民主党の代表選に思う

民主党の代表選を見ながら、「政党とは何か」ということを考えている。

本来、一人一人が選挙によって選ばれる国会議員は、全員が「無所属議員」であってよいはずである。
しかし、よほど国会議員数が少ない小国でない限り、全員が無所属議員として一つ一つの政治課題を議論していたら、手間も時間もかかって税金の無駄になってしまうだろう。
また、同僚と協力し合うことで得られるメリットも大きい。政党の存在は、これらのニーズに応えるものだと考えられる。

北欧などの多数政党制の国々を見ると、この、「政党 = 政策立案と実現のための集団」ということがわかりやすい。国民は、どの党に力を持たせるかによって、どの政策の方向性を選ぶかを自分で考えることができる。

一方、今の日本のように、「選挙に出たいけれども、自民党は候補者が決まっているので」とか「今は民主党から立候補した方が当選しやすいので」「自分の所属する組織は民主党からしか立候補できないので」などという理由で所属政党を決めている人が多い状況では、政党のあり方も歪んでくるのは当然だと思う。
「次の選挙に勝つための代表は誰か」という視点から代表選が語られるのも理解できる。
この場合の政党とは、単に選挙に勝つための装置に過ぎず、それ自体が民主主義の成熟につながるものではないだろう。
「選挙に勝つための装置」としての政党の存在を否定するつもりはないが、それなら「政策立案と実現のための集団」のような顔をしない方がよいと思う。
「政策立案と実現のための集団」という顔をしておいて、実際の行動が「選挙に勝つための装置」である、というズレが、政治不信を強めていると言えるだろう。
(なお、政権交代までの民主党について言えば、「政権交代至上主義」が駆動力であったことは間違いなく、そういう意味では「選挙に勝つための装置」としての役割が大きかったように思う。もちろん、与党になった今では不適切な考え方だと思うが)

このように考えてくると、報道の中にさかんに出てくる「挙党態勢」という言葉についても考えさせられる。

何を目的とした「挙党態勢」なのか。
参院選前に不用意に消費税増税に言及した菅首相を批判するにしても、「選挙に勝つための集団」のトップとして批判するのか、「政策立案と実現のための集団」のトップとして批判するのか、ではスタンスが変わってくる。

そもそも、政党が「政策立案と実現のための集団」であれば、厳密に言えば、二大政党制はあり得ないと思う。
二大政党下で、それぞれの政党に所属する議員がほとんどの領域で一致しているということは、人間の多様性を考えればまずあり得ない話である。したがって、最低限の基本政策の一致だけを期待する方がよほど理にかなっている。つまり、「党議拘束」を極力排除すべきだということである。
私は現職議員のときに何度か「造反」をし、処分すら受けたことがあるが、二大政党制を目指すのであればおかしなことであった。
もちろん、「選挙に勝つための装置」としての政党であれば、バラバラ感は好ましくないだろうし、党議拘束は重要なのだろうが、「選挙に勝つための装置」としての政党を多くの有権者は望んでいるのだろうか。

代表選の結果がどうなるかはわからないが、負けた側は、自らの政策的主張を引っ込めるのだろうか。
あたかも「政策立案と実現のための集団」のようなことを言っているのに、政局に合わせてその主張を変えるのであれば、本質は「選挙に勝つための装置」としての政党にしか関心がない、と考えた方がよいのだろう。(今回の代表選ではそれよりもさらに一段レベルの低い、個人的感情論が先に立っているような気もするが)

「党が決めたことだから」という言い訳も、こうして考えてみると、何とも説明のつかないことだ。
最低限の基本政策に関わることであれば、自分と方向性の一致する政党に所属すべきだろうし、それ以外のことであれば、やはり自分の信念を貫くのが政治家だと思う。
「党が決めたこと」を重視するという姿勢そのものが、「選挙に勝つための装置」としての政党を認めているのではないだろうか。

これらのわかりにくさを排除するためには、個人の裁量が最大限に認められた二大政党制か、北欧のような、政策本位の多数政党制(それぞれの政党がそれぞれの主張を持ち、政治状況に応じて複数の政党が連立政権を組み、それが最終的な政策決定に反映される)かのどちらかを選ぶ必要があると思う。

追伸 ツイッターについて

前回、「ツイッターを始めました」と簡単にお知らせをしましたが、「そもそもツイッターとは何?」というご質問も受け、実に不親切な説明であったことに気づきました。
私のホームページ http://www.hirokom.org/ のトップページに、最近10個の「つぶやき」(140字以内の短文メッセージ)が載っており、そこからそれ以前のものも読めるようになっていますので、ツイッターそのものにおなじみでない方も、時々ご覧いただければ幸いです。
今のところだいたい毎日書いています。