国会報告 その230(2005.05.14発行)

水島広子の活動の様子をお伝えするために、毎週1回、発行しております



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国会報告



■ 補欠選挙について



 5月9日、4月の補欠選挙についての総括を行う懇談会(衆院1・2 期、参院1期対象)が、幹事長によって召集されましたので、私も出席 しました。(5月12日に、全議員を対象とした両院議員懇談会も開か れましたが、私は、自立支援法案に対する障害者の方たちの請願行動に 立ち会っていたため、そちらは参加できませんでした。)
 懇談会の席では、いろいろな意見が出ていましたが、私の総括は単純 です。

 補欠選挙と総選挙は、戦略も総括も全く違ってしかるべきです。総選 挙であれば、政権交代につながるかもしれないので、選挙と直接の利害 関係のない人でも、興味を持って投票に行く、という現象が起こります。 でも、補欠選挙では、即政権交代ということにはなりませんので、どう しても、選挙に利害関係のある人や組織的な基盤のある人しか投票に行 かない、ということになります。

この結果として、総選挙に比べると、圧倒的に投票率が下がるのです。 そして与党有利ということになります。
さらに、今回の福岡では、地震災害がありましたので、「ここで山崎 さんを落としたら政府からの報復で復興が進まない」というデマがまこ としやかに広まり、潜在的に多くの「利害関係者」を生み出したという 側面もありました。

 最近の補欠選挙で、この補選パターンを唯一破ったのは、川田悦子さ んの選挙でしょう(石井紘基さんが刺殺された後の補選も小宮山洋子さ んが圧勝しましたが、これはかなり特殊なケースですので、考察からは ずします)。
川田悦子さんの選挙がなぜ成功したのか、と言うと、無党派、クリー ン、という彼女のイメージが、それまでの彼女の人生(薬害エイズの被 害者の息子さんを持ち、政官業の癒着構造と闘ってきた)と見事に一致 したからだと思います。つまり、補欠選挙で「風」を吹かせようと思っ たら、限りなく「個人の選挙」とすべきだということです。候補者の経 歴から有権者がイメージするものと、本人のイメージ、そして選挙での 訴え、すべてに一貫性のある「テーマ」があって初めて、風が吹くのだ と思います。

そういう意味では、補欠選挙を「自民党か、民主党か」を選ぶ政党選 挙にしてしまうことはマイナスだと思うのです。

 福岡の平田候補の場合、在日3世として過ごした期間が長かったこと、 車椅子の障害当事者であること、という、かなり目立つ特徴があるわけ ですから、それが政治参加へとどうつながったのか、というストーリー をもっとアピールできなかったのだろうか、と残念に思います。
 という自分の意見を、懇談会の席でも述べさせていただきました。



■ 障害者自立支援法案の審議スタート



障害者福祉については、支援費制度が2003年度からスタートしたば かりですが、支援費制度は政府の予想を超えて活用され、潜在的な需要を 掘り起こしました。そしてすぐに財源不足に行き当たり、厚生労働省が裁 量的経費としてかき集めた、という経緯があり、すでに現行の支援費制度 は破綻している、と言っても過言ではない状態になりました。
潜在的需要を掘り起こした、というのは、決して悪いことではありませ ん。本来それだけ福祉サービスを必要としていた人がいたというだけのこ とです。
ところが、支援費の財源がパンクしてしまったため、異例の短期間で厚生 労働省は新しい制度を提案せざるを得なくなってしまいました。それが、 障害者自立支援法案です。

大きな特徴は、福祉サービスにかかる経費が「裁量的経費」ではなく「義 務的経費」になった(つまり、予算不足が生じたときには、国は補正予算を 組んで予算を確保しなければいけない)代わりに、その引き替え条件として、 応能負担(負担できる経済的能力がある人だけ負担する)が「応益負担」 (利用する福祉サービスを利用者自身が定率負担する)になった、というこ とです。
ちなみに、「応益負担」をとっている国は、世界中を見てもどこにもない そうです。それは当たり前のことで、障害が重いほどサービスを多く利用せ ざるを得ないわけですから、負担が重くなります。そもそも、人間として必 要十分な生活を営んでいくために受ける福祉サービスを「益」と考える発想 そのものが間違っていると思います。

 精神障害者に関して言えば、精神障害者の医療の継続を支えてきた通院医 療費公費負担制度が、極めて限定された、負担の高いものに変わります。
 こうした自己負担増が、結局のところは障害者の自立を阻害することにな るのではないか、ということが懸念されています。そんな中、少々勘違いし ているのではないか、と思えるメディアの論調が気になりましたので、一言 書かせていただきます。

5月10日の朝日新聞の社説は、「障害者には苦い薬だが」というタイト ルで、この自立支援法案を紹介しています。「応益負担」なるものが世界初 の悪制度だということの認識がないことも問題ですが、「障害者には苦い薬」 という表現は本当に失礼です。
裁量的経費から義務的経費に変えてもらう代わりに「応益負担」をのむ、 ということが、「薬」なのでしょうか? 障害が重いほど負担も大きくなる、 という矛盾に満ちた制度を受け入れなければ、人間らしく生きるためのサー ビスも受けられない、ということが、いったい何の「薬」なのでしょうか。

「苦い薬」というのは、一見苦しいけれども、自分にとってプラスになる、 ということを意味するものでしょう。文章を書いた方は、義務的経費化され ることによって財源が確保されてサービスを受け続けられる、という意味で 「薬」と考えたのでしょうが、財源を論じているのはあくまでも時の政権で あり、財務省です。その人たちが、いつまでも政官業の癒着に税金が垂れ流 されることを止められずに、障害者の財源を締つけているから、こうしたお かしな選択が強いられるのです。政権の意志の問題です。
 本当に「苦い薬」が必要なのは、小泉政権であり、財務省なのではないで しょうか。
 私も18日には質問に立って、主に精神障害者のことを問いただす予定で す。



■ 心神喪失者医療観察法



 この7月15日に施行期限が来る「心神喪失者医療観察法」(精神障害の ために、心神喪失・心神耗弱の状態になって犯罪をおかした人に対して、新 たな処遇を規定したもの)について、すでに私も先日の厚生労働委員会で触 れましたが、施行に向けての準備が全く整っていない、ということが明らか になってきています。

 5月12日に、法務省と厚生労働省から、現状を聞きました。まず、対 象となる人が入院するための「指定入院医療機関」ですが、今後3年間で全 国で当面24か所程度(約700床)確保することが必要、としていますが、 2005年度中の整備見通し施設はわずか3ヶ所(90床)にすぎず、設計 中の施設が4ヶ所、ということになっています。ただ、設計中の施設の地元 の議員によると、反対運動が日を追うごとに激しくなっており、とても地元 の理解が得られているとは言いがたい、ということです。
 手厚い医療が必要な人に精神科ICUを作ると提案した民主党案に比べ、 危険性が高い人に特別病棟を作ると提案した政府案は、精神障害者への偏見 を助長するということを訴えていましたが、まさにそれが現実のものとなっ たのです。
 さすがに公式には認めていませんが、なんと、この準備不足を踏まえて、 施行前の法改正という前代未聞のことすら政府は検討していると報道されて います。その内容が、報道されている通り、別の病棟による代替を認める、 ということだとしたら大問題です。
 この日の段階では、「700床目標で90床しか整備できない、というこ とをどう考えているのか」と質問されると、「あくまでも700床というの は3年間の目標なので・・・」との答え。そこで私が「病床がパンクしたら どうするのか」と聞くと、「そうならないように努力するしかない」という 答えしかできませんでした。  また、72000人の社会的入院者(医療上は入院の必要がないのに、地 域の受け皿が整わないために退院できない人たち)を、10年間でゼロにす る、ということも、法律成立の条件として、大臣が繰り返し答弁したことで す。
 ところが、すでに2年が経過したわけですが、この10年計画は、未だに スタートしていないとのこと。10年というのは、来年から始まりますとい うような、人をバカにしたことを言っているらしいのです。 本当に、こん なことをやっていてはだめです。今後、ますますしっかりと検証していきま す。



 ☆テレビ出演のお知らせ



 ★『みのもんたの朝ズバッ!』
 TBS系(全国ネット)
 5月17日(火) AM5:30〜8:30

 ★『痛快!おんな組』
 朝日ニュースター(CS放送)
 5月21日(土) PM11:00〜  




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