国会報告 その231(2005.05.21発行)

水島広子の活動の様子をお伝えするために、毎週1回、発行しております



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国会報告



■宇都宮交通渋滞対策で視察




 5月16日の早朝、民主党栃木県連で、朝夕の交通渋滞が問題となって いる宇都宮市東部の柳田大橋周辺を視察し、その後、宇都宮工業団地、清 原工業団地、芳賀町工業団地の管理協会の役員の皆さまと懇談させていた だきました。
 このたび、工業団地の管理協会の皆さまからいただいた陳情に応じて行 ったものです。

 宇都宮駅東地区と鬼怒川左岸地区の交通混雑は、宇都宮が抱える交通問 題の最たるものの一つです。この渋滞は、通勤者にとって深刻な悩みです。
 前回の総選挙の時、職場集会をしていただいて、国政の課題や地方分権 などについて語っていたときに、質問として唯一手が挙がったのが、「渋 滞を何とかしてほしい」という要望だったというくらいに、工業団地で働 く人たちを大きく悩ませているものです。

 福田昭夫前知事は、工業団地の人たちから渋滞についての陳情を受けて、 すぐに対応をして、新たな橋を架ける決断をしてくださいました。
 そして、2001年に、県の土木部長と宇都宮市長(現・栃木県知事) との間で覚え書きが交わされ、県と市で、柳田大橋の上流(県が担当)と 下流(市が担当)に1本ずつ橋を架けるということが決められたそうです。
 県は早速計画に着手し、すでに目に見える形で工事が進んでいます。と ころが、市は全く橋を作ろうとしない、ということも、昨年の知事選の一 つの争点でした。

 現知事は、渋滞対策としてLRT(新交通システム)を推進しています。町 の中心部のバリアフリー対策・環境対策の一つとしてLRTを考える、という のは、私も賛成ですが、工業団地に向けての渋滞対策としてのLRTには、全 く悲観的です。
 他の公共交通が十分に整備されていない宇都宮では、LRTに乗る前後の 「足」のことを考えれば、車を手放す人はほとんどいないでしょう。
 また、人口を考えれば、鬼怒川にかかっている橋の数はやはり足りない ということになります。 まずは橋を架ける。 そして、本当に希望する 人が多ければ、その橋の上をLRTを走らせる、ということが最も妥当な考 え方だと思います。

 民主党県連でも、国政・県政・市政それぞれのレベルで新橋建設に向け て努力することを確認しました。



■厚生労働委員会で質問しました




 5月18日、厚生労働委員会で自立支援法案などについて質問しました。
 この法案については多くの方からメールなどをいただいており、お一人 お一人にお返事できずに申し訳ございませんが、質問を作る上で参考にさ せていただきました。改めて御礼申し上げます。

★精神障害者の通院医療公費負担制度

 精神保健福祉法32条に規定されている公費負担制度は、精神障害者を 大きく支えてきました。私自身、精神科医として、32条があったから治 療を継続できたというケースを多く経験しています。

 今回、自己負担が現在の5%(さらに助成制度のある自治体では0%) から10%になる、というだけでなく、負担軽減が図られる「重度かつ継 続」という条件に当たる状態が、統合失調症、躁うつ病(狭義)、難治性 てんかん、という3つに限られてしまい、うつ病などが抜け落ちてしまっ ている、ということが問題です。
 この3疾患以外の人で、世帯所得が高い場合には、3割負担にすらなる、 ということになります。
 精神障害の重症度や治療継続の必要性は、病名によって決められるわけ ではないということを、いろいろな事例や国際的な知見も踏まえて、説明 しました。

 また、偏見を恐れて、制度をなかなか使わない、という人も少なくない こと。患者を愛している家族であっても、病気を理解して治療に協力的で あるとは必ずしも言えないこと。自分が病気になったことや病気が治らな いことに対して罪悪感を持ちがちであること。こうした、精神障害者ゆえ の特徴を説明しました。

 通院医療費公費負担制度については、病名ではなく、心理的・社会的・ 職業的機能にどのくらいの影響を与えるか、「機能の全体的評価尺度」(GAF) の点数で判定すべきだ、という提案をしました。

 大臣、障害福祉部長とも、提案を受けて検討すると前向きに答弁してく ださいました。

★宇都宮の誤認逮捕・誤認起訴事件について

 先日来、特に地元では大きく報道されてきましたが、宇都宮で、知的障 害者の誤認逮捕・誤認起訴事件が起こりました。
 具体性に乏しい本人の自白以外に証拠もなく、逮捕どころか起訴までし ています。本当の容疑者が逮捕されたため、えん罪であることが発覚しま したが、とんでもない事件です。

 厚生労働委員会に、警察庁と法務省それぞれの刑事局長に来ていただき、 質問しました。
 この事件は、二重に問題だと思っています。本人が知的障害者であると いうことを、警察も検察も承知していました。ところが、そのための特別 な配慮を取り調べにおいてしなかっただけでなく、知的障害者だから、と いう理由で、その供述と事実との矛盾に目をつぶって、起訴に踏み切って しまった、という構造です。

 本人が知的障害者である可能性がある場合には、警察が最初から弁護士 会に連絡をして弁護士をつけてもらうようにルール化すべきです。
 今回の事件でも、警察は本人に「弁護士はいるか」と聞いたらしいので すが、本人が簡単に断ったからと、呼ばなかったらしいのです。知的障害 者の場合に、「本人が希望しなかったから」というのは、言い訳にもなり ません。

 また、取り調べの可視化(録画などをすること)も重要な課題です。
 さらに、アメリカには、知的障害者の方との面接を専門にする警察官が います。来日したときにお会いしたことがあります。
 障害者差別禁止法であるADAがあるアメリカでは、知的障害をもってい るという理由で、取り調べにおいて不利益を受けた、ということであれば、 障害者差別として政府が訴えられることになるので、専門技法を持つ警察 官を養成する必要があるとのことでした。

 こうした警察官の養成は、日本では行われていないということですが、 これも取り組むべき課題です。詳しくは、後日議事録をご参照ください。



■SOS子どもの村 ポッシュ博士と懇談




 5月17日、以前からご紹介している「SOS子どもの村」の本場オースト リアから、福祉研究所所長のクリスチアン・ポッシュ博士が来日され、懇 談の機会を持ちました。

 ポッシュ博士は、もともと臨床心理学者で、経営学も修められ、現在は、 SOS子どもの村の福祉研究所所長として教育プログラム、養育水準、および スタッフ開発を担当しているそうです。
 児童福祉の課題である、支えとなる(安心、愛着、成功体験を与える)、 解放する(社会的に自立させる)、身近にいる(アフターケアと危機介入)、 というテーマと共に、子どもの村の現状をお話しいただき、大変参考にな りました。



■シューモン教授と懇談




 5月17日、UCLAの小児神経学教授である、アラン・シューモン博士と 懇談する機会を持ちました。

 シューモン教授は、長期に生き続ける脳死症例の観察を通して、「脳死= 人の死」という、アメリカにおける医学的常識に警鐘を鳴らしている人です。
 私とは価値観の相違も多少ありましたが、生命倫理にまつわる様々な議 論をさせていただき、有意義でした。

 生命倫理と言えば、5月19日には向井亜紀さんから「代理母による出 産で生まれた子どもの戸籍の問題について」というテーマでお話をうかが いました。



■性教育についての懇談



 5月19日、国際家族計画連盟(IPPF)若者対策シニア・アドバイザー のドーラ・ブラーケン氏を、超党派の「リプロダクティブ・ヘルス/ライツ を考える会」にお招きして、お話をうかがいました。

 ヨーロッパ諸国とは異なり、米国と日本ではここのところ性教育が「禁欲」 に偏重しつつありますが、禁欲教育の効果はどうなのか、というエビデンス をうかがいました。
 なんといっても問題なのは、禁欲教育だけを行ってしまうと、性感染症 や避妊についての知識を得る機会が失われるということです。

 エール大学やコロンビア大学で長期的な研究が行われているそうですが、 結婚まではセックスをしないと誓った人の88%は誓いを守れず、途中で 禁欲の誓いを破った人の方が、最初から禁欲の誓いを立てなかった人より も、性感染症の率が高いそうです。
 ブラーケン氏はオランダ人なのですが、オランダでは性交開始年齢が米 国よりも高いそうです。
 さらに、オランダでは、最初のセックスのときに85%が避妊の手段を 講じるそうです(76%がコンドーム。40数%がピル。35%は両方を 併用)。
 最初のセックスの時点ですでに、責任をもって行わなければならない、 ということを知っているということです。
 オランダ政府は、性行動そのものに干渉するよりも、若者が自分に責任 を持つということを重視しているそうです。その結果、若者の性が守られ ているということになります。

 若者を信頼した方が、結果として問題をコントロールできる、という訴 えには心から共感しました。 



 ☆テレビ出演のお知らせ




 ★『みのもんたの朝ズバッ!』
 TBS系(全国ネット)
 5月25日(水) AM5:30?8:30




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