国会報告 その233(2005.06.04発行)

水島広子の活動の様子をお伝えするために、毎週1回、発行しております



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国会報告



■ 平山郁夫さんと懇談



 6月2日、民主党の「日韓からアジアの新機軸を考える会」で、東京芸術 大学学長の平山郁夫先生をお招きしてお話をうかがいました。
 芸術家として世界に誇る方であると同時に、芸術と文化をテーマに、東 アジアの友好関係をリードしてこられたという点でもすばらしい方です。 文化遺産の保存のために、北朝鮮も度々訪問されています。

また、私は初めて知りましたが、広島での原爆被爆者でもあられます。 平山先生ご自身は「奇跡的に生き延びられた」そうですが、身近なところ に、即死された方、その後、ひどい原爆症になられた方がたくさんおられ るという背景をお持ちです。

 平山先生は、日本が文化の伝達という恩恵を中国と朝鮮半島から受け たということを、まず歴史を振り返りながら述べられました。そして、本当 に平和的外交を望むのなら、そうやって学ばせてもらったことを感謝し、 侵略したことについては率直に詫びて、「今の日本に来てみなさい。軍国 主義が見えますか」と理解を求める、というやり方をとっていくしかないの ではないかとおっしゃっていました。
 平山先生のお話を直接うかがって、まずは先生の謙虚で誠実なお人柄に 感銘を受けました。そして、本来は、穏やかで、自然との共生を大切にし、 森羅万象に手を合わせる、というのが日本の精神性なのではないか、とい うご意見には、私も賛成できます。
まさに、今の日本で私たちが取り戻さなければならないと思っている価 値観です。

 ここのところ、外交でも何でも、相手をバッシングすることが流行のよ うになっていますが、それは、日本の美徳ではないと思います(本当は、 こういう指摘は、「保守派」と呼ばれる政治家の方たちからしていただき たいのですが)。

 平山先生は、一昨年、フィリピンから平和賞をもらったときに、記念講演 の初めに、「日本がここを戦場にして大変な迷惑をかけたので賞金の5 万ドルは返上したい」と話されたそうです。すると、「最初にそう言われ てしまうとこちらも何も言えない。日本にはODAでお世話になっているの で、帳消しにしようではないか。5万ドルは受け取ってほしい」と言われ たそうで、こんなふうにして日本らしいアジア外交ができるのではないか と思いました。

 他にも、文化推進法を成立させることの必要性など、大変示唆に富むお 話をうかがうことができました。

 

■ 宮沢喜一元首相と懇談



 6月3日、民主党の「リベラルの会」の仲間たちと共に、宮沢喜一元首相 の事務所を訪問し、懇談させていただきました。
 中曽根康弘元首相と対極的な立場として憲法調査会にも招かれている 宮沢元首相ですが、思いやりのあるリベラリストで、平和外交を志向してお られるので、いろいろと学ぶところがあるだろうと思ってうかがいました。 思った以上に貴重なお話をうかがうことができました。

 昨今の米国の政治情勢、日米関係、日本とアジア諸国との関係、日本の 外交姿勢のあるべき姿、など、多岐にわたって懇談させていただきました が、大変博識でバランスのとれた、良識あるご意見をたくさんいただきま した。

 日本は、武力行使ではなくODAで国際貢献をしていくべき、というご意見 は、リベラルの会の価値観とも見事に一致しており、心強く思いました。 また、宮沢元首相は、政治家の中に戦争経験者が減ってきていることを大 変心配しておられました。
 そして、ナショナリズムを煽るというのは、票を得るためには大変安易 な手法だけれども、政治家というのはそういうものであってはならない、 という私たちの意見にも同意されていました。

 ご高齢にも関わらず、相変わらず情報を広く集められており、ますます お考えも冴えておられるようで、本当に勉強になりました。宮沢元首相も、 「訪ねてもらって大変光栄です」と寛大に受け止めてくださいました。政 治家として尊敬できる大先輩だと思いました。



■ 経済同友会と懇談



 6月2日、少子化をテーマに、経済同友会の方たちと朝食懇談会を開き ました。

 私は、次世代育成支援プロジェクトチーム(少子化対策)座長として、今 国会中に政策集の骨組みを作ろうとしていますが、やはりその中核とな るのはワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)であり、それを考え ていく上でカギになるのが経営者の方たちです。
 いくら法律を作っても、経営者の方たちがやる気になっていただけるよ うなものでなければ、絵に描いた餅になってしまいます。昨年末に政府が 出した「子ども・子育て応援プラン」は、そうなりそうな気配です。
 私たちの政策を打ち出す際には、実効性ということを重視しようと考え ています。そういう意味でも、経営者の方たちとの懇談は重要です。

 経済同友会では、1998年にすでに「少子・高齢化社会への提言―踏 み出そう少子化対策の第一歩―」という提言を発表しておられます。
 この提言では、これまでの経済規模拡大一辺倒から、個人が真の豊かさ を実感できるようなシステム作りへと重点を移すことが大切で、それによ り、日本の将来を担うべき子どもを産み・育てやすい魅力ある社会を実現 できるとし、多様性の尊重、機会均等、自立支援、男女共同参画型社会、 という柱を持つ「目指すべき理想の社会像」を掲げておられます。
 そして、今年の3月には、「個人の生活視点から少子化問題を考える− 世代別価値観を踏まえた少子化対策提言−」をまとめられています。

 経済同友会の提言は、実は民主党の政策と共通点の多いものです。議 論も活発に行われ、また今後の意見交換へとつなげていこうということを 確認し合いました。



■ 国立きぬ川学院視察



 5月30日、民主党栃木県連で、国立きぬ川学院を視察しました。きぬ川 学院は、地元栃木にありますが、女子のための全国ただ一つの国立児童 自立支援施設ですので、北海道から沖縄まで、あらゆる地域から子どもた ちを受け入れています。

 少年法改正案が国会に提出されていますが、今回の改正案は、福祉の領 域に刑事司法が入り込んでくる、というような内容を持っています。でも、 実際には、福祉の現場で、実効性のある取り組みが地道に進められている わけですから、それを見ようというのが視察の目的でした。

 やはりここでも、約7割の子どもたちに被虐待体験があるということです。 保護者の経済状態も豊かではなく、2004年度在籍児童統計によると、 所得税課税世帯は0、ということです。
 院長先生は、「本当に家庭環境が悪い」とおっしゃっていましたが、人 間として尊重されて育てられていなかった子どもたちだというのが現場の 実感なのでしょう。

 私たちが到着した時間が、ちょうど退所児童の送り出しの時間に一致し たので、退所する女の子の送り出しを一緒にさせていただきました。同じ 寮で生活を共にした仲間たちと職員の皆さんに送り出され、一人一人と握 手をして涙ながらに言葉を交わし合い、退所していく姿には、私たちも一 緒に涙ぐんでしまいました。

 昨年視察をした北海道立の施設と同じく、ここも夫婦小舎制(一つの寮 を、本当の夫婦が担当し、擬似家族のような形態をとるもの)をとってい ます。
 院長先生は、ご自身も20年以上、2人の娘さんを育て上げながら、ご 夫婦で寮を受け持ってこられたということですが、豊かな経験に裏打ちさ れたすばらしいお話をたくさんいただきました。

 特に、夜の重要性には共感しました。子どもたちに、夜寂しい思いをさ せてはいけない、というのが院長先生の意見でした。昼間は誰が見ても良 いけれども、夜だけは、子どもたちの気持ちを受け止めてあげられる人が 必要であって、子どもは夜には寝るのだから人はいなくても良い、とか、 警備員を配置すれば良い、というような流れは問題だということでした。

 少年犯罪の議論をする際に、「理想論か現実論か」という切り口に陥り がちなのですが、厳罰化が現実論だということは決してありません。私は、 むしろ、現実主義に立って、少年犯罪への対応に福祉的な要素を強めるべ きだと思っています。
 現実主義というのは、いかにして再犯を防止するか、ということです。 また、万引きなどのちょっとした初発非行を犯した子どもたちが、それよ りも重い非行や犯罪へと進んでいかないですませるか、ということでもあ ります。

 

■ 佐世保事件の検証



 5月31日(火)、超党派のチャイルドライン支援議員連盟で、前衆議院 議員でジャーナリストの保坂展人さんから、佐世保事件の検証報告をし ていただきました。やはり地域の子育て力が問われていると思いました。

 佐世保事件がとてもよくわかる保坂さんの著書は、「佐世保事件からわ たしたちが考えたこと」(ジャパンマシニスト発行、1500円+税)で、岡 崎勝さんとの共同編著です。ご一読いただければ幸いです。




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