No.2(2000.12.19)

私が日常感じていることや意見を書いていきます。
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ちょっと変だぞ、 民主党が「少年法改正」賛成へ
 第150臨時国会において、民主党では、少年法改正の与党案に対して修正が認められなかったときには反対するという方針を決めていました。ところが、採決の直前になって急に「与党案に賛成せよ」という方針が執行部から打ち出されたのです。

 私の所属する民主党法務部会では、犯罪被害者の方たちを始め法曹界など各分野の方々と会い、少年院の視察もし、議論を重ねて修正案を作り上げてきました。慎重な検討の結果、厳罰化は犯罪抑止にはむしろ逆効果であるとの結論に達したため、与党案には反対という方針を決めたのです。それを、ほとんど論議もされないままの方針転換には納得がいきません。

 私は、10月31日に行われた本会議の採決では棄権することにしました。党議拘束に逆らって退席という初めての体験です。退席にタイミングが分からず、先輩議員に教えてもらうという一幕もありました。私の他にも少なからぬ議員が退席したようです。

 今回の民主党のやり方は、十分な議論もないままに、有力者によって意見の流れが作られ、それが数の力で決められていく。まるで与党と同じではないかと思いました。「組織の結束のため」とか、「参院選に向けて世論に答えるため」などと言いますが、自分の信念を曲げて流れに迎合してしまっては、政治家や政党は堕落するばかりです。今回の件では、今後も内部から民主党をしっかりと批判していきたいと思います。


 社会的な議論になっている少年法の問題ですが、私にはどうしても表面的な議論に終始しているような気がしてなりません。そして、「被害者の人権」という問題と、加害者対策が同じ土俵の上で語られていることも気になります。
 少年犯罪の被害者の方が最も苦しまれるのが、「事件の真相を全く教えてもらえない」ということ。自分の大切な子供が何のために殺されたのか、少年事件の場合には今までほとんど知ることができませんでした。そのため、「加害少年の人権」ばかりが重視され、自分の子供が殺されたという一番重大な事実が軽く見られているような気がする、とおっしゃっています。

 被害者の人権確保という点からは、今度の与党案でもまだまだ不十分です。あまり知られていないようですが、民主党では、いち早く被害者の人権に目を向け、「犯罪被害者基本法案」を作りました。今年の4月に提出しましたが、与党の賛同を得られずに廃案となりました。今国会でも再提出していく予定ですが、一人の精神科医としても、犯罪被害者の問題にもっと注目していく必要があると思います。

 一方、犯罪加害者をどうするかという問題ですが、私は社会の安全というものを第一に考える必要があると思います。米国のアミティという、民間の犯罪者更生組織の調査によると、普通の受刑者が出所後2年以内に再犯で再入所する割合が63%であったのに対して、アミティのプログラムに参加して心理学的ケアを受けた人の再受刑率は26%であったとのことです。一度罪をおかした少年に二度と罪を犯させないようにしていくことが社会の安全を確保する上で重要であることは言うまでもありません。ただ単に刑に処するだけでは、周りの人への憎悪を一段と高めるだけです。更生システムの専門化・徹底化こそが、加害者対策の鍵になると思います。

 民主党でも、議論を積み重ねて、与党案への修正案をまとめました。
 それにしても、民主党が「犯罪被害者基本法案」を提出していたことはほとんど知られていません。やはり民主党は、見せ方が下手な政党なのか、与党の方がマスコミに取り上げられる量が圧倒的に多いからなのでしょうか。みなさまに知っていただけなければ、どんなに良い法案を作っても意味がないので、あらゆる機会を利用して、情報提供を行っていきたいと思います。



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