国会報告 その64(2001.10.8発行)

水島広子の活動の様子をお伝えするために、毎週1回(月曜日)発行しております




国会報告 バックナンバー|HOME

国会報告(9/30〜10/6)


★産休中のため、恒例のマンデーリポートを6週間程度(10月下旬頃まで) お休みさせていただいております。
本紙「国会報告」は、ボランティアの方 たちのご協力により、毎週月曜日に街頭での配布を続けております。
どうぞ ご覧ください。(電子メール版も毎週発行しております)


●米国同時多発テロについて(その3)

いよいよ、テロ対策の特別措置法案が政府から国会に提出されました。
国連のさらなる決議を必要としていない点、国会の事前承認を必要として いない点、集団的自衛権の問題がきちんと解決されていない点、など大き な問題を抱えた法案だと言えます。
自衛隊派遣の根拠を憲法にも何らかの 条約にも認めることができないのです。
こんな、場当たり的な法律を作っ て対応していった場合、事態がさらに深刻で複雑なものになってきたらど うするつもりなのでしょうか。
長期的なビジョンと、現在の政策との関連 が明らかに示されていないことが最大の問題だと思います。

小泉首相自身、10月5日の衆議院予算委員会で、「集団的自衛権の行使 を認めるのなら、憲法改正をした方が良い。
だが、今は憲法改正の状況で はない」と答弁しています。
また、憲法と特措法案の関係を問われて、 「確かにあいまいさは認めますよ。
すっきした法律的な一貫性・明確性を 問われれば、答弁に窮してしまいますよ。
そこには隙間がある」 と答弁しました。
憲法を改正して集団的自衛権を行使できるようにすると いうのが小泉首相のビジョンで、それに向けての現実政策として、なるべ くそのビジョンが見えないように曖昧なものを作った、と言えるのではな いでしょうか。

テロ対策は、何も軍事行動に限ったものではなく、幅広い対応が長期的な 視野で必要です。
ただし、前国連難民高等弁務官の緒方貞子さんが言うよ うに、「難民がいっぱいいる地域に行くなら、それは武器を持っていった 方がいい」という現実もあります。

私は、今回のテロ事件こそ、国連を中心とした安全保障体制を築く好機だ と思っています。
かねてから、国連軍を創設して国際警察機能を持たせる ことで軍縮を図るべきだという主張をしてきましたが、テロという犯罪が 対象となる今回の事件こそ、敵・味方を作って戦う「戦争」(つまり軍隊 の仕事)ではなく、犯人を逮捕し犯罪組織を壊滅させるための「警察」の 仕事なのだと思います。

集団安全保障体制がしっかりと作られれば、集団的自衛権も必要なくなり ます。
地域紛争は限りなく平和的解決をするべきで、武力によって地域住 民の安全や人権が脅かされるときには、国連が警察機能によってそれを解 決すべきなのです。
日本も当然国際社会の一員として貢献しなければなり ませんが、「日本国」として顔が見える形で貢献するというよりも、「国 連の一員」として無国籍の形で貢献することが中立性につながるはずです。
現在の国連については、国連軍もありませんし、中立性についても世界的 に見ればまだまだ改善が必要です。

今回の事件への対応を国連中心に全人類的視野に基づいてしっかりと練り 上げることによって、国連そのものがレベルアップすることを切に要望し ます。
そのためにも、曖昧さと危うさに満ちた特措法案にそのまま賛成すること はできません。



●障害を持つ子どもたちのために、緊急雇用対策から県政へ、橋渡しをし てもらいました

以前、この国会報告でも簡単に触れたことがありましたが、栃木県内の高 機能自閉症児の保護者の方から、「政府の緊急雇用対策の活用によって補 助教員をつけてもらい、不登校だった子どもが学校に通えるようになり、 大変感謝している。
でも、補助教員の任期は6カ月未満に限定されており、 延長は行わないとされている。
新しい状況に適応するのに通常児よりもス トレスを感じる子どもであるのに、6カ月で補助教員が入れ替えとなるの はあまりにも短いのではないか。
何とか期間を延長できないか」という要 望をいただきました。
緊急雇用対策によって創設された「緊急地域雇用特別交付金」は、各都道 府県が、交付された基金を活用し、緊急に対応すべき事業を実施し、雇用 就業機会の創設を図る、というものです。
今年度いっぱいの予算で、来年 度継続の予定はないようです。

この交付金には条件があって、
1.対象範囲として、教育・文化・福祉・環境とする。建設・土木は対象外
2.期間雇用(6カ月未満)に限定し、雇用期間の延長は行わない
ということになっています。
6カ月に限定した理由は、当時の失業者の平 均失業期間が3〜6カ月が多かったこと、交付金に限度がある中でできる だけ多くの方が利用できるようにするため、ということだそうです。

さて、雇用対策としては、このような理屈で良いのかもしれません。
でも、当事者の子どもはどうでしょうか。
保護者の方の訴えにあるように、 ただでさえ新しい人間関係に適応するのに苦労する子どもなのに、ようや く心を開いたと思ったら半年で入れ替え、というのでは教育環境としてあ まりにも問題があると言わざるを得ません。
健常児のクラス編成や担任の 先生も最短でも一年間での入れ替えだと言うのに、です。

今回要望を受けた件については、保護者の方の声を受けて、理解ある方た ちが県に働きかけてくださり、また、私も微力ながら県への問い合わせや 申し入れをし、最終的に、県の採用として、期間を一年に延長することが できました。
その知らせを受けたお子さんの笑顔は、お父さんによると 「たとえようがないほど素敵なもの」だったそうです。
同様の他のお子さ んにも補助教員がつくことになったとのことです。
子どもたちのために尽 力してくださった皆さまに心より感謝申し上げます。

この件は、ある角度から作られた制度が、現場でそのサービスを受ける当 事者を大きく振り回すことがあるという良い例だと思います。
介護の現場 でもしばしばそういうことを感じますが、今回のケースでは、一人の子ど もの一生が左右されるほどの大きな影響を当事者の方たちは感じていまし た。
現場の声、生活者の声を上げる必要性は、こういうところにあるのだと思 います。
今回も、保護者の方が泣き寝入りをしてしまったら、こんなに良 い結果は得られなかったと思います。
一人一人が諦めずに声を上げること、 そして、その声を汲み上げることのできる首長や議員を作り出していくこ と、その必要性を改めて痛感した一件でした。


国会報告 バックナンバー| HOME