国会報告 その17(2000.11.2発行)

水島広子の国会内外での活動をお伝えするために、週1回程度、発行の予定です。


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国会報告(10/29〜11/01)
お知らせ:
ドイツのFriedrich Ebert Stiftungという財団のYoung Women Leaders Conference(若年女性リーダー会議)に日本代表として招へいされたため、11月2日の国会日程終了後からバンコクに行きます。11月7日の早朝に帰国し、そのまま国会日程に入ります。
このため、通常月曜日に発行しているこの国会報告を、今回は変則的に、11月2日に発行いたします。次回は11月12日(月)に通常通り発行する予定です。よろしくお願いいたします。



■10月29日(日)

10時から民主党宇都宮市議の藤井弘一さんの後援会大会に出席。
上三川町に移動して、日産自動車主催の「しらさぎ祭」に参加。

事務所に戻って昼食をとりながら打ち合わせ。その後、民主党県連事務所で「水島広子ネットワーク通信」の発送作業をしてくださっているボランティアの方たちのところに顔を出す。いつもありがとうございます。

14時から、佐藤敏幸さんの写真を集めた「大谷石のある風景」(大谷石遊亭ギャラリー)を鑑賞。
15時からは事務所で来客や個人相談など。


■10月30日(月)

7時45分から恒例のマンデーレポート。
10時から労組大会。「職場のメンタルヘルスについて」の講演を精神科医としてする。
昼からは支持者の方などを訪問していろいろと話し合う。

その頃、国会では大変なことが起こっている。
16時から緊急に民主党法務部会が召集される。私のところは政策秘書が代理出席して晩に報告を受けたのだが、あまりの展開に我が耳を疑った。

私の所属する法務部会では、少年法改正の与党案に対して、修正案を作ってきた。先日提出したばかりだが、このあたりの経過についてはこの国会報告でもお伝えしてきた通りだ。そして、法務部会で議論を重ね、修正が認められなかったときには与党案には反対するという方針を部会員全員一致で決めていた。

ところが、その決定をネクスト司法大臣である小川議員がネクストキャビネットに持っていったところ(議員立法や政策は、政策の最高機関であるネクストキャビネットで最終決定する仕組みになっている)、2対9で「与党案に賛成しろ」ということになったらしい。担当大臣も担当部会も「反対」と言っているのに、ネクストキャビネットが「賛成」と言うなど、きわめて異例なことだと思う。この異例さ故に、最終決定は党の三役に一任することになったらしい。その結果、やはり「与党案に賛成せよ」とのこと。

犯罪被害者の方たちも含めて各分野の人たちに会い、少年院の視察もし、議論を重ねて修正案を作り上げてきた法務部会のメンバーは納得できるわけがない。また、少年法改正に反対・慎重の人たちとの信頼関係もある。

紛糾したままこの日は終わったとのこと。明日の法務委員会での態度決定のために、明朝改めて話し合うことになった。

このニュースを聞いたとき、一緒にいた人に話してみたところ、「それは何か裏取引があったのではないか」と言われた。多分そういうものはないのだろうが、そうとられても仕方がないなと思った。


■10月31日(火)

6時36分の新幹線で東京へ。

火曜の朝はいつも税調の勉強会なのだが、今日は緊急事態のため8時から民主党の法務部会へ。

昨日の興奮冷めやらない面々を前に、小川ネクスト大臣から改めて報告がある。代表とも直接話したが、決定を覆すことはできなかったとのこと。

なぜ執行部は賛成なのかを小川議員に改めて尋ねる。与党案には被害者対策を含めて評価すべき点もあるということと、世論への配慮というのがその理由だとのこと。でも、世論調査をよく見るとわかるのだが、「少年法改正に賛成」という人が多いのと同時に、「厳罰化には反対」という人も多い。ここから「被害者対策は必要。でも、厳罰化によってさらに社会が悪くなることが心配」という世論を読みとることができるのではないだろうか。

また、法務委員会で審議を始めてから、世論の風向きも変わってきている。拙速にこんな重要なことを決めてしまって良いのだろうかという不安は多くの人が持ち始めている。審議後の世論調査の結果を待つべきではないか。

もう一つ、今まで少年法改正に反対の立場をとってきた民主党に対する世論というものもある。昨日まで、「与党案には問題がある」と、妥協可能な修正案を苦労して練り上げてきたのに、突如として賛成に転じる政党をどう思うだろうか。

「民主党のためを考えたら、絶対に賛成などすべきではない」と主張してみたが、当の執行部の人が法務部会に出てこないので、方針変更することもできない。

9時から衆議院で法務委員会が始まるため、法務委員の人たちは態度決定に苦しんでいる。与党案に反対するため、平岡議員は反対討論の準備までしていたというのに、突如として賛成の立場になってしまったため気の毒だ。

こうなった以上は各自の良心に従って行動するしかないのではないかという結論に達する。国対の指示では、「賛成できない委員は差し替え可能」とのこと。つまり、良心に従うと賛成できないという委員は、はずされて別の議員と差し替えるということ。

結局、法務委員会では、理事も含めて数名が採決前に退席し、数名が差し替えられ、賛成した委員は数名だったらしい。

さらなる問題は本会議だ。法務委員会での採決を受けて、少年法が本会議に緊急上程され、本会議での採決が行われる。なんと民主党は党議拘束をかけて賛成するという。そんなことは逆立ちしてもできないと言ったら、「退席するという手がある」と教えてもらう。なるほど。それにしても、党議拘束がこんなに乱暴にかけられるということを初めて知った。みんな簡単に従うのだろうか。

9時半から厚生委員会。医療法と健康保険法の改正をめぐって参考人を呼んでの質疑。

12時少し前に厚生委員会を中座して、12時からの青少年問題特別委員会理事懇談会。今後の委員会日程と議題を話し合う。11月9日と11月16日に、それぞれ、有害環境対策と虐待防止法施行に向けての準備状況について質問することになる。

ちなみに、委員会における各党の質問時間の決め方を初めて知った。11月9日は5時間コースの委員会ということがまず決められ、そのうち冒頭の42分間(7分間×6省庁)を使って各省庁から現状の説明を聞く。残りの4時間18分を各党で分けることになる。

まずは党の大きさによって分単位で時間が割り振られる。が、そのままだと、たとえば共産党は11分、保守党は4分という感じになる。4分では何も質問できない。そこで、野党は野党同士、与党は与党同士で質問時間を与え合うわけだが、野党で与えるべき立場になるのは民主党で、他の野党に20分ずつ質問させると、民主党もそのくらいの質問時間になってしまう。しばらくもめていたが、結局自民党から時間をもらい(不思議なことに自民党はこの点とても寛大。まあ、与党はあまり質問しなくても良いのだろうが)、民主党は73分間、他の野党は20分ずつということになる。

誰に質問させるかも理事の権限。筆頭理事の城島さんから任され、結局私と鎌田さゆりさんとで質問することになる。翌日、それぞれの持ち時間(私43分、鎌田さん30分)と順番(私が先)を決めて、一段落。いつも質問時間を当然のように与えられていたが、裏にはこんな理事の苦労があったとは、良い勉強になった。

12時40分から始まっていた代議士会に遅れて出席。私が到着する前には、少年法について「社民と共産は反対」ということだけ説明されていたらしい。私が到着してしばらくして、法務部会長の佐々木代議士が発言に立って、「法務部会で血のにじむ思いで修正案をまとめ、与党案には反対の方向で議論してきた。その現場の意見が反故にされて大変残念である。特に答弁は求めないが、ただ残念であるということだけを言っておく」と述べる。場内の雰囲気が変わった。

続いて政調会長の岡田代議士が「このような事態を招いてしまって申し訳ない」というような短い説明をする。

すると、鎌田さゆり代議士が立ち上がり、「今の政調会長の説明だけでは、なぜ党議拘束をかけてまで賛成するのかが全く理解できない。理解できるような説明を」と求めた。が、その時点ですでに本会議の本鈴が鳴り始まろうとしており、赤松国対委員長が「議会では国対の方針に従ってほしい。賛成で行動を」というようなまとめをして代議士会が終了してしまった。私のまわりに座っていた代議士たちは口々に「まずい仕切だ」などとぼやいていた。

13時から本会議。まわりの代議士たちに「私は退席する」と伝えると、「もう出なければ採決されてしまう」とせかされ、あわてて議場の後ろへ。すると、最後列のあたりの先輩代議士たちが「水島さん、まだ早いよ」と教えてくれる。「初めてなので退席の仕方がわからないんです」と訴えて、やり方を教えてもらう。結局、委員長報告が始まったあたりで場外へ。「トイレ」などと言いながら退場する民主党議員の姿が目に入る。場外では、待ってましたとばかりにマスコミが寄ってくる。「水島さんもおなかが痛くなっちゃったんですか」などと聞かれ、「別に痛くないですよ」と素直に答えていたが、「急におなかが痛くなる」というのが棄権するときの常套文句だということを後で知る。

廊下では、数人の民主党議員の姿を見つける。意外な人を見つけて見直したりする。

採決が終わったため、次の採決前に場内に復帰。党議拘束に逆らっての退席という初体験をした。戻ってみると「僕も中腰でしか立てなかった」「もっと事情がわかっていれば自分も退席したかった」などという人たちがいた。

今回の民主党のやり方は、まるで与党のようだと思った。十分な議論もないままに、有力者によって意見の流れが作られ、それが数の力で決められていく。「今は組織の結束を保つために…」とか、「参院選を意識して世論の期待に…」などと自分を騙して流れに迎合してしまっては、政治家や政党はだめになるのだと思う。少年法の件では、内部から民主党をしっかりと批判していきたい。

また、佐々木部会長をはじめ、私とは世代も性別も違う議員たちが、「良心に誓って賛成できない」などと言っていたことは感動的だった。ベテランの政治家たちが「良心に誓って」行動してくれるということに対して、子供たちのためにお礼を言いたい。

14時半から厚生委員会が再開。
終了少々前に中座して、急いで移動し、16時半から、早稲田大学の学園祭で加藤公一代議士(民主党)・原陽子代議士(社民党)・後藤田正純代議士(自民党)と共に講演。

19時24分の新幹線で宇都宮へ。
帰り着くと、ファックスが届いている。「民主党は少年法改正に反対ではなかったのか。これだから政党不信が増幅するのだ」というお叱りのメッセージ。おっしゃる通り。でも、前号の国会報告でも書いたが、政党を中心に回っている今の国会では、会派に所属しなければ質問もできないし政党助成金ももらえない。政党を「どうしようもない」と決めつけるのではなく、政党だって人の集合体なのだから、一人一人の議員の自覚を促すことによって政党を良くしていきたいと思う。そうしないと日本の政治は本当に変わらないだろう。


■11月1日(水)

6時36分の新幹線で東京へ。
8時から民主党の厚生部会。差額ベッドの問題について、ささえあい医療人権センターCOML(コムル)代表の辻本好子さんから説明を受ける。治療上の必要性から個室などを利用せざるを得ない場合(救急、術後、免疫力の低下により感染しやすい状態、など)でも差額ベッド料を請求されるケースが多い。その返還請求に取り組んできた市民グループ。

民主党の櫻井充参議院議員のサポートによって質問主意書を政府に提出して、かなり前進した答弁を得た。医療の質を上げるためには患者も黙っていてはいけない、そして、良心的な病院がつぶれないために国会でシステムを整備してほしい、というご意見には私も全く賛成。

その他、衆議院と参議院における経過報告と、議員立法である「医療に関する情報の提供の促進に関する法律案(仮称)」について検討。

9時半から厚生委員会。今日は、医療法と健康保険法が強行採決される予定(「強行」採決が予定されているのは何とも奇妙)なので、全体的に緊張ムード。

ここのところ気づいたのだが、与党席には、新聞を読んだり本を読んだり眠ったりおしゃべりしたり(昨日は参考人に怒られていた人もいた)携帯電話を鳴らしたりしている人が目につく。さらに今日はよくヤジる。自民党議員の厚生委員長もついにたまりかねて「私語は小さく」と注意していた。子供たちの学級崩壊を注意できるのだろうか。傍聴者も来ているのだからもっと気をつけてほしい。私も時々(特に与党議員の質問の時には)眠気に勝てなくなることもあるが。

12時半から1時間の休憩をはさんで、13時半から再び厚生委員会。この間にイランのハタミ大統領の国会演説がある。

14時半からは党首討論のため、再び厚生委員会が中断。私はこの時間を利用して、民放連盟の方と、有害情報についての打ち合わせ。法制化に反対している放送業界団体である。よく話し合ってみると、私と考え方はほとんど共有できるので一安心。

その後、カレンダーのデザインなどについてデザイナーの方と打ち合わせ。

15時50分から再開した厚生委員会に出席。
17時頃から、傍聴者が、議員・外来者とも増えてくる。強行採決を前に、野党各党からの応援と、連合などが駆けつけているのだ。民主党の厚生部会長(厚生委員会野党筆頭理事)の金田誠一代議士が「委員長は衛視は入れないと言っているので、手や足は使わないで抗議してください」と説明に回ってくる。「強行採決」がここまで事前に打ち合わせられているという事実に改めて驚く。

委員の机を飛び越えて委員長席に駆け寄る人がいるかもしれないので、机の上を片づけておく。

18時10分過ぎ、21クラブの議員の質問が終わるや否や、動議が出される。正確に言うと、動議が出されそうになるや否や野党議員が委員長席に殺到したため、動議の声は結局聞こえなかった。私も委員長席に駆け寄り、「審議を続けてください」などと訴える。マイクを奪われた委員長の声はよく聞こえなかったが、結局与党議員が起立して何やら可決されてしまった。例によって何を採決して何が決まったのかは全く聞こえない。

厚生委員会だけは他の委員会と違ってある程度かみ合う議論ができると思っていたのだが、残念だ。
これで、抜本改革なき負担増が実現してしまった。

終了後、強行採決に反対して議員面会所に集まっていた連合の方たちのところに行って挨拶。

18時20分頃に事務所に戻り、メディア総合研究所の方と田島泰彦教授に会う。先ほどと同じく、有害情報に関する話し合い。こちらも法制化には反対の方たち。やはり考え方に大差はないことがわかった。

19時半頃議員会館を出て、「いっきの会」(1年生代議士の会)とマスコミとの懇親会に遅刻して参加。

東京泊。



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