国会報告 |
■ILO事務局長との懇談 超党派のILO活動推進議員連盟で、12月2日、ファン・ソマヴィア事務 局長を朝食会にお招きして意見交換をさせていただきました。 ILOにおいても、若年雇用は大きなテーマとなっています。今年の10月 13〜15日、「若年雇用に関する三者構成会議:前進への道」の会議を ジュネーブで開き、若年雇用の課題、国内レベルの若年雇用、ILOの活動、 という3本柱からなる結論を採択しています。 私は、若年雇用について日本の現状を説明した上で、ニートのように自信 を失いがちな子どもたちを念頭においたキャリア教育の在り方について意見 を求めました。 ソマヴィア事務局長は「日本の現状について勉強になった」と関心を示さ れました。そして、何らかの社会システムを念頭に置いて社会に適応させる 教育を行っていると、社会そのものが変化している場合に若者たちが混乱し てしまう。変化適応性や創造性に重きを置いた教育へと切り替え、自らがイ ニシャチブを発揮することが重要なのだということを子どもたちに教育して いくことが大切なのではないか、とおっしゃいました。 ■スウェーデン法務副大臣との懇談 12月2日、スウェーデン王国法務省男女共同参画担当副大臣のリセ・ベ リー氏が民主党本部を訪問され、私が男女共同参画委員長として懇談をい たしました。 スウェーデンでは、1980年代から男女平等担当大臣を作っていますが、 政府全体の男女共同参画を進めるために、1994年からは、各省庁に男女共 同参画担当のポストを作ることになりました。リセ・ベリー副大臣は、法 務省においてその役目を果たす担当者ということです。法務省の政策にジ ェンダーの視点をきちんと盛り込むことのみでなく、法務省に所属するす べての人に男女平等教育をすることも仕事になります。 現在スウェーデンでは国会議員の45%が女性。法律でクオータ制を義 務付けているわけでもないのですが、1994年から社会民主党が50%クオー タを導入したこともあり、「自然と」その比率になったそうです。 法務省としての現在の主要課題は、女性への暴力、トラフィッキング、 売買春。売買春については、買春側のみが罰せられ、売る側は罰せられな いということです。日本とは完全に逆です。「買う人がいなければ売春は 成り立たなくなる」という至極もっともな理屈に基づきます。 スウェーデンは出生率も回復してきており、性教育を進めた結果、若者 の性の問題も日本よりもはるかに解決されています。こういった現状につ いても意見交換をしました。 私は現在民主党の「次世代育成支援プロジェクトチーム」の座長をして おり、少子化対策の責任者をつとめておりますが、そこでも、スウェーデ ンがなぜ少子国家にならなかったかということを学ばせていただいていま す。 今回、スウェーデンの副大臣と懇談して、ノルウェーと全く同じだと感 じたのは、どちらの国も、「あなたの国が目標だ」と話すと、必ず、「私 たちはまだこれだけやらなければならないことがある」と今後の課題を挙 げるということです。現状にあぐらをかくことなく常に前進しようとする 気持ちが行政責任者から伝わってきます。「男女平等は達成された」と、 これ以上のことをしようとしない日本の政治家たちとは大きな違いがあり ます。 ■ハーバード・ビジネス・スクール学部長との懇談 12月10日、民主党本部にハーバード・ビジネス・スクール(ハーバード 大学経営大学院)学部長のキム・B・クラーク博士をお招きして、「成功 するリーダーとしての資質」について懇談をする機会を持つことができま した。 アメリカでは「経営の神様」と言われている人物ということでしたので、 どんな方かと思いましたが、大変すばらしいお話をいただきました。リー ダーに必要とされるものは、リーダーシップと、価値観、そして「誠実さ」 (価値観と行動の一致)だというのがクラーク学部長の信念です。正しい 価値観を的確に伝えられるリーダーは、自分の企業に潜在する大きな力を 引き出すことができるということです。 クラーク学部長は、毎年、ハーバード・ビジネス・スクールを卒業する 卒業生900名とその家族に、仕事と家庭についての講演をするそうですが、 そこで話すことは、「家庭において失敗をしたら、仕事でどれほど成功を 収めても取り返しがつかない」「最も重要な仕事は家庭において成し遂げ られる」ということだそうです。家族を大切にしない人が、どうして従業 員を大切にすると信じられるだろうか、とクラーク学部長は力説しておら れました。 私は、「日本においては、仕事と家庭のバランスをとることと、ビジネ スは両立しないという思い込みがあるが、日本の経営者たちを説得させら れるようなデータはあるか」という質問をしました。この質問に対しては、 自分が組織から信頼され、業績を評価されていると感じる人は、仕事に積 極的に関わろうとする気持ちが増し、組織における実績が上がる、という ことが証明されており、そういう意味でもワーク・ライフ・バランスは重 要だということ、そして、それをもっと正確に知るために、現在「成功の モデル」という研究プロジェクトがハーバード・ビジネス・スクールで進 行中だということを教えてくださいました。 ■米国女性政治公共視察団との懇談 12月10日、米国女性政治公共視察団(政治家を中心とする8名の女性)の 皆さんがわざわざ私個人との懇談を希望してこられました。日本の少子化、 男女共同参画政策、青少年の健康問題など、多岐にわたって議論をさせて いただきました。民主党・共和党両党の女性が含まれていましたが、どな たも私の行っている仕事に関心を示され、激励してくださいました。 ■訪韓報告(その1) 12月6〜8日、男女共同参画委員会の役員(衆参8名の国会議員)で韓国を 訪問しました。私は委員長なので訪韓団の団長を務めました。 韓国では、今年3月から政党法が改正され、比例区の名簿を男女交互にす る50%クオータが各政党に義務づけられました。また、政党補助金の10 %を女性政治発展のために使うことが義務づけられました。さらに、選挙 区において女性候補者を3割以上擁立した政党には女性推薦補助金を追加支 給することが決められました。 この政党法改正の結果、4月に行われた総選挙では、女性国会議員は2倍 以上に増えました(改選前5.9%、改正後13%)。さらに女性の議員を増や すにはどうしたら良いか、ということが議論されている段階だということ です。 また、韓国では、政府に女性部(女性省)も設置され、国会には女性委 員会も常任委員会として設置されています。 儒教の影響が日本よりも強かったはずの韓国がなぜこれだけの変化を遂 げているのかを学ぶために、訪韓を計画しました。実際に、大変多くを学 ぶことができました。 以下に、具体的な内容の報告をいたします。スペースの都合上、次号以 降にも続きます。なお、韓国では省庁のことを「部」と呼び、部の「長官」 が大臣に当たります。 12月6日女性部長官(女性省大臣) 池銀姫(チ・ウンヒ)氏訪問 女性部(女性省)は、2001年1月に新設されました。第1次の活動計画で は、女性のマンパワー開発、女性の権利向上、女性の人権保護という個別 課題について取り組んできましたが、第2次計画では、その取り組みを続 けつつ、国防政策など政府の全政策について性についての認知を求めてい るそうです。 現在は、女性に特に関連の深い6つの部(省庁)に女性政策担当官を配 置し、それ以外の部では部の企画管理室長が女性政策責任者を兼任する、 という形で、各部と女性部との連携を図っています。労働政策を労働部が 決めるときには、女性部と議論して見解を問わなければならないとされて います。各部が性認知的な政策立案をしなければならないという義務もで き、予算執行などを女性部がモニタリングし、国務会議(閣議)で報告して プレッシャーを与えることもでき、事実上、女性部を避けて通る道はなく なりつつある、と長官の話でした。 |