国会報告 その138(2003.3.31発行)

水島広子の活動の様子をお伝えするために、毎週1回(月曜日)発行しております




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国会報告(03/23〜03/29)



(国会報告3月23日〜29日総括版)「イラク戦争」特集




 アメリカなどによるイラク戦争が、いよいよ泥沼にはまってきました。
予想通り、誤爆などによる一般市民の犠牲も出てきました。さらに見過ご せないのは、米軍が対イラク戦争での劣化ウラン弾使用を認めたことです。

 劣化ウラン兵器は、使われたときだけでなく戦後も半永久的に地域を汚 染し、特に子どもたちに重大な影響を与えます。ウランだけでなくプルト ニウムまで含む劣化ウラン兵器からのアルファー、ベータ、ガンマ線の影 響は、半永久的に残り続けます。

 子どもたちは大人に比べて放射線感受性が強いこと、また、劣化ウラン 兵器から生じる塵は重いため地上に近いほど高濃度となるので慎重の低い 子どもほど影響があること、などから、同じ環境にいても成人よりも子ど もたちが100倍も劣化ウラン兵器の打撃を受けることになると言われて います。

 また、劣化ウランの粉塵は風にのって広がりますので、問題はイラクだ けにとどまりません。
 湾岸戦争で使われた劣化ウランによる健康被害は、イラクの子どもたち の間に深刻に広がっています(写真集も出版されています)。また、アメ リカ帰還兵にも深刻な被害を及ぼしています。
 そもそも、イラクの武装解除が目的だったのではないか? 百歩譲って フセイン政権の転覆が目的だとしても、劣化ウランを使用することには何 の正当性もないと言えます。ブッシュ政権は、何の権利があってイラクの 子どもたちをこれ以上苦しめるのでしょうか。

 さらに問題なのは、日本政府の対応です。
 3月24日には衆参両院の予算委員会で、イラク問題についての集中審 議が行われましたが、政府の答弁はひどいものでした。

 アメリカなどのイラク攻撃を国連憲章違反としたアナン国連事務総長の 発言に対して、川口外務大臣は「アナン事務総長に安保理の決議を有権的 に解釈をする権限がなぜあるのか」などとすら発言しています。これでは 国連軽視と言われても仕方がありません。(実際には、国連憲章の第九十 九条に「事務総長は、国際の平和及び安全の維持を脅威すると認める事項 について、安全保障理事会の注意を促すことができる」ということが書い てあり、川口外務大臣の認識が誤っていることが示されています)
 また、小泉首相は、今回のイラク攻撃の根拠を安保理決議1441にお くとし、「さらなる重大な違反が見つかった」という言い訳をしようとし ていましたが、結局、国連安保理がさらなる重大な違反を見つけたわけで はなく、日本政府が勝手にそう判断したにすぎない、ということも答弁の 中で明らかになりました。

 「北朝鮮の脅威があるので、米国を支持しなければならない」「日本を 守ると言っている国はアメリカだけだ」というのも、政府与党が言い続け ていることです。でも、条約はあくまでも条約です。日本は日米安全保障 条約に基づいて、国内に米軍基地を抱え、毎年思いやり予算を歳出してい ます。在日米軍基地は、米軍の戦略上大変重要な位置にあることは周知の 事実です。実は私も子どもの頃、日米安保条約を知って、「なぜアメリカ はそんなに親切なのだろう?」と疑問に思っていたものです。日本が代わ りに何を提供しているのか、条約とはどういうものなのか、ということを、 もっと情報公開すべきだと思います。「守ってもらっている」という一面 のみを強調しすぎることは、この条約の本質を見失わせることにもなりか ねないですし、日米関係を歪めることにもなりかねません。



■3月25日(火)




8時から総合雇用対策特別政策会議・厚生労働部門合同会議。

駐留軍関係離職者等臨時措置法及び国際協定の締結等に伴う漁業離職者に 関する臨時措置法の一部改正案について厚生労働省よりヒアリング。
3月18日発表労働政策審議会「今後のパートタイム労働対策の方向につ いて」、厚生労働省および連合よりヒアリング。

9時半から法務委員会。前回、法務省が求められた資料を提出しなかった、 ということもあり、審議がストップしていたものが再開。前回に引き続き、 名古屋刑務所問題の集中審議。
少年院の水深1.2mのプールで逆飛び込みをさせて首の骨を折り、重度 障害を負わせた件で、家族が警察に通報したのに少年院側が現場を見せる のを拒否した件や、名古屋刑務所のカルテの問題などについて。

12時から両院議員懇談会。統一補選、知事選に出馬される候補者の方た ち(知事選については代理の方たち)の決意表明。
このほか、企業団体献金について、自由党との話し合いについて、現状の 報告が幹事長よりあった。
12時50分からは代議士会。

13時から本会議。
坂井隆憲議員の辞職勧告決議案について。
議案上程の動議に対して、「ご異議ございませんか」と議長が型どおりの 確認をしたところ、自民党の河野太郎氏が「異議あり!」と叫んだ。その まま、何事もなかったように議事は進み、河野議員は採決前に退席した。
これを見ての感想の一つは、「ご異議ございませんか」という確認に対し て「異議あり!」と言っても黙殺されるということ。これは、事前の議院 運営委員会で確認済みのことで、全会一致で可決されるもののみ「ご異議 ございませんか」になるからであって、反対者が見込まれる場合には起立 採決となる。本会議はやはり単なるセレモニーであることが改めて確認さ れた。
今回、議場に「パフォーマンスはやめろ」「そんなの党内で話し合え」な どという冷ややかなヤジが飛び交ったのは、このためだ。河野議員だって 中堅なのだから、本会議で叫んだところで意味はないことはわかっていた だろうからだ。

河野議員に同調する声は、実は民主党内にもある。衆議院で議員辞職勧告 決議案が採決されたのは、昨年の鈴木宗男氏について2度目。それ以前に は、参議院でオレンジ共済の友部被告に対して議員辞職勧告決議案が可決 されたのが唯一の例だった。
汚職で逮捕されるような議員は後を絶たないが、実際に議員辞職勧告とい う前例は驚くほど少ない。議員の身分の重さが憲法で保障されているのは 政治の自由を確保するためだ。つまり、与党が「議員辞職勧告決議案」を 乱発して野党議員に辞職勧告をするようになってしまったら、民主主義が 脅かされる。

あくまでも「勧告」であって拘束力はないわけだが、「憲法で保障されて いる議員の身分を安易に辞職勧告するなんて・・・」という抵抗論も民主 党内にもある。悲しいことで、憲法の想定している「国会議員」と、現実 の「国会議員」とのレベルがそれほど乖離しているということなのだろう。
憲法の規定は政治の自由を保障するためにあるもので、個々の議員の犯罪 の自由を保障するためにあるものではないはずだからだ。
辞職勧告決議が可決された鈴木宗男氏も、未だに議席にとどまっている。
坂井氏も議員をやめるつもりはないと聞いている。これでは国会決議の威 信に関わるので、そもそも決議をすべきではないという意見もある。
自分で議員の座にふさわしくないと思えば自分で辞職をする、という当た り前のことを各々の議員ができれば、こんな捻れた議論は必要ないはずな のだが。質に問題の多い議員を選び出している日本の政治の構造的問題を 改めて痛感する。
ちなみに、河野議員はなぜかこの後、民主党の野田国対委員長のところに 怒鳴り込みに来たそうだ。後で「自民党の中川国対委員長のところに抗議 すべきだった」と陳謝してこられたそうだが、なぜ間違えたのだろうか。
こういう言動は、一般には、懲罰委員会ものだそうだ。

この後、法案採決が一つあり、その後、雇用保険法の一部改正案について 厚生労働大臣から趣旨説明、雇用保険の財政の安定化及び求職者等に対す る能力開発支援のための緊急措置に関する法律案について民主党の趣旨説 明。その後、民主・共産・社民の各党より質疑。民主党からは、前回の補 選で当選された斎藤淳さんが質疑に立ち、民主党の法案提出者としては加 藤公一議員が答弁した。ちなみに、斎藤淳さんの対抗馬は加藤紘一氏。漢 字の違う同姓同名だが、世襲議員の加藤紘一氏と元サラリーマンで市民派 の加藤公一氏は全く異なるタイプの政治家だ。

本会議散会後、法務委員会が再開。
民主党の河村たかし議員が質問に立ち、また新たな問題を暴き出し、「ホ テルニュージャパンの火事でも社長は逮捕された。先日の歌舞伎町ビル火 災でも社長は逮捕された。自分が火をつけたわけでなくても、注意監督義 務があるからだ。人の上に立つというのは、それほど大変なものだ。これ だけ刑務所で人が死んでいるのに、大臣報酬3ヶ月分返上というだけでは、 とても足りない」と、辞職を迫っていた。
そのうちに、法務省側の問題が露見し、また審議が止まってしまった。

15時から総括副大臣会議。

16時に出版社の方が来室。一般向けに書いている対人関係療法の本がほ とんど書き上がったため、出版に向けての打ち合わせ。

半蔵門に移動して、18時から青少年問題特別委員会の委員長招待懇親会。
この「委員長招待」というのは、各委員会で開かれるが、各委員会の委員 や関係省庁の幹部などを招いて、立食形式で行われるパーティーである。
持ち帰り用の「おみやげ」(茶菓子など)は、委員長のポケットマネーで、 委員長の地元の特産物などが配られるが、パーティーそのものの財源は税 金である。
このことについて、民主党では以前から議論がある。つまり、税金を使っ て形式的なパーティーを開き、与野党がそろってにこやかにメディアに収 まる、というのが、税金の無駄をなくす民主党としてふさわしいのかどう か、という観点だ。話し合いは日常の理事懇談会などでも十分できるのだ し、もしもパーティーとするのであれば会費制にするなど、改善はいくら でもできるのではないか、ということだ。実は、今までも、国対役員・筆 頭理事合同会議の場で何度か問題提起されてきたが、民主党から出してい る委員長に意見を聞いたところ賛否両論だったということで、党として何 かを決めることはできなかったそうだ。
私も基本的に委員長招待を問題視する考え方には賛成であるため、野党筆 頭理事として青少年問題特別委員会の委員長から打診をいただいたときに、 この問題意識を伝えた。委員長からは、「自分もそう思って調べたけれど、 委員長招待を開かない特別委員会はない。昨年の半分の大きさの会場にし て質素に行うので、協力してほしい」という回答だった。「委員長招待」 なので、委員長の意向を尊重し、参加させていただいた。
今まで、常任委員会などでも委員長招待の懇親会には参加してきたが、確 かに形式的なものであるし、ちょっと参加して、議員や官僚で用事のある 人と少々話をして、すぐに失礼する、というやり方をとってきた。今回は さすがに筆頭理事になったため、乾杯の発声までさせていただき、中締め まで真面目に参加した。おかげで、今後の法案審議に向けて、多少の準備 作業をすることができた。



■3月26日(水)




8時から厚生労働部門会議。
食品衛生法等改正案などについて、日本生活協同組合連合会と日本消費者 連盟の方たちよりヒアリング。

9時から内閣府部門/市民・子ども部門合同会議。
各種事務連絡。
国内テロ対策の現状について、内閣府、警察庁、法務省、国土交通省、経 済産業省、厚生労働省、公安調査庁よりヒアリング。

15時20分から、厚生労働委員会。
駐留軍関係離職者等臨時措置法及び国際協定の締結等に伴う漁業離職者に 関する臨時措置法の一部改正案について、厚生労働大臣による提案理由説 明。

18時から医療問題プロジェクトチーム。
医療制度改革について、日本医師会からヒアリング。
保険診療の中で予防医学をどう位置づけるべきかという質問をした。



■3月27日(木)




今日は知事選の告示日。
東京都知事選には、樋口恵子さんが出馬を決意してくださった。
私自身も大変尊敬している、すばらしい方である。私が推薦をいただいて いるWIN WINの立ち上げ当初からのメンバーでもあり、高齢者問題や女性 問題を中心に、社会を良くするために能力とエネルギーを発揮されてこら れた方である。
東京は、首都であるだけでなく、大都市としても特殊であり、さらに、私 にとっては生まれ育った地でもある。樋口恵子さんが東京から日本を変え るパワーになってくださるよう、私自身も全力で応援していきたい。
(樋口恵子さんと一緒に東京を変える会のホームページは、
http://www.challenge-tokyo.jp/index.html)

9時から憲法調査会。
4つの小委員会からの報告に基づいて、自由討議が進められた。
最高法規としての憲法のあり方に関する調査小委員会(象徴天皇制(天皇 の権限・国事行為等を中心として))、統治機構のあり方に関する調査小 委員会(地方自治(小規模自治体の実態について))、基本的人権の保障 に関する調査小委員会(労働基本権(公務員制度改革及び男女共同参画の 視点から))、安全保障及び国際協力等に関する調査小委員会(非常事態 と憲法(自然災害等への対処を中心として))、の順。残りの時間は、イ ラク問題・北朝鮮問題の自由討議にあてられた。私は、働く権利と男女共 同参画について発言した。詳細は後日議事録をご覧ください。

赤坂に移動して、国のかたち研究会。

国会に戻り、12時40分から代議士会。
13時から本会議。
採決3法案のみ。

午後は来客や打ち合わせなど。
児童虐待防止法の見直しなどに向けて取り組まなければならないことはた くさんあるが、統一自治体選挙の期間を差し引くと、通常国会の会期の残 りも決して長くはない。せっせと下準備をしている。



■3月28日(金)




8時から税制調査会・年金改革プロジェクトチーム合同会議。
基礎年金について厚生労働省よりヒアリング。

10時から、新聞の取材。総選挙の話になって、「まだ試験前の最後の追 い込みみたいな気持ちにはなりませんか?」と聞かれて、違和感を覚えた。
何を追い込むのだろうか、と考えて、改めて選挙の歪んだ現状を認識した と言うべきか。
確かに、昨年あたりから国会はだんだんとガラガラになってきた。任期も 半分を過ぎて、「選挙」というものが現実的に見えてきたからだ。そして、 地元で選挙準備を一生懸命やっている人ほど、国会では仕事をしていない という現象が起こっている。「あの人は、どんな小さな集まりにも顔を出 してくれる」というような評判の議員は、国会にはほとんど顔を出してく れない。これは誰にとっても一日が24時間しかない以上、当然のことだ ろう。
「自分の役割は、再選されること」と割り切っている人も少なくない。政 権交代のためには議席を確保しなければならないから、それも一つの考え 方だとは思うが、そんなことではいつまでたっても日本の政治のレベルが 変わらないようにも思う。

11時半から、市民・子ども部門(子ども政策会議)、内閣府部門、法務 部門合同会議。
インターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為の規制等に関 する法案(いわゆる「出会い系サイト」規制法案)について、先日の閣議 決定を受けて、警察庁よりヒアリング。

13時から連合の国会前集会。激励の挨拶とパート法案の説明。

14時36分の新幹線で宇都宮へ。

夜は、福田浩二市議会議員の集会やミニ集会などに出席。



■3月29日(土)




午前中は式典に参加。

午後はミニ集会と政治スクール。

夜は、ミニ集会。






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