法務委員会
(2001年5月18日)


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選択的夫婦別姓を認める民法改正について



■水島委員
 民主党の水島広子でございます。
 このたび、長尾立子さんに続いて森山眞弓さんが史上二人目の女性法務大臣になられたことは、非常に大きな期待を持って受けとめられております。
 何といっても、長尾さんは、法制審議会が民法改正要綱を答申したときの大臣であり、初の女性大臣のもと民法改正が実現すると注目されたわけですが、それがとんざしたまま現在に至っているのは御承知のとおりでございます。
 そんな中、民法改正に向けてリーダーシップをとられてきた森山さんが法務大臣になられ、今、国内の多くの方たちが、これでやっと民法が改正されると心強く思っています。
それも、官房長官まで歴任されている大物の森山大臣ですから、その期待の大きさはひとしおです。
女性が政策決定の場に参加すること、特にその頂点である大臣になられることがどのような意味を持つのか、実際に理解するよい機会になると思っております。
男女共同参画をうたって五人の女性閣僚を誕生させた小泉内閣の真価が問われることにもなりましょう。
私も、後輩女性議員として大いに勉強させていただきたいと思っておりますし、地元栃木県でも多くの女性たちが期待を持って見詰めております。
 本日は、民法改正について質問させていただきますが、女性の大臣が誕生してよかったと全国の女性たちを元気にさせるような御答弁をいただけるものと御期待申し上げます。
 さて、先日、私たちは、議員立法で民法改正案を衆参両院に提出させていただきました。
我が党といたしましても、衆議院は八回目、参議院は五回目の提出となります。
その法案自体の審議はぜひ速やかにしていただきたいところですが、本日は、民法改正をめぐる今までの法務省の姿勢について伺いたいと思います。
 一九九六年二月、法制審議会は、それまでの五年間に及ぶ審議の結果、婚姻制度等に関する民法改正要綱を答申しました。
その直前、二月二十三日の法務委員
会で長尾大臣は、「御答申をいただきましたならば、この法案の成立に向けまして関係方面の御理解をいただけますよう、私として精いっぱいの努力をさせていただきたいと思っております」と意欲を述べられています。
 ところが、その国会への提出は見送られました。
法制審が答申しながら提出されなかった法案は、民法改正案を含めて歴史上四案しかなく、極めてまれなことであるわけです。
 まず、なぜ民法改正案が提出されなかったのか、その理由について改めてお伺いいたします。

■森山国務大臣
 平成八年でございましたか、あのときに、法制審議会が、選択的夫婦別姓も含む民法の幾つかの項目について改正の進言をなさってくださいました。
それはある意味で非常に画期的な内容でもございましたので、それを法案にして提案いたしますのには各党各派の御了解を得て、御賛成をいただいて出したいというのが法務省の考えであったと思います。
 その答申を得ましたものを各党にお諮りいたしましたところ、特に当時の自民党の中に必ずしも賛成でないという方がかなりの数おられまして、しかも、たくさんの項目、多岐にわたっておりましたので、これは賛成だけれどもこちらはちょっとどうかとか、またいろいろな意味で疑問が幾つも残ったわけでございます。
それで、残念ながらあのときすぐに御答申に沿った提案をできなかったのではないかというふうに思っております。

■水島委員
 今まで国会答弁を調べてまいりまして、ようやく今回初めて、各党の中の反対があって出せなかったということがこの委員
会の審議の場で明らかにされたということで、敬意を表したいと思っております。
 それと申しますのが、なぜ法案を提出できなかったのかというような質問に対しまして、九六年の十二月の法務委員
会までは前向きな答弁をされているわけですけれども、九七年の十一月からは、このときには法務大臣が、 「事柄は日本のこういうふうな身分法に関する大切な問題でございますし、それからお一人お一人の家庭、個人に影響することでもございますので慎重の上にも慎重を期した方がいいんじゃないだろうかというふうなことで、法制審の答申に加えまして、そういうふうにお願いいたしまして世論調査等をやっていただいた経緯がございます。
そういうふうな経緯を踏まえてみますと、結論的に申し上げまして、いわゆる選択的夫婦別姓制度の採用についてはまだ国民の大多数の御賛同を得るに至っていないという結論になったわけでございます」 と既に後ろ向きな答弁になっておりまして、このときから盛んに世論調査ということが引き合いに出されるようになってきているわけでございます。
九六年からその翌年の答弁の間に何があったのか。
 この世論調査ということにつきましては、法制審も実は一九九四年九月に総理府において行われた結果も見ながら審議を慎重に進めてきたということを、九六年十二月の法務委員
会で政府委員
の方がはっきりと答弁されているわけです。
一九九四年の世論調査というと、選択的別姓のための法改正に賛成の人は二七・四%であり、その後引き合いに出されている九六年の世論調査における賛成三二・五%よりもさらに少ない時点であるわけです。
 法制審の答申した民法改正案が世論を理由に提出されないということは、一九九四年の世論調査に基づいて出された法制審の答申が間違っていたということになるのではないかと思いますけれども、本当にそうなのでしょうか。
法制審というのは大変権威ある審議会だと思っておりましたけれども、違うのでしょうか。
それとも、この法務省の答弁における理屈が途中ですりかわったということなんでしょうか。
お答えいただければと思います。

■森山国務大臣
 法制審議会というのは、非常に権威のある学識経験者がおそろいになって慎重に考えていただく大変大事な審議会でございます。
そのことは今も変わらないわけでございます。
 私は、率直に申しまして、あの平成八年のときの法制審議会の答申を見まして、これは学者の先生方、あるいは専門家の方々が、これからの日本の新しい時代を見越して、こういう考え方もあるのではないかというやや先進的な御提言をなさったのではないかな、そんな感じを受けました。
 ですから、それを具体的に法案にして国民の多くの人に理解してもらい、かつ本当に実施していこうということになりますと、やはり世論全体がどうであるかということを慎重に重ねて検討しなければいけないということになったのではないでしょうか。
そんなふうに理解しております。

■水島委員
 もちろん、世論調査によって世論の動向を知ることは重要だと思います。
ただし、事人権の問題に関しては、仮に少数意見であっても正しい方向を指し示す必要があると思うのです。
法改正に賛成の人が二七・四%の時点でも民法改正を答申した法制審の見識を私は高く評価しております。
困っている人、必要な人は一部であっても、それが他者の権利を脅かさない限りはやはり法改正すべきであるというのがこの問題の本質だと思うからです。
 この点について、大臣は十分に御承知であると思いますけれども、改めてお考えをお聞かせ願えればと思います。

■森山国務大臣
 もう先生がよく御存じのとおり、今の国民の価値観は非常に多様化しております。
この数年来の変化でもかなり大きなものがあるのではないかというふうに考えております。
ですから、今まで生まれたときから使ってきた従来の名字を結婚してもその後もずっと続けて使いたいと思い、それを認めるという考え方が次第にふえてきていると私は感じております。
 また、少子化が進んでまいりましたので、一人っ子同士の結婚ということもしばしばあるようになりまして、本人たちはもとより、その親御さんや親族の皆さんが、できれば選択的夫婦別姓をやってもらいたいと周りの方がおっしゃるというのも最近は少なくございません。
 特に、女性が職業を持つようになりまして、今日、今の制度では結婚して届けをした途端に姓を変えなければいけないというのが甚だ女性にとって職業上不利であるということがたびたびございますので、職場によっては大変御理解のあるところも最近はふえてまいりましたけれども、最終的に法律上の名前を使わなければならないということがどうしてもございますので、それが甚だ不利をこうむるという職業も間々あるわけでございます。
ですから、このようなことは非常に女性にとっては大きな問題でございます。
 これは選択的夫婦別姓ですから、男性もそのような被害をこうむる方もいらっしゃるわけでございまして、この際、やはり多様な価値観、多様な生き方というものを受けとめて、法律制度もそれにふさわしいものに変えていくのが望ましい、私個人はそう思っております。
 しかし、先ほど来先生もおっしゃっておりますように、国民すべての人に関係のあることであり、本人が直接該当しなくても国民生活全体に大きな関係があり、物の考え方の根本にかかわると申してもいいようなテーマでございますので、法務大臣の立場から申しますと、近く世論調査も予定されておりますし、それも参考にさせていただいて、さらに関係の皆さんの御意見をよく伺い、国会における議論も深めていただいて、ぜひまとめていただきたいというふうに願っている次第でございます。

■水島委員
 今の御答弁、大臣の個人的な見解の部分には私も非常に共感するところがあるわけでございますけれども、やはりこの問題に関しましては、もちろん世論の動向も追い風になってきていることは確かでございますけれども、ただ、やはり先ほど申しましたように、人権問題に関しましては、世論調査で多数決というようなことではなく、本当に高い見識を持ってあるべき方向を指し示すことも法務大臣としての大きな役割ではないかと思っておりますので、ぜひそのような方向で御検討いただきたいと思います。
 そして、あくまでも世論調査の結果を見てということであるとしましても、一九九六年の世論調査の結果の考察についても、単に賛成と反対が拮抗していると言われておりますけれども、年代別に見ますと、二十代、三十代では選択的別姓に賛成の人が反対の人よりもはるかに多く、四十代でも賛成の方が多いという結果になっております。
 ここに一九九六年の初婚率のデータがございますけれども、人口千対で見ますと、十九歳未満が四・七、二十代前半が四七・八、二十代後半六八・六、三十代前半一九・〇、三十代後半四・一、四十代前半〇・九、四十代後半〇・三というふうに、実際に婚姻届を出す世代は主に二十代から三十代前半でありまして、その世代では多くの人が選択的別姓に賛成なわけです。
 世論調査の結果を見る際には主に当事者となる人たちの意見を重く受けとめるべきだと思いますけれども、大臣の御意見はいかがでしょうか。

■森山国務大臣
 当然、当事者になる人たちの意見を尊重することは重要なことだと思います。
 しかし、先ほども申しましたように、そのような新しい生き方、新しい夫婦のあり方というようなことを法的に認めるということになりますと、該当する人々だけではなくて、その周辺の人、あるいは広く言えば国民全体に問わなければならないということがどうしても欠かせないと思いますので、その点も十分考えなければいけないことではないかと思います。

■水島委員
 今のご答弁、また先ほどのご答弁でも、該当する人だけではなくてすべての国民にかかわる問題だというふうにおっしゃっておりまして、また、先日の衆議院本会議での代表質問へのご答弁の中でも、国民生活に重大な影響を及ぼすというふうにおっしゃっておりましたけれども、希望する夫婦が別姓にすることで、それ以外の人たちに具体的にどのような重大な影響があるのでしょうか。

■森山国務大臣
 希望する方がその希望する道を選べる、そのような方法を開くということでありますので、水島先生おっしゃるとおり、私も、一番具体的に関係があるのはその該当する人たちだと思います。
 しかし、例えば自分の娘や息子、あるいは自分の周辺の人たちがそのような生き方、暮らし方をするということになれば、家族や親戚、親族の皆さんが重大な関心を払うのは当然だと思いますし、さらに広げて申せば、そういう問題を日本の社会が受け入れるのかどうかということは、社会全体にとっても大きな問題であろうというふうに思うのでございます。

■水島委員
 今大臣ご指摘のように、最も重大な影響を及ぼされているのは選択的別姓が認められないために夫婦同姓を一律に強制されている人たちだということを、もちろん大臣も十分御承知だと思いますけれども、ぜひ忘れないでいただきたいと思いますし、別姓を希望する人たちの人権がそうでない人たちの人権よりも軽いなどということはあってはならないわけでございますので、本当に選択肢をきちんと提供できるような体制をつくっていただきたいと思っております。
 そして、今おっしゃいましたように、確かに自分の親戚の中にそういう見なれない形態の夫婦があらわれるということは、もちろんそれを知らない人たちにとっては、非常に不安を感じたり不信感を持ったりということも現実的にはあると思っております。
だからこそ私は啓蒙活動というものは大変必要であると思っております。
 さて、法務省といたしましても、一九九六年の十二月までは、少なくとも法案提出に向けて前向きに努力したいという答弁をされておりまして、また、先ほどの大臣のご答弁の中でも、これからぜひ議論を深めて成立に向けて努力をしてほしいというような趣旨の答弁をいただきました。
実際に今まで法務省としまして具体的にどのような努力をされてきたのかをここでお伺いしたいわけです。
 まず第一点としまして、毎年、政府提出法案として提出すべきものとして、与党への働きかけをされてきたのでしょうか。
毎年働きかけをしたけれども提出できなかったということであれば、政府の責任というよりは与党の責任ということになると思いますが、いかがでしょうか。

■森山国務大臣
 毎年必ずやってきたかどうかということは、ちょっと私も子細に承知しておりませんが、私が与党の議員の一人として、与党の中でも折に触れてこのことは声を上げまして、何か打開する方法はないかということで、同じ考えの議員の皆さんと折々相談をしていたことは事実でございます。

■水島委員
 では、法務省の方で結構なのですけれども、その毎年の事実経過を教えていただけますでしょうか。

■山崎政府参考人
 お答えを申し上げます。
ちょっと詳しいデータを持っておりませんが、提出予定法案として掲げたという記憶はございません。

■水島委員
 そうしますと、最初に出そうとして与党内の意見がまとまらずに断念されてからというものは、与党に向けて再度考え直してほしいという努力は法務省としてされていなかったというふうに今のご答弁を受け取らせていただいてよろしいかと思います。
反論がございましたら、どうぞ。

■山崎政府参考人
 ただいま私が申し上げましたのは、提出予定法案という形はとりませんでしたけれども、個々の先生方にはぜひ御理解をいただきたいということで個別に御説明を申し上げ、周辺整備ができるように我々としても努力はしております。

■水島委員
 それを毎年されてきたというふうに理解してよろしいのでしょうか。
さらに、個々のどういう議員にされてきたのかというのも教えていただきたいのですけれども。

■山崎政府参考人
 適宜必要に応じてということになりますが、今、私ずっとこの担当をしているわけではございませんので、すべての先生方の名前を挙げろというのはちょっと不可能でございます。
それはまた個別の問題はちょっと御勘弁いただきたいと思いますけれども、我々としても個々に御説明申し上げているということは間違いございませんので、御理解をいただきたいと思います。

■水島委員
 時の総理大臣、また法務大臣、その他与党内で力を持っておられる方には当然御説明をいただいてきたものだと思います。
ただ、今データをお持ちでないということですので、そのあたりの事実経過につきまして、後ほどでも結構ですので、議員個人というよりは、そういう責任ある立場の人にきちんと説明をしてきたかということでございますので、それは私は教えていただける内容だと思いますので、ぜひ教えていただけますようにお願いいたします。
 時間がありませんので、大臣への御質問を続けさせていただきたいと思います。
 次に、今は与党に対してどういう働きかけをしてきたかという質問でございますが、先ほども申しましたが、国民への啓蒙をどういうふうにしてきたかというのも重要な点でございます。
民法が夫婦別姓を認めていない以上、この問題への理解を深めるといっても、身近にそういう夫婦がなかなかいないわけですから、国民にはなかなか理解をするような機会がないわけでございます。
 今まで民法改正運動に取り組んでまいりましたが、別姓を認めている国があるのかなどという質問を受けることも多くございました。
先進国で選択的別姓を認めていないのは日本だけだという事実を知って驚く人も多いわけです。
また、夫婦同姓は日本の昔からの伝統などと言っている人も議員の中にもいらっしゃるようですけれども、同姓はあくまでも明治維新に西洋社会のまねをして取り入れられたものであるということも知らない人が多いわけです。
別姓には絶対に反対だという人にしても、これは選択制なのだということを知ると賛成に回る人も多いわけです。
 これらの事情が正しく理解されていない状況では、理解を深めることも冷静な議論をすることもできないと思います。
法務省として今までどのような啓蒙活動をされてきたのか、お答えいただきたいと思います。

■森山国務大臣
 法務省としては、皆さんの御理解を得るためにいろいろ努力はしてきたようでございます。
わかりやすく解説したパンフレットを作成して配ったり、また、答申を現在も法務省のホームページに掲載したり、その内容を広く公開いたしまして、世論調査の結果をまた公開するなど、いろいろの努力をしてきたようでございますが、私の印象としては、法務省の言葉というのはちょっと難しいのですね。
特に、選択的夫婦別姓というのも非常にかた苦しくて、何だか物すごいことをするような印象をまず受けますので、先生がおっしゃいましたように、希望する人がその道を選ぶことの可能性を開くという趣旨なのだということをもっとよくわかりやすいように、強くPRをするべきだと私は思っております。

■水島委員
 ありがとうございます。
ぜひわかりやすいPRをお願いします。
 私もずっと日本で暮らしておりますけれども、実は一度として、法務省のそのような広告というか、そういうものを目にしたことがございません。
わざわざ法務省のホームページにアクセスするというのも相当法務行政が好きな方ではないかと思いますので、普通に暮らす一般の市民、あまり難しい文字が読めなくてもわかるような広告宣伝をぜひお願い申し上げます。
その際には、先ほど申し上げました点をぜひ押さえていただいて、あらぬ誤解やあらぬ不安感を持たれないように、ぜひそのような実のある宣伝をお願いいたします。
 さて、時間も限られてまいりましたけれども、もう一点、非嫡出子の問題についてお伺いいたします。
選択的別姓と同様、あるいは子供の人権という意味ではそれ以上に民法改正における重要な要素でありますが、国連の委員
会勧告を受けながらいまだに放置されている問題でございます。
 私は、ことし三月の予算委員
会分科会で、当時の高村法務大臣に質問をいたしました。
法律婚を守るという大義があるとしても、なぜ法律婚をないがしろにした親は何も法律上の差別を受けずに、子供のみにその影響が及ぶという構造になっているのか、なぜ当事者の大人ではなく、みずからの出生に何の責任も負わない子供が差別を受けなければならないのかという私の問いに対して、高村前大臣は、「責任のある親が何のとがも受けない、おかしいじゃないかというのは、そうかなという気もいたします。
」と法律の問題点を認められた上で、ではどうしたらよいのか、なかなかよくわからないと答弁されています。
 森山大臣は、この点について高村前大臣から何らかの申し送りを受けておられるのか、森山大臣としてはどうお考えになるのかをお聞かせ願います。

■森山国務大臣
今引用されました高村大臣の答弁の載りました議事録を拝見しました。
全く高村大臣のおっしゃるとおりで、確かに、親の方には何もなくて子供だけがそのような不利をこうむるのはおかしいというのはあり得る議論だと思います。
しかし、また方法が難しいというのも一つの問題でございまして、何かうまい方法はないものかというふうに私も思案するところでございますが、これも先ほどの選択的夫婦別姓と同様に、非常に重大であり、かつ民法の重要なテーマでございますので、これは私の全くの私見ですけれども、できれば別々にそれぞれ考えた方がいいのではないかなというふうに考えております。

■水島委員
 選択的別姓の問題と非嫡出子の問題、片や大人の権利の問題、片や子供の権利の問題だと思いますけれども、別々に御検討いただくにしましても、別々にそれぞれ真剣に御検討いただきたいと思うんです。
 もう一つ、同じ日の委員
会で、私は無国籍状態児についても質問をさせていただいておりまして、親が不法滞在をしているからといってその子供が福祉や医療や教育の枠外に置かれている現状を放置してよいとは思われないという趣旨の質問をさせていただきましたが、高村前大臣は、「今直ちにお答えできないわけですが、ちょっと考えてみたいと思います。
」と答弁され、さらに「人権の観点から法務省としても考えたいと思います」「子供と親は違うんだから子供については保護が与えられるべきだというのは、それは一つの考え方だと思いますし、私もある程度賛成したい部分もある」と答えられています。
 この点についての申し送りを受けておられるか、また森山大臣としてはどうお考えになるかをお願いいたします。

■森山国務大臣
 同様に、高村大臣のご答弁の議事録を拝見しました。
 先生の問題指摘も非常に重要なことだと思いますが、子供の出生及び生育の経緯、家族状況、就学の事実など、人道的な観点を含めまして、個々の事案について在留特別許可を与えるかどうかというようなことを慎重に判断しております。
そのような際に、親と子供が別れて生活するということになることも多いようでございますが、その是非についても検討しなければいけないというふうに思います。
 退去強制に関連する在留特別許可の取り扱いにつきましては、今後とも適正な法の運用に努めてまいりたいと考えております。

■水島委員
 この子供たちの人権問題というのは今までなかなか日が当てられなかった領域でございますけれども、こうした領域への造詣の深い森山大臣ならではの温かい取り組みを心からご期待申し上げております。
 また、先ほどの選択的夫婦別姓の問題でございますけれども、現在は、事実婚夫婦であっても生命保険の受取人になれるなど、現場では柔軟な対応がされております。
それでも民法が改正されないようでは、これからますます法律婚を選ぶ人が少なくなると思います。
通称使用を続けている人であっても、周りとの折衝に疲れ果て、書類上の離婚を選ぶというケースも私の身近ではふえております。
私自身も、法律婚をしながら、必要なときには書類上の離婚を繰り返しておりますけれども、週刊誌に悪口を書かれたり、選挙区で何度も夫を取りかえているというデマを流されたりと大変な目に遭っておりまして、事実婚の方がどれほど楽だと思ったかわかりません。
 今の日本の民法を見ておりますと、壊れた赤信号の前でみんながしばらく待っていたけれども、ついに待ち切れなくなって信号を無視して歩き始めたというような印象を持っております。
そして、先進国の中でみずからの姓の選択を認めていない唯一の国である日本が、もしかしたらどこよりも先に法律婚が形骸化することになるのかもしれません。
壊れた信号を直すのか、信号が壊れていることにいつまでも目をつぶっていくのか、法治国家の政府としての責任は大きいと思っております。
 今国会に私たちは議員立法で民法改正案を提出しておりますが、議員立法だからと逃げ腰にならず、もともとは法制審の権威ある答申に基づいて進められていた政策であるということに改めて思いをめぐらせていただきたいと思います。
 御党の野田聖子代議士も、ご結婚を控えて、野田の名を残したいと悩まれていると伺っております。
このタイミングで森山さんが大臣になられたという幸運を決してむだにしないよう、民法改正を望む多くの人たちの期待にぜひこたえていただけるような大臣としてのリーダーシップを心から期待申し上げておりますが、その点につきまして、最後に一言、大臣としての決意表明をお聞かせいただけますようにお願いいたします。

■森山国務大臣
 非常に激励の趣旨でご質問いただきまして、私も新たな覚悟で頑張っていきたいというふうに思います。

■水島委員
 どうもありがとうございました。
その新たな覚悟というのが、ぜひ森山大臣の任期中に、長い懸案でございました民法改正を実現してくださるというそのお言葉に置きかえて理解させていただきまして、また、私、大変未熟者ではございますけれども、できる限りの応援をさせていただきたいということをお約束申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。
 どうもありがとうございました。



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