国会報告 その237(2005.07.02発行)

水島広子の活動の様子をお伝えするために、毎週1回、発行しております



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国会報告



■ ノルウェーの子ども家庭大臣




 愛知万博の「北欧の日」のために来日したノルウェーの子ども家庭大臣が、 民主党議員との懇談を希望してくださったので、7月1日、民主党の男女共同 参画委員会主催(子ども家庭省設置準備ワーキングチーム共催)で、大臣との 懇談会を開きました。

 子ども家庭大臣は、ドーヴォイ大臣という女性ですが、実は、私が2003 年にノルウェーの視察に行ったときに、お会いする約束になっていた方です。 ところが、約束の日、お嬢さんが出産をされて、何らかのトラブルがあったよ うで、オスロを離れてベルゲンに向かわれました。代理で応対してくださった 副大臣が、「彼女は家庭大臣なのだから、こういうときは家族を大切にしなけ ればならないのだ」と言っておられたことをよく覚えています。お会いできな かったのは残念でしたが、「家族を大切にする」というメッセージを政治家自 らが発しているのは大変重要なことだと思いました。

 6月30日には、大使館からのご招待を受けて、自民党3名、民主党2名、公 明党1名、という少人数で大臣との夕食会に参加しました。ノルウェーは少数 与党ですので、議会対策には消耗しているようでしたが、大変気さくな方で、い ろいろと話がはずみました。

 ノルウェーでは、初の女性首相ブルントラント氏が、「内閣の4割は女性に」 と決めたため、それを誰も破ることなく、閣僚の4割は女性、という状態が続 いています。
 ドーヴォイ大臣は、もともとは看護学を修められた方で、非議員の大臣とし て2度目の入閣です。この秋に初めて国政選挙に立候補する予定だと言って いました。3名のお子さんと5名のお孫さんがいらっしゃるとのことです。
 子ども家庭省の所管する政策には、以下のようなものがあります。

●育児休業手当(国民保険法)
 育児休業は、43週(所得保障は100%)か53週(所得保障は80%)のど ちらかを選ぶことができます。このちう、パパ=クオータ(父親割り当て)期間が 4週間だったものが、ちょうどこの7月1日から5週間になりました。育児休業手 当を受給する資格のない母親(受給開始直前の10ヶ月のうち少なくとも6ヶ月間、 年金ポイントが加算される収入を得ていることが必要)には、約55万円が支給さ れます。
 母親が育児休業手当ての受給要件を満たしていないために、パパ=クオータ制 度を利用する資格がない父親は、彼ら自身の適格性に基づいて資格が与えられる 場合があります。母親が重病で育児ができない場合、出産直後から職場あるいは 学業に復帰しなければならない場合など、育児の必要性に応じて判断されること になります。

●欠勤する権利(労働環境法)
 有給休暇に加えて、両親はそれぞれ無給休暇を最長1年間とることができます。
 パパ=クオータ期間に加えて、父親は母親が雇用されているか否かに関わらず、 出産に関連し2週間の無給休暇をとることができます。

●労働時間短縮(労働環境法)
 育児責任を負う労働者には、労働時間を短縮する権利が認められています。

●子どもの看護休暇
 12歳以下の子どもが病気になったとき、労働者には年間10日間の有給休暇 が認められています。

●児童手当
 児童手当は、18歳以下の子どものいる家族に支給されます。

●保育園
 2006年に、入園希望者全員を保育園で受け入れることを目標にしています。 保育施設が地方自治体により認可される場合、国家が運営費用の80%に 相当する補助金を提供します。現在、3歳以上の子どもの85%、3歳未満の子 どもの44%が通園しています。

●家族カウンセリングサービス
 ノルウェー国内には63の家族福祉事務局が存在し、無料で家族問題に関する カウンセリングを行っています。法律で「全ての人は、良いカウンセリングを受 ける権利がある」ということが規定されているそうです。家族福祉事務局には、 年平均で約24000組の夫婦やカップルが婚姻生活、同棲生活、家庭問題などに関す る助言を求めるために利用しています。 電話を一本かければ、臨床心理士、精 神科医、ソーシャルワーカーなど、必要なサービスにつないでもらえるそうです。

●グッド・スタート
 「グッド・スタート」は、子どもを持つ夫婦・カップルが婚姻関係・同棲関係 を解消することを防ぐために政府が始めたプログラムで、2006年末までに国内 433の地方自治体が無料で行う予定です。夫婦関係が悪くなるのは、コミュニ ケーションの不足が原因であることも多いので、コミュニケーションのあり方な どについてもアドバイスしてもらえるそうです。

 このほか、自営業者の育児休業中の所得保障制度、男女平等法(公的セクター の40%クオータ、同一労働同一賃金の保証もここに含まれる)、女性事業者の 育成、女性役員の育成などを目的としたプログラムもあります。
 各省庁の子ども関連政策の調整ですが、閣議の他、月に1回程度、青少年関連 の省庁の事務次官会議が開かれているそうで、ここで青少年についてのいろいろ なテーマが話し合われる、というのは調整機関として大変うまくいっている、と のことでした。法務省などとは、少年犯罪などについて密な連携をしているそう です。

  最後に大臣が言っていたことが印象的でした。「形式的な権利だけでは十分で はない。政治的な意思を通して、社会の価値観に影響を与えていくことができる」。
  男性の育児休業にしても、制度としてはあるけれども、それを推進していこう とする政治の意思がないために、形骸化してしまっている日本のことをつくづく 考えさせられました。



■ 年金合同会議




 6月30日、衆参与野党の年金合同会議に委員として出席し、発言してきま した。

 私は、年金というのは世代間扶助の制度であるということを改めて確認し、 皆が喜んで協調しあえる制度を作ることが政治の役割だということを申し上げ ました。6月25日に出演したNHKの番組の中でも、「自分は年金保険料を払っ てきたのだから、これだけもらえて当然。若い人にとやかく言われることでは ない」という高齢の方や、「払っただけもらえないのだから払うことが不満」と いう若い方がいらっしゃいましたが、年金は世代間扶助の仕組みなのだという ことがよく理解されていないようです。まあ、日本の年金制度はそもそも積み 立て方式としてスタートしたものですから、途中で変わったということについ ての政府の啓発が足りないということなのでしょう。

 「損か得か」「払った分戻ってくるか」という視点ではなく、助け合いの仕組 みという視点が必要です。そして、何といっても、その大前提となるのは、制 度の公平性と安定性に対する安心感だということになります。
  公平性と安定性ということで言えば、国民年金の現状を放置することはやは り大問題です。本来、国民年金の対象となるべきでないパート労働者の方たち などが厚生年金に加入できないために国民年金に入らざるを得ない、というこ とになっています。パート労働者の加入拡大については、昨年の年金改正のと きにも、政府としては必要性を認めて実行しようとしたけれども、猛反対にあ って断念した、ということですから、そんなに簡単に実現できることではない のです。制度の枠組みの見直しを前提に、現状に最もあった年金制度を考える べきです。  



■ ABCニュースの政治部長




 6月28日、米国ABCニュースの政治部長であるマーク・ハルペリン氏がわざ わざ私のインタビューに来てくださいました。大統領選挙の報道、ホワイトハ ウス担当記者などを歴任されてきたベテランジャーナリストです。忌憚のない 意見が聞きたいということでしたので、日本の政治について私の思うところを 率直に述べさせていただきました。特に少子化に対して政治ができることには 関心を持ってくださいました。




■ 厚生労働委員会で質問しました




 7月1日、厚生労働委員会で、障害者自立支援法案について質問しました。子 どものための育成医療と、精神医療について、前回の国会報告で提起したような 観点から質問しました。詳しくは後日議事録をご参照ください。




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