国会報告 その25(2001.1.1発行)

水島広子の活動の様子をお伝えするために、毎週1回(月曜日)発行しております。



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国会報告(12/24〜12/31)

■12月24日(日)

11時から、大内葉子さんの著書「21世紀の女性たちへ 〜対等に、グ ローバルに生きる〜」(文芸社 本体1000円)の出版記念パーティー。
私のことにもたくさん触れていただいている。

その後、クリスマス会に参加。

16時4分の新幹線で東京へ。
17時半から、「タイムショック21」の収録。
江田五月さんにお誘いい ただいたものだ。
クイズ番組など全く自信がない。
枝野幸男さんはさすが クイズ達者の風格。
1月15日に放映予定。



■12月25日(月)

7時45分から恒例のマンデーリポート。
のはずが、秘書君が珍しくも寝 坊したため、非常事態に陥る。
単純に遅刻すると、15分ずつずらして演 説している簗瀬さんが追いついてしまうため、JR宇都宮駅前→県庁前→ 東武駅前の順路を、県庁前→東武駅前→JR駅前に変える。
ご迷惑をおか けした方たちには申し訳ないが、結果的に、普段お会いできない時間帯の 方たちとお会いできて嬉しいところもあった。

10時9分の新幹線で大宮へ。
大宮から在来線で浦和へ。
今日は、民主党の「朝倉病院問題調査チーム」(私が代表。
山井和則議員 が事務局長)の視察である。
「朝倉病院問題」とは、テレビ朝日の映像を通して疑いがもたれるように なった精神病院における人権侵害問題。
今のところ、主な疑惑は以下の2つ。
1.違法な身体拘束などが行われていたらしい。
2.診療報酬をかせぐ目的で、不要なIVH(中心静脈栄養)を行い、かえっ て死期を早めていたらしい。
それぞれについて少々説明したい。

1.精神医療は、他の医療と違って、本人の意思に反する治療が必要にな ることが多々ある。
妄想や幻覚に支配されている患者や、自殺願望が強く 治療の必要性を全く認めたがらない患者などに対して、本人の意思に任せ た治療を行っていては命取りになる。
こうした患者に対しては、本人の意に反する入院を強制したり、本人の自 由を制限したりする必要が出てくる。
たとえば、放っておけば他人に暴行 を加えたり自殺を図ったりするような患者の場合、保護室に隔離する必要 もある。
また、本人が納得しない点滴をする場合に、体の一部をベッドに 拘束するようなこともある。
入院が必要なのに本人が退院したがっている 場合、鍵のかかる病棟に入院させる場合もある。
このように他人の人権や自由を制限するのであるから、きちんとした法的 根拠が必要だ。
その必要性から作られたのが精神保健福祉法である。
不当に人を縛ったり自由を奪ったりするのは明らかな人権侵害だ。
だから こそ「精神保健福祉法に規定されている条件を守っている場合に限り」と いう厳しい条件付きでしか認められていないのである。
この精神保健福祉 法に基づいて患者の拘束、強制入院、退院制限などを行うことのできるの が精神保健指定医である(私もその一人)。
精神保健指定医は、精神保健 福祉法を熟知し、患者さんの人権の尊さと、どのような場合にその制限が 許されるかを熟知した上で医療を行わなければならない。
この資格を得る には、十分な臨床経験と法律の知識が必要とされる。
臨床現場では、精神 保健指定医の指示なくしては、患者さんの意に反する行為(拘束、強制入 院、退院制限など)は行ってはならない。
そして、その「指示」も口頭だ けではいけない。
きちんとその旨をカルテに記載する必要がある。
他人の 自由を制限するというのは、そのくらいの重みを伴うものなのだ。
朝倉病院は、この12月21日に精神保健指定医を雇い入れるまで、半年 間にわたって指定医が不在だった。
院長は外科が専門だった。
このような 状況下で、日常茶飯的に患者さんの拘束が行われていたというのが第一の 疑惑である。

2.IVH(中心静脈栄養)というのは、心臓に近い太い血管に直接注射針を 入れて高濃度の栄養輸液を血管に直接入れるという方法である。
最も手っ 取り早い栄養の取り方ではあるが、入れっぱなしの針から感染することも あり、管理が面倒なものである。
いずれにしても、口から食べられない、 消化吸収能力のない患者さんに栄養を補給する「最後の手段」であり、そ うやたらと使うものでもない。
口から食べられない場合、鼻から胃にチュ ーブを通して栄養剤を落とす「経鼻栄養」の方がずっと一般的である。
朝倉病院では、まだ食べられる患者さんに、診療報酬目的でIVHを適用し (IVHは診療報酬がとても高い)、結果として感染させたりして死期を早 めていた疑いが持たれている。

11時10分から12時45分まで、埼玉県庁で、県からの事情聴取。
県では、10月上旬に、朝倉病院で不当な身体拘束が行われているという 情報を得、11月10日に精神保険福祉法に基づいて立ち入り検査を行っ た。
この時点では、テレビ朝日の映像とは全く異なり、拘束されている患 者は1名のみだった。
1名でも違法は違法なので、県は「身体拘束をやめ ること」と指導をした。
昼から施錠されていた部屋、夜になると施錠されていた部屋もあった。
また、入院の同意書も他人が書いていたり、同意書そのものがなかったり、 入院時に「開放処遇をする」という告知文を受け取っていなかったり(法 的に義務づけられている)、と、精神保健福祉法の知識が全く欠落してい るとしか思えないようなお粗末な状況だったようだ。
つまり、患者の人権 や自由が保障されていなかったということだ。
県からは、身体拘束の他、「部屋ごとの施錠をやめること。
開放処遇を行 うことを入院患者に周知すること。
退院制限を行わないこと」という指導 が出された。
問題となっているテレビ朝日の映像について県側は「おそらく事実だと思 う」という認識。
でも、過去にさかのぼっての証拠がないと動けないので、 あくまでも11月10日の立ち入り検査の結果に基づいて指導をしている ということだった。

実は、朝倉病院は、精神科領域ではかなり評判の悪い病院だったようだ。
評判が悪いけれども他では引き取ってもらえないからやむを得ず利用して いたという関係者の証言もある。
でも、県から見ると特に問題病院としての認識はなかったとのこと。
過去 の監査において、人員不足が繰り返し指摘されていたが、県も毎年同じ指 摘をするばかりで改善されなかった。
監査がいかに骨抜きの状態になって いるか、かねてから指摘はあるが、今回改めて浮き彫りになった。

埼玉県庁からバスで朝倉病院に移動し、14時5分から16時45分まで 視察および事情聴取。
最も話を聞きたかった院長は、朝から急病ということで、出てこられなか った。
視察後に、10分弱の面会のみ許される。
テレビ朝日の映像の真偽 については「同じレベルまで落ちたくないので多くを語りたくないが、あ の映像には疑問の点が多々ある」とのこと。
それならばきちんと訴訟を起 こし、カルテを開示して闘うべきだと伝える。
院長は、IVHを直接入れて いた医師でもあり、重要人物である。
体調回復後にぜひいろいろな質問に 答えてほしい。

朝倉病院の旧病棟は大変古く、メンテナンスも良くない。
地下の保護室は 前時代的な監獄風。
私だったら自分の患者をあのような保護室には入れた くない。
常勤の医師の年齢は、88歳、86歳、82歳・・・。
12月21日に雇 い入れられた精神保健指定医は76歳。
看護人員は明らかに少ない。
2交代制で、夜勤帯(17時〜翌9時)は、 看護婦1人で2階にまたがる約60名の患者を看ている。
一人の患者の世 話をしている間に、他の患者が問題行動を起こしたら、それこそ縛るしか ないのではないか。
患者の数人から、「1カ月前まで縛られていた」という証言を得る。
一人 の患者は、拘束されて足にできた痣を見せてくれた。
他の人たちのものは 消えてしまっていたが、もう少し早く来れば痣をもっとたくさん発見でき たかもしれない。
一人に具体的に聞いてみると、「両手・両足・両肩・胴」 という「7点抑制」をされていたとのこと。
ふつうは、拘束が必要な場合 でも、胴のみ、あるいは、両手のみ、といったパターンが多い。
拘束の仕 方などは通常は知られていないことなので、創作で患者さんが答えること は考えられないと思う。
精神保健指定医不在の状況で身体拘束していたということを看護婦さんた ちは認めていた。
IVHの基準についても大いに疑問。
「食べられなければIVH」という意識を 現場の看護婦さんは持っていたが、ふつうは「食べられなければまず経鼻 栄養」である。
この一般常識からのずれが、IVHの乱用を疑わせる。
その他、透析の基準なども疑問あり。
また、今後重要な問題になってくる可能性があるが、患者さんの多くが、 精神病院にいるべき人たちではないようだ。
救護施設や老人福祉施設が適 切なのではないだろうか。
入院の経路も含めて、調査する必要を感じる。

視察後、バスで県庁まで戻って18時すぎから記者会見。
朝倉病院問題については、今後もいよいよきちんと調査して対処していき たい。
その国の人権のレベルを見るためには精神病棟を見ればよいと言わ れているが、日本でこんな問題が起こったということは本当に国際的にも 恥ずかしいことである。
精神医療の制度改革のきっかけにしていきたいと 思っている。

浦和から大宮経由で宇都宮に戻る。



■12月26日(火)

朝から支持者宅訪問など。
15時半から「親と子のためのクリスマスコンサート」に参加。
一緒に歌 を歌う。

事務所に戻って支持者の方と面会。
その後、事務所で年末年始のことや今後のことなどを打ち合わせ。



■12月27日(水)

午前中は支持者宅訪問。
午後は、参院選対策などで夜まで会議続き。



■12月28日(木)

午前中は会合に出席。
13時から教育問題に関して取材。
14時すぎから下野新聞本社を訪問して、朝倉病院問題などについて懇談。
事務所に戻って15時半から、朝倉病院問題についての取材。
夜まで事務所で原稿チェックなど。



■12月29日(金)

9時半から、国立栃木病院の看護婦増員の要請を受ける。
看護婦が増員さ れないため、夜勤の回数が不当に多く、過労になっているとの由。
事情は 大変よくわかるため、調査検討することにする。
この後、支持者宅訪問。

13時頃から、女子中高生4名に集まってもらって1時間ほど取材。
現在 執筆中の摂食障害の本に関連して、「なぜ茶髪にするのか」「なぜ厚底靴 をはくのか」など、いろいろと教えてもらう。
本とは別の次元でも大変参 考になった。

その後、再び支持者宅訪問を続ける。
夜は、お世話になっている方のお宅で夕食をごちそうになる。



■12月30日(土)

朝から支持者宅訪問。
途中で事務所に戻り、国会のヤジについてテレビの電話取材を受ける。
松浪さんの話題がまだ続いているらしい。
夕方、会合に出席。

夜は、横浜からコンピュータの修理に来てくださったボランティアの友人 たちと会食。



■12月31日(日)

20世紀最後の日。
昼間は自由時間として、たまった原稿書きや家の掃除、年賀状書きの合間 に娘と動物園に遊びに行く。
夜は大晦日の行事に参加して新年を迎える。



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