国会報告 |
■緒方貞子さんと懇談 12月22日、民主党の勉強会で、前国連難民高等弁務官の緒方貞子さ んから「国連改革の現状」について講演をいただき、その後、昼食会で懇 談させていただきました。尊敬する緒方貞子さんと親しくお話をさせてい ただき、感激すると共に、大変勉強になりました。 講演では、ハイレベル委員会の報告書について特にお話をいただきまし たが、昼食会では安全保障だけではなく幅広く国際的なテーマについてご 意見をうかがうことができました(ちなみに、かつて自民党によって「日 本が安全保障理事会の常任理事国入りをするには憲法9条改正が必要条件 だ」というデマが流されましたが、やはり事実無根でした)。 緒方貞子さんは「人間の安全保障」の専門家ですが、「とにかく何事も 人間への愛を持って行わないといけません」と話されていたのが印象的で した。そのような高尚な精神と共に、実際に国々をとりまとめていくに当 たっては、水面下での交渉が重要だという交渉術も学ばせていただきまし た。どんな国も、水面下での交渉の経緯もなしに突然批判されると硬直化 してしまう、というのは、なるほど真実だと思いましたし、やはり外交が 人間関係の延長線上にあるということも改めて認識しました。 ■訪韓報告(その3)(前号・前々号もご参照ください) ○開かれたウリ党訪問(続き) 金委員長は、投獄経験のみではなく、5年間逃走生活をしていたという 筋金入りの活動家なのですが、ウリ党にはかなりの思い入れを持って活動 されているようでした。 金委員長によると、「ウリ党とハンナラ党とで女性政策に違いはないが、 推進する意志に違いがある」とのこと。例えば、ウリ党では、地域区(選 挙区)の予備選で、女性候補に20ポイント上乗せするなど、「ハンナラ 党では考えられない」優遇策をとっているそうです。 また、女性リーダーシップセンターを作り、女性党員、女性大学生、政 治家志望の女性に教育をしたり、2006年の地方選挙で女性進出30% を目標にして努力したりしているそうです。 韓国では、市民団体が国政監査を行っており、国会において国民が知ら なければならないことをちゃんと質問で引き出せたのか、など、国会議員 の活動をモニタリングして点数をつけているそうです。韓国は落選運動が 有名ですが、政治に関わろうとする市民のエネルギーは日本よりもずっと 強いように思います。日本にも国政監査活動があれば国会にももっと緊張 感が生じるし、選挙で誰を選ぶべきかがわかりやすくなると思います。 ○ハンナラ党訪問 ハンナラ党では、宋永仙(ソン・ヨンソン)中央女性委員長と懇談しま した。李啓卿(イ・ゲギョン)党第6政調室委員長(社会、文化)も同席。 ハンナラ党は保守政党であり、女性政策や女性議員を増やすための取り 組みに特に特徴的なものはないようでしたが、インターネット投票で女性 委員長に選ばれたという宋委員長はなかなかユニークでした。 安全保障および国防の専門家で、イラク派兵賛成論を保守色彩の強い論調 でテレビ討論で展開し、派兵に反対する世論との舌戦で有名になった人物 だそうです。日本でも防衛大学や防衛研究所などで安全保障を研究したこ とがあるそうです。 和やかな懇談ができましたが、帰りがけに、私が「日本では、国防を専 門にする女性は女性問題に関心がないという傾向がある」と言うと、「実 は私も」と告白されてしまいました。 なお、そんなハンナラ党でも、現在の党首は女性であり、国会の女性委 員会で会ったハンナラ党女性議員の皆さんは女性政策に熱心に取り組んで いました。それでも、ウリ党で指摘されたように、政党の構造上、女性政 策を進めることに適していない、というのは、何となく日本の自民党に似 ています。でも、そんなハンナラ党でも、クオータ制には反対することが できなかったのですから、韓国はすごいものです。 ○民主労働党訪問 民主労働党では、代表の金恵敬(キム・ヘギョン)氏(女性)をはじめ、 最高委員会のメンバーが懇談に応じてくれました。 民主労働党では、権力の集中を防ぐために、国会議員と党役員との兼職 が禁止されています。前代表が今年の総選挙で国会に当選したため、代表 が交代しました。 民主労働党は、2000年に進歩政党として結成された政党で、今年の 総選挙で一躍第3党の地位を確立しました。 日本の民主党として、民主労働党を訪問するのは私たちが初めてだそう です。 民主労働党は、党内ポストについても30%クオータを規定しており、 最高委員13名中5名が女性。他の政党に先駆けて2002年の地方選挙 では比例区の奇数番号を女性に割り当てています。 民主労働党は、労働組合との関連が深いという点で、日本の民主党に似 ています。労働組合との連携の中で男女共同参画をどう図っているのか、 と質問すると、民主労働党のクオータ制は労働組合にも影響を与えており、 民主労総(労働組合の二大ナショナルセンターの一つ)でも役員の30% クオータが採用されるようになったそうです。民主労働党結成の原動力と してのプライドが、労働組合を前進させているとのことでした。 政策としては、私が取り組んでいる「仕事と家庭の両立」「非正規労働 者の均等待遇」「保育」など、いろいろと共通点がありました。 現在第3党の民主労働党ですが、その存在は議席に比べて大きいそうです。 まず、議員レベルではなく政党としての政策を見た場合、民主労働党の政 策に共感する人が多いそうです。また、民主労働党が進歩政党として存在 しているため、本来は進歩的なはずの大統領が中道政治家に見えるという ことで、政権のバランスにも寄与しているようです。 12月8日 ○梨花女子大学訪問 梨花女子大では、韓国女性研究院の呉貞和(オ・ジョンファ)院長、そ して、ジェンダー法研究所のキム・ソンオク所長、その他の教授たちが懇 談に応じてくださいました。 梨花女子大は、韓国の女性進出の供給体とでも呼ぶべき存在です。韓国 においては女性学の生みの親であり、1977年には学部で女性学の講座 を始め、1982年には女性学科を設立、大学院でも女性学を開講し、1 988年には博士課程も作られました。 現在、韓国国内で女性学の博士課程を持つのは梨花女子大だけですが、 教養科目としては全国のほとんど全ての大学で教えられており、12の大 学に女性学の修士課程があるそうです。ここのところの特徴は、男性の聴 講生が増えてきている、ということだそうです。 梨花女子大の活躍は女性学の講座に留まりません。女性研究員では、グ ローバリゼーションの流れに応じられる人材であり、フェミニズム的理念 を実現できる人材を育てています。 さらに、昨年からは、梨花女子大女性リーダーシップ開発院がオープン しました。 これは、政府・企業・政界・NGOですでに働いている人を、リーダーとな るよう再教育するための場です。働きながら再教育が受けられるようにな っており、企業で働いている女性の場合は企業がその教育費を負担する仕 組みになっています。 この女性リーダーシップ開発院(定員30名)で再教育を受けた女性の うち10名が今年の総選挙で国会に当選しました。当選後も、梨花女子大 に招いて、超党派での連帯の場を提供しているそうです。 人材育成だけでなく、梨花女子大は、政府の女性部、労働部、保健福祉 部などが立案したプロジェクトについても請け負っています。梨花女子大 の成果は、学問的なレベルに留まるのではなく、政策にも反映されている ということです。 (以下、次号に続く) 本年も週刊国会報告をお読みいただきありがとうございました。来年は、 メールマガジンは1月8日号から、郵送・ファックスの国会報告は1月15日 号からスタートします(1月8日号の内容が「ネットワーク通信」の新年号 と重複するため)。 来年もどうぞよろしくお願い申し上げます。 |