国会報告 その168(2003.12.01発行)

水島広子の活動の様子をお伝えするために、毎週1回(月曜日)発行しております




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国会報告(11/24〜11/30)


★お知らせ★
メールマガジンとホームページ上の国会報告の号数を合わせる都合上、
「その166」と「その167」を欠番にいたします。ご了承ください。



■特別国会が閉会しました



11月27日、特別国会が閉会しました。
会期は9日間、実質的には、手続きのための本会議が2日間と、衆参それ ぞれで予算委員会が1日ずつ開かれただけの、きわめて短い国会でした。
特に問題だったのは、新内閣の所信表明が行われなかったこと。
解散・総選挙を経て、新しい内閣ができた後に通常国会まで所信表明をし ないというのは、戦後初めてのことだそうです。つまり、今ほど有権者が 愚弄されていた時代はなかったということでしょう。

もちろん、私たちは野党として、特別国会における所信表明を求めてきま したし、今後も臨時国会の召集を求めていきます。
ぜひ皆さまも、有権者の名誉にかけても、この政府の姿勢の異常さを実感 していただきたいと思います。

予算委員会の短いやりとりの中、私たちは現在の政治が抱える問題点をで きる限りあぶりだそうとしました。その結果、やはり今回の総選挙で政権 交代を実現できなかったことは日本にとって本当に不幸なことだったとい うことを再認識しました。少しでも早い解散・総選挙、政権交代に向けて、 国会の内外でがんばってまいりたいと思っています。



■児童虐待防止法の見直しに向けて



今国会も、青少年問題特別委員会の野党筆頭理事としての仕事を続けてい ます。
民主党の議席増に伴い、今まで2人だった民主党の理事枠が3名となり、 私も3名の理事を束ねる筆頭理事として、責任が重くなりました。

ちなみに、今国会は、理事の配分が変わっただけでなく、各委員会の様相 がずいぶん変わりました。
たとえば、法務委員会には、共産党と社民党の委員が一人もいなくなって しまいました。
厚生労働委員会には、かろうじてそれぞれの党の委員が残っています。
青少年問題特別委員会には、社民党の委員がいません。理事会メンバーは、 前国会までは、自民4名、民主2名、公明1名、自由1名(合併後はなし)、 共産1名、そしてオブザーバーとして社民1名が参加していました。とこ ろが、今回からは、自民4名、民主3名、公明1名のほか、共産党が1名 オブザーバーとして参加しているという形です。
野党の理事は民主党だけ、ということになり、民主党の責任は思いと感じ ています。

さて、青少年問題特別委員会の目下の最大の任務は児童虐待防止法改正で す。
通常国会から作業を続けてきましたが、秋の解散をにらみ、法改正の成果 を最大にできるようにタイミングを狙ってきました。

実は、私は今回の当選直後、テレビのインタビューなどで、「2期目は何 に取り組みたいですか?」という質問に違和感を覚えてきました。そして、 少々意地悪かなと思いながらも、「一期目の続きです」と答えました。と いうのも、私は今回、解散・総選挙を経て、衆議院は、参議院や首長など とは本質的に違うということを痛感しました。
任期が4年なり6年と決まっていれば、「一期目はこれ、二期目はこれ」 というふうに活動目標を立てられます。でも、どこで解散があるかわから ない衆議院では、自分が実現したい政策目標に対して解散のタイミングを うまく図るという独特の戦略が必要になります。

たとえば、今回の場合、児童虐待防止法の改正というのは私を含めて子ど ものことに真剣にかかわる人たちにとっては至上命題です。法律が施行さ れてから3年間、現場の方たちがこの瞬間を待ちに待ってきました。だか らこそ、手抜きの改正では許されないのです。
選挙のゴタゴタに巻き込まれて、一部の人が「私はこれを改正しました」 と自分の選挙にプラスに生かすために、十分な時間もとれないままに適当 な改正をするくらいなら、選挙が終わるのをじっと待って本質的な改正を すべきだ、ということを私は通常国会の間、ずっと訴えてきました。
自分自身が議席にとどまるかどうかわかりませんでしたのでリスクは大き かったのですが、通常国会は敢えて改正に向けての論点整理に費やしてき ました。

どうにかその目論見が成功して(?)、今度の通常国会にじっくりと法改 正するということができそうです。でも、ここまでこの運動を引っ張って きた中核メンバーの方(たとえば、社民党の保坂展人さん)を今回の選挙 で失いましたので、決してすべてがうまくいったとはいえません。
委員会や理事会の体制も大きく変わりましたので、きちんと舵取りをして、 できるだけ多くの成果を勝ち取らなければならないと思っています。
11月26日には、青少年問題特別委員会の理事会メンバーが集まり、厚 生労働省、衆議院法制局の方とともに、前国会までの作業の確認をしまし た。
改正すべきポイントを整理すると同時に、来年厚生労働省が行おうとして いる児童福祉法改正の様子も見なければなりません。
この日の確認では、私たちが改正したいポイントの多くが政府・与党サイ ドでも検討されつつあるということですが、強く求められている「親権の 多様で柔軟な制限のあり方」については、法務省が拒絶姿勢を示している とのこと。かなり本質的な部分ですので、重要な検討課題として提起して おきました。
国会は閉会してしまいますが、何とか年内に党内での話し合いの場を持ち、 通常国会が始まったら与党も含めての話し合いを再開しようと思います。



■寺島実郎氏をお招きして勉強会



11月27日の朝8時から、寺島実郎氏(三井物産戦略研究所所長)のお 話をうかがう勉強会を、私も呼びかけ人の一人となって設定しました。
現在の緊迫した国際情勢、そして、日本の政治的混乱の中、寺島氏の発言 は一段と光り輝いていると感じます。
私たちは以前にも寺島氏のお話をうかがう機会がありましたが、特に今回 初当選された方たちにも早い機会に寺島氏の話を聞く機会を持ってほしい と思い、特別国会の最終日の朝に寺島氏をお招きしました。
寺島氏はこの日もいろいろと含蓄のあるお話をしてくださいました。以下 に要点を記します。




日本は近隣に本当の意味での信頼関係を構築していない珍しい国であり、 常にアメリカの傘を感じていないと不安で仕方がない国である。
でも、日米関係が永遠のものだと思うのは日本側の錯覚であり、米国のア ジア政策は根本的に変わってきている。
戦後、中国が二つに割れたために 日本は中国という存在を忘れがちだったが、現在、アメリカのアジア政策 において中国は重要な位置を占めつつある。
つまり、日本と同様中国も大 切というスタンスになってきている。

また、ここのところの日本の米国盲従の裏には、「北朝鮮問題があるから」 ということが常に指摘されている。
でも、拉致問題にしても、日本がとりうる唯一の道は、今年の3月11日 にできた、国際人道犯罪を扱うICC(国際刑事裁判所)の批准をして、 拉致問題をICCに訴えて国際問題にするべきである。

イラク問題に関しては赤十字・警察などを活用して、徹底した人道支援策 を講じるべきである。日本はこれから国際社会で何かが起こったときはこ うするという全く新しい制度を作ることによって、日本は決して軍隊を外 国に送らない、専守防衛に徹して憲法を守るという方が国際社会から信頼 される。
現に国際社会では、今の日本は憲法を変えることもなくそのときの空気で 外国に軍隊を送れる恐ろしい国だと見ている。
国連の決議が出たことを踏まえて、ここで再び国連中心主義に大きく軌道 修正することが望ましい。




寺島氏の考えには私も大賛成です。
ICCについては、昨年の国会報告で触れたことがありましたが、日本は 当初、ICCの設立に向けて積極的に旗振り役を果たしていました。
でも、 アメリカがICCを降りてしまい、否定的な態度をとるにつれ、日本も批 准すらできず、「またいつものパターン」と国際社会での嘲笑を招いてい るのです。
それにしても、京都議定書と言い、ICCと言い、最近のアメリカには深 刻な一国主義を感じます。そしてそれに追従しているのが日本です。
予想通り、イラク問題は日本にとって刻々と深刻なテーマになってきてい ます。国連も確かに問題の多い組織ではありますが、アメリカに盲従して ブッシュ政権と心中する、あるいは、ブッシュ政権だけがさっさと引き上 げてしまって日本が不毛な後始末を押し付けられる、という展開よりはは るかにましな選択であるということを多くの方が理解してくださると良い のですが。




■足利銀行問題で知事へ要請と記者会見



11月29日の17時、民主党栃木県連の国会議員団と県議団で以下の内 容の要望を栃木県知事に行いました。



金融危機対策に関する要望書 (要旨)

今回の足銀の問題で、県内経済、特に中小企業をはじめ、県内のあらゆる 分野への影響は計りがたく、本件経済にとって未曾有の危機となることが 懸念される。そこで、本県経済への影響を最小限にくい止め、県民生活を 守る立場から、県内金融機関、市町村、商工団体等と連携し、次のように 対応するとともに、今後の推移を見守り、状況の変化にも機敏、かつ柔軟 に対応し、必要な対策を講じられるよう要望する。

1.国に対し、県民及び県内企業の金融取引及び資金調達に混乱や支障が 生じないよう、万全の対策を取ることを強く要請すること。
2.県民への適時・適切な情報提供を行うとともに、県内中小企業者等に 対する相談窓口を設置するなどして、県民の不安を解消し、混乱の回避に 努めること。
3.県制度融資の枠を十分に確保するなど、県内中小企業の資金調達への 影響が出ないよう対策を講じること。
4.同銀行が県や県内49市町村の指定金融機関となっていることから、 公金の適切な管理に留意するとともに、市町村に対しても適切な情報提供 等に努めること。




この後の記者会見では、次のような質問が出ました。
「今回、竹中大臣の実験台として、足銀がスケープゴートにされたという 意見がある。自民党の県議団もそのようなことを言っている。栃木県とい う立場で、党派を超えてこの問題を国に提起できないか?」
気持ちは十分理解できますが、まさに、自民党のトリックに巻き込まれて いると申し上げました。
というのも、このような政策をとっているのは小泉政権そのものです。先 日の総選挙のおけるマスコミのアンケートなどで県内の自民党公認候補の 方たちは「小泉改革は評価する」と明言していました。今回の足銀問題は、 まさに小泉政権の金融政策です。こういう問題が起こると、「小泉改革は 問題だ」と地元では言い、国会では自民党の一員として行動する。このよ うな矛盾を、ぜひこの機会に県民の皆さまに気づいていただきたいと思い ます。

地域金融の問題は、私も総選挙でかなり力を入れて訴えていました。地域 における金融は、地域経済にとっての血液です。これがスムーズに循環し なければ、地域経済は壊死してしまいます。
その地域の経済にどのような 貢献をしているか、という尺度が地域金融においては必要なはずです。
こ れを明確にしたのが、民主党が提出している「金融アセスメント法案」で す。

足銀問題は、今の日本の政治状況を見事に表しています。
足銀に対しては、過去に、1999年に400億円、2000年に300 億円、計700億円の増資が行われており、10億円以上の公金も投入さ れています。これらの経緯の中で、県民の多くは十分な情報提供を受けた とはいえないと感じています。その結果、突如として国のさじ加減によっ て破綻を宣告される。まるで、「国」が「県」をいじめて、その中で県民 が翻弄されている、という図です。
でも、この根本にあるのは、政治を有権者がコントロールできていない、 地方分権が実現していない、というまさにその構造です。
「選挙を終えた直後の立場として言わせていただければ、政権交代さえし ていればこんなことにはならなかった、ということを申し上げたい」と最 後につけ加えました。

その後開かれた金融危機対応会議で、足利銀行に対して預金保険法102 条3号を適用し、一時国有化となる特別危機管理銀行にすることが決まり ました。
りそな銀行が守られたのに対して足利銀行が同様の扱いにならな かったことを考えても、地方の問題に親身になれない小泉政権の本質がよ くわかります。

足利銀行問題については、11月29日21時までの情報に基づいて今回 の報告とさせていただきます。次号にも続けて報告します。








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