国会報告 その232(2005.05.28発行)

水島広子の活動の様子をお伝えするために、毎週1回、発行しております



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国会報告



■ 国会の空転について




 郵政「民営化」の法案をめぐって、国会審議がストップしています。 「民主党は郵政民営化に反対して審議拒否をしている」などと誤解されて いるようですので、説明させていただきます。
 民主党としては、郵政についての審議を拒否するつもりはまったくあり ません。次項「郵政についての民主党の考え方」をぜひご覧ください。

 今回、国会が不正常になっている理由は、その法案の政策的な内容にあ るのではなく、形式的な内容にあります。国会に提出される法案としての 体をなしていない、ということなのです。

 まず、中央省庁等改革基本法33条1項6号には、「民営化等の見直しは行 わないものとする」と規定されています。この文言が盛り込まれた理由は、 新型公社化が民営化への道筋になるとの懸念を払拭するため、というのは 当時の政府答弁等からも明白です。民営化を行おうとするのであれば、こ の法律の改正案を合わせて提出しなければ、「現行法に違反した法案」と いうことになってしまいます。
 そのほか、条文ミスもすでに指摘されています。こうした点を直して提 出してくれれば審議をする、と言っている間に、問答無用で特別委員会を 設置して与党が審議を始めてしまいました。今回の件を見て、私が非常に 腹立たしく思っているのは、それ以外の審議が全てストップしてしまって いるということです。

 郵政を国政の最優先課題だと考えている人は、世論調査の結果を見ても 数パーセントです。現在厚生労働委員会で審議中の障害者政策もそうです し、年金、次世代育成、雇用、治安など、喫緊の課題と捉えられているも のはたくさんあります。小泉首相が昨日今日国会議員になった人であれば、 単に「純粋な人」ということになるのかもしれませんが、強行に特別委員 会を開けば、国会が不正常になって審議がストップする、ということくら い、国会にしばらくいる人であれば誰でもわかります。

 つまり、他の審議に悪影響を与えるということを知りながら、郵政「民 営化」に固執しているということになります。自分のメンツのために国会 を私物化していると言われても仕方がないでしょう。
 なお、「審議拒否」と報道されていますが、参議院は与野党合意の上で、 小泉首相への抗議の表明として審議が止まっています。また、衆議院でも、 郵政特別委員会以外は全て審議が止まっているのですから、「審議拒否」 という言葉は当たらず、単に郵政特別委員会だけが強行されている、とい うのが本当のところです。



■ 郵政についての民主党の考え方




 「民主党の郵政についての考え方が示されていない」などとメディアでも 言われているようですので、改めて、民主党の郵政についての考え方を述 べておきます。

 郵政3事業のうち、郵便は基本的な公共サービス、金融(郵貯・簡保) は民業を補完するもの。もともと性格が異なります。
 郵貯・簡保は国民の金融資産の4分の1を占めるほど肥大化しており、 民業補完という当初の目的をはるかに超えた大きさになっています。 350兆円の郵貯・簡保資金(=国民の皆さんのお金)が、特殊法人など につぎ込まれてムダ遣いされています。郵便局に集まるお金を減らすとと もに、ムダ遣いをやめさせることが必要です。
 郵便は、国際条約で基本的な公共サービスと定められています。民間企 業と競争しながら、国が一定の役割を果たすべき分野です。

 金融については、民業補完という原点に立ち返り、適正な規模まで縮小 します。地方や中山間地の実情にも配慮しなければなりません。つまり、 本来の姿に正常化するということです。
 民主党は、民営化よりも正常化が必要だと考えています。「民間にでき ることは民間に」という考え方については、民主党も同じです。しかし、 小泉さんの郵政「民営化」は、国が大株主の国有株式会社をつくることで す。規模はもっと大きくなり、無駄遣いの是正も行われません。国民の皆 さんがイメージしている民営化とは、ずいぶんかけ離れた内容です。

 また、今の郵政公社の運営には税金は使われていません。したがって、 郵政「民営化」によって「小さな政府」になるという説明も正しくありま せん。

 小泉さんの郵政「民営化」が実現したら、世界一巨大な銀行と保険会社 が誕生します。株式会社ですが、株主は国です(これで民営化?)。民間 の銀行や保険会社は困ります。しかも、住宅や物品販売などの分野にも参 入しますので、他の産業分野の皆さんも迷惑します。新会社が成功すれば 多くの民間企業が迷惑し、失敗すれば国が損失を穴埋めして国民の皆さん に新たな負担が発生します。

 ●民主党は、(1)郵便は基本的な公共サービス、(2)金融は民業の 補完という「郵政事業の原点」を踏まえ、民営化よりも正常化が必要だと 考えています。
 ●政府案では、民業の圧迫も、郵貯・簡保資金(=国民の皆さんのお金) のムダ遣いもなくなりません。民主党は、実質国有の超巨大企業コンツェ ルンを作ることに反対です。



■ がん治療の前進をめざす議員懇発足




 5月25日、「がん治療の前進をめざす民主党議員懇談会」の設立総会 が開かれました。私も副会長として参加することになりました。

 会長は、仙谷由人政調会長。ご自身が3年半前に胃がんを患われ、外科 治療を受けられています。仙谷さんご自身の予後は良好のようですが、自 らの患者体験を通して、日本のがん治療の後進ぶりに気づかれた、とのこ とで、政治テーマとしてがんばってこられました。そんな努力も実ったの か、このたび、厚生労働省内に初めて「がん対策推進本部」」が発足しま した。また、5月28日には、大阪で「第1回がん患者大集会」も開かれ ます。

 設立総会の後には、厚生労働省より、これまでのがん対策の概要、がん 対策推進本部、「がん医療水準均てん化の推進に関する検討会」報告につ いて、ヒアリングをしました。私は、主要な関心領域である、精神神経免 疫学や、漢方を中心とする代替医療について質問しましたが、厚生労働省 の認識はあまりにも遅れているようでした。



■ 韓国・フィリピンの国会議員と懇談




 5月20日の夜、民主党の男女共同参画委員会として、来日されていた 韓国のユ・スンヒ国会議員と、フィリピンのリサ・マザ国会議員をお招き して懇談しました。

 ユ・スンヒ議員とは、12月に訪韓した折にも懇談させていただきまし たが、長期的な交流の基盤づくりに積極的に取り組もうと確認しました。 リサ・マザ議員は、フィリピンの女性党ガブリエラの党首です。フィリピ ンでは、国や自治体の予算の5%を女性のエンパワーメントに使うことが 法律上義務付けられているなど、大変興味深いお話をうかがうことができ ました。こちらも、今後の交流を約束しました。



■ 子どもの臓器移植と虐待



 5月26日、国立生育医療センターこころの診療部部長の奥山真紀子先 生をお招きして、子どもの臓器移植についての論点を、特に虐待との関係 でうかがいました。子どもを臓器提供者とする議論をしていく上で、どう しても重要なテーマであると考えてお願いしました。思ったとおり、幅広 くすばらしいお話をうかがうことができました。

 親がどこまで子どもの代弁者として認められるのか、ということは私に とってもかねてからの関心事ですが、特に虐待を受けている場合は、親に よる代諾を認めるべきではないと思います。奥山先生も、その点は同じ意 見でした。
 ただ、虐待があったかどうかの判断は、簡単なものではなく、親や周囲 の人から必要な情報を収集したり、非常に微細な所見を取ったりする能力 が必要とされます。検視のみでの判断はほとんど不可能だということです。
 現在の日本の司法解剖では、虐待の判断に非常に重要な役割を果たすレ ントゲン写真を撮ることができないことから、生前判定なしに司法解剖だ けで虐待疑いの判定をすることは多くの場合不可能です。虐待そのものは 立件不可能なものが圧倒的に多いのですが、虐待は虐待として判定するこ とがどうしても必要です。

 国立生育医療センターでは、SCANチームというものを持っており、24 時間以内、最大36時間以内に判断をくだすことができるそうです。脳死 臓器移植については、いろいろな議論がありますが、私自身は、臓器提供 側の子どもも、臓器の移植を受ける側の子どもも、どちらも子どもとして の権利が守られるように、こうした現実的な問題に一つ一つ取り組むこと が重要だと考えています。



 ☆テレビ出演のお知らせ



★『みのもんたの朝ズバッ!』
TBS系(全国ネット)
5月31日(火)
 AM5:30〜8:30




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