国会報告 その239(2005.07.23発行)

水島広子の活動の様子をお伝えするために、毎週1回、発行しております



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国会報告



■ 訪米報告



 7月9日〜16日、米国マンスフィールド財団および全米日米協会連合の招聘に より、「第2回政治・公共セクターで働く女性プログラム」に参加しました。

 今回の第1回のプログラムは、米国からの派遣団を昨年の12月に日本に迎える という形で行われました。議員会館の私のところにも訪ねてきてくださったので、自 分が政治に参加した経緯や日本の政治課題について説明しました。
今回は、「首都からコミュニティへ:日米の政治・公共セクターで働く女性」と いうテーマで、日本からの派遣団が訪米する、という形で行われました。訪問地は、 ミネソタ州のミネアポリスと、首都ワシントンDCです。

 派遣団のメンバーは、私の他に、評論家で「高齢社会をよくする女性の会」理事 長の樋口恵子さん、元横浜市助役の藤井紀代子さん、弁護士の大谷美紀子さん、 アジア財団の玉井桂子さん、YWCA総幹事の鹿野幸枝さん、同志社大学助教授の中 村艶子さんでした。年齢も、専門分野も、性格も(?)異なる7人組で、大変有意 義な情報交換ができました。
また、途中でワシントンポストの取材を受け、自らのワーク・ライフ・バランス向 上にも挑戦している政治家として大きな記事を7月15日付けで載せていただいた ことも良い成果となりました。

 アメリカは、私が日頃社会保障制度を考える上ではあまりお手本としたくない国 です。例えば、先進国の中でも、医療保険についての深刻な問題を抱えている国だ と思っています。貧富の格差も深刻で、希望のない人たちは、麻薬と犯罪の中で生 きていくしかないような状況にあります。保育所などについても、基本的に「自己 責任」が貫かれており、保育所の整備は国の責任と考える日本とは大きな違いがあ ります。
総体的に、アメリカは、有償労働における男女共同参画については遙かに日本の 先をいっています(例えば、取材を受けたミネソタ・スター・トリビューン紙では、 論説委員の半分が女性でした)が、無償労働における男女共同参画については日本 と同程度かそれ以下で、悩みも同じようなものを抱えています。
ただ、それでもアメリカが何とかやっているのは、日本とは格段に違う民間の力 です。アメリカ人のボランティア精神、問題はまず自分たちで助け合って解決して いこうという前向きな姿勢には、本当に圧倒されます。税制上の優遇措置がしっか りしていることもあり、NPOが莫大な資金を集めています(日本でも、NPOの優遇税 制について民主党が改正案を提案していますが、今のところ与党の賛成を得られて いません)。医療や年金の制度はあまりお手本にしたくない国ですが、この民間の 力は見習いたいものです。

 今回の視察でも、ヨーロッパなどとは異なり、制度そのものに目を見張る点はあ まりありませんでしたが、市民の力はとてもよく生かされていると感じました。
 また、市民の力とともに、企業が献金を通して社会貢献するということが文化と してよく根づいていることも大きな特徴です。例えば、7月11日に訪問したSkyway Senior Centerは、高齢者であれば会費もなく誰でも利用することができる、日本で 言えば、「生きがい対応型デイサービス」という感じのサロンですが、ここには、 MEDICAという保険会社が多くの寄付をしています。なぜ寄付をしているのか、と聞 くと、企業名の宣伝ということの他に、介護予防をすることによって保険の支出を 減らすことができるから、有効な投資であると考えている、との答えでした。  

 全体の日程は以下の通りです。

7月10日(日) ミネアポリス
 派遣団の顔合わせ
 少年法廷のDenise Reilly判事宅訪問

7月11日(月) ミネアポリス
 Tubman Family Alliance訪問
 ミネソタ州副知事Carol Molnau氏と懇談
 Skyway Senior Center訪問
 ミネソタ州議会上院議員Mee Moua氏と懇談
 在シカゴ日本国総領事館総領事吉澤裕氏と夕食懇談

7月12日(火) ミネアポリス → ワシントンDC
 モンデール元副大統領・元駐日大使を交えてのラウンド・テーブル・ディスカッシ ョン
 ミネソタ・スター・トリビューンの編集委員と懇談
 ワシントンDCに移動  

7月13日(水) ワシントンDC
 マンスフィールド財団訪問
 League of Women Voters(女性有権者同盟)の方と懇談
 ワシントンポストの取材(私のみ)
 連邦議会訪問
 Jim McDermott下院議員(民主党)と懇談
 Deborah Pryce下院議員(共和党)と懇談
 各地からの女性州議会上下院議員との懇談レセプション

7月14日(木) ワシントンDC
 AARP(旧称:全米退職者協会)訪問
 National Women's Law Center(女性法律センター)訪問
 Japan Information and Culture Centerで少子高齢化をメインテーマとしたシン ポジウム。

 派遣団の日程は16日まででしたが、私は、7月17日に岡山で開かれた第15回 全国病児保育研究大会にパネリストとして出席する予定がありましたので、15日 の朝にワシントンDCを出発しました。

 紙面の許す限り、以下に2点のみご報告します。

 ☆ DVシェルターの安全を地域の目で監視

 7月11日に訪問したTubman Family Allianceは、3分の2が政府(州政府、連 邦政府)からの補助金でまかなわれているNGOですが、DVの被害者たちにシェルター を提供し、カウンセリングを含む包括的な支援を行っており、加害男性へのカウン セリングプログラムもあります。被害者の意向を尊重するということに重きを置い ており、シェルターのスタッフや警察の教育にも力を入れているそうです。

 ここで驚いたのは、地域との関係でした。シェルターの存在が地域に開かれてい るのです。日本では、シェルターがどこにあるのかを知られないようにして気を使 うのが常識になっていますが、ここでは反対です。
Tubman Family Allianceでも、当初はシェルターの所在を秘密にしてスタートし ましたが、地域とのコミュニケーションを通して理解を深め、現在ではオープンの 「パブリックスペース」になっているそうです。そのため、加害者に対しての地域 の監視の目が働きます。ちょっとでも加害者がシェルターに近づいて騒ぎを起こす だけで、近所の人が警察に通報してくれるようになっているのです。

 地域とのコミュニケーションのやり方は、できるだけ見学にきてもらい、ボラン ティアとして実際に参加してもらうことだそうです。また、会議室を企業に無料で 貸し出す代わりに、7分間の教育ビデオを見てもらうという戦略をとっているそう です。

☆ 政治家との交流

 今回は、政治家の派遣団ではありませんでしたので、政治化との交流は必要最低 限に抑えられたプログラムでしたが、それでも、興味深い懇談をすることができま した。
 特に感銘を受けたのは、ミネソタ州議会のMee Moua上院議員です。彼女は、36 歳で小さな子どもが二人、と、まるで私とうり二つの女性でしたが、何と、ラオス からの移民であるモン族の人です。モン族は、1970年代に移民をしてきたので すが、それからわずか30年で州議会の上院議員を輩出するのですから、米国の懐 の深さを感じさせます(モン族以外の人も投票しないと上院議員には選ばれません ので)。ミネソタ州議会では、上院議員67名中26名が女性ですが、アジア系の 女性で上院議員になったのは彼女が初めてだそうです。彼女は、女性が選挙に出る ことはとても大切で、当選しないとしても、選挙で政策の争点を明確にすることが 大事なのだ、と言っていました。

 連邦議会(国会)では、民主党のJim McDermott下院議員と共和党のDeborah Pryce 下院議員に会いました。McDermott議員は、私よりもずっと年上の男性ですが、何と、 私と同じく精神科医出身の国会議員で、子どもの問題に熱心に取り組んでおり、「日 本はブッシュにつき合ってイラクに深入りすべきではない」とアドバイスしてくれ ました。  



■ 「青少年」の英語表記



 今回、訪米のための書類を作っているときに、衆議院の「青少年問題特別委員会」 の英語表記がSpecial Committee on Youth Affairsであることに気づきました。さ らに、内閣府で「青少年」という言葉を全て「Youth(青年)」としていることも知 りました。虐待など乳幼児の問題にも実際に取り組んでいるのですから、 「Children and Youth(子どもと青年)」とすべきだと考えて交渉してきましたが、 少なくとも、特別委員会の名前だけは変えてもらうことに成功しました。政府の用 語については、今後交渉していきます。小さなこと、とも言えますが、「子どもの 権利条約」の批准国である日本が「子ども」の問題に取り組んでいることを国際社 会に示すためにも意味があることだと思っています。    




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