国会報告 その223(2005.03.19発行)

水島広子の活動の様子をお伝えするために、毎週1回、発行しております



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国会報告



■青少年問題特別委員会で質問しました



 3月15日、青少年問題特別委員会で質問しました。実に、南野大臣が 青少年担当に任命されて、青少年問題特別委員会での質疑が行われたのは これが初めてでした。

 青少年問題、と騒がれながらも、これが国会の実態なのです。やはり子 ども家庭政策専門の大臣が必要だと思います。

 私は、午前と午後にまたがって、計70分の質問をしました。前半は、 機構上の問題について。私たちがマニフェストに載せている子ども家庭省 を作る必要性、また、子どもオンブードを設置する必要性について質問し ました。
 大臣の答弁は、自分が全力を尽くすので子ども家庭省を作る必要はない、 というようなものでした。
 また、法務大臣と青少年担当大臣の兼任というのはこれが初めてのケー スになるわけですが、どういう趣旨で兼任となったのかを質問しました。
 これについては、小泉首相からは趣旨の説明はなく、「あうんの呼吸」 という答弁でした。

 後半は、法務領域における子ども関連の問題について。まず、児童ポル ノ。現行法では見送られている漫画や疑似ポルノについての見解を聞きま した。

 漫画や疑似ポルノは、実在の子どもが描写対象になっているわけではな い、という理由で規制対象になっていませんが、子どもを性の対象として 見る風潮を広めるということにもつながり、また、一部の人にとっては、 児童ポルノに触れれば触れるほど性犯罪に至る可能性が高まるというデー タからも、私は漫画や疑似ポルノも規制対象とすべきだと考えています。
 この点について質問すると、午前中は、子どもオンブードの役割も果た すというような意気込みで答弁していたはずの大臣が、「いろいろな議論 がありまして・・・」となってしまったのでがっかりしました。

 次に、懲戒権について。懲戒権を手つかずに残すのではなく、国連の子 どもの権利委員会の勧告に従って、体罰や屈辱的なしつけを禁ずる、とい うくらいに書き込むべきではないか、というふうに質問をしたのですが、 驚いたことに大臣は「何がしつけで何が虐待であるかというのは、親の感 覚によるもの」と答弁したため、議場が騒然としました。
 繰り返し答弁の確認をしましたが、どうも最後まで虐待防止法を理解さ れているのかどうか不安になるような答弁が続きました。

 南野大臣は、大臣就任前にはDV防止法制定に積極的に取り組まれてい ましたし、家庭内の暴力については詳しい方のはずだったのですが、子ど もを殴るということについては、「それはケースによって・・・」と歯切 れが悪かったので残念でした。
 しつけと虐待の概念がきちんと整理されていないために、また、体罰を 用いないしつけが可能だということがアピールされていないために、虐待 を生む温床となっている、ということを考える必要があるということを指 摘しました。

 最後に、非嫡出子の差別について。
 婚姻制度を守るための合理的な区別、という見解がありますが、婚姻制 度は、あくまでも大人の間で守られるべきものであって、現行法では、当 事者である大人はおとがめなし、子どもだけがツケを払わされる、という 構造になっているわけです。
 子どもの観点から何とかできないか、ということを質問しましたが、や はり、子どもの代弁者と午前中には胸を張った大臣とは思えない状態で、 「社会の多くの人が賛成しないとできない」と言うばかり。

 私は前半の質問で、子どもオンブードのように政権から独立した存在を 作らないと、子どもの代弁者として機能できないのではないか、という懸 念を表明したわけですが、大臣の答弁を聞いて、ますますその必要性を感 じました。
 オンブードでなくても、私が12月に訪問した韓国の女性部長官(女性 省大臣)は、閣議の場で、各省庁の政策を男女平等という視点からチェッ クし、注文をつけるそうです。
 その結果として、だんだんと女性部の影響から逃げることができなくな ってきた、という話ですから、もっと南野大臣には子どもの代弁者として の自覚を持って、体当たりで自ら国会や社会を説得してほしい、と要望し ました。



■介護保険法改正について




   いよいよ3月22日の衆議院本会議から、介護保険法改正案の審議が始まり ます。

 今回の介護保険改正については、生活を維持向上するための介護予防の 充実や、住民に身近な市町村への権限移譲など、表面的な方向性には大き な問題がないように見えますが、この改正によって高齢者の生活にどのよ うな影響があるのかが全くわかりません。
 特に、新介護予防給付において、どのような基準で振り分けられるのか、 どのようなサービスが提供されるのかがわからないことから、利用者の不 安は増大しています。
 また、施策立案の根拠となるモデル事業の結果もまだ出ない状況で作ら れた法案であり、事業の結果についての検証も欠かせません。このため、 まずは十分な審議を行い、法案の内容を明確にしていくことが必要だと考 えています。
 以下に、いくつかの主な問題点を挙げます。

1.介護予防への評価

 今回の介護保険法改正案の主要事項の一つである介護予防の充実につい ては、筋力トレーニング等の新たな介護予防サービスにおいて、短期的な 有効性が見られる事例もありますが、費用対効果や長期的な効果の持続性 が十分に明らかになっていません。
 現在モデル事業が行われている最中であり、また、どれくらいの割合の 高齢者に介護予防が必要、あるいは効果的なのかも十分明らかになってお らず、十分な立証がないままに介護保険に導入することは、介護予防の給 付が過度に増大しかねない危惧もあります。  
 介護予防事業の中身をさらに法案審議で明らかにする必要性があります。

2.老人保健事業と介護予防の関係

 新たな介護予防給付を広げることにより、老人保健事業との調整が課題 になります。
 これまで老人保健法の理念の中で、予防から医療まで一貫した体系にな っていましたが、介護保険の介護予防事業を広げることにより、この一貫 性が切れる恐れがあります。

 また、本来は介護や支援が必要な人への給付を目的とした介護保険にお いて、その必要がないと判断された人に対して介護保険財政から支出する ことの是非についても、十分な議論が必要です。
 前回の国会報告でも宇都宮市の生きがい支援型デイサービスについて書 きましたが、老人保健事業の財源がなくなったことが単に介護保険につけ まわしされているような印象が拭えません。

3.家事援助の「適正化」

 在宅生活の継続の鍵を握る家事援助において、一部に過剰な給付がある ことが指摘されており、その部分の適正化を目指す改正の趣旨は理解でき ます。
 しかし、高齢者や介護現場からは、必要な家事援助サービスまでカット され、在宅生活ができなくなるのではないかと不安の声があがっています。 どのような家事援助が今後も利用できるのか等、具体的に確認していく必 要があります。

 他にも、新たに設置される「地域包括支援センター」についても詳細が わからない、施設入所者、通所サービス利用者等の自己負担についての配 慮など、大きな問題点があります。
 そもそも本来、介護保険の特徴は「選択の自由、自己決定」だったはず であり、今回の改正でその点が骨抜きにされてしまうことが最も心配です。
 また、昨今の「自己責任論」を考えると、介護予防が一人歩きしてしま うと、「要介護状態になったのは、筋トレを怠けていたからだ」だという ような風潮ができてしまうのではないか、ということも心配です。
 そもそも、高齢期のうつなどを考えれば、本当に介護予防を考えるので あれば、心身のトータルなプランとケアが必要。単に筋トレマシンを普及 させればすむ、という話ではないはずです。
 この筋トレマシンについての利権も、懸念しておくべきポイントです。 改正しなければ財源がなくなる、という意見もありますが、そもそも、要 支援・要介護1の認定率には、地域差がありすぎます。
 この要介護認定のバラツキを放置して、全体的にサービスをカットする、 というような「改正」であってはなりません。





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