国会報告 その228(2005.04.23発行)

水島広子の活動の様子をお伝えするために、毎週1回、発行しております



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国会報告



■介護保険について再び質問しました




4月22日、厚生労働委員会で、介護保険法改正案について2度目の質問 をしました。

 今回は、うつ病と認知症(今まで痴呆と呼ばれてきたもの)について主に 質問をしました。
 また、前回の質問に続き、厚生労働省の情報の出し方を質しました。海外 文献にある aerobic exercise をエアロビクスと訳していたので、やはり問 題があると指摘しました。日本語でエアロビクスと言えば、それはエアロビ クスダンスのことを意味します。でも、文献で述べていたのは、ウォーキン グという有酸素運動のことなのです。
 厚生労働省が出してくる資料を疑って原著を取り寄せて確認する、という 不毛な作業を本当に終わりにしたいものです。こんなことを追及するために 質問時間を使うのも、無駄な話です。情報提供については誠実であるよう、 改めてお願いしました。

できるだけ元気に年をとりたいというのは多くの人に共通の願いなので、 予防重視を前面に打ち出すというのは決して悪いことではありません。
その際問題になるのは、予防重視だからと言って、すでに介護が必要な人 へのサービスを切り捨てないこと、そして、本当に予防効果のあることを確 保すること。さらに、人々にできるだけ不安を与えないことです。
 不安になると、ストレスがたまり、精神的健康度が下がります。不安は、 認知症の症状を悪化させます。また、うつ病の発症にもつながりうるもので す。これは介護予防という観点からは逆行することになります。安心して自 分の高齢期を選べるということこそ、予防効果につながります。

今回、まったく中身のわからない制度改正をちらつかせて人々の不安をあ おっているということ自体、介護予防という観点からは、すでに失格だと言 えます。

 また、話題の筋トレについても、お年寄りには、まじめで硬直化した価値 観をお持ちの方が多いのですから、いくら「強制しない」と言っても、義務 だと感じる人が多く出るのではないでしょうか。それが負担となって精神的 に追いつめられたり、罪悪感が強まったりするのではないでしょうか。
お年寄りの価値観、そして地方における人間関係を考えると、強制しない というだけでは、不十分だと思いますので、広報のあり方をきちんと私たち にも検証させてほしいとお願いしました。

◆うつ病についての基本的知識が重要

実は、今回、厚生労働省が「安易な家事代行サービス」を切る、と言って いることについて、私が最も心配しているのはうつとの関係です。審議の中 でも度々「怠け」という言葉が出てきましたが、「怠け」というのは、うつ の症状を誤解してとらえるときによく聞かれる言葉なのです。
本当に効果的な介護予防をするには、うつについての知識は不可欠です。 心筋梗塞、糖尿病、がん、脳血管障害などの身体疾患によってうつ病の有病 率が高まることも知られており、高齢期のうつへの取り組みの重要性は厚労 省も認識して研究してきたはずです。
家事代行などを考えるときに、何が適切で何が適切でないか、ということ は、実はうつについての知識を持っている人でなければ判断できないはずで す。

また、サービスを切り捨てられたときに、うつのお年寄りは、不服申し立 てをしようと考えるのではなくて、「やはり自分は社会に迷惑をかけている 存在なのだ」と自殺を考えがちです。
 高齢者世帯だけでなく、多世代同居のお年よりも、孤立しやすいという ことが指摘されています。家族がいないから自殺しない、ということはなく、 むしろ、地域の目が行き届かずに孤立しやすいという傾向にあるのです。

このほか、認知症の悪化防止策などについても質問しました。やはり、 うつ病にしても認知症にしても、プライマリケア領域の啓発が重要なポイン トになります。
詳しくは後日議事録をご覧ください。



■大谷の特区申請について




   宇都宮市大谷地区の廃坑に溶融スラグ(廃棄物を溶融加工し、化学的安 定度を高めたもの)を埋めるという構造改革特区申請について、地元住民 の方たちから、「本当に安全なのか?」あるいは「どうすれば特区申請で きるのか?」という、いろいろな質問をいただいております。

 大谷については、すでに投棄されている不法有害産業廃棄物の撤去につ いて、2003年2月27日に予算委員会分科会で質問していますが、元 来、風光明媚なはずの大谷が、陥没や環境汚染の不安にさらされていると いうことは、大きな損失だと考えています。
 2003年に「特定産業廃棄物に起因する支障の除去等に関する特別措 置法」が成立し、大谷地区の産廃の撤去を宇都宮市が代執行する場合の国 庫補助率が上がったのを機に、当時の宇都宮市長に撤去を要望しましたが、 財政難を理由に実現していただけませんでした。

 そちらへの取り組みも依然として重要な課題ですが、今回、廃坑への埋 め戻し案として提案されているのがスラグです。
 そこで、4月22日に環境省の方に来ていただき、スラグの安全性につ いてうかがいました。

 スラグは、確かに、一般廃棄物に比べると、化学的安定度は高くなって いますが、重金属の含有量もそれなりに高いので、一概に安全とは言えな いものです。現在は、道路表面にまくような形で、アスファルト直下に使 用することだけが認められています。
今回の特区構想では、これを廃坑に埋めようとするわけですから、当然 これまでの基準からは外れるわけです。環境省としてどう考えているのか を聞きましたところ、

●水圧や地震等に耐えられるとともに、地下水を汚染するおそれがない土 地であること。
●埋め立て処分開始後、地下水等検査項目について、3ヶ月に1回以上測 定し、かつ記録すること。

 を条件に、地中にある空間を利用した溶融スラグの埋め立て処分を可能と する、ということだそうです。

 2つめの定期測定ですが、これは、通常1年に1回となっていますが、 地下の場合、環境への悪影響がわかった場合に対応する(最終的には撤 去しかない)ことがやはり大変なので、頻度を高めて、環境への影響を 適切に把握していく、という趣旨だそうです。
 現に放置されている不法投棄物についても、「撤去の費用を払えない」 ということを理由にそのままになっているのに、この上、スラグの撤去 までできるのでしょうか。

 さらに、現に放置されている不法投棄物の場合には国庫補助が半分あり ますが、スラグに問題があった場合の撤去については国庫補助はありませ ん。費用ということで言えば、そもそも、3ヶ月に1回のチェックもそれ なりに費用がかかるはずです。
 これらのリスクをどう考えるか。そもそも、「地下水を汚染するおそれ がない土地」であることを証明することが本当にできるのか。特区申請を 判断するに当たっては、このあたりがポイントになるようです。



■社会保障制度改革調査会スタート




 与野党の合意で年金合同会議が国会内に作られることになりましたが、 ここでの協議の民主党内での政策母体と言える「社会保障制度改革調査会」 が作られました。私も副幹事として参加することになりました。
 ちなみに、今後に向けての危機感の強さが与党と民主党では大きな開き があります。どれほど危機的な状況にあるかということを示すデータに客 観的な目を向けることもしないようです。

 このため、年金合同会議開催の頻度についても、与党は「隔週」と言い、 民主党は「週1〜2回」と言う、という状況のようです。
社会保障制度調査会の第一回の会議は4月22日に開かれましたが、そこ では、「社会保障の在り方に関する懇談会」について厚生労働省からヒア リングを行いました。
 これは、昨年の7月30日からスタートし、この4月14日に第8回会 議が行われたところです。

 趣旨は、「社会保障制度を将来にわたり持続可能なものとしていくため、 社会保障制度全般について、税、保険料等の負担と給付の在り方を含め、 一体的な見直しを行う必要がある。
 このため、有識者の参加を得つつ、「社会保障の在り方に関する懇談会」 を開催する」と立派なことが書かれていますが、よくよく聞いてみると、 ここでどのような結論をまとめてどういう形で生かしていくか、というこ とについては何の考えもないようです。
 とりあえず「何かはやっています」というアリバイづくりと言われても 仕方がないのではないかと思います。

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テレビ出演のお知らせ
☆朝のニュース番組に、水島広子がコメンテーターとして生出演いたします。
今後も、2週間〜1ヶ月毎に出演させていただく予定です。
ぜひご覧ください。

『みのもんたの朝ズバッ!』
2005年4月26日(火)
AM5:30〜8:30
TBS系(全国ネット)






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