なおのこと、その判断の正確さ、透明性というものが問われると思います。
先ほどからその判断のときの方法について同僚議員からも質問があったわけでございますけれども、私は、この厚生労働省が選任する専門家という立場の方についてお伺いしたいんですが、これはどのような基準で選任するのでしょうか。

○伊藤政府参考人

 専門家の選定につきましては、まず、各資格に係る専門家、医師であれば医師の専門家、それから二番目といたしまして、それぞれの障害に精通した学識経験者、例えば聴覚障害でありますと聴覚障害の専門家、それから三番目といたしまして、各資格の養成に係る専門家など、こういう三つの観点からあらかじめ専門の方をプールしておきまして、申請者の障害の状態及び申請した資格に応じて、その中から適当な者に委嘱をする方向で検討を進めているところでございます。
 人数につきましては、現時点におきましてまだ具体的な結論を得ているわけではございませんが、より客観的かつ公平な判断ができるよう、複数名に委嘱することが適当ではないかと考えております。

○水島委員

 今の中で、学識経験者というところが一番注意を要するところだと思うんですけれども、学識経験者にもいろいろいらっしゃいます。
本当にずっと大学の一室にこもって御自身の研究活動にしか興味のない方もいらっしゃれば、現場に出て本当に障害者の社会復帰に熱心に取り組んでおられる方もいらっしゃいます。
当然、このような内容の判断をするわけですから、その学識経験者という方は障害者の社会復帰に多大な意欲と現場での豊富な経験を持つ方が選ばれるべきだと思いますけれども、そのあたりの基準はどのように考えていらっしゃいますでしょうか。

○伊藤政府参考人

 今回の制度改正は、障害者の方に専門職種の取得の道をできるだけ拡大し、そして社会参加を広げていくという観点から行うものでございまして、具体的な専門家の選定に当たりましては、今委員御指摘の点を踏まえて、そういう今回の制度改正の趣旨を十分踏まえて具体的な基準を考えていきたいと思っております。

○水島委員

 くれぐれも、名誉職のように、立派な肩書を持った方だからすぐれた学識経験者だろうというような従来型の判断ではなく、なぜその人が数多い学識経験者の中でこの判断のために選ばれたのかという、それをきちんと公開していく透明性もとても重要だと私は思います。
ぜひ私たち多くの者が納得できるような方を選んでいただいて、本当に少しでも障害者の社会参加に道を開くような判断をしてくださるような学識経験者を選んでいただきたいと思います。
実際にどのような方が選ばれるのか、私も一人の精神科医として大変楽しみにお待ち申し上げたいと思っております。
 さて、今回の法改正で、免許の申請者が障害者に係る相対的欠格事由に該当すると認めて免許を与えないこととするときには、あらかじめ意見聴取をするという手続を定めているわけですけれども、この御本人の意見次第では決定が覆されるということはあり得るのでしょうか。

○伊藤政府参考人

 まず、申請をしていただきましたときに、今申し上げた専門家の方にそれぞれ意見を聞くということを行うわけでございます。
そして、免許を与えないこととした場合の事前の意見聴取の際には、申請者が臨床実習を履修した際にどのような補助的手段を用いて履修したか、それから、当該補助手段を用いた申請者がどの程度の知識、技能をどのように修得したかなどにつきまして確認することを考えているわけでございます。
そしてまた、その際に、担当職員から、免許を与えないことと判断した理由について説明を行うこととしております。
 また、最終的に免許を与えないこととする場合には、意見聴取の結果を踏まえて、どのような点で業務遂行が困難であると判断したのかなどできるだけ具体的に理由を示す、そういう判断の根拠を具体的に御説明するという形で対応していきたいと考えております。

○水島委員

 私が質問しましたのは、だめだということを納得するように説明してくれるのかという質問ではなくて、その質問は後でしたいんですけれども、意見聴取のときの御本人の意見次第で免許を与えないという決定が覆される余地があるのかどうかというところをお伺いしているんですが。

○伊藤政府参考人

 もちろん、手続の中では御本人からの意見聴取も必ずやる手順になっておりますし、あわせて、専門家の判断、そして総合的に最終的に厚生労働大臣が判断をするということでございまして、本人からの意見聴取だけで最終的な判断を下すわけではございません。

○水島委員

 もう一度伺いますけれども、時間が限られているので次はイエスかノーかで明確にお答えいただきたいんですが、何も御本人の意見だけで全部決めろと聞いているわけではなくて、意見聴取の手続があるからといってそれが結果に反映されないんだったら何の意味もないわけですから、今後のデータのために聞くとかそんなことだったら御本人にとって意見を言う意味はないわけですから、ちゃんとそこで御本人が意見を言うということが結果に反映される、その余地はあるんでしょうかということを、イエスかノーかでお答えください。

○伊藤政府参考人

 これは、イエス、ノーという形でお答えするのは非常に難しいわけでございますが、特に精神障害という場面を想定してみますと、やはり御本人からの意見だけで厚生労働大臣が最終的な判断をするということではなくて、やはり第三者的な専門家の御意見を参考にしながら最終的に総合的な判断をするという形になろうかと思います。

○水島委員

 何だかここまで来ますと国語の問題のような気がしてきますけれども、何も御本人の意見だけでということを言っているわけじゃないというのは先ほどから繰り返し申し上げているんです。
では本当に、御本人が意見を、きのう事前に伺ったときには覆されるというような事前情報を伺っておりますけれども、本当に覆されないんだったら、そもそも意見聴取の手続なんというのを法文上何のために書くんだということになるわけです。
 御本人の意見をそこで申し立てる意義というのは、その上でもちろん専門家の判断があって、最終的に大臣の判断があるということで、それは全然構わないんですけれども、ちゃんとそこで御本人の意見というのは反映されるわけですよね。

○伊藤政府参考人

 障害を持っておられる方が免許を申請される場合に、最初から拒否をするという前提で私どもは受け取るわけではございません。
したがいまして、免許交付の申請書を受理するときには、免許を交付する場合もあるし免許を与えない場合もあるということでございますから、申請の時点で拒否をするということで決めつけられれば、それは変わることもあり得るということになるわけでございますが、あくまでも申請の時点では、免許交付の可否について、本人からの意見聴取、それから第三者的な専門家の判断、そういうものを総合して厚生労働大臣が判断するということでございます。

○水島委員

 まさかこんなところでこんなにひっかかると思っておりませんで、なぜここの質問にさらりと答えていただけないのかというところで、何か私の中にも不信感が芽生えてまいりましたけれども。
当然いろいろな方たちの総合的な判断で最終的な決定がされるのは、それは当たり前のことなわけですけれども、そこにわざわざ本人の意見聴取をするというのを高々とうたっているわけですから、当然本人にも意見を言う権利があるということを言いたい法案なんじゃないんでしょうか。
 そしてまた今、特に精神障害の方の場合はとおっしゃいましたけれども、精神障害の方でも、一番自分の病気と長くつき合っていて、よくわかっている。
だから、こういうふうに働いていけばストレスが過剰にかからなくて大丈夫なんだとか、そういういろいろ一番わかっているのは自分自身だということも当然あるわけですから、当然そういう御本人の意見を聞いた上で、どうも従来の判断よりもこの御本人の場合はケースが違うようだというふうに判断が変わるのも当たり前なんじゃないでしょうか。
ちょっとそこだけ、もう短時間でお答えください。

○伊藤政府参考人

 免許を与えない旨決定された後に不服申し立てがあった場合に、御本人からの意見聴取をしてその判断が変わることはあり得ると思います。

○水島委員

 違いますね。
違いますねというか、私が法案を御説明するのは立場が違うんですけれども、今回の内容では、仮決定があったところで意見聴取が行われて、その後に最終決定が出るということで、不服申し立てはその後のことですから、きちんと理解されていらっしゃらないんじゃないでしょうか。
 ちょっとそういうことですとここで議論していても本当に時間がむだになりますので、先に進ませていただきたいんですけれども、今不服申し立てのプロセスはどうなっているのかということを伺いたかったんですが、今のお答えの中から、そういう不服申し立てということができるということでございます。
 ただ、一般の国民感情として考えますと、一たび厚生労働省が免許を与えないと決定したものに対して不服申し立てを行っても、役所が一度決定したものが覆されるということは余り一般的に期待できないと思います。
そんなにしょっちゅうころころ決定が変わっているようでしたら、またそれは役所としての信頼性の問題にもなってくるんじゃないかとも思いますけれども。
 この不服申し立てについては、私はむしろ第三者機関を設置すべきではないかと思いますし、実際そのような意見を出されている方もいらっしゃいますけれども、この第三者機関の設置の必要性について、大臣のお考えはいかがでしょうか。
副大臣でも結構です。

○桝屋副大臣

 済みません。
先ほどからの議論をしっかり横で聞いておりまして、のめり込んでおりました。
 今のお尋ねと若干違うかもしれませんが、先ほどから委員が議論されているポイントは、相対的欠格事由に該当する、その上で免許を与えないとする決定が当然あり得るわけで、その場合の事例を今るる言われているわけですよね。
その上で当然本人の意見聴取ということもあるということでありまして、当然、本人の意見聴取の結果というのは、聞いた意見を十分踏まえましてさらに専門家で検討するということでありますから、その意見聴取をした内容というのは、私は結果に大きな影響を与えるものだというふうに思っております。
 その上で、恐らく今委員お尋ねのことは、不服申し立ての際の第三者機関のお話かと思います。
 今回、相対的欠格事由に該当するから免許を与えないという場合の取り扱いでありまして、この場合はまさに、委員はもう御承知のように、二段階において専門的な方の御意見を伺うということにしているわけであります。
一点目が、申請があった段階で、相対的な欠格事由になるかどうかということでまずは一点検討があるわけであります。
それからさらに、今の意見聴取も踏まえて最終的に免許について拒否をするというような場合に、再度、免許を与えないことが適当と判断をされた時点で、さらに重ねて外部の専門家グループによる審査を行うということになっているわけでありますから、それでも最終的に免許を与えない決定がおりた段階で御本人が異議申し立てをされる、不服申し立てをされる、そのときにさらに第三者機関というのはあえて必要ないのではないかというふうに考えている次第であります。
それとほぼ同じ仕組みが用意されているというふうに私は考えております。

○水島委員

 今のお話、説得力があるようでありながら、何かちょっと危険だなという感じがするんですが、そこまでやって決めるんだから間違いようがないということをおっしゃりたいのかな、そんな感じもいたしまして、それでもまだ不服があった場合には、もうこれは司法の現場で争うしかないということになるんでしょうか。

○桝屋副大臣

 それでもという話がありましたが、それでも不服申し立ての最後の手段は残されているわけですね。
第一段階、第二段階、御本人の状況も十分調査をし、御本人の意見も聞いた上で二つの段階で専門家の意見を聞く。
そして、最終的に免許を与えないという決定が出た段階で、御本人さんに不服があれば不服申し立てができるということになっているわけで、その時点で再度専門家の意見を聞いて変わるようなものだったらどうなんだろうかということも感じるわけでありますが、もちろん、委員がおっしゃった司法に訴えるということは、十分できることだと思っております。

○水島委員

 そういうことでしたら、ちょっと今後この法律が成立しました場合にどのように運用されるかを拝見させていただきまして、やはりこれは信頼できる第三者機関をつくらないとまずいんじゃないかということになってまいりましたときには、ぜひ御協力いただきまして、そのような体制をつくっていただきたい、そのための法改正をしていただきたいと思います。
 さて、精神障害の場合、社会的偏見を恐れて障害を隠して医師免許を取得する人もいます。
周囲もそれに気づきながら見て見ぬふりをせざるを得ないというケースも、私自身実際に目にしてまいりました。
 本来は、必要な治療を受けて周囲からのサポートを受けながら自分の能力を発揮していくべきだと思いますし、病気の状態が悪いときにはそれをオープンにしてきちんと休むということが必要だと思います。
今の日本では、精神障害に対する偏見が強いため、かえって業務の安全が損なわれていると言わざるを得ないのではないかと思います。
 精神障害者への偏見の強さを改めて見せつけられたのが、今回の大阪池田小学校の事件でございます。
私も小さな子を持つ親といたしまして、今回の事件には筆舌に尽くしがたい思いを抱いておりますけれども、でも、きょうここであえて取り上げたいのは、事件以降の小泉首相の言動でございます。
 事件の翌日、まだ容疑者の精神鑑定もされていない、事件の詳細もわからない段階で、小泉首相は、精神的に問題がある人が逮捕されても、また社会に戻ってああいうひどい事件を起こすことがかなり出てきていると述べ、刑法見直しを検討するよう山崎幹事長に指示されています。
これは、暗に今回の犯行が精神障害によるものだと決めつけていることを意味すると思います。
 ただでさえ今回の事件によって多くの罪のない精神科の患者さんたちが、あの人も精神科に通っているから何かしでかすに違いないという目で見られて苦しんでいるのです。
障害に対する理解を得ようと苦労し、地域に溶け込んで何とか暮らしていこうとしている人たちに新たな苦しみを植えつけているわけです。
私のもとにも、患者さんたちからの声が寄せられております。
小泉首相の言動の陰で、どれだけ多くの精神障害者の方たちが苦しんでいるか、御存じなのでしょうか。
先日のハンセン病控訴断念のときとは打って変わったその姿に、一国の首相としての余りの人権感覚のなさに私は唖然とさせられております。
 まず、この小泉首相の言動について、厚生労働大臣の御見解をお聞かせいただきたいと思います。

○坂口国務大臣

 今回の大阪の事件は、筆舌に尽くしがたい、本当に大変お気の毒な事件であって、私も小さな子供が、私の場合は孫でございますけれども、いるものですから、本当にびっくりしたわけでございます。
 やはり今回の場合に、あの犯人の人がいわゆる精神障害で起こしたかどうかは、これはわかりません。
これはもう少し捜査の結果を待たなければなりませんし、やはり専門家の判断が必要だろうというふうに私も思っております。
 小泉総理がおっしゃったのは、それはいわゆる一般論として、重大な犯罪を犯す精神障害者の場合にはどうするかということをおっしゃったんだろうと思うのですが、時が時だけに非常に誤解を生むことになったかもしれません。
しかし、その問題は一般論でございまして、大阪の場合におきましては、委員が述べられましたように、精神障害によって起こったものかどうかということは、これはすぐには判断のできない問題だと私も思っております。

○水島委員

 坂口大臣としてはそのように弁護してさしあげるしかないのかもしれないですけれども、ただ、これは本当に、日本に一番重大な影響を与える政治家の言動といたしまして、持つ意味は非常に大きいと思います。
幾ら御本人が一般論のつもりでやっているとしても、あのように本当に日本じゅうを衝撃に陥れた事件についてのコメントを求められて、それについてこういうことをおっしゃっている。
それも、その当日だか翌日だか、本当にその衝撃がさめやらないときにこういうことをおっしゃる。
これは本当に、何か重大な事件が起こったときにばあっと差別的なデマが流れるのと構造はほとんど同じなんじゃないかなと私は思っております。
 本当に、日本じゅうがどういう状態に陥っているときかということをきちんと冷静に判断した上でみずからの言動を考えられるというのが一国の首相としての責任ある姿だと私は思いますし、御本人が幾ら一般論であると言ったとしても、そういう日にそういうコメントをするということの責任の重さというものを本当に痛感していただきたいと私は思っています。
そして、それが理解できないような方であれば本当に首相としてふさわしくない、私はそのように思います。
 もちろん私たちも、司法と精神治療の連携が現在のままでよいとは一般論として思っておりません。
私自身も精神科医として、刑法と精神保健福祉法という性質が全く異なる法律が中途半端に結びつけられた現行制度の不備を痛感してきた立場です。
私たちも、民主党内に司法と精神医療の連携を考えるプロジェクトチームをつくって、既に検討を始めております。
 新聞報道によりますと、大臣は、重大な事件を起こした精神障害者への対応をめぐり、退院した後、在宅の患者から目を離さず、さまざまな問題の相談に乗ることができる制度が必要だと、退院後の支援体制の見直しを重視する考えを示されたそうです。
また昨日は、司法精神病院の設立についても言及されているようでございます。
大臣は政治的な判断をする時期に来ているとおっしゃっているようですけれども、具体的にどのような体制を考えていらっしゃるのでしょうか。

○坂口国務大臣

 これは、安全と人権と、両方からの大変難しい問題を抱えているというふうに思っております。
 そして、一般論として言えば、重大な犯罪を犯す障害者もあることは事実でございます。
その場合に、その人たちを一体どのようにしていくのか、同じ一精神科の患者として扱っていくだけで果たしていいのかということを考えました場合に、そういう重大な犯罪を犯す人というのは再びそれを繰り返すということもございますので、そうした意味で私は、それは一握りの人ではありますけれども、その人に対しましては、医療と、そして生活におけるさまざまな教育等も行いながら、そして退院をいたしましたときには相談に乗る人がやはり必要になってくるのではないか。
 そうした意味で、特別な病院をつくるというところまで私は思っておりませんけれども、しかし、病院の中で、一病棟あるいは特定の病室等でそれ相応の治療はやはり受けていただかなければならないのではないか。
 一般の精神科の患者さんと同じようにその治療だけを受ける、そして治ればどんな重大な犯罪を犯した人でも同じように社会に帰っていくというだけでいいのかということを私は申し上げているわけでありまして、そこには、一般社会の皆さん方の安全というものもやはり大事でございますから、目を離さない何らかの仕組みというものをやはりそこにつくっていかないといけないのではないかということを私は今言っているところでございます。

○水島委員

 一般に、この社会の安全の問題と人権の問題というのは非常に相反するところがあって難しいなどと報道で語られたりしておりますけれども、私は、決してその二つが矛盾するものだとは思っておりません。
患者さんにしましても、正しい治療を継続して安心して受けられる体制の中できちんと社会に適応していくということが何よりも幸せなことであるわけですし、それによって社会の安全もまた守られていくという姿が最もふさわしいと思っております。
 今の大臣の御見解を聞かせていただきますと、私が考えているようなことと恐らく共通する部分もかなりございますので、ぜひそこは、正しい人権感覚を持って、くれぐれも保安処分制度などというような人権に逆行するような制度ではない形で、慎重かつきちんとした勇気を持った御検討をいただきたいと思っております。
 また、司法と精神医療の連携という観点のほかに、何といっても、現在の日本における精神医療の貧困さがすべての背景にあると思います。
ただでさえ医療密度の低い日本におきまして、いわゆる精神科特例によって精神科は最も医療密度が低く、在院日数の異常な長さにつながっています。
重大な事件を起こした精神障害者の問題を語るのであれば、精神医療全体の質を高めるということは避けては通れない課題です。
行政がリーダーシップを発揮して精神科病床を減らすことが必要です。
 急性期の治療にスタッフを手厚く配置し、短期間で退院できるようにするとともに、退院後の住まいの確保、またその後の支援体制の確保などによりまして再発を防ぐといった体制をつくることが重要だということを私もかねてから主張してまいりました。
また、病床をスムーズに減らすためには診療単価の引き上げも検討すべきであると思っております。
 この際、腰を据えてこの精神医療の質を上げるということに本格的に取り組むべきだと思いますけれども、最後に、その点についての大臣のお考えあるいは決意の御表明をお伺いいたしまして、質問を終わらせていただきたいと思います。

○坂口国務大臣

 確かに、精神医療の質を高めなければならない、もうそのとおりだろうというふうに思っております。
 委員は、重大な犯罪を犯す障害者が出るというのは、それは精神医療が未熟だから起こってくるのであって、そこを充実すればそういうことも起こらないのだというふうにおっしゃるのではないかというふうに聞かせていただきましたが、私もある程度、それはそのとおりではないかというふうに思っております。
 ただ、それでもなおかつ重大な犯罪を犯すような人たちもいるものですから、そこはどうするかという問題は別途あるというふうに思いますが、この精神科の内容につきましては、過去の精神科医療というものとは随分内容も変わってまいりましたし、もっともっとやはり開かれた精神医療に一般的にはしていかなければならないというふうに思っておりますので、そこは質的向上が第一、人的配置もしかりでございまして、その点を踏まえながら、これから考えていかなければならないと思っている次第でございます。

○水島委員

 どうもありがとうございました。



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