国会報告(02.1.20〜1.26) |
■1月20日(日) 10時から障害児保育について個人相談。 障害児については、保育も教育も健常児からの分離が前提という発想から の脱却が求められているが、現実には通常保育園への障害児の受け入れは はかばかしくない。受け入れを「判定」するという制度になっていること がそもそも差別的な構造であって、保育園に入りたいという希望があれば、 どのようにしてそれを可能にできるかということが論じられなければなら ない。この問題は国のレベルというよりも市町村のレベルの問題が大きい が、国政レベルでも「障害者差別禁止法」を制定するなどして積極的に取 り組んでいきたい。また、市町村レベルでも、こうした問題を重点領域と する議員が増えてほしい。 11時すぎから新年会。 12時半から栃木県NPO法人代表者会議。県内に多数作られているNPO 法人をネットワーク化しようという初の試み。私も民主党の税調の役員と いう立場もあり、自民党の議員とともにアドバイザーとして招かれた。他 に、県議、市議、町長が、各党から招かれた。 NPO活性化は、「市民が主役の民主党」としては結党以来の得意分野だが、 昨今の社会状勢を見ると、NPO政策が日本の生命線になるのではないかと思 う。 「官」と「民」の中間にある「公」を見直して社会的に位置づけることに よって、財政の建て直し、社会の活性化、社会的公正の実現、社会的モラ ルの向上が期待できる。日本では単に「大きな政府か小さな政府か」とい う一面的な議論ばかりが行われ、本来政府に期待されていた役割を「公」 がどう担うかという本質的な議論がなぜか行われてこなかった。 社会政策としてのNPOには、3つの意味合いがある。まず、雇用の創出とい う観点。公的目的性の高いNPOの仕事での人件費は決して高くない(米国で は平均年収2〜3万ドル)。 次に、社会政策を税金でまかなわないため、社会政策のコストを下げると いう観点。 そして、人々に働く意義をもたらすという観点である。 欧米では、市民による自由な社会貢献活動としてNPOを積極的に位置づけ、 法人格付与と税制支援策をとっている。米国では1000万人の人がNPO で食べている。 日本では、阪神淡路大震災のときにボランティア活動の重要性が認識され、 1998年にNPO法が成立したが、そのとき、法人格のみが付与されて税制 支援策が積み残された。見直し規定に従い、2001年3月にNPO法人への 税制優遇措置を含む租税特別措置法等の一部改正案が成立し、10月1日 より施行されたが、認定手続きの煩雑さ、寄付金や事業収入の扱い方、広 域性などが足かせとなって、現実的にはほとんど活用されていない。 民主党は、社民党・共産党とともに、これらの問題点が解決された対案を 提出したが、野党案は採決に付されなかったという経緯がある。 成立した政府案が現実的にはほとんど価値のないものであることが判明し た以上、民主党としても再度民主党案を提出していく必要がある。また、 もっと広く、NPOの積極的な位置づけを日本救済の重点政策として訴えてい くべきだ。 14時20分に会場を出、慌てて移動して会合に顔を出し、また急いで移 動して夕方は新年会。 ■1月21日(月) 7時45分から恒例のマンデーリポート。 最終ポイントで息子と合流し、9時27分の新幹線で東京へ。 本日、150日間に及ぶ通常国会が召集される。まだしばらくは国会審議 が本格化しないため、家族そろっての移動とはせず、私と息子だけが新幹 線で通勤することにした。 登院手続きを済ませ、11時からの両院議員総会に出席。 本日から東京で開かれているアフガン復興支援国際会議において、2つの NGOが外務省によって出席を拒まれるという事件が起きている。NGOの代表 が「お上の言うことはあまり信用しない」と新聞紙面でコメントしたこと で某議員(自民党の鈴木宗男議員)が怒っているというのがその理由だと のこと。一議員が外務省を暗に私物化しているという点からも、国際社会 において日本政府がNGOに対してどのような認識を持っているかをさらけ出 してしまったという点からも、大変な問題だ。NGOとの連携を重視する民主 党としては事態を徹底解明する責任がある。 11時40分から代議士会。 今国会の所属委員会が正式に決まる。私は厚生労働委員会と法務委員会、 そして青少年問題に関する特別委員会。 全体として気になる点が一つ。例の自衛隊の国会承認問題で「造反」した 議員は、一人残らず委員会の理事をはずされている。党内役職停止処分中 の人たちはまだしも、「注意」処分の人もである。幹事長による処分以外 の「処分」があるということか。ネクストキャビネットからも、委員会の 理事からも、「造反」議員がはずされたということは、党としての政策の 方向性に偏りが生じやすい環境ができたということにもなる。 多様な価値観が政策に反映される民主党としての良さが失われないよう、 配慮が必要だと思う。 12時から本会議。 議席指定。私自身の席は変わらないが、21世紀クラブや無所属の人たち が次々と自民党に入党したため、だんだんと自民党との境界線がずれてき て、ついに私の隣が自民党議員になってしまった。 常任委員長の選挙(実際は議長による指名)、特別委員会設置。青少年問 題特別委員会が正式に設置された。 ここで本会議は休憩となる。 直ちに、移動して、青少年問題特別委員会。委員長および理事の決定。 急いで事務所に戻り、かろうじて授乳をして、13時から司法と精神医療 の連携に関するプロジェクトチーム役員会議。精神障害のために重大犯罪 を犯した人たちの問題について、政府案が3月中旬までに提出される見通 しとのこと。これに対する戦略を話し合う。 14時に本会議再開。第2次補正予算に関して財務大臣による財政演説。 14時半から後日録画する予定のテレビの担当者との打ち合わせ。 16時に党本部に移動して、全議員懇談会。通常国会における政策テーマ について。 私は子ども部門の創設を提案した。私自身も有害情報、小児医療、保育、 児童虐待、無国籍児、一人親家庭、など子ども政策にいろいろと取り組ん でいるが、各部門に散らばっているため、民主党としての子ども政策の全 体像が見えにくい。子どもの権利条約に基づく国内法の検証作業など、す べきことはたくさんある。 民主党が政権をとった暁には「子ども省」を新設するというアピールを込 めて、ネクストキャビネットに子ども部門を作ってほしいと要望。まずは プロジェクトチームで論点を整理するようにと、プロジェクトチーム設置 の許可がおりた。子ども部門の設立に向けて準備を進めていきたい。 そのまま党本部で18時から女性政策草案作成会議。先日行った世論調査 の結果を踏まえて最終的な確認作業。 遅くなったため、息子とともに東京泊。 ■1月22日(火) 11時から取材。 12時40分から代議士会。 13時から本会議。昨日の財務大臣の財政演説に対する各党の代表質問。 加藤紘一代議士秘書などによる一連の「政治とカネ」問題に関連して社民 党の辻元清美代議士が企業・団体献金について質問したが、小泉首相は 「企業・団体献金なしでどうやって政治をやれというのか。税金でやれと いうのか。そんなことできるわけがない」というような答弁をしていた。 比較的クリーンと言われる小泉首相でもこの程度の認識だ。 同じく辻元議員の質問で私設秘書の数を問われ、小泉首相は「事務所の職 員で公設秘書以外の人数」とした上で「9人」、尾見大臣に至っては 「19人」と答えていた。これだけの人を雇おうとしたら確かに企業・団 体献金なしでは無理なのだろう。政治家に要求される「仕事」のあり方と 秘書の人数をきちんと見直すべきではないだろうか。 16時16分の新幹線で宇都宮へ。 ■1月23日(水) 午前中は地元で支持者宅訪問。 今日も息子を抱いて、13時43分の新幹線で東京へ。 15時半から法務省の方に来室してもらい、精神障害のために重大犯罪を 犯した人たちの問題について政府案を説明してもらう。まだまだ具体的な ことがつまっているわけではないが、地方裁判所に判定機関を置くなど、 だいたいの方針は決まっているようだ。いろいろと質問してみるが、どう しても納得できない点もいくつかある。わが党のプロジェクトチームで整 理していきたい。 17時から、児童扶養手当削減反対集会。市民団体の方たちと連携しての 超党派(とは言っても出席は野党のみ)の集会。 児童扶養手当は母子家庭の命綱であるが、政府の方針では、 (1)満額保 証は年収130万円まで。それ以上は年収1万円上がるごとに2000円 削減 (2)5年間で支給打ち切り(現在は18歳まで支給されるのでどう にか高校を卒業させられる)、ということだ。 「就労意欲を増す効果がある」などと言われているが、仕事をしていない 人の81%が失業中であり、働く場がないという切実な問題がある。一人 親世帯は、保育の多様性が確保されていない現状では、母子家庭でも父子 家庭でも働き方を制約され、現在の雇用情勢のもとでは、母子家庭・父子 家庭とも、臨時パートが急増している。 「しんぐるまざーず・ふぉーらむ」の調査によると、母子家庭の平均年収 は157万円。1999年の調査では、200万円以下の収入の人は全体 の33%であったが、今回の調査では全体の76%が200万円以下であ ったとのこと。現在の雇用・経済情勢が、まずは母子家庭を直撃している ことがよくわかる。 別れた夫からの養育費は8割が支払われていないという現状で、児童扶養 手当を削減対象とするのはどういう感覚なのだろうか。 直接子どもの生存権を脅かす問題であると同時に、貧困と虐待との深い関 連もある。 また、DV法が成立したというのに、離婚後の自立を困難にするというのは、 そもそもDV法の必要性を政府が十分に認識していないと言うこともできる。 離婚の数が増えて財源の確保が難しくなったと説明されているが、現在、 低い勤労収入と児童扶養手当を合計してどうにか食べている世帯が、児童 扶養手当の削減のために生活保護世帯になってしまうと、結果として国の 財政をさらに圧迫することになる。労働力を封じ込めるという点からも、 ますます問題だ。 集会後、記者会見。国会内での与野党対決に持ち込まれると、あっさり採 決されてしまう。厚生労働委員として国会内の論戦でも頑張ると同時に、 社会的な関心を喚起していくことが何よりも重要だ。 19時48分の新幹線で宇都宮へ。 ■1月24日(木) 終日支持者宅訪問。 夜は慌ただしく4つの新年会に出席。 ■1月25日(金) 終日支持者宅訪問。 夜は労組の新年会。 ■1月26日(土) 10時から連合栃木の女性委員会に出席。 13時からボランティアの方たちとの話し合い。 14時半から個人相談。 ところで、外務省のNGO問題だが、いよいよ大変な状況を迎えている。田中 真紀子外相が鈴木宗男議員の圧力を認める答弁をしたことがきっかけだ。 NGOの代表の方の弁からも、田中外相の言い分が正しいのはまず間違いがな いが、それを認めてもらえないために悔し涙をこぼした外相に対して「涙 は女性の最大の武器」と言い放った小泉首相の発言はセクハラだ。 田中外相にもいろいろな問題があるかもしれないが、少なくとも、彼女が いなかったら、今回の圧力問題は「なかったこと」として暗に葬り去られ ていただろう。政府のNGOへの姿勢を諸外国にさらけ出し国益を大きく損な った事件だからこそ、また、政治家が非公式に権限を行使するという典型 的な事件だからこそ、徹底的に解明し、外相と共闘できる点は共闘すべき だ。 前号へのご指摘から: 前回の「国会報告」で、「女子校は一種のアファーマティブ=アクション」 と書いたところ、言葉がわかりにくいというご指摘を受けました。アファ ーマティブ=アクション、あるいはポジティブ=アクションとは、差別を 受けてきた少数民族や女性の社会的地位の向上のために、暫定的に積極的 な優遇措置をとることを意味します。管理職のうち女性の割合を何割以上 と設定したり、選挙の候補者のうち女性を何割以上と設定するというよう な、クオータ制(割当制)もその一つです。 |