法務委員会(2002年12月4日)



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心神喪失者医療観察法案について(厚生労働との連合審査会・答弁)




◎心神喪失者医療観察法案について山花郁夫委員と五島正規委員の質問に対する答弁を行いました。
途中、大量に省略してございますので、全会議録をご覧になりたい方は、
お手数ですが衆議院HPをご覧ください。
http://www.shugiin.go.jp/index.nsf/html/index_kaigiroku.htm


<前略>



○山花委員

 法案の具体的な条文についてお伺いをしたいと思います。


<中略>



○山花委員

 ということは、その対象については修正案の中では全く変化がないということだと思います。
 もう一点伺いたいと思います。
 この三十四条についてなんですけれども、政府案はこう書いてあります。
「継続的な医療を行わなくても心神喪失又は心神耗弱の状態の原因となった精神障害」、こういう書き方をしておりますが、修正案の方は、日本語的には緩やかになっているように読めます。
「対象行為を行った際の精神障害を改善し、」ということで、昨日の参考人の質疑でも、因果関係が不明確になったじゃないかという指摘がありました。
私もそう思います。
 例えば、例えばの話です、統合失調症の人がいらっしゃったとします。
その人が深酒をして泥酔状態で人をあやめてしまったとします。
 政府案ですと、このケースで、心神喪失の状態で対象行為を行ったかもしれませんけれども、その「原因となった精神障害のために再び対象行為を行うおそれ」ということについては因果関係がはっきりしておりませんから、泥酔状態が原因となって人をあやめた、もともとからアルコール中毒とかで、飲むと粗暴な振る舞いをするという症状がもともとあった人であればそれはまた違うんでしょうけれども、たまたま深酒をして泥酔状態になって心神喪失状態で人をあやめたというケースは恐らく入らないと思います。
 ところが、今回の修正案ですと、「対象行為を行った際の精神障害を改善し、」ということですから、対象行為を行った際心神喪失状態で、あるいはお酒が原因で人をあやめているかもしれないけれども、対象行為を行った際にその人が統合失調症であれば、対象行為を行った際に精神疾患があって、その際の、あくまでも「際の」という言葉ですから、その機会にというふうに読むのが普通だと思いますけれども、そういうふうに読ませるつもりなのか、いや、そうじゃなくて、もともとこれは政府案と全く同じことなのか、その点について御答弁ください。


○塩崎委員

 引き続き解釈で紛らわしいことで大変恐縮でありますが、「行った際の精神障害を改善し、」と書いてあるわけでありまして、行った際の心神喪失状態を言っているわけではございません。
したがって、この「対象行為を行った際の精神障害」という部分は、やはり精神障害が原因で対象行為を行ったという意味で、先ほどの例でいきますと、泥酔状態だけで心神喪失になっているときに行ったことであるならば、それは入らないということだと思います。


○山花委員

 要するに、政府案と趣旨としては同じように読むのだという御答弁だと思います。
ただ、私は、立法技術として、際にというのは、普通はそう読まないと思いますよ。
その点は少し疑問があります。
際にというのは、その時点でどうであったかという話ですから、そこは少し読み方に疑問があるんですが、答弁でそうだということですので、そう読むのが立法者の趣旨だというお話ということになるのだと思います。
 ところで、そうだとすると、与党案提出者にお伺いしますけれども、対象行為について、精神科のお医者さんと裁判官、裁判官とは言わないんでしたっけ、実際は裁判官の人が一体何を判断されるんでしょうか。
これは結局政府案と同じような判断をするのか。
つまりは、判断の対象とその基準について御答弁いただきたいと思います。


○塩崎委員

 これまでも繰り返し御答弁してきたことが含まれていると思いますけれども、要件につきましては、もう御案内のとおりであって、裁判官は、専門とする法律に関する知識、学識経験に基づいて意見を述べるということになり、また審判員の方は、医療における、医学における専門的な知識で意見を言う、こういうことになっているわけであります。
 修正案においては、精神障害の改善に伴って同様の行為を行うことなく、社会に復帰することを促進するためにこの法律による医療が必要と認められるか否かという要件を判断するに当たりまして、例えば、身近に適当な看護者がいるのかどうかとか、そういうような生活環境に照らして治療の継続が確保されるのかどうか、それから、やはり常に身近に十分な看護能力を有する家族がいて、同様の行為を行うことなく、社会に復帰することができるような状況にあるかどうか、こういうような純粋な医療的な判断を超える判断というものを裁判官というのはするべきではないのか。
 政府案におきましては、継続的な医療を行わなければ心神喪失等の状態の原因となった精神障害のために再び対象行為を行うおそれの有無を判断するということであったわけでありまして、そのときに、対象者の生活環境に照らして治療の継続が確保されるか否か、それから対象行為を行いやすい状況にあるのかどうかというような考慮をするというのが政府案であったと思うのです。
 結論的に申し上げますと、修正案、政府案、その処遇の要件が異なりますけれども、裁判官はそれぞれの処遇の要件について、それらの純粋な医学的判断を超える事柄をも考慮して、法律に基づく、あるいは法律に関する学識経験に基づいた判断を行うということだと思います。


○山花委員

 いや、その法律的な知識、学識経験に基づいて何を判断するかというその中身が問題だと思うんですよ。
社会復帰に必要なための医療の継続があるかどうかというのは、それはお医者さんだって判断しますよね。
 ちょっと水島委員にその点について。
そういうことは医療じゃないのかどうか。
あと、医療を中心として考えるということを突き詰めていけば、先ほどから申し上げていますように、六つの罪種に限定する必要はないと思いますけれども、その点、民主党案はいかがお考えでしょうか。


○水島議員

 答弁いたします。
 まず、医療の判断であるかどうかという点なんですけれども、やはりその人の生活環境を調べて、どのようなソーシャルサポートがあるかというようなことを調査した上で医療の環境を調整していくというのは、医療現場で日常的に行っていることでございまして、ただ、人手が余りにも足りないので、その底上げをすべきだということをかねてから訴えてきているわけでございます。
 また、六つの罪種に限るべきではないのではないかという御指摘ですけれども、私たちはそのように考えましたので、民主党案ではあくまでもこの問題を、精神医療の底上げ、そして司法と精神医療の連携の充実、それこそが解決策なのだという観点から民主党案を提出させていただいておりますので、ぜひこの法案が成立するように引き続きよろしくお願いいたします。


○山花委員

 時間が参りましたので終わりますけれども、まだ随分疑問点が残ったなということだけ申し上げまして、質問を終了いたします。
ありがとうございました。


<中略・以降、五藤委員の質問に対する答弁>



○五島委員

 今、坂口大臣とそれから修正案提出の塩崎議員のお話を聞きまして、思いのところにおいて一致する部分はかなりあるかと思いますが、そういう思いを具体的にあらわしたのが実は民主党の提案している法案ではないかと思っています。
その点、今そこに我が党のエースである水島議員がこの法案の提出者の立場でお座りなんですが、法案の内容については結構ですが、今私がお伺いした点についてどうお考えか。


○水島議員

 まさに五島委員のおっしゃるとおりでございまして、私たちがこの法案を考えるときに基本的な考え方として持っておりましたのは、やはり精神障害を持った方たちを社会的にもまた医療的にも地域で孤立させないということがあらゆる問題の解決につながっていくのだというふうに考えまして、この民主党案を提案させていただいたわけでございます。
 法案として提出しておりますのは民主党案でございますけれども、あわせて精神保健福祉十カ年戦略という政策文書を発表させていただいておりまして、このことによって、本当に差別や偏見なく、安心して、また働く権利も保障されながら、精神障害者の方たちが地域で暮らしていける仕組みを提案しておりますので、そのような趣旨でございます。


<中略>



○五島委員

  (厚労省の精神科医療についての改善におくれがあることを指摘して。)
おくれてきた理由についておっしゃったわけですが、ここに「歪められた日本の公衆衛生」という冊子があります。
これは一九七二年に公衆衛生学会の若手研究者がつくった冊子でした。
その時代、保安処分の問題で公衛学会も揺れ動いていました。
そして、そのときにさんざん議論した話というのは、今の大臣のお話しになった内容も私が言っている内容も含めてほとんど議論されてきた。
だけれども、三十年間たっても何ら変わっていないんです。
 やはりここは、保安処分といいますか医療処分でもって精神障害者の問題を考えていく、あるいは措置入院でもって社会から障害者を隔離していく、そういう発想ときっぱりと縁を切った障害者対策というものに厚生省自身が踏み切らないとまた三十年同じ状態が続くわけですよ。
三十年前というのは、今私が大変尊敬している水島先生はまだ子供ですよ。
それだけ長い間、ほかの医学はどれだけ変わったかということを考えた場合に、いかに精神医療の世界がその後変わっていないか。
人材が少なかったというお話もございます。
しかし、きのう来ておられた南さんを含めて、ちょうどあの世代の看護婦になられた方々、優秀な看護婦さんや保健婦さんは一斉に精神科医療に走って、これこそやはり日本の大事な問題だとして大変な形でそこへ走って、その中で学者になったりいろいろな形で経験してこられています。
そのエネルギーも現実の社会の中にはほとんど実を結ばせていない。
 このことを考えた場合に、私はこのような法案というものは本来撤回していただきたいと思うんですが、議会の問題ですからそれは与党としては難しいでしょう。
しかし、少なくても、民主党が出しています、医療を変えていくこの大綱的な法案、十分に御審議いただいて、これをやはり採用していただきたい。
そうでない限り、大臣、こんな法案のために、結局、たまたま症状の二次的な結果として他害行為を行った、そのことだけにとらわれてその人たちを医療処分にし、そして最も困難な、すなわちその人たちを社会復帰させるために大変なエネルギーを割く。
そのエネルギーを現在の精神衛生全般が抱えている問題の改善に割いていけば未然に防げる、そのことを考えた場合に、ぜひ我が党案を真剣に検討していただきたいと思います。
 いずれにいたしましても、障害者、特に精神障害の方々に対する人権無視に対する対応、先ほど法務大臣は、たしか金田君の質問に対してお答えになっておりました、人を拘束する以上法務がかかわるのは当たり前だと。
私もそれはそうだと思います。
そうであれば、この何十年間、精神科病院の中における人権無視、枚挙にいとまはありませんよ。
それに対して人権擁護委員会なり法務省はどういうふうにこたえたんですか。
そこのところをきちっとお考えいただかないと、一体法務大臣はどういう立場でもってこの問題にかかわろうとしておられるのか、厚生労働大臣はどういう形で対応しようとしているのか。
さらに言えば、心神耗弱状態でない状態の犯罪人をあたかも心神耗弱、病気の症状の結果であることと取り違えて多くの措置をしてこられた、そういう法務の責任はどうなるのか。
その点はこの法案では何ら明らかになっていないと思います。
 最後に、この点について再度、法務大臣、厚生労働大臣、そして修正案の提出者、民主党の対案提出者、お一人ずつに御意見をお伺いして、私の質問を終わりたいと思います。


<森山・坂口国務大臣、塩崎委員の答弁、省略>



○水島議員

 民主党といたしましては、先ほど御答弁申し上げましたように、精神医療の全般的な底上げはもちろんのこと、司法の役割ということで考えますと、司法と精神医療の連携の強化、これを今回の法案の中で提出しておりますのは、鑑定センターを設置して鑑定を適正に行っていくということを提案しておりますけれども、そのほかにも、司法と精神医療が関係する問題はたくさんございます。
 例えば、矯正施設における精神医療のあり方もそうでございますし、先ほど五島委員が御指摘なさったような、今現在、医療の現場で精神医療を受けているけれども人権が侵害されているようなケース、これについてはやはり精神医療審査会がもっときちんと実のあるものになる必要があると思っておりますので、いろいろな観点から、この司法と精神医療の連携というものを強化していけるように、さらに提言を続けてまいりたいと思っております。


○五島委員

 それぞれの御答弁を聞いておりまして、何となく質疑がむなしいという感じがします。
問題点は両大臣ともおわかりになっておりながら、そこに対して切り込むのでなくて、そして従来、三十年以上も前からあったそういう精神障害者に対する差別意識、これは病状の二次的な結果なんだ、症状の二次的な結果なんだ、それをどのように防ぐかというのは、未然の段階における医療の体制によってしか防げないよということ、おわかりいただけていると思うんですが、依然としてその結果にこだわって、結果的に将来の予測に対するそういう一定の医療処分的制度をつくろうとしておられる。
我々としては、そういうふうなことに対しては到底同意できないということを申し上げまして、私の質問を終わります。





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