厚生労働委員会
(2000年10月27日)


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精神科医療、医療の抜本改革、研修医制度、喫煙、難病・・について



遠藤委員長
 次に、水島広子さん。
 
水島委員
 民主党の水島でございます。
 一昨日の厚生委員会におきまして、私の同僚議員から精神科特例、精神科医療についての質問が行われましたところ、新聞の社説で取り上げられたり、また、精神科関係の患者さんや医師の方たちから精神科を国会の場で取り上げてもらえるのかということでいろいろな御意見をいただきました。この反響の大きさを考えてみましても、今までこの精神科という領域が、日の当たらないところで長い間医療を提供する側も医療を受ける側も非常に苦しい思いをしてきたのではないかということを改めて感じさせられました。
 日の当たらなかった分野でございますので、私もきょうまず最初に精神科について御質問させていただきまして、その後ほかの質問に移らせていただきたいと思いますので、大臣と政務次官、よろしくお願いいたします。
 まず最初に、精神病院のハード面ということでございますけれども、精神病院のハード面の質というのは、何も病床の広さだけではございません。先日も山井議員が保護室のプライバシーのなさということで写真を提示して述べておりましたけれども、清潔度ですとか病棟のにおい、プライバシーの問題などが重要なわけです。私自身も精神保健指定医でございますけれども、患者さんが医療上閉鎖的処遇を必要としていても、病室の環境が悪過ぎて使えないということで、非常に困る状況が多々ございました。
 例えば、保護室が必要な人であっても、トイレのスクリーンがなければ困る方もいらっしゃるわけです。また、今の保護室というのは、自分では排せつ物を流せない。外から看護者が流す仕組みになっておりますけれども、自分で排せつ物ぐらい流せる方もいらっしゃるわけです。
 そんな状況ですので、保護室の環境が悪過ぎて、本当は保護室に入れることが医療上必要な方であっても適切な医療を提供できないというようなこともあります。適切な医療を提供するためにつくったはずの保護室が適切な医療を提供するための妨げになっているというのが、ある意味では現状ではないかと思います。
 また、一般の閉鎖病棟につきましても、閉鎖的な処遇が必要であると考えられても、においがきつかったり環境が悪かったりするために閉鎖病棟を使いにくいというようなケースも実際にはございます。
 例えば、精神病床独特のにおいを極力なくすような空調とか、保護室のトイレにスクリーンをつけるとか、排せつ物を病状に応じて自分でコントロールできるような環境であるとか、そのようなハード面の改善が必要であると思われますけれども、その点についてどうお考えか、教えていただけますようにお願いいたします。
〔委員長退席、鴨下委員長代理着席〕

■福島政務次官
 保護室というものは、患者さんの症状から見て、隔離以外の方法では危険を回避することが著しく困難である場合に使用されるものでございますけれども、精神病院建築基準というものがございまして、これは厚生省の公衆衛生局長の通知でございますけれども、保護室につきましてはいろいろと規定がございます。
 堅固であることが必要であるが、そのために圧迫感を与えないように考慮し、時には普通病室として使用し得るような配慮も必要である。細部の設計に特別の注意を払い、採光、換気、通風、冷暖房等の環境条件には特に考慮する必要がある。廊下側に余り露骨にのぞき込む感じを与えない小窓をつける。また、便所を設ける場合は水洗式とし、不潔にならないようその設計には特に注意が必要であるというようなことがこの中には定められているわけでございます。
 先般も公衆衛生審議会から、国民の生活水準にふさわしい療養環境を整備することという指摘がございました。ただいま委員からこの環境が十分ではないではないかという御指摘がございましたけれども、保護室の療養環境の向上について、私どもは一層の指導の徹底に努めてまいりたいと思っております。
 現実にどのようなことを行っているかということでございますけれども、保護室等の鉄格子を撤去し、一般の病室の窓と同等にするなどの療養環境向上のための改築については特別の補助を行っているところでございまして、病院関係者等にこうした事業の活用についてより一層求めてまいりたいというふうに考えております。

■水島委員
 そのような取り組みを積極的に続けていただきたいと思います。
 ちょっと大臣にお伺いしたいのですが、先日、山井議員の方から閉鎖病棟や保護室に入られたことがあるかという質問がございましたけれども、大臣はいわゆる精神病院のにおいというのは御存じでいらっしゃいますでしょうか。

■津島国務大臣
 何度も訪ねておりますから知っていると思いますが。病院で少しずつ違うなとも思っております。

■水島委員
 病院で少しずつ違うというのは、かなり鼻がよくていらっしゃるようでありますけれども、一般的には、いわゆるあのにおいといえば、患者さんでも医療者でも大体わかるものでございます。
 私たちも医学生であったときに、精神科に行こうと思ったらあのにおいに耐えられなければだめだというようなことで、診療科を選択するときの基準にもなっていたほどのにおいがございます。病床の広さだけではなく、そこで実際にどのような生活の質が確保されるか、その点をぜひ十分に考慮していただいて、これからいろいろな基準をつくっていただければと思いますので、よろしくお願いいたします。
 次に、精神科特例についてですけれども、精神科特例の問題点というのは前から指摘されておりますけれども、実際にこれをどのようにしてこれから解消していくかということになるわけです。
 日本が事務次官の通知であります精神科特例というものを出した四年前に、イギリスでは、十年間で精神病床を十万床減らすという目標を掲げまして、心の病を持つ方々が町の中で暮らせるような政策を推進させてまいりました。そして、イギリスを手本に、ヨーロッパ諸国、アメリカ、カナダ、オーストラリアなどが続いていったわけです。
 いずれも方法はほぼ一致しておりまして、まず一つ目に、急性期の治療にスタッフを手厚く配置して短期間で退院できるようにしていく、退院後の住まいを確保していく、そして、町中のクリニックや訪問看護、ホームヘルプ、憩いの場で暮らしを支えて再発を防ぐ、この三本柱をやってまいりまして、その結果として、総じて全体の費用を抑えることにも成功しております。
 まさに日本の精神科特例の事務次官通知というのは時代の流れに逆行するものであった。周りの国が既にそういう取り組みを始めていた中で、暫定的であったにしろ、そのような措置が今までずっと続いているということは本当に異常な事態であると言わざるを得ないわけです。
 まず、今の三本柱のうちの一つ目でありますが、急性期の治療にスタッフを手厚く配置し短期間で退院できるようにする。これはまさに精神科特例にかかわる部分であるとは思いますけれども、先日、厚生省の方にこの精神科特例をどのようにして解消するのかということをお尋ね申し上げましたら、精神科医の数が一年間に何人ふえるかということで単純に計算をすると、精神科病床が一般病床並みになるのには七十五年かかるというようなことを言われました。
 医者の増加を待つという全く非生産的なことをせずに、現状でも十分精神科特例というものを解消していくことはできると思いますけれども、そのためには、何といっても、入院患者さんを減らし、在院日数を減らしていくということをしなければいけないわけです。医者がふえなければ患者さんを減らすという当たり前の理屈なわけですけれども、今の状況で単に退院を促進するということですと、ただでさえ人手の少ない今の精神科医療の現場ではそういうことはできない。ただ回転が速くなって、今度は医療者側のオーバーワークになってしまうわけです。
 ですから、まず第一番目の質問になりますけれども、病床を減らすためにどのようにしていくお考えをお持ちであるか。病床を減らしていったら病院がつぶれるということであったら、病院側は永遠に病床を減らすような努力をしませんので、まずどういうふうにして病床を減らすことができるか、お考えを教えていただければと思います。

■福島政務次官
 最も大切なことは、退院後の受け皿づくりを進めることにあると思います。
 現在、障害者プランに基づきまして、精神障害者社会福祉施設等の計画的整備というものを進めております。これは十四年度まででございますけれども、さらに引き続き社会福祉施設の充実というものに努めていく必要がある。これが一番大事だと私は思っております。
 具体的に申し上げますと、受け皿としまして、生活訓練施設、授産施設などの社会福祉施設やグループホームなどを平成十四年度末までに約三万人分整備をすることといたしております。現在の進捗状況は、平成十一年度末現在で一万九千人分が整備をされております。特に、グループホームにつきましては、十四年度末までに五千人分を確保することといたしておりますけれども、進捗状況は、十一年度末現在で四千人の精神障害者の方々が利用されている。
 この施策をさらに力強く前進させていきたいと考えております。

■水島委員
 もちろん退院しやすい地域の基盤づくりというものは大切なわけですけれども、退院できるようになったからといって、ただ退院させていくと、結局病院がつぶれるということになってくるわけです。そこでやはりもう一つ政策が必要になってくるのじゃないかと思いますが、そのあたりはどうお考えでしょうか。

■福島政務次官
 むしろ専門の先生からストレートに御指摘をいただいた方がいいのではないかというふうに私は思っておりますけれども、一方では急性期の精神科医療というものを推進する必要がございます。急性期の精神科医療を推進するためには、人員配置も厚くしなければならないということもございますし、当然それに応じた診療報酬上の評価もしていく必要があると考えております。
 この点につきましては、看護配置に対しまして、二対一看護まで評価した入院基本料を創設をいたしましたし、標準医師数を満たしている場合には加算をするというようなことも設定をいたしました。さまざまな御議論がこの委員会でも行われましたので、今後の診療報酬の議論の中で、そういったものがどのように踏まえられた議論になるかということをこちらとしても見守ってまいりたいと思っております。

■水島委員
 例えば、今も急性期の医療を充実させるということがございましたけれども、精神科特例を段階的に解消していくために、急性期の病棟、児童、思春期の専門病棟、また覚せい剤などの専門病棟など、まずそちらの方から一般科並みに引き上げていこう、そのような考えはいかがでしょうか。

■福島政務次官
 この点につきましては、一昨日の委員会でも御答弁をさせていただきましたけれども、政省令の見直しに向けまして公衆衛生審議会のもとに置かれた委員会で検討が進められているところでございまして、その中での検討をお待ちしたいと思っております。

■水島委員
 では、ぜひ活発な御議論をいただきまして、退院しやすい支援体制、特に住宅の問題というものは重要です。まだ地域、そして何といっても家族からの偏見も強い、理解が足りない。そんな状況では、家族の理解が得られないために退院できないというようなケースも非常にございます。ぜひ、退院してもしっかりと仲間と支え合って、一人で、単身で暮らしていけるような、そのための住居づくりをお願いしたいと思います。
 そして、退院をしていくということになりますと、やはり大きな問題でありますのが就労の問題です。仕事をしたいのだけれどもどこも雇ってくれない、だから、仕事ができずにぶらぶらしていると、だんだん病気もまた悪くなってくるというようなこともございます。
 障害者雇用促進法の雇用率制度の中には、現在精神障害者が含まれておりません。この点につきましては、一応障害者プランの計画期間である二〇〇二年までに環境を整備していくということでありますけれども、現在の進みぐあいを把握されているか、そして、二〇〇二年からは雇用率制度の中に精神障害者を含めていくことができそうであるかどうか、そちらを教えていただきたいと思います。

■渡邊政府参考人
 労働省では、精神障害者の雇用の問題につきまして、昨年の七月に研究会を設置いたしました。精神科の先生や労使の代表、あるいは精神障害者の家族の団体の代表、こういった方をメンバーにしておりまして、現在まで約十回近く研究会を開いて検討しております。
 その中で、現在は、精神障害者の方の雇用や就労の実態の問題、精神障害者の特性に応じた就労形態のあり方、あるいは精神障害者の雇用管理に関する配慮事項、こういったことについて議論をいろいろと重ねていただいているところであります。先ほどのお話にありました障害者プランの計画期間であります平成十四年度までにできるだけ結論を得たいということで、今検討をお願いしているところであります。

■水島委員
 二〇〇二年と一口で言いますけれども、精神障害者の方から見れば、きょう、あす仕事ができるかというような非常に切実な問題でございますので、一日も早く、精神障害者の方がきちんと当然の権利として就労することができるように、社会全体でそのような責任をきちんと背負っていくような体制をまず政治がリードしてつくっていく。そういうふうにしていかなければ、いつまでたっても地域、また家族、周囲の方々の理解というものは得られないのではないかと思います。ぜひ、さまざまな偏見を解消していくためのリーダー役を行政の皆様にお願いしていきたいと思っております。
 精神科についてはまた後でちょこちょこお伺いいたしますけれども、一応以上で一区切りにさせていただきまして、次に、臨床研修の専念義務についてお伺いいたします。
 既に幾つか質問が出ているようでありますけれども、何といいましても、二年間の研修を義務づけるのであれば、その間の生活を保障することが必須であると思いますけれども、この必要性についてどうお考えでしょうか。

■福島政務次官
 臨床研修中の研修医につきましてどのようなことが今まで述べられているかということでございますが、平成十一年二月の医療関係者審議会医師臨床研修部会の取りまとめにおきましては、「研修中の医師に対して、その手当てが適切に支払われるよう必要な措置を講ずるとともに、指導医の処遇の在り方についても検討する。具体的な費用負担については、国及び医療保険の双方が負担している現状を踏まえ、今後その在り方を整理する。」となっておりまして、今法案の成立の後に、実際の制度の運用に向けての検討の中で検討させていただきたいと思います。

■水島委員
 現在も研修中の医者には、細々と、かなり幅がありますけれども、一応給料らしきものは出ておりますけれども、二年間アルバイトをせずにしっかりと研修していくということであれば、例えば司法修習生の給与などと額のバランスをとる必要があるのではないかと思いますが、その点についての御意見を伺いたい。
 それから、その場合に、全体としての財源はどの程度必要になって、今それをどこから負担するかということも含めて議論されているということでございましたけれども、そのくらいの財源を出してくる場合に、理念として、また現実的にも、どこから出してくるのが望ましいとお考えか、大臣あるいは政務次官のお考えをお聞かせください。

■伊藤政府参考人
 御説明をさせていただきます。
 臨床研修期間中につきましては、必修化、義務づけするわけでございますから、その間の臨床研修に専念できる体制の整備というのは基本的に非常に重要なことだと思っております。
 そこで、この二年間の費用につきましては、平成十六年の実施までの間に、現在、二年間の研修生がどれくらい研修病院において給与をいただいておるか、いわゆるアルバイト先でどれくらいいただいているか、それらの実態を調査いたしまして社会的に妥当な水準がどの程度かというようなことを調査の上、その財源につきましては、現在、臨床研修に必要な基盤整備につきましては一般会計で支弁しているわけでございますし、病院におきまして保険医としての診療報酬が入ってくるわけでございまして、いわゆる医療保険の財源というものも投入されているわけでございます、それらの現状に着目いたしまして、今後その費用負担のあり方を整理することになっているわけでございます。今後、この調査結果を踏まえて具体的に額を決めていくというふうに考えております。
 なお、司法修習生と同じような体系にすべきではないかという御意見があるわけでございますが、司法修習生につきましては別の法律で、そして、これはそれぞれ判事、検事、弁護士になる前の研修でございますが、臨床研修につきましては、医療保険上は一人前の医師として扱い、そして基本的にはオン・ザ・ジョブ・トレーニングだということで、司法修習生とはその点が違うのではないかという理解をしているわけでございます。

■津島国務大臣
 一言追加させていただきます。
 研修医と司法修習生の今の立場は非常に違うことは御承知のとおりで、片っ方は必須であり、片っ方はそうではない。しかし、必須になりました場合にこの問題は大変大事な問題になるということを頭に置きながら今担当局長からお答えしたのですけれども、修習生の給与額も参考にはしなきゃいかぬと思いますけれども、私が司法試験を通って、勤めるかどうするか随分考えたことがあるのですけれども、そのときは給料をもらうということは余り選択の材料ではなかった。ただ、勤めてみて、修習に行った人は随分いいお給料をもらっているなという印象を受けたことはあります。
 一方、今の研修医の状態というのは、かなり厳しい状態に置かれている。アルバイトをやっても厳しいという印象を私は持っておりますから、修習生の給与と比べてみるだけでは適切な結論は出ないのじゃないか。ただし、アルバイトが一体どうなのかという実態もよく調べなきゃいかぬので、なかなか難しい問題だと思っております。

■水島委員
 途中まではわかっていたのですが、最後のところで急にわからなくなってしまいました。
 研修義務のある人間にアルバイトということで今お金が支払われているのは、独立して医療業務を行う者に対してアルバイト料を払うわけで、私も研修医のとき一人で夜当直をして当直料を稼いでいたわけでありまして、それは、自分で医療をやりながら非常に危険なことだと思いながら、ただ生活のためにやっておりました。ですから、そういう実態を十分に調査していただきまして、アルバイトをする必要がないようなしっかりとした生活保障を二年間していただきたいと思います。
 肝心の研修内容ですけれども、その内容についても既に質問はあったようですけれども、研修の内容に精神科を入れることになっているか、あるいはまだ決まっていないのであれば、大臣あるいは政務次官のお考えとして精神科を入れる必要性を認めるかどうかをお答えください。
〔鴨下委員長代理退席、委員長着席〕

■福島政務次官
 これまでの医療関係者審議会の議論、そしてまた大学病院、臨床研修病院関係者の意見でも、精神医療分野にかかわる研修の重要性につきましては指摘をされてきたところでございます。
 研修内容につきましては、研修医が学ぶべき重要な事項について、研修施設の特色や多様性を尊重しつつ、研修医に応じた研修プログラムの作成を行える仕組みが適当と考えておりますけれども、今後、医療関係者審議会のもとに大学病院、臨床研修病院等の関係者から成る検討会を設置し、具体的な検討を進めてまいりたいと考えております。

■水島委員
 私が精神科を入れろと言っているのは、自分が精神科医だからというだけではなく、やはり質のよい治療、関係が持てる医師を育てていくためにも、身体疾患患者が精神症状を来したときのためにも、また、精神疾患の患者が身体合併症を来したときのためにも、あらゆる医師が精神科の研修を受けている必要があると私は確信しております。それが、ひいては精神障害者の差別の撤廃にもつながっていくわけであります。
 改めてお伺いしますけれども、政務次官個人のお考えで結構ですけれども、精神科を研修内容に入れる必要性をお認めになりますでしょうか。

■福島政務次官
 研修施設の特色や多様性があると思いますので、現時点で一概に入れるという御答弁は差し控えさせていただきたいと思います。
 しかしながら、患者さんと医師の間の関係をどうつくっていくのかということが極めて大切だというふうにさまざまな方から指摘をされているわけでございます。そういう視点からいいましても、どのような臨床研修の形になるかはともかくとしまして、そうした要素が二年間の臨床研修の中に盛り込まれることは必要だというふうに思います。

■水島委員
 ぜひ盛り込んでいただきたいと思います。それは、一般の医者と患者のコミュニケーションの持ち方という一般のことのほかに、精神科の患者さんというのは、ちょっとつき合ってみると普通の人間ですけれども、全くつき合ったことのない方から見ると、本当にどうやって口をきいたらいいかわからないというような一面もあるようでございますので。
 精神科の患者さんが体の病気になって診てもらおうとして、先日政務次官は今も普通の病院で受け入れているというふうにお答えになっていましたけれども、実際私も随分断られた経験がございます。精神科の患者さんが体の病気になったとき、手術が必要なときに、自分の病院では責任を持って看護できない、安全を保証できないというような理由で断られるケースを非常に多く経験しております。もちろん東京都などではそのための合併症医療の基盤をつくっておりますけれども、その病院も非常に限られております。ちょっとおできができたというくらいだったら普通の病院に行けば済むはずの話でして、精神科の患者さんになれるためにも、臨床研修に入れることを極力前向きに御検討いただけますようにお願いいたします。
 そして、その臨床研修は二年間の義務ということですけれども、その二年間は続けてとることが必要となるのでしょうか。今のようにだんだんといろいろな生命科学が進んでまいりますと、途中でちょっと基礎系の大学院に行って研究をしてまた戻るということもあるわけですけれども、二年間連続であることが必要かどうか、お答えを下さい。

■伊藤政府参考人
 研修の効果という観点からは二年間連続して臨床研修を行うことが望ましいと考えておりますが、長期の病気等の事情などにより困難な場合も想定されるため、一律に二年間連続した研修を求めるものではないというふうに考えております。長期の病気以外に留学とか研究等が想定されるわけでございますが、これらにつきまして十分検討した上で、柔軟なものにしていきたいと考えているところでございます。

■水島委員
 次に、いよいよ肝心の医療の抜本改革について質問をさせていただきます。
 抜本改革はどこなんだとか、第一歩というようなこともいろいろございましたけれども、その第一歩が間違った方向を向いていては何歩進んでも変わらないと思いますので、それを取り巻く根本的な問題について幾つかお伺いしたいと思います。
 まず、医療費が増加したからといって国民負担をふやすというような単純な図式では、いつまでたっても医療の抜本改革とは言えないわけでありまして、医療の内容にこそ踏み込むべきであると思います。今までそのような質問もありましたけれども、ここでもう一度まとめてお答えいただきたいんですが、医療費の増加に関しまして、医療の内容には問題がないと思われますか。そこをまとめてお答えいただけますようにお願いします、政務次官。

■福島政務次官
 現在の医療のあり方につきまして、さまざまなことが指摘をされてきたことも事実であると思います。質の問題、効率の問題というような観点もございます。ただ一方では、人口の高齢化が著しく進んでいるという現象もございます。日本の医療費総体をGDPとの比較で見れば、必ずしも世界の中でも高い水準というわけではないということもございます。ですから、今先生おっしゃられましたように、いろいろな御指摘がございますけれども、直ちに何か問題があるんだという結論にはならないと私は思っております。

■水島委員
 私は非常に問題はあると思いますけれども、続けさせていただきます。
 その内容に踏み込んでいく場合、問題がないとはおっしゃっても、改善していくということに関しては賛同いただけると思います。その内容を改善していく場合には、やはり医療の標準化ということが一つの必要なプロセスになると思います。その医療を標準化していくということについてどうお考えになって、また実際にどのように取り組んでおられるか、政務次官のお答えをお願いいたします。

■福島政務次官
 医療の質の向上を図る上で標準的な医療の普及を図ること、すなわち、さまざまな医学文献がございますけれども、それを幅広く収集して科学的に分析、評価を行って得られたものを活用して医療を行うエビデンス・ベースド・メディシン、EBMを推進していくことが必要であるというふうに考えております。EBMについては、経験の浅い医師や遠隔地に勤務する医師等を含めて、すべての診療の場で最適かつ最新の情報に基づく医療を容易に行えることになるために、医療の質の向上につながるというふうに考えております。
 厚生省としては、具体的な推進策といたしまして、科学的根拠に基づくガイドラインの作成、これは学術団体が行うものでございますけれども、これを継続して支援をするとともに、こうした文献検索に当たる図書館司書の養成や、臨床研修において指導的な立場にある者に対してEBMを習得させる研修会の開催などを行っているところでございます。

■水島委員
 その場合に、国際的ないろいろなデータを利用して国際的な標準医療を行っていくことが必要だと思いますけれども、今、日本では、国際的に標準的な論文またガイドラインを見てそのとおりの治療を行おうとすると、その薬が使えないというようなケースもございます。医療を国際的に標準化していく場合には、当然それは薬の許認可にも影響を与えてくると思いますけれども、それについてのお考えを伺いたいと思います。
 もちろん、今既にICHで、外国で既にできているデータがあれば、それによって治験を簡略化していくというようなことがあるのは存じておりますけれども、それは、製薬会社がこの薬の認可をとろうと思って自分でやっていくものであって、厚生省側としてきちんとした標準化医療を行うためにはこの薬が必要だからぜひこの薬を日本に入れようというような動きを感ずることはできないわけですけれども、そのあたりはどういうふうにお考えでしょうか。

■福島政務次官
 この点につきましては、かつてお父様の水島先生が、日本ではリューマチの治療にメソトレキセートが使えない、比較的安くて非常に効果があるのに保険適用になっておらない、それは見直さなきゃいかぬのではないかという御指摘を国会でなされました。私も、その御発言を聞いておりまして、そのとおりだなというふうに思いました。この点につきましては改善をされておりますし、アスピリンの脳血管性疾患等の予防に対しての使用ということにつきましても、現在見直しが進んでおるというふうに伺っております。
 全体的な制度としましては、先生御指摘ありましたICHというものがございまして、インターナショナル・コンファレンス・オン・ハーモナイゼーションでございますけれども、医薬品審査に対して国際的な標準化というものを進めております。具体的には、新医薬品のデータの国際的な相互受け入れを実現するとともに、臨床試験や動物実験等を繰り返し実施することを避けるために、医薬品の品質、有効性及び安全性の評価に関する種々のガイドラインの作成を進めているところでございます。今後も、こうした国際的な標準化ということが必要であると思っておりますし、私どもも着実に進めてまいりたいと思います。

■水島委員
 今の前半のお話は、主に既にある薬に対しての適用拡大という話であったと思いますけれども、日本に全くない薬も現実にございまして、精神科領域にも代表的な薬が使えないものがございます。必要なものに関してはきちんと使えるような対策をこれから厚生省の方でもぜひ講じていかれますようにお願いいたします。
 そして、医療の内容に踏み込んでいく場合には、私は代替医療にも積極的に取り組むことが必要であると思います。今現在、複数の科を受診して多剤を併用しているような患者さんが、一つの、単剤の漢方薬やはり治療に切りかえることによって症状が改善したりQOLが向上したりというようなことが臨床現場では数多く経験されております。これをきちんとシステムの中で位置づけていければ、明らかにそれらの患者さんにとっては医療費は削減されると考えられますし、何といっても患者さん御自身の満足にもつながっていくわけです。このような知見をデータとして体系的に集めていくつもりがあるでしょうか。
 これは、今までは自分で患者さんを集めてデータをとって公表していくというやり方しかとれなかったわけです。今現在も、あちこちに散り散りになっている人たちが自助努力でデータを集めるということは非常に困難なわけですし、また、日本はそのような研究の土壌というものがないところでありますので、特にこういった医療に関してのデータ収集というものは、民間だけの努力ではなかなか難しいと思います。
 アメリカでもNIHで代替医療をきちんと研究するような取り組みを行っておりまして、日本の方がそういう意味ではおくれをとっていると思いますけれども、代替医療についてきちんと効果を検証して、医療システムの中できちんと位置づけていくということについてはどうお考えでいらっしゃるでしょうか。政務次官にお願いいたします。

■福島政務次官
 はり、きゅうにつきましては、あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律により資格制度が我が国においては設けられておりまして、国民保健の向上に役立っているものと認識をいたしております。そしてまた、はり、きゅうの治療につきまして有効性が認められる疾病等につきましては、医師が必要と認めた場合には公的医療保険制度の中で療養費の支給対象とされておりますし、漢方薬につきましても有用性が認められるものについては、これまでも薬事法上承認を行ってきており、保険給付の対象といたしております。
 先生今御指摘がありましたように、NIHでも代替医療ということでさまざまな研究がなされているということでございます。我が国におきましても、教育機関、研究機関が存在するということも事実でございます。私どもは、こうしたさまざまな施設におきます有効性についての科学的な解明、調査の収集というものを見守ってまいりたいと思っております。

■水島委員
 医療費を削減していくためには、それと同時に予防医学の充実も必要であると思いますけれども、予防医学に関して厚生省がどのように取り組まれているか、また、今後どういうふうに取り組んでいかれるおつもりかを教えてください。

■津島国務大臣
 御指摘のとおり、予防医学は非常に大事でございまして、医療費の高騰を招くことなしに健康を守る、結果としてはよいものが期待できるということで、厚生省としてもその重要性はつとに認識しておるところでございまして、今我々が打ち出しております健康日本21の施策はそのような観点から行われているわけでございます。
 具体的にどういうことをやるか。たくさんの課題がありますけれども、例えば喫煙の問題につきましても、WHOからも再々指摘を受けておりますように、日本でさらに喫煙防止のために施策を強化する必要があるのではないかという声が高まっていることを私どもは注目をしておるところであります。

■水島委員
 喫煙のお話が出ましたので、もう一言言わせていただきますが、吸う側の問題もございますけれども、受動喫煙という問題についてもその中では研究されておられますでしょうか。

■篠崎政府参考人
 ただいま大臣が申し上げました健康日本21の中での喫煙対策、四つ掲げてございますが、その中で三番目に公共の場所及び職場における分煙の徹底というのが入っておりまして、先生の御指摘の部分も含まれております。

■水島委員
 そのためのどういうデータをとっているかというようなことをお伺いしたかったんですが、分煙の徹底という結果が出ているということは、恐らくそういうデータがあるんだと思いますので、また後ほど見せていただければと思います。
 さて、医療を抜本的に改革していくためには、今のように過剰な検査や処方をすることによって、あるいは三分間診療で多くの患者さんをこなすことによってしか採算がとれないような仕組みを改めまして、医師の技術というものが正当に評価されるような仕組みが必要だということが指摘されてきております。この点についてどう考えられるか。
 それから、例えば精神科領域におきましては、認知療法ですとか対人関係療法といった精神療法については、うつ病や摂食障害といった病気を薬物と同等あるいはそれ以上に改善するというようなデータがアメリカで行われました大規模な臨床試験からも得られているわけですけれども、今日本では、三分間診療をしてもあるいはきちんと体系的な認知療法や対人関係療法を行っても診療報酬が同じであるというのが実態でございます。特定の疾患に対して特定の効果が科学的に証明されているこれら二つの精神療法にきちんとした診療報酬を与えていくということについてどう考えられるか。
 こういうことを厚生省に御質問しますと、そのためにはまず普及していることが大切だという必要条件を挙げられますが、お金が入らなかったら、三分で患者さんを診ていくような医師を病院側は好みますから、きちんとした報酬が得られなければ普及していかないというのが現場の実情です。そのあたりをどういうふうに改善していかれるか、教えていただければと思います。

■近藤政府参考人
 診療報酬は物と技術について評価をいたしているわけでございますけれども、薬とか検査の合理化を図る、これは当然のことだと思って現にやっているわけでございます。
 それで、技術料の評価でございますけれども、先生御指摘ありましたけれども、今、有効性とか安全性が確立したもので、さらにある程度普及する、こういう医療技術について評価をいたしているわけでございます。このある程度普及ということも、学会の関係で安全性とか有効性が認められるということで、全国満遍に認められなきゃだめだということにはならないわけでございますけれども、精神科の領域につきましては、いろいろな説があってなかなか一つにまとまらないというふうにお聞きしているわけでございます。
 認知療法みたいなものについては既に精神療法として算定できるということでございますけれども、人間関係療法というふうなものはまだ確立された療法ではないというふうに私どもお聞きしているわけでございます。
 いずれにいたしましても、私どもそういう面での専門家ではございませんので、学会の御意見を十分にお聞きして、診療科の特性に応じました技術の評価をやっていかなきゃいかぬ、こういうふうに考えております。

■水島委員
 人間関係療法ではなくて対人関係療法ですが、それがまだ確立されていないなどということを日本の国外に一歩でも出ておっしゃられますと、非常にばかにされると思います。学会といっても国内学会だけではなく国際学会にもきちんとアンテナを張って、正しい医療が日本で行われるように御研究いただければと思います。
 この対人関係療法に関しましては、既にアメリカではうつ病に対して推奨される治療法として一般プライマリーケア医師向けのガイドラインにも載っている治療法でございますし、また消費者ガイドで一九九五年に支持されている治療法でもございます。ぜひこれから厚生省でも積極的に御検討いただきますようにお願いいたします。
 さて、時間がなくなってまいりましたが、ほかに抜本改革に関しまして不可欠なこととしましては、医療機関の機能分担という問題があると思います。風邪でも何でも大病院に患者さんが殺到するために、三時間待って三分間診療というような現状があるわけですけれども、医療機関の機能分担をしていくためには、やはりホームドクターがまず患者さんを診て、病院に紹介する必要があるかきちんと判断して紹介をしていく、そのようなシステムを確立する必要があると思います。ホームドクターにそれだけのきちんとしたトレーニングをしていただいて、そしてホームドクターとしての社会的なステータスを手にしていただくことも非常に重要なことであると思います。この点についての政務次官のお考えをお願いいたします。

■福島政務次官
 医療機関の機能分担というものは非常に大切なことだと思います。日本の医療全体を効率化するためにも、大病院に外来の患者さんが集中をするというような、聞くところによりますと、慶応大学の附属病院は四時まで外来をずっとやらなければならないというふうに私はお聞きをしたことがございますけれども、そういう状況というのは改められる必要がある。そのためには、ホームドクターが身近で一番最初に受診をするところになるべきであるという先生の御指摘は、まことにそのとおりだというふうに私も思います。
 二十一世紀は高齢化がさらに進むわけでございますけれども、すべてのドクターが将来の専門性を問わずに患者さんを全人的に診る基本的な臨床能力を身につけることが必要であるというふうに思っております。そして、臨床研修の義務化の中で、こうした要素というものが十分に反映をされる必要があるのではないかというふうに思っております。
 そしてまた、実際に臨床研修を行いました後、生涯教育の中でみずからの医師としての能力というものを維持していく必要がございますけれども、これは、さまざまな関係団体の中で現在も多くの制度が用意されておりまして、こうした形でのホームドクター的な役割というのは、こうした制度の中で適切に運営をされていく必要があるというふうに考えております。

■水島委員
 ぜひそのような機能分担を進めていただけますようにお願いいたします。
 そしてまた、日本の医療をこれから抜本的に改革していくのであれば――今日本は非常に医療密度が低い国であるということでありますけれども、日本は、国際的な平均に比べますと、病床数は二、三倍あって、職員数は二分の一から三分の一、そして平均在院日数は三から五倍というようなかなり特異な状況にございます。その結果として、医療密度、職員数を病床数掛ける平均在院日数で割ったものですけれども、それがOECDの平均の二十分の一という非常に密度の薄い医療を患者さんが受けているという状況にございます。
 これは事前通告していなくて申しわけございませんが、大臣はこの事実を御存じでいらっしゃいましたでしょうか。

■津島国務大臣
 御存じどころではなくて、それこそ日本の医療の最大の問題だと。今言われた要素は全部同感でございます。

■水島委員
 非常に心を強く持ちましたけれども、その異常な状況を改善していくためには、ただ待っていても改善しないものでございまして、諸外国はそれなりに政策の中で病床を減らすことをやってきております。たしかスウェーデンも七年間か何かで病床を半分以下に減らしているわけですし、行政がやる気になれば病床を減らすことができます。
 それも、病床を減らす場合、ただ減らすと病院がつぶれてしまいますし、病床を減らす分職員数も減るということだといつまでたっても密度は変わりませんので、診療単価の引き上げということでバランスをとりながらきちんとやっていかなければいけないと思いますけれども、こういった考え方について、また諸外国できちんと政治が主導で病床を減らして密度の濃い医療を実現したということについて、大臣はどうお考えでしょうか。

■津島国務大臣
 そこが医療改革の基本のところでございます。
 委員はやる気があればとおっしゃった。しかし、これは医療の側だけではそうはいかない。そこに介護保険の問題が出てきたし、それと関係をして病床区分の話が出てきた。それはすべて、今委員が御指摘の問題をめぐって我々がどういう努力をしていくかということにかかわるわけであります。私は、今可能な我々の努力としてこれが最善であると思って皆様方の御理解をお願いしておるところであります。

■水島委員
 病床区分の問題なんかがあるわけですけれども、今回の改正では、結局、急性期病床と慢性期病床というふうには分けられずに、一般病床と療養病床という区分になっているわけです。この点についてどういう議論があったかということを伺いますと、何か急性期病床に入った人がちょっと状態がよくなったからといって慢性期病床に移して、またぐあいが悪くなったから急性期病床に移してとやって、行ったり来たりさせるのは悪いではないかというような議論があったというふうに昨晩厚生省の方から伺いましたけれども、そもそもそういう発想が医療の抜本改革を妨げているのではないかと思います。
 急性期の治療をするために入った方は急性期の治療を終えたら退院されるのが筋ですし、慢性期の治療をするために入った方は慢性期の治療をするものであって、例えばさっきおっしゃっていたEBMできちんとやっていくというのであれば、既に入院の時点で、このような医療を行って、大体これくらいで退院できるという計画をきちんと立てる、そのようなクリティカルパスの考え方が普及してきているわけです。それを、急性期に行ったり慢性期に行ったりというのが失礼ではないかなんというふうに考えているというのは、最初に入院ありきで、どんな状態になってもだらだらと病院の中にいるというような発想にどうしても聞こえてしまうわけです。
 やはり急性期病床と慢性期病床というものを分けて、人員をどれだけ厚く配置するかということもきちんと分けて、適切な医療を提供すべきだと私は思いますけれども、その点について大臣あるいは政務次官のお考えをお聞かせください。これは、もう時間がないので、あと一問で終わりになりますから、大臣か政務次官にお答えをお願いします。

■福島政務次官
 繰り返しになりまして大変恐縮でございますけれども、療養病床、一般病床という区分は、患者の病態は変化し得るものであることから、提供されるサービスの形態に着目して区分を行おうとしたものでございまして、仮に急性期、慢性期という厳格な形で区分を行い、患者を峻別すべきものとした場合には、患者の病態の変化に対応できないおそれがあるという考えからこのような形になったものでございまして、昨晩厚生省が説明をしたお答えと余り違いがないお答えでございます。
 将来的にはまたこうした病床の新たな区分がありまして、その区分の中で治療が行われていくわけでございますけれども、現在も先生おっしゃられるような意見もございますし、さまざまな意見があるということも承知をいたしておりますし、そうした意見というものは受けとめつつ、この改革を進めてまいりたいと思っております。

■水島委員
 では、ぜひその改革を正しい方向に進めていただく、その第一歩が今回の区分であったというふうに理解をさせていただきたいと思います。
 これは今回の健保法の改正と直接関係あることではありませんが、もしかしたら将来的に関係してくるかもしれない問題でございますが、難病についてお伺いしたいと思います。
 難病の中の特定疾患については、健康保険の自己負担分を国と県で折半負担して、患者さんは自己負担なしという状況でずっとやってまいりましたが、一九九八年の見直しのときから一部自己負担となりました。また、そのときに難病の概念規定に希少性という言葉が加えられております。その希少性というのは、その解釈はおおむね五万人以下とされております。そして、現在、全身性エリテマトーデスやパーキンソン病、潰瘍性大腸炎の患者数はまさに五万人を超えようとしている状況にございまして、患者さんたちは、難病の希少性は五万人以下という規定があるために、自分たちが特定疾患から外されるのではないかというような不安を抱えて暮らしていらっしゃるわけです。
 ここに全国膠原病友の会による膠原病患者家族生活実態調査報告書というものがございます。これは、一部負担の話が出たときに、自分たちの生活実態を知ってもらって、身を守るためにということで、私が住んでおります栃木県支部が中心となって行った全国調査です。難病を抱えての生活というのは、これをお読みいただくとわかりますけれども、物理的、経済的、精神的に非常な困難を伴うものでございます。
 特定疾患から外されるということは、医療費の負担がふえるということだけではなく、自治体から支給される難病手当などの打ち切りも意味することでありまして、患者さんにとっては死活問題でございます。完治できる治療法ができたから外されるというのなら患者さん側から見て理屈が通りますけれども、完治の見込みもないままに、単に患者数がふえたからといって特定疾患から外されるようなことがあってはならないと思います。
 一九九八年に希少性という言葉が加えられ、その希少性の概念規定まで書かれたということでかなりの患者さんが不安を抱えていらっしゃるようでございますが、患者数によって特定疾患から外すようなことがあり得るのであるかどうか、そのあたりの方向性を教えていただければと思います。

■篠崎政府参考人
 御指摘の件でございますけれども、九八年に、希少性の概念につきましておおむね五万人未満ということにしたわけでございます。その決めた時点は、一番多い患者さんが四万人ちょっとという時点で決めたものでございますので、今五万人を超えているものもございますけれども、現時点におきましては今までの取り扱いを変更することは考えておりません。

■水島委員
 ぜひそのような方向でお願いをしたいと思います。
 そして、そのときに一部自己負担ということになったわけですけれども、この自己負担に関しまして、長い先のことはわからないでしょうけれども、今後この自己負担がふやされていく可能性が当面あるかどうか。また、この難病は今研究という位置づけで治療費が負担されているわけですけれども、このあたりの考え方が今後も同じような位置づけで続いていくのかどうか。また、今のその財政状況などについて簡単に御説明いただければと思います。

■福島政務次官
 平成十年度の難病対策の見直しにおきまして、重症患者以外の難病患者の方々に対しまして、他の難治性疾患との均衡にも考慮して無理のない範囲で費用負担をお願いしたところでございます。今回の医療保険制度の改正に当たりましては、難病患者さんの一部負担は現行どおりの水準を維持することといたしておりまして、見直す考えはございません。

■水島委員
 どうもありがとうございました。
 やはりこれから医療の抜本改革を行っていかないと、健保法改正というときに自己負担ということが必ず問題になって、いつまでたっても議論の枠組みが変わってこないと思いますので、本当にその内容に切り込んでいく抜本改革を、ぜひきょう質問させていただいた項目をしっかりと考慮しながら行っていただけますようにお願いいたします。
 その際には、先日、本会議で代表質問させていただきましたけれども、子供の医療というものが今危機的な状況にございます。先日伺ったところによりますと、今まで厚生省では子供の医療というものを扱う部署がなかったということでございます。また、子供病院というのが欧米にはかなり数が多くございまして、日本でも自治体の努力でぽつぽつと出てきている今となっても、厚生省では子供病院の定義を考えたことも子供病院の現状を調査したこともなかったというふうに伺っております。これからはぜひ小児医療をしっかりと位置づけていただきまして、抜本改革を語る際にも、普通の医療、高齢者の医療だけではなく、子供の医療というものもきちんとした柱として位置づけていただけますように最後に要望を申し上げまして、私の質問を終わりにさせていただきたいと思います。
 ありがとうございました。


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