靖国問題
7月5日、民主党の外務・防衛部門会議に東京大学大学院総合文化研究科教授の高橋哲哉先生をお招きして、「靖国神社の問題点」というタイトルで、お話をうかがいました。高橋先生が書かれたちくま新書の「靖国問題」という本は、26万部という異例の売り上げになっているそうで、いかにこの問題に関心を持っている方が多いかということを示していると思います。 靖国神社は、俗に言われているような「追悼」のための施設ではなく、「顕彰」のための施設だということは、一般に案外知られていないのではないでしょうか。 祀られている人も、決して戦死者全般ではなく、特別の戦死者(国家に属する戦死者)のみとなっています。「朝敵・賊軍」(例えば、西南戦争の西郷隆盛も祀られていない)、外国人、民間人は排除されています。靖国神社は我が国における戦没者追悼の中心的施設と言われますが、原爆や空襲で亡くなった方を含め、民間人は祀られていないのです。 もう一つ、信教の自由の問題があります。靖国神社への合祀の取り下げを求めている遺族の方たちとのやりとりの中で、池田権宮司は「天皇の意志により遺族の合祀は行われたのであり、遺族の意志に関わりなく行われたのであるから抹消をすることはできない」と答えています。靖国が追悼のための施設であるのなら、遺族の意向を無視することはできないはずであり、あくまでも国家の意思で祀っているもので、遺族の意思は関係ないということになります。 これはまさに「強制合祀」とすら言えるものであり、信者が抜けたいと言っているのに拒否するというのは、カルト宗教と同じです。靖国自身が信教の自由を認めないのであれば、一宗教法人としての靖国の信教の自由も認められないのではないでしょうか。 そもそも、日本における政教分離原則の意味は、他国とは違うものです。政教分離は近代国家の原則ですが、導入された背景は国によって異なります。日本の場合は、大日本帝国憲法から日本国憲法に変わるときの重要なポイントが「政教分離」であり、「万世一系の天皇これを統治する」から「主権在民」へと憲法の原則が変わる大前提に政教分離があるのです。つまり、主権在民にするための、国家神道の否定という歴史的背景があります。 世論調査をする前に、日本人はもっと靖国神社について知る必要があります。私自身も、政治家になる前は詳しく知りませんでした。まだの方は、ぜひ、高橋先生の「靖国問題」を読まれることをお勧めします。 |