国会報告3月16日〜22日総括版「イラク攻撃開始」特集 |
■米国等のイラク武力攻撃開始 3月20日、米国等によるイラク攻撃が始まりました。 21世紀は戦争のない世紀にしなければならない、という思いで努力して まいりましたが、無念と無力感でいっぱいです。イラクで暮らす普通の人 たちは、独裁政権の圧力に苦しんできただけでなく、ついには武力攻撃の 恐怖にもさらされることになりました。罪のない子どもたちの命や、平和 や公正さを希求する子どもたちの思いが、また無惨にも奪われていくこと を思うと、日本での日常を享受する気持ちにもなれません。 唯一の被爆国である日本は、戦後の国連中心主義の確立に最も力を尽くす べき存在です。でも、今回、何ら説明責任を果たさず、いい加減なことを 言ったり嘘をついたりしながら米国に追従するしかない日本政府の姿勢に も、大きな憤りを感じています。政府の行動は、結果的に、日本の安全保 障を脅かすことにもなると私は思います。 3月22日現在、戦争そのものは短期で終わるという見通しもありますが、 また新たに発生するであろう難民の苦しみは続きます。さらに、今回の一 方的な戦争を機に、世界にますます憎しみと諦めが満ちあふれ、日本を含 む各地でテロや犯罪がわき起こるのではないか、という心配も濃厚です。 ■3月18日(火) 48時間以内にフセイン大統領とその息子たちが国外に亡命しない限り武 力攻撃をするとしたブッシュ大統領の演説を受けて、民主党の菅直人代表 は以下のような内容で会見を行いました。 ○ブッシュ大統領の決定は国連憲章に反しており、民主党は断じて賛成で きない。 ○小泉総理の説明は納得できるものではなく、本会議や党首会談の開催を 要求する。 ○今回の事態で世界経済にとって重大なマイナス影響が出る心配もある。 ○総理が本会議の時間に記者のインタビューを受ける、その神経が理解で きない。 ○明日の党首討論では、米国支持の正当性、武力行使の正当性などを問い 質したい。 同日、民主党は、イラク問題の平和的解決を求める国会決議案を国会に提 出しました(審議されないまま、米国等による攻撃が始まってしまったの で、この国会決議案は日の目を見ることができませんでした)。 ■3月19日(水) 菅直人代表になってから2度目の党首討論が行われました。 菅さんは辛抱強く鋭い質問を続けていましたが、ついに最後まで、小泉首 相が質問にまともに答えることはなく、なぜ今アメリカのイラク攻撃を支 持するのかという理由はついにわかりませんでした。 さらに、問題だと思ったのは、昨日の記者会見で初めて米国支持を表明し た小泉首相(同時間帯に本会議が開かれていたのに、国会においては何も 説明せず、記者会見だけを開いた)なのに、「今までもずっと説明してき た」などと嘘をついたことです。 また、国連決議1441が武力行使を容認したものであるかどうかという 質問にも、決して答えようとせず、「イラクがこれだけ悪いことをしたん だから」という論調を一方的にわめき立てていました。イラクが悪いこと をすれば国連決議の解釈などどうでも良い、という態度は、法治国家の首 相として失格です。 ■3月20日(木) イラク情勢を受けて、9時半から憲法調査会が急きょ開かれました。 イラク問題・北朝鮮問題をめぐって、日本国憲法および国連憲章・日米安 全保障条約の視点から、というテーマです。 民主党からは基調発言を前原誠司さんが行い、国連憲章は自衛権の行使と 安保理決議に基づく場合以外の武力行使を認めていないこと、国連憲章に 違反することは、憲法98条(国際法規の遵守)に反すること、そして、 99条(閣僚の憲法尊重義務)に反すること、従って、閣僚の責任を問い たいという内容が語られました。 武力攻撃に抗議し、平和的解決の道に立ち戻るよう求める民主党声明 (3月20日) 本日、米国等は国連安保理決議がないままでイラクに対する武力攻撃を開 始した。これは明らかに国連憲章に反する行為であり、断乎反対し抗議す る。 民主党は、一貫して国連を中心とした平和的解決をめざし、査察の強化・ 継続によるイラクの大量破壊兵器の完全廃棄を主張してきた。この事態に 対して、国連安保理が、武力攻撃の中止と一般市民の戦争犠牲を回避する ための緊急措置をとるよう強く要請する。また、米国等の武力攻撃参加国 に対して、武力攻撃を中止し、国連を中心とした国際協調の枠組みに立ち 返るよう求める。 米国等の安保理決議なき武力行使について、いち早く支持表明をした小泉 政権と自民党・公明党・保守新党の連立3党に、民主党は強く抗議し、その 撤回を要求する。日本政府は、あくまで国連を中心に、国際社会が一致協 力して平和的解決をめざす姿勢を貫くべきである。同時に、国民に対して、 状況、対応方針などを適切かつ明確に説明するよう求める。 民主党は、この悲惨な戦争を一刻も早く終わらせ、世界におけるテロと大 量破壊兵器の脅威が、国際社会の一致した平和的な努力によって解消され ることをめざす。国民のみなさんとともに、今回の安保理決議のない武力 行使に反対する声を大きなうねりとし、一日も早く解決に至るようあらゆる努力を尽くしていく。 3月20日の15時半からの本会議の冒頭、小泉首相から、イラクに対す る武力行使後の事態への対応についての報告がありました。 驚くべきことに、イラク情勢が緊迫してから、これが初めての「国会審議」 でした。 与党内会談はしていたようですが、国会には一度も情報公開をしないでき ました。何のために民意の付託を受けて国会に出ているのか、これでは全 くわかりません。 同じく米国と行動を共にしているイギリスでは、国会でブレア首相が言葉 を尽くして説明をし、国会議員の採決によって武力行使支持が決定されて おり、日本とは民主主義のレベルに雲泥の差があります。 小泉首相の報告は、昨日の党首討論と同レベルの、内容のないものでした。 イラクを「国連の権威の侮辱」をした、と批判していますが、今、アメリ カと日本政府がやっていることこそ国連の権威の侮辱であるということが なぜわからないのでしょうか。 議場では、「大量破壊兵器は、大量かつ無差別に市民を殺害し、傷つける 恐ろしい兵器です」と述べる小泉首相に、「今、アメリカがイラクで使っ ているのも大量破壊兵器じゃないか」という怒号が飛び、また「イラクは 違法で残酷な化学兵器を使用したことがあります」と述べると、「アメリ カの枯れ葉剤や劣化ウランは何だ」という怒号が飛びました。 小泉首相の態度を見ていると、まだ態度を保留していたときの方が行動に 真実味があったように思います。「査察は無効であることが断定された」 と言ってはばかりませんが、誰が断定したのか、という質問には答えられ ません。査察の有効性を判断するのはあくまでも国連安保理であり、その 議論が割れているということは、「断定」などされていない良い証拠です。 イラク対応に対する野党の質疑に答弁を用意するのに6時間かかる、とい うことで、次の本会議は21時半に再開されました。 民主党からは、岡田克也幹事長が質問に立ちました。 以下、岡田幹事長の質問要旨です。 ●小泉首相は、国際協調と日米同盟の両立を目指す、と言い続けてきたが、 結局国際協調を諦め日米同盟を選択した。これを外交の失敗としてちゃん と認識しているか。 ●党首会談においても、新たな国連決議なき武力行使を認めるかという質 問に対して、「そのときに考える」「その場の雰囲気で」などと述べてい たことに象徴されるように、今まで全く説明責任を果たしてこなかったこ とを謝罪すべきだと思わないか。 ●2月3日の本会議で、「1441号の決議を守らなかった場合に自動的 に武力行使を容認しているものではない」と首 相が答弁しておきながら、 なぜ考え方が変わったのか、説明を求める。安保理の理事国の多くやアナ ン国連事務総長は、武力行使には新たな安保理決議が必要だとしている。 その必要性を決めるのは、国連安保理であって、小泉総理が勝手に決めて 良いことではないはず。 ●なぜ数ヶ月間の査察の継続が認められなかったのか。 ●国連安保理の手続きを無視し、国連の権威と機能を弱めることこそが国 益に反するのではないか。 ●北朝鮮との関係についても、中国やロシアとの協力が欠かせないし、国 連安保理の取り組みも重要である。米国ブッシュ政権と中国・ロシア・安 保理との間に亀裂が入った状況でいかにして北朝鮮問題を解決するのか。 ●昨年9月に発表されたブッシュドクトリンでは、従来の自衛権の考え方 を大きく変え、単独行動、先制攻撃を認めている。先日のブッシュ演説で も、「敵が先に攻撃した後に反撃するのは自己防衛ではない自殺行為だ」 などと強調している。このように従来の自衛権では説明できない先制攻撃 論を小泉首相は認めるのか。 ●このような先制攻撃を認めることは、自衛権の行使と国連安保理の決議 がある場合を除いて武力行使は認めないとする国連憲章の考えを大きく変 え、今までの平和維持のための国際的な仕組みの根本的な見直しにつなが る。唯一の超大国米国が国連を無視し、単独行動、先制攻撃を行うとすれ ば、国連の権威は失われ、世界は極めて不安定になる。国際社会において 「正義」は必ずしも一つではない。だからこそ、世界は国連という協議の 場を必要としてきたのではないか。 ●小泉首相は、同盟国の一員として、ブッシュドクトリンについてブッシ ュ大統領と意見交換をしたことがあるのか。 このほか、土井たか子社民党党首からは、「日米安保条約は、国連主義を うたっている。今回のアメリカの行動は、日米安保条約にも反するもので はないか」という質問なども出されました。 いずれに対しても、小泉首相は内容のある答弁を述べることができず、 「イラクはこれだけ悪いことをしてきた」「国際社会はその危険性を一致 して認識している(それなら、なぜ新たな決議案が採択されなかったの か?)」と一方的に語り続けるだけで、大変むなしくなりました。 衆議院の本会議は日付が変わる前に終わりましたが、この後、参議院でも 本会議が開かれました。 ■年金法案について、私が作った附帯決議が可決されました 3月19日(水)厚生労働委員会で、年金の物価スライドの1年分凍結解 除を提案した政府案が審議されました。年金の物価スライド制そのものは、 各国で採用している方法でもあり、現役世代の負担とのバランスを考えれ ば、当然の考え方だといえます。 でも、ここのところ、政府は、医療や介護の負担増を連発しています。昨 年の10月からは医療費負担が上がり、この4月からは介護保険料が上が ります。確かに健康で裕福な高齢者の方もいますが、年金でやっと生活を している人で、健康に問題を抱えている場合は、本当に大変なことです。 そういう方は、そもそも消費をする余裕はほとんどありませんから、経済 レベルは物価ではなく医療や介護にかかる費用に大きく左右されると言え ます。 年金法案の審議ではありましたが、何としてもこの問題の足がかりを作り たいと考え、附帯決議を提案しました。今朝の民主党の厚生労働部門会議 で提案したところ、了承され、その後、与党の賛成も取り付けることがで きたため、最終的に私が書いたままの文章が附帯決議として成立しました。 その内容は、 「政府は、次の事項について適切な措置を講ずるべきである。 高齢者の生活は、消費者物価のみではなく、医療や介護など福祉のあり方 に大きく左右されるということに鑑み、年金のみの議論にとどまることな く、医療、介護、税制全般について高齢者が生活上の安心を得られるよう 必要な措置を講ずること。」 というものです。 今まで、議員立法の提出は何度もしてきましたが、最終的な法文は衆議院 法制局の方に書いていただいていました。今日は、附帯決議ということも あり、自分が書いたままの文章が歴史に残るという初めての体験をしまし た。 この附帯決議をもとに、医療や介護のシステムを整備し、負担増を抑制し、 最後まで安心して自分らしく年をとれる社会の実現に向けて、ますます頑 張りたいと思います。 |