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2000年12月26日

「子ども有害情報からの子どもの保護に関する法律案骨子」について

有害情報から子どもを守るための基本法制定プロジェクトチーム
座長 肥田 美代子
事務局長 水島 広子
<はじめに>
 
 私たちは、有害情報から子どもを守るための法律を検討することを目的として、本年10月、民主党内にプロジェクトチームを設置しました。以来、関係団体や省庁、学者の方々からご意見等をいただきながら、取り組んでまいりましたが、このたび「子ども有害情報からの子どもの保護に関する法律案骨子」(別紙参照)として取りまとめました。
 内容につきましては、まだまだ不十分な点や不明瞭な事項などあろうと思いますが、皆さまから積極的なご意見等をお寄せいただければ幸いです。
 今後は、お寄せいただいたご意見やご助言を参考にして更に内容を精査し、できるだけ早期に法案として仕上げてまいりたいと考えております。

★あなたのご意見を下記のメールアドレスへお寄せください。
専用メールアドレス protect@dpj.or.jp


<基本的な考え方>

 小さな子供たちには見せたくないような残虐な暴力や性暴力などが様々なメディアに氾濫しているのが今の日本社会の特徴です。電話をかけようと電話ボックスに入るとテレフォンクラブのピンクチラシが撒かれている、コンビニエンスストアに雑誌を買いに行くと、すぐ隣にとんでもない雑誌が売っている、流行のゲームソフトを買ってみると残酷な人殺しがおもしろおかしく描かれている、というように、ふつうに暮らしている子供たちも有害な情報に無防備にさらされています。小さな頃からそのような情報に当たり前のように触れて育った子供たちが、果たして、人を殺したり強姦したりすることを異常だと感じられるようになるのでしょうか。

 多くの親たちが、この問題を何とかしてほしいと願っています。でも、今までは、憲法で保障された表現の自由等に抵触するおそれがあるという理由で法制化は見送られてきました。

 放送や出版などの業界団体は、それぞれ自主的な規制に取り組んできました。しかし残念ながら、十分な効果を示すことができず、また、業界団体に属していない業者が問題を起こしているケースも多いため、業界団体の自主規制だけでは十分とはいえないのが現状です。

 私たちは、この問題は、「表現の自由」と「子供たちが健康に育つ自由」という二つの権利の比較考量の問題だと考えます。表現の自由の対極にあるのは表現の規制ではなく、子供たちが健康に育つ権利なのです。そう考えれば、どのような取り組みをすべきかは自ずと明らかになると思います。つまり、大人たちが高いモラルを持って子どもたちを健康に育てられるような意識と環境を作ることがポイントとなるわけです。こうすれば民主主義は後退するどころか一歩前進するでしょう。私たちは、そのような考えから、この法案骨子を作ってきました。


<法案骨子の6つのポイント>

  1. 子どもを管理する法案ではなく子どもの権利擁護の法案です。子どもの権利条約に基づいて、「子どもが健康に育つ権利」、「子どもの最善の利益」が守られるものです。

  2. 責任主体を保護者および地域の大人たちに置いており、国や地方公共団体はそのための環境整備を担うものとしています。つまり、表現の内容を管理するものではなく、情報の検閲につながるものではありません。

  3. 子どもにとっての有害情報として対象を限定し、いわゆる一般の有害情報についての規制を目的としていません。事実を伝える情報としての「報道」は除外されています。

  4. 具体的な施策としては大きく二つの柱からなります。
     一つは、子ども有害情報からの「分離」です。書物の区分陳列や放送時間帯の配慮などによって、ふつうに暮らす子供たちが有害情報に触れないですむ環境を作ります。
     もう一つは、情報とのつきあい方の「教育」です。小さな頃は子ども有害情報からの「分離」だけで良いかもしれませんが、成長に従って、単に与えないのではなく、与えつつその情報が持つ意味を教育していくという取り組みが重要になってきます。これがメディア・リテラシーの考え方で、情報化社会に生きる子どもにとっては不可欠の権利ともいえます。

  5. 子ども有害情報について事業者がどのような扱いをするかの指針を決めるのは第三者機関(中央子ども有害情報対策委員会)であり、その指針の原則に則って、事業者が自主的に取り組みます。第三者機関には、情報を受け取る側の代表(保護者などの代表)、情報を提供する側の代表(事業者などの代表)、有識者の3者が入って話し合います。この委員会の会議は原則として公開されます。

  6. 大きな問題のあるメディアは第三者機関による勧告を受けますが、罰則規定はありません。この法案は、あくまでも「表現の規制」を主眼とするものではなく、この問題についての認識と理解を深め、大人社会のモラルと保護者の責任感を高めて子どもの権利を擁護しようとするものです。


<子どもを有害情報からの子どもの保護に関する法律案骨子>

一 目的

 この法律は、子ども有害情報が子どもの心身の健全な発達に重大な悪影響を及ぼすことにかんがみ、子ども有害情報からの子どもの保護を図るため、保護者、国民、事業者、国及び地方公共団体の責務を明らかにするとともに、子ども有害情報に関する対策の基本となる事項等について定め、もって子どもの権利の擁護に資することを目的とする。


二 定義

  1. この法律において「子ども」とは、十八歳に満たない者をいう。
  2. この法律において「子ども有害情報」とは、文書図画、映像又は音声によって提供される残虐な暴力、性暴力、人種、民族、障害等による差別、薬物に係る犯罪又は売買春に関する情報であって、これらに関する子どもの価値観の形成に悪影響を及ぼし、又はこれらに関する逸脱行為(犯罪行為を含む。)を誘発し、若しくは助長する等、子どもの心身の健全な発達を阻害するおそれのあるものをいう。


三 基本的理念

  1. おとなと子どもを区別することなく多様な情報が提供されている等の現状にかんがみ、子どもは、心身の発達の状況に応じ、その主体性を最大限尊重されつつ、適切な指導及び子ども有害情報から適切に分離される環境の整備により、子ども有害情報から保護されるものとする。
  2. 子ども有害情報からの子どもの保護は、子どもの養育及び発達についての第一義的責任を有する保護者及び地域住民を主たる担い手としつつ、情報の提供を行う事業者並びに子ども有害情報から子どもを保護するための体制の整備等を行う国及び地方公共団体の協力の下に推進されるものとする。
  3. この法律の適用に当たっては、この法律による施策は国民に提供される情報について内容の規制を行うものでないことに留意し、事実を伝える報道を妨げること等表現の自由その他の国民の基本的人権を不当に侵害することがないようにしなければならない。


四 保護者の責務

 保護者は、子ども有害情報から子どもを保護する第一義的責任を有することを自覚し、子どもの心身の発達の状況に応じ、子ども有害情報からの適切な分離、メディアから得る情報に適切に適応するための教育その他の適切な指導を行うことにより、子ども有害情報から子どもを保護する責務を有する。

五 国民の責務

 国民は、地域社会その他の社会のあらゆる分野において、子どもが心身の発達の状況に応じ子ども有害情報から適切に分離される環境を整備すること等により、子ども有害情報から子どもを保護するよう努めなければならない。


六 事業者の責務

  1. 事業者は、保護者等が子ども有害情報から子どもを保護する際の判断に資するため、子ども有害情報を提供する場合には、当該情報が子ども有害情報である旨並びにその内容及び有害の程度を明らかにするよう努めなければならない。
  2. 1に定めるもののほか、事業者は、子ども有害情報を提供する場合には、その提供の方法について、子ども有害情報からの子どもの保護に配慮しなければならない。


七 国の責務

 国は、基本的理念に従って、地方公共団体と協力しつつ、子ども有害情報から子どもを保護するための総合的な施策を策定し、及びこれを実施するものとする。


八 地方公共団体の責務

地方公共団体は、基本的理念に従って、子ども有害情報から子どもを保護するため、国及び地域住民と協力しつつ、その地方公共団体の区域の社会的状況に応じた自主的な施策を策定し、及びこれを実施するものとする。


九 子ども有害情報に関する基準の作成

  事業者は、子ども有害情報について、中央子ども有害情報対策委員会が定める十七の2の指針に即し、当該情報が子ども有害情報である旨並びにその内容及び有害の程度を明らかにするために必要な基準を作成するよう努めるものとする。


十 教育の充実

 国及び地方公共団体は、メディアから得る情報に子どもが適切に適応するための教育その他子ども有害情報から子どもを保護するための学校教育及び社会教育の充実に努めるものとする。


十一 民間における活動に対する援助等

 国及び地方公共団体は、子ども有害情報から子どもを保護するために行われる民間における活動に対し、必要な協力及び援助を行うものとする。


十二 情報の収集のための体制の整備等

  1. 国及び地方公共団体は、子ども有害情報に関する国民からの情報の提供及び相談を受けるために必要な体制の整備を図るものとする。
  2. 国民は、子ども有害情報からの子どもの保護が促進されるよう、国又は地方公共団体に対し、子ども有害情報に関する情報の提供に努めるものとする。


十三 調査研究

 国は、子ども有害情報が子どもの心身の健全な発達に与える影響に関する調査研究を行うものとする。


十四 情報の提供等

  1. 国及び地方公共団体は、子ども有害情報からの子どもの保護に関する国民の理解を深めるため、この法律による取組の状況等について、情報の提供を行うものとする。
  2. 国及び地方公共団体は、基本的理念並びにこの法律による保護者、国民及び事業者の責務について、必要な広報その他の啓発活動を行うものとする。


十五 財政上の措置

 政府は、この法律の目的を達成するため、必要な財政上の措置を講じるものとする。


十六 国会への報告

 政府は、毎年一回、この法律による取組の状況等について、国会に報告するものとする。


十七 中央子ども有害情報対策委員会

  1. 内閣府に、保護者等として子ども有害情報からの子どもの保護を行う者を代表する委員、情報の提供等を行う事業者を代表する委員及び学識経験のある者である委員からなる中央子ども有害情報対策委員会を置く。
  2. 中央子ども有害情報対策委員会は、七の施策の策定に際し意見を述べ、情報の提供等を行う事業者が講ずべき措置に関する指針を定め、及び情報の提供等を行う事業者に対し必要な勧告をすることができる。
  3. 中央子ども有害情報対策委員会の会議は、原則として、公開とする。
  4. 中央子ども有害情報対策委員会は、必要があると認めるときは、関係行政機関に対し、所属職員の出席説明及び資料の提出を求めることができる。


十八 地方子ども有害情報対策委員会

  1. 都道府県に、条例で定めるところにより、保護者等として子ども有害情報からの子どもの保護を行う者を代表する委員、情報の提供等を行う事業者を代表する委員及び学識経験のある者である委員からなる地方子ども有害情報対策委員会を置くことができる。
  2. 地方子ども有害情報対策委員会は、八の施策の策定に際し意見を述べ、及び情報の提供等を行う事業者に対し必要な勧告をすることができる。
  3. 地方子ども有害情報対策委員会に関し必要な事項は、条例で定める。


十九 施行期日

この法律は、(  )から施行する。




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